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魔界の少女  作者: YossiDragon
第六章:七月~八月 夏休み編
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第六十五話「女体の神秘の探求」・2

「ちょちょ、な、何なのこの度を過ぎた変態はっ!? あ、あなた達のでしょ? 何とかしなさいよ!!」


 “の”って、完全に物扱いだな……。


「露さん、それ以上はまずいですって。風紀委員を怒らせたら、どんな裁きを執行されるか……」


「ちょっと、そんな言い方はやめてください。私のイメージ、悪くなっちゃうじゃないですか」


 壁に追い詰められた状態で必死に露さんを避けようとしている竹谷先輩がそう言う。


「捌きを執行? どういう事だ?」


 霄の質問だ。彼女が知らないのも無理はない。あの風紀委員こと鬼風の松竹梅の三人の裁きを執行されたくなくて、ここ何年かはみんな大人しかったからな。

鬼風の松竹梅というのは、風紀委員を取り仕切っている松山、竹谷、梅川の三家の事を言う。この三つの家は、血が繋がっており、その子孫である竹谷先輩と他二名は、従兄妹関係にある。

 問題はなぜ鬼風などと呼ばれているのか……。その最もな理由は、彼らの行う風紀を乱した生徒への裁きの罰則だ。通称、『風鬼の刑罰執行』と言う。

 とにかく鬼のような課題を出され、二度と悪さをしたくなくなるらしい。俺自身が受けた訳ではないので、細かいことまでは分からないが、例の一つに「反省文千枚を次の日の朝までに」が、挙げられる。

ちなみに、これを成し遂げられなかった場合、更に課題を出される上に風紀委員長というか、松竹梅の三人の誰かからキッツーイお仕置きを受けるそうな。その内容は様々だそうだが、裁きを受けた連中曰く、鬼の所業らしい。

これらの事から、俺達一般生徒は竹谷先輩含めた三人を鬼風の松竹梅と呼んでいる。


「ホント失礼しちゃいますよ、鬼だなんて。私達はただ、風紀を乱している生徒を罰しているだけなんですから……」


 竹谷先輩のその見た目は至って普通だ。少し緩く三つ編みにした後ろ髪を、左右の肩から胸元に垂らしていて、前髪には、竹の髪飾りがついている。容姿や言動、性格などを出会ってから今のところまでで俺なりに分析してみた結果、そこまで鬼のような課題を出しそうにはないんだが。確かに、厳しくはありそうだけど。


「そんな事いいから、お仕置きしてよぉ! ハァ、ハァ!」


「いやあああ!!」


「まだやってたんですか、霄……頼む」


「だから言ったのだ。早急に手を打つべきだと」


 そう言って霄は、背後から目に見えぬ速さで露さんを残空刀で殴った。


「ふぶくぅ!?」


 後頭部を殴られた露さんは、変な声を上げてダウンし、霄に引きずられていった。


「はは……あまり、気にしないでください」

 

「全く、ちゃんと見張っていてください。その人、あまりにも危険すぎます」


 物凄く下の者を見るような眼差しで、竹谷先輩が腕組をする。


「って、こんな事してる場合じゃないですよ! 早く雹を見つけないと! もう学校に乗り込んでるんですよね!?」


「せやな……竹谷はんや露の話がホンマやとしたら、急いだ方がええ。このままやと、被害がデカくなってまう」


「そうですよね。よし、急ごう!」


 どこへ向かえばいいかは分からないが、ともかく動かなければ。

 と、そこで俺の脳裏に一つの案が閃いた。


「竹谷先輩、この学校で胸やお尻が大きい女性って誰だか分かりますか!?」


「なぁっ!? こ、この変態っ! あ、あなたまでいきなり何なんですか!? そんな質問を風紀委員の私にしますか、普通!?」


「いや……風紀委員ですから、普段から生徒の風紀をチェックしてて多くの生徒を見てるかなぁと……」


 顔を真っ赤にして思い切りズイッと顔を近づけて来た竹谷先輩の言葉に、俺は両手をまぁまぁと動かして後ずさる。


「た、確かに私は多くの生徒を知っていますけど……教えて何をするつもりなんです? ……はっ、まさか……その女子生徒を襲うつもりなんじゃ……こ、このケダモノっ!!」


 勝手に極論に至った上、誤解とはいただけない。俺は断じてそんなつもりはない。ただ俺は、その女子生徒を雹の手にかかる前に助けたいんだ。


「そういえば、どうして竹谷先輩は襲われたんですか?」


「は? そんなの私に分かるわけないじゃないですか……」


 おかしい、雹の目的は女体の神秘を探求すること。やつが求めるのは乳と尻がデカい女性のはず……。だが、竹谷先輩は――。

脳内で独りごちりながら、俺はふと竹谷先輩の胸元を見やる。

そして、その俺の視線に気付いたのだろう。こっちを一瞥して俺の視線がどこへ向かっているかを即座に察した先輩は、俺から物凄い勢いで距離を取って、胸を庇いながら開口した。


