第六十四話「やってきた、最後の護衛役」・3
「露さん……これ見てください」
「うん? ――な!? こ、これって……ウソ! よりにもよってこの子が来るなんて……結局全員投下するハメになったの!?」
「最後の護衛役って事みたいですけど、そんなにヤバイんですか?」
血の繋がった姉弟である彼らがここまで怯えるという事は、それ程までに最後の護衛役は相当な実力の持ち主という事になる。
そんな相手に、俺は勝てるのだろうか?
と、そんな不安が俺にのしかかってくる。
「そうね、実力で例えるなら、霞お姉ちゃんの本気と雫お兄ちゃんの本気を足して、私の実力を掛けた感じかな?」
「…………。それって、普通に勝てるんじゃないんですか?」
俺は、しばし思案してそんな言葉を発した。
「ちょっと! それどういう事よ!! 護衛役三人の力を一人が持ってるのよ!?」
「いや……そもそも、霞さんと戦ってないんで実力知らないですし、雫とも戦ったけど、あれは結局霄が説得させて終わらせたし、露さんとの戦いも、霄が来て……あれ? そう考えると、俺って結構霄に助けられてる!? てか、今まででまともに戦ったのって霄と零と雪だけなんじゃ……」
そういえばそうだ。俺は今の今まで何かと誰かに助けられて、結局一人で解決してない気がする。よりにもよって、強い相手に限ってちゃんとした戦闘をしてないんだよな。まぁ、そのおかげで生き残っている面もあるけど……。
てか、オフの時がこんなんだから、どうもこいつらの本気ってのが想像つかない。
「せやな~。響史とは一回も戦ってへんしなぁ。せや! ほんなら、今からウチと戦うか? ちょうど腕も鈍ってるし、ええ準備運動になるわ!」
その恐ろしい発言に、俺は両手を前に突き出し激しく顔を左右に振った。
冗談じゃない! せっかく平和に終わったのに、わざわざ戦うなんて俺の寿命を下手に削るだけじゃないか!! そもそも、霞さんは戦闘をあまり好まないんじゃ?
「え、遠慮しておきます」
「何や、残念やなぁ」
「いや、それより今はコレでしょ!!」
そう言って俺はテレビ画面をビッと指差した。突然の異常気象に、気象庁も相当混乱している様子だ。ニュースもこの突然の変化に盛り上がっている。
「結局、誰がこれをやってるんですか? 確か、俺の記憶が正しければ残っている護衛役は、次男って……」
「ハックちゃんだよ」
「ハックちゃん? 誰なんだ、そのハックちゃんって?」
恐らく――ていうか、間違いなくあだ名を口にする雪に、俺はその言葉を疑問形で反芻する。
「ハックは、アタシらが呼んでるニックネームさ。本名『水連寺 雹』……アイツはアタシらの中で一番強い、最強にして最後の護衛役さ」
俺の問いに、今度は霙が胡坐をかいて腕組し、瞑目したまま答える。
「雹で“はく”って呼ぶのか?」
零が紙に名前を書いているので、それを俺が上から覗き込みながら訊くと、コクリと首を縦に頷かせた。
「……雹は、本気モードの私より強いです」
物静かにそう口にする零に、俺はふと彼女との戦闘を思い出す。
あの時の零より強いのか……。確かにそれはヤバそうだな。
「ちょっと響史くん! 何で私との戦闘より、零ちゃんとの戦闘の方が強さの比較が出来てるのよっ!!」
いまいち納得がいかないと露さんが頬を膨らませて不貞腐れる。
「いや……露さんの場合、いつものアレのイメージが強すぎて」
俺がポリポリと人差し指で頬をかきながら答えると、霞さんが笑いながら口を開く。
「ま、露の普段の行いの悪さが祟ったんやな」
「うぇ~ん、そんなぁ~」
そう言ってわざとっぽく泣き出した露さんは、しれっと雪に抱きつこうとして……失敗した。
というのも、雪の頭の上に乗っていた使い魔に冷凍息吹を吐かれたからだ。
「冷たいっ!?」
【ふふっ、僕のご主人様に手を出してもらっちゃ困るなぁ~】
冷凍の氷竜と呼ばれるハーフ=ヒュードラのエアリスが、頭の上でうつ伏せで寝そべりながら言う。
「むぅ~、いいじゃんエリスちゃん!」
【僕はエ・ア・リ・ス!】
「じゃあ、アリスちゃんはどう?」
【何度言えば分かるんだい? 僕の名前はエアリスだよ!!】
どうやらエアリスは、あだ名のように名前を省略されて呼ばれるのは好まないらしい。
だが、露さんはしつこく食い下がる。
「いいじゃんいいじゃん、小っちゃい頃からの付き合いなんだから!」
【そんなに年月経ってないでしょ】
「へぇ、珍しいじゃん。ハーフ=ヒュードラは成長速度が通常と違うから、私達が一歳年を重ねたら二、三歳は成長するはずでしょ? あれにはビックリしたなぁ」
【ふふっ、あまり人のプライバシーをベラベラ話してほしくないなぁ。何のためにこの姿でいるか、分かったもんじゃない】
言い争う中で何やら意味深な言葉を口にする露さんとエアリス。そういや、ドラゴンってあんなに小さくないよな。確かに幼竜なら話は別なんだが、露さんのさっきの発言だと、雪が産まれた時期からいるみたいだし、それなら二十くらいの年になってるはずだよな? それなら十分成竜になってるはずだから、あんな大きさのはずないんだが……。
って、また話が別の方向にそれてる!
「結局、その雹って子は何が目的なんですか?」
「せやな~、まぁ言わずもがな響史を殺すのが目的やろな」
「そんな物騒な!」
俺の発言に対し、霞さんが足を前に投げだして両手を体の後ろに置き、上半身を支えながら天井を見上げて口を開く。
「そないな事言うても、今までかてせやったんやろ? 霄から順に来て、今回が雹……まぁ、今まで通りに戦えばええんとちゃう? まぁ、ウチは響史の戦闘シーン見た事あらへんから、なんとも言えへんけど……」
霞さんの次に来た護衛役は雪だ。彼女との戦闘もなかなか大変だった。何せ、規格外の魔力を用いて姉や兄の武器を模倣し、それで攻撃してくるのだから。他にも氷の礫を形成してぶつけてきたりと、なかなか厄介だった。
「雹はどんな攻撃をしてくるんだ?」
事前調査は大切だ。相手がどんな戦い方をするのか知っておく事で、少しは戦いがスムーズに行くはずだ。
「う~ん、ハックちゃんは雪ちゃんと同じで魔力の量がけた違いなの。でも、一応武器はもってる」
「つえで攻撃するんだよ」
俺の問いに、霖と雪が答える。
「雪と同じ、桁違いの魔力保有者!?」
「うん、でもハックちゃんは武器をもってるから、そのぼーだいな魔力の制御もうまい。この異常気象も異常な力をもってるからこそできるんだよ」
テレビ画面を眺めながら雪が言う。
「なるほど……確かに天候を操るとなると、相当だよな」
顎に手をやり、その保有量がどれほどなのかを想像する俺。
と、そこに付け足すかのように雪が口を開く。
「まぁ、ボクもできるけどね」
「え!? 雪も出来るのか?」
サラリととんでも発言する雪に、俺は驚愕した。
「まぁ、雪を降らせるくらいなら……」
「魔力保有が高い悪魔なら、結構そういうのできるよね」
霊が足の間に両手を突き、身を乗り出すようにしながら言う。喋ってる間、耳がピョコピョコ動き、しっぽがくねくね動くので如何にも猫のようだ。
と、その時、ニュースから気になる言葉が聞こえてきた。
『こちら光影都市黎明区上空より、黄昏区上空の映像をお送りしています! ご覧下さい、突如発生したどす黒い積乱雲は、未だ黄昏区を中心にとぐろを巻いており、大雨と雹を伴っています! さらに、時折稲妻が光っており、外に出るのは非常に危険な状態です』
確かに異常だ。何が異常かって――。
『ご覧下さい、こちらは光影都市黎明区上空です。ご覧のように、同じ光影都市なのかと疑うほどに快晴です。雨も雹も降っておりません。コレは一体どういう事でしょうか?』
『こちら光影都市真夜区上空よりお送りしています。ご覧下さい、真夜区も同様に快晴です。雲一つない状況です。現場の亀田さん、亀田さん!』
『はい、現場の亀田です! 現在私は、光影都市の真夜区と黄昏区の丁度区分地点にいます! ご覧下さい、こちらは真夜区です。ご覧のように晴れ晴れとしており、人々の声で賑わっています。しかし、反対側――黄昏区方面を向くと、まるで真夜中と言わんばかりに真っ暗です。日の光が当たらないほど分厚い積乱雲によって光が遮られているのです。さらに、大雨に混じってゴルフボール程の雹が落下しています』
パリンッ!