「なに人の胸をジロジロ見ているんですか! 風紀委員長である私の目の前でわざわざ風紀を乱すなんて、挑発してるんですか、喧嘩売ってるんですか?」


「いやいや、決してそういう意味では……」


 両手を突き出して首を必死に左右に振る俺。何でこうも勘違いされてしまうのか……いやでも、俺が竹谷先輩の胸元を見ていたのは事実だし、疑われても仕方ないか……。

と、その時だった。


「む、この気配……」


 声をあげたのは、気絶した露さんを引きずっている霄だった。その目つきは鋭く、まさに剣士の面持ちだ。まさか、近くに雹が?


「どうした、霄?」


「うむ……どうやら、雹はこの先の運動館にいるようだ」


「運動館に?」


「ああ、あくまで私の勘だがな……。それに、雹もこの学園のどこに最高の女体がいるか分かっていない。こちらが先に見つけられれば、迎え撃つ事も出来る。本当に分からないのか?」


 そんな事言われても……。俺はその場に立ち止まってう~んと唸った。しかし、考えても考えても思い当たらない。そういや、胸っていろんな呼び方があるよな。巨乳だ貧乳だの、果てには奇乳なんてのもあったりするし……でも、尻って……桃尻とか巨尻とかしか聞いたことねぇな。

って、何の話をしてるんだ俺は! こんな事してる暇ねぇってのに!!


「とにかく、今は運動館を目指そう! 最高の女体を持つ女子生徒探しはそれからだ!」


「何を言っているんですか……この人」


 後ろで竹谷先輩が物凄く引いてる気がするが、そんな事は気にしてられない。俺だって口にしてて恥ずかしいんだ。




 あれから、約数十分が経過して、俺達はようやく運動館の入り口へとやってきた。

 運動館は、校舎同様六階建てになっていて、どの階からも入れる。ただ今回ばかりは例外だった。五階以外の入り口が全て氷の壁で入れないようになっていたのだ。これにはさすがに結構な時間を費やしてしまい、それが数十分も時間がかかった理由なのだ。 そして、入り口に立ってようやく俺でも分かった。この中から並々ならぬ邪な念を感じる。雹がいるのかもしれない。

俺は扉に手をかけて開けようとした。


「ふんッ! あれ……あかない?」


「そんなはずありません、体育館は運動部が使用していて鍵を開けているはずです! 会長からもその報告を受けています」


 竹谷先輩がありえないと首を左右に振り、扉に手をかけて開けようとするが……。


「ふぬぬぬぬぬぅ~っ!」


 かわいい踏ん張り声が聞こえるだけだった。


「ちょっと、今何か失礼な事考えませんでした?」


「い、いえ……ちっとも」


 半眼の眼差しで俺を睨みながら言う竹谷先輩に、顔の前で手を振り俺は否定する。この人、恐ろしいくらいに邪念を察知するなぁ……。


「どけ、私が開ける!」


 そういって前に進み出たのは、霄だった。その手は何故か残空刀にかけられていて……。


「おい、霄! まさか、扉を破壊するつもりじゃ!」


「そ、そうなんですか!? い、いけません! そんな事したら、弁償なんですからね!?」


「べ、弁償!? や、やめろ! これ以上生活費を切り詰める訳にはいかねぇんだぞ!?」


 竹谷先輩の弁償という言葉に、俺は顔面蒼白となって霄を制止させようとした。

が、霄は聞く耳を持たず、開口してこう言った。


「ふっ、案ずるな響史……私とて、そこまでバカではない」


 いや、どうかな……。


「扉が開かないのには訳がある……」


「訳? それってどういう――」


 俺が最後まで言うより早く、霄が残空刀を抜刀して縦に振り下ろしていた。

衝撃波が扉の若干の隙間に入り込み、何かを砕く音が木霊す。

 それから霄が扉を開けると、あんなにビクともしなかった扉があっさりと開いた。


「あ、開いた……?」


「開かなかった理由は、これだ」


 そう言って霄が何かを差し出してくる。その手元を見やれば、その手には氷で形成された鎖が乗っかっていた。


「氷の鎖?」


「うむ……十中八九、雹の仕業だ。内側から鍵をかけ、外部からの侵入と内部からの脱出を防ぎたかったのだろう。まぁ、少なくとも内部から逃れる手立てはなかったようだが……」