テレビ越しに何かが割れた音がした。恐らく、民家の窓ガラスに雹が当たったのだろう。雹は、人に当たると下手したら脳震盪等を起こす可能性があるらしいからな。
『亀田さん危ないッ!!』
カメラマンか誰かの声だろう。上空から亀田さんに向かってゴルフボール大の雹が落下してきた。
『うわッ!?』
ギリギリ亀田さんは躱したが、あれは凄く危ない。早く現場から離れたほうが良いだろうな。
にしても、やっぱり狙いは俺達なんだろうな。黄昏区といえば、丁度俺達が生活している区域。しかも、学校も含まれてる。だが、他の人たちは関係ないだろ! それなのに……こんな、もしも誰かに怪我なんかがあったらどうするつもりなんだ!!
俺は早期解決しなければと思い、その場に立ち上がった。
「どこ行くの?」
瑠璃に訊かれ、俺は眉尻をあげる。
「決まってるだろ! 雹とかいうやつのところだよ!」
「どこにいるか分かってんの?」
麗魅の質問だ。確かに、分からない。だが、このままじっとなんてしていられない。
「黄昏区を中心に積乱雲が発生してるなら、敵はこの範囲内にいるんじゃないか? それに、敵は俺達を狙ってるんだ。だったら、俺が外に出れば向こうが発見してやってくるだろ!」
「危険だ、響史。雹は当たっただけで相当なダメージになる。傘でも防ぎきれないだろう。特にハックの事だ。己の魔力を雹に混ぜて降らせているに違いない。だとすれば、威力が上がっている可能性がある。もしくは、標的にのみ反応して威力上昇……とかな」
俺の無茶な作戦に、霄が自分の意見を口にする。なるほど、確かにその可能性も十分考えられる。
「まぁ、どちらにせよこちらから動かへんでも向こうから来ると思うで?」
「そうですかね……」
霞さんは相変わらず楽観的だ。確かに平和を望む人なら、毎日こういう雰囲気を出しているものなのかもしれない。まぁ、俺にはよく分からないが。
「……あ」
そこで、霰が気の抜けた声をあげる。何故そんな声をあげたのか謎だったので、霰の方に顔を向け、それから彼女が視線を向けている方に顔を向ければ、ニュース番組が緊急速報を流していた。
『こちら光影都市黎明区よりお送りしています。ここは光影都市に存在するシンボルのタワーですが、見えますでしょうか? あそこに、小さな少年がいます!』
その発言に、俺達全員の目が見開かれ、一斉にテレビの画面がよく見える位置にダッシュする。
「なぁ、このマフラー巻いてんのって……ハックだよな?」
「いやまさか……よりにもよってこのような場所になど」
「でも、忍者に憧れてマフラーを顔にも巻くのがクセだったわよね?」
「せやなぁ。けど、あんな分かりやすい場所におったんか」
「うわぁ、たか~い。私、怖くてあんなトコいけないよ」
「でも、少し様子がおかしくありませんか?」
「うん、いつものハックちゃんと少し違うような……」
「確かに、ボクも思った。ハックちゃんの魔力……少し違う」
霙、霄、露さん、霞さん、霊、零、霖、雪が各々思ったことを口にする。
「あれが雹……見た目は幼いけど、実力は長男長女に匹敵するのか……」
と、その時だった。限界まで寄ったカメラに映っていた雹が、まるで人形の様な表情でこちらを向いた。そして、表情一つ変えることなく小さな片手をこちらに向けて構える。
瞬間――その青い双眸が真紅に光り輝いた。
「やばいッ!?」
俺たちはテレビ越しである事も忘れ、後ろに飛び退いた。
我に返ると、テレビ画面にはしばらくお待ちくださいの文字。
まさか……。
「……ハック、やりおったな」
霞さんが下唇を噛んで言う。
「姉者……やはり、今のは――」
「ああ、間違いないやろな」
「驚いた~。まさか、アレを放つなんて」
四女、次女、三女が冷や汗を流しながら浮かない表情を浮かべている。
「い、今のは一体?」
「響史……どうやらハックは、本気でウチらを奪い返しに来とるみたいやわ。あの目は異常や……」
先ほどまで楽観的な考えをしていた霞さんでさえ、冷や汗をかいている。それが意味するのは、今までの様に楽にはいかないという事だろう。
「そんなにヤバイんですか?」
「パワータイプは分かるだろう? 護衛役の中でパワータイプのトップは霙だ。それは理解出来るな?」
「ああ」
俺の問いにいち早く答えたのは霄だった。いつの間にか、片手に斬空刀を握っている。
「霙の次は雹なのだ。今の砲撃、恐らく上空で撮影してた記者は――」
ドドォンッ!!
突如響く大きな音と、重低音。地面が揺れ、何かが落下したのが理解できる。
「おい、嘘だろ」
「ううん、これは現実よ響史くん。ハックちゃんに何があったのか知らないけど、今回ばかりは私達も予想外の事態よ。部外者にこんな悪さはしない子なんだけど……」
雹の事を良く知っている姉達でさえ畏怖している。何にそれほど恐れているのだろうか? 確かにヘリを落とすなんて普通じゃない。だが、悪魔ならそれくらい普通ではないのか? テレビ越しでどんな技を繰り出したのかは分からないが、俺の今までの戦闘経験がそんな考えをさせていた。
「とにかく場所は分かった! 行くっきゃない!!」
「お兄ちゃん本気!?」
「そうだよ! ハックちゃんと戦うなんてムリだよ!!」
雹に年が近い霖と雪が、必死に俺を止めようと手を引く。
「このままにはしとけないだろ。間違いなくあいつは部外者を関係なく殺りに来てる。それを放ってなんておけるか!! 必ず止めてやるッ!!」
そう言い切った俺は、再びその場に立ち上がって目的地へ向かって駆け出した。
「あっ、響史っ!!」
後ろから瑠璃の声が聞こえたが、それを無視して俺は玄関へ向かう。
「響ちゃん」
昼から姿を消していた姉ちゃんが、俺の背後で声をあげた。
「……悪い、止めないでくれ」
「ううん、止めはしないよ。ただ、無駄死になんて許さないから。あなたを心配してる子が何人いるか、ちゃんと把握してる?」
その姉ちゃんの言葉に、俺は思わず顔を伏せた。
そうだ、今までも俺は何人もの人を心配させてきた。姉ちゃんもその一人だ。ふっ、何がもう心配させないだ。思いっきりさせてるじゃねぇか。情けない……心配させないためには力が必要だ。この人なら任せても大丈夫、この人の力なら誰にも負けないから安心して見守っていられる……そんな力を、俺は持っていない。ならどうする?
「……手に入れればいい」
「え?」
「心配させないだけの力を、俺が得ればいいんだッ!!」
「……響ちゃん」
「姉ちゃん、ごめん。まだ俺は弱い。心配させないように出来るほどの力がないんだ。だから姉ちゃんを悲しませて――」
ぎゅっ。
ふと感じる温もり。暖かく、懐かしい、安心出来る温もり。何でだろう、姉ちゃんに抱き締められると不安な気持ちが全て拭い去られる気分になる。不思議と勇気が沸いてくる。これが、姉の力なのだろうか? なら、弟はどうすりゃいい? その答えを、俺はまだ見つけられずにいた。
「響ちゃん、私はね……永遠に心配すると思う。響ちゃんが、窮地に立ち向かっていく度にね。それが、いくら強い力を得ても、同じ事だと思う。ほら、親が子の心配をしない事はないみたいに、姉が弟の心配をしない事は……ないんだよ」
姉ちゃんに抱き締められたまま、そう耳元で囁かれる。
「だから、心配させてもいい。でも、お願いだからこれだけは約束して……響ちゃん。例えボロボロになってしまってもいい、大怪我を負ってしまってもいい、それでも必ず……必ず元気に、笑顔で帰って来て! そしてお姉ちゃんに、『ただいま!』って、元気な声で言って」
必死なお願いなのだろう。涙混じりに紡がれたその言葉に、俺は胸が熱くなって、ひたすら何度も首を縦に動かした。
「ああ、もちろん言うよ。……絶対、あいつを倒して、説教してつれて帰ってくるッ!! そして、ただいまって、姉ちゃんに言う!!」
俺は姉ちゃんに勇気をもらった。なら、その勇気を何かにして返さないといけない。だが、何にして返せばいいだろうか?