 俺達の先陣を切って先に体育館内に入る霄。


「それって、どういう事だよ!」


 霄の言葉の意味が少し理解出来なかった俺は、慌てて早足で霄の後に続いた。

そして、俺は理解した。目の前に広がるありえない光景に……。


「おい、……冗談だろ? ここって、体育館だよな? これじゃまるで……氷のスケート場じゃねぇか」


 体育館の床一面が氷でびっしりと覆われており、所々には氷の柱が形成されていた。天井からも、鋭く伸びた氷柱(つらら)が今にも落ちてきそうな状態で並んでいる。

 何よりも俺の目を引いたのは、あちこちに出来た氷像だ。これがまた良く出来ていて、まるで生きた人間をそのまま氷付けにしたように、氷像が何か怪物から逃げようとしている様な切羽詰った表情をしているのだ。

いいや違う。これは氷像なんかじゃない……運動部の生徒達だ。それも、皆男子生徒ばかり。何故だ? 運動部には女子も存在する。それなのに、女子の姿が一人もないなんて。


「響史……あれ」


 霞さんが俺の肩を叩いてどこかを指差す。そちらを見やれば、そこには体操服姿の運動部女子生徒が、氷の鎖で拘束されている姿があった。


「こ、これは……」


「雹の仕業やな……」


「あいつ、誰にも危害を加えるつもりはないって……」


「せやな……せやけど、ハックはこうも言うとったで……仇なす者には容赦せぇへんってな……もしかすると、この男子生徒達はハックに手ぇ出してしもたんかもな……」


 なるほど、女子生徒を守るために男子生徒が身代わりに……。でも、結局それは雹を怒らせただけで、余計に女子生徒に被害が及んだって事か。男子生徒の頑張りが浮かばれないな。


「雹、どこだ! いるんだろ? 出て来い!!」


 俺は奥歯をギリッと噛み締め、大声で叫んだ。すると、どこからともなく雹の声が響いてきた。


『ハハハ、よく来たね……神童響史。それに、かすみんにそーきゅん? 悪いけど、ぼくは今忙しいんだ。相手をしてほしければ、ぼくを探してごらん? まぁ、見つかれば……の話だけどね』


 完全に俺達を挑発してやがるな。


「ナメられたものだ。しかし、雹の気配はどこからも感じられない。いや……むしろそこら中に雹の魔力が充満している」


「どういう事だ?」


「恐らく――」


 俺の問いに霄が答えかけたその時、銃声が聞こえた。そちらを見やれば、霞さんが俺へ向かって銃を構えている姿があった。一瞬焦る俺だったが、その理由はすぐに知れた。誰かが倒れる音がして視線を向けると、俺の背後から攻撃しかけていた雹の分身体が銃弾を撃ち込まれて死んでいたのだ。


「た、助かりました……霞さん」


「ふぅっ! あんま油断すんやないで、響史?」


「は、はい!」


 両手に二丁拳銃を構えた霞さんは、その銃口に息を吹きかけてそう言った。なんとも頼もしい。これが護衛役――いや、水連寺一族の次女の実力の、ほんの一部なのだろう。


「ハック、分身体ばっかよこしてどういうつもりや? 分身体なら、それなりに強いのよこしぃや!!」


「ちょ、ちょっと霞さん! 敵を煽るのは……」


「かまへんかまへん! ウチにとっちゃ、こんな分身体、ちっぽけなアリんこにしか感じられへんしな!」


 あ、アリんこって……。


『くふふ……なら、これならどうだい?』


 雹の不気味な声が聞こえたかと思うと、氷の鎖で拘束されていた女子部員の内、数人が動き出した。その目は虚ろで、目に光が灯っていない。間違いない、あれは操られている。しかも、その手には氷を鋭く尖らせた即席の剣が握られている。


『これでどうかな?』


「チィっ! きったないマネしよるわ! そんな弟に育てた覚えあらへんで!!」


『くふふ、そうかな? ぼくは少なくとも有効に使わせてもらうよ? それに、この子達はぼくの捜し求めてる人じゃないし……』


 そう言うと、霞さんに向かって四、五人の女子部員が一気に襲い掛かった。


「霞さんッ!!」


「姉者!!」


 俺と霄が叫ぶ。霞さんは女子部員達の体で安否が確認できない。


「ちょ、ちょっとちょっと! 何なんですかこの状況……明らかに私、戦力外なんですけど……」

 