そんな時、俺はふとついさっき言われた約束を思い出す。
「うん……うん、分かった」
「指きりだ!」
「破ったら、針千本ノックだからね?」
「怖ぇよ!!」
目じりに涙を浮かべ笑みを零しながら、さらりと冗談を混ぜる姉ちゃん。そんな茶目っ気をたまに見せる姉ちゃんは、実に卑怯だと俺は思う。
「じゃ、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
玄関ドアを開ける俺に、姉ちゃんはそう返してくれた。
自然と足取りは軽い。場所は分かってる。雨足はさらに強さを増し、雹が次々に降ってくる。
そして、俺の目の前に幾つもの雹が襲い掛かる!!
バンバンバンッ!!
複数の銃声。目を開けると、俺に迫っていた雹は全て木っ端微塵になっていた。
「えらい堂々と真正面から直進するやっちゃな! そんなんやったら体持たへんで!」
聞き覚えのある声に後ろを向けば、霞さんが二丁拳銃の片方の引き金部分に人差し指をひっかけて、クルクルと回転させている姿があった。
「か、霞さん!?」
「いやぁ~、自分らの姉弟愛に感動してもうてなぁ? 久しぶりにウチも体が疼いてもうたわ! 安心しぃや、ウチらがハックのトコまで案内したるわ!!」
「う、ウチら?」
何故複数形なのか疑問に思っていると、俺の背後で物音がした。見れば、霄が斬空刀を鞘に納めている姿があった。傍には真っ二つに切断された雹がいくつか散らばっている。
「じっとなどしていられんぞ? 雹は次々に降ってくる!」
「でも、このままじゃ動けねぇし……」
「案ずるな、すぐに雪が力を貸してくれる」
「どういう事だ?」
霄の言葉に俺が疑問を抱いていると、先ほどまでの雨がピタリと止み、代わりに冷たい何かが俺の腕に落ちてきた。
「冷たッ!? こ、これは……雪?」
「ああ、雪がエアリスと協力して雪を降らせているのだ」
「でも、こんな広範囲にどうやって?」
「響史くん、これ!」
今度は露さんがやってきた。息を切らし、片手にはスマホが握られている。が、少し形が違う。恐る恐る受け取り耳に近づけてみると、声が聞こえてきた。
「私がやったのよ」
ルナーの声だった。
「まさか、また発明品か?」
あまりルナーの発明品は安心できない。今まで作ってきた発明品でまともだったのは殆どない。
「媒介に必要な物を有り合わせで作ったの。仮ではあるけど、一応役には立つはずよ。ただ、あくまでも有り合わせだから長い効果は期待出来ない。雪にも負担になるしね。だから、なるべく急いで!」
「分かった、サンキュー! 雪にもお礼を言っといてくれ!」
「ふんっ、お礼なら自分の口で言いなさい!!」
そう言って通話が切れた。
「みんなありがとう!!」
「ふっ、構わんさ。私達の弟がしでかした事だ。ならば、身内で片をつけねばな」
「本来お前らはあっち側なんだけどな?」
「何なら今から寝返ってもええんやで?」
「じ、冗談ですよ!」
悪戯っぽい笑みを浮かべて言う霞さんに、俺は苦笑いで答える。
「とにかく、急ぎましょ! 雪ちゃんにあまり負担かけないようにしないとね!」
「そうですね!!」
露さんの妹を気遣う言葉に少し感動し、俺達は先を急いだ。
というわけで、三部です。雹の実力は霞と雫を足して露を掛けた感じ……わからん。というのも、響史の言うとおり今までを振り返るとまともに戦った護衛役、案外殆どいないんですよね。霊とか普通に猫としてやってきて響史に裸見られて、気づいたら普通にいるし、霞にいたっては助けてますからねw
そして、雹の名前がようやく出てきました。ニックネームはハックちゃん。なんか、下手したら英語で絶対に言っちゃいけない言葉に聞こえそうですw
雹ってハクとも呼ぶって、調べて知りました。普通にひょうでも良かったんですが、あえて捻ります。
そして、露とエアリスとの会話。てか、エアリス久しぶりにしゃべった気がします。一応いますよ。この二人の関係性……伏線ということに。
で、テレビで中継が流れ出しました。すごいですね、器用に黄昏区の上空にのみ積乱雲発生w
さらに、雹がテレビに映ったことでメンバー全員がテレビ画面に。なんだか、家族の誰かがテレビに映ってなんたらみたいです。
と、ここで緊急事態中継してた方々が! 彼らの命運やいかに!?
とにもかくにもようやく響史たちが動き出します! と、そこに唯がやってきて約束。死亡フラグではありません。このシーン、お姉ちゃんいいなと思う(あくまで個人的意見)
四部に続きます。