竹谷先輩が眉尻を下げて弱弱しい声をあげる。


「竹谷先輩は、どこかに隠れていてください!」


「か、隠れてろって言われても……」


「なら、捕らわれてる女子部員を助けられないか、見てきてください!」


「わ、分かりました」


 それくらいなら自分にも出来ると思えたのだろう。竹谷先輩は、少し勇気づけられたのか、やや大きく頷いてまだ捕らわれている女子部員達の下へと駆けた。


「うらぁ!!」


 と、そこで一際大きな声が聞こえた。見れば、女子部員達が一気に四方八方へ飛ばされている光景が。その中心には、霞さんがいた。どうやら、無事だったようだ。


「あんま調子乗ってんやないでぇ!!」


 そう言うと、今まで見た事のない、獲物を射殺すような眼差しで霞さんが引き金を引いた。同時、その銃口から銃弾が発射され、起き上がりかけていた女子部員達の腹部に命中した。

再び後方に吹き飛ばされる女子部員達。


「か、霞さん! 一般人にそれはさすがに……」


「安心せぇ……ダメージは与えへん。軽いショック状態になるだけや」


 それを聞いて、俺は安堵した。さすがに、操られているだけの女子部員達に怪我させる訳にはいかないしな。


「雹……お前は、女体の神秘のためにどれだけの犠牲を出すつもりだ」


『言ったでしょ? ぼくの邪魔をするならばそれ相応の覚悟はしてもらうつもりだ……血祭りにあげるって言ったじゃない。何者にもぼくの邪魔は出来ない。ぼくは何が何でも女体の神秘を見つける』


 一体、何がそれほどまでに雹を突き動かすんだ? そんなに女体の神秘を知りたいのか? 

 と、そこで俺は改めて考えた。やつはどうして体育館を最初に占拠したんだ? 運動部は他にもある。中には走りこみをしていて廊下にもいるはずだ。確かに、体育館にはバレーボール部や、バスケットボール部、他にもいくらか運動部があって、部活の種類は豊富だ。その分、いろんな女子を見て回れるだろうが、そんな理由であいつが最初にここを占拠するか?

確か、運動館は、筋力館と体育館と武道館と……あ、プール館!! 何で俺はこれにすぐ気付かなかったんだ!! これでようやく納得できた! 雹が最初に運動館を占拠した理由は、プール館を……いや、プール館の水を手に入れるためだったんだ! 水連寺一族は雨を司る……つまり、水があればさらにその力は強くなる。だから……まずい、そうなるとプール館にいる水泳部が!


「霞さん! この場は任せてもいいですか!」


「くっ! どないしたんや、響史!」


 女子部員の攻撃を受け止めながら、霞さんが俺に問う。


「雹の居場所が分かったんです! あいつは、プール館……この運動館の一階にいます!!」


「なんやて!? せやったら、ウチも行くで!!」


「でも、この生徒達は!?」


「操られて少しは動きが様になってはおるけど、それでもウチには勝てへん! 例え束になってかかってもな!!」


 そう言うと、霞さんが二丁拳銃の銃口からロケットの様に炎を噴射させ、その勢いで片足を軸に回転した。回転攻撃は飛び掛ってきた女子部員達の体に直撃し、彼女達を再び辺りに吹き飛ばした。

これが決め手となったのか、女子部員達はそれ以上起き上がってこようとはしなかった。


「最初から気絶させたったら良かったみたいやな……。ホンマ、この子ん達には悪い事してもうたわ……」


「そうですね……こういう被害をこれ以上増やさないためにも、早く雹を捕まえましょう!」


「せやな!」


「霄、そっちは終わったか!?」


「ああ、どうにかな」


 霄は、竹谷先輩と一緒に、捕らわれていた女子生徒達を解放していた。問題は氷付けになった男子生徒だ。氷を溶かそうにも炎がない。さすがに、バーナーなんて持ってないし……。自然に氷が溶けるのを待つしかない。




 俺達は、階段を慎重に降りて一階へと向かった。というのも、階段が凍っていて滑るのだ。本当は早く駆け下りたい所だが、滑って頭を打ちでもしたら大変だ。

どうにか一階まで降り立った俺たちは、プール館の扉に手をかけた。


「冷たッ!?」


 まるで氷そのものに触れたかのような冷たさ。この先がプール館だ。取っ手がこんなに冷たいなんて、この先にいる水泳部の生徒が心配だ。それに、彼らは水泳部……つまり、水着を着用しているのだ。その状態で氷の空間にいたら、凍え死んでしまうに違いない。早く助けないと!


「霄、頼めるか!?」


「心得た! はぁっ!!」


 バキンッ!

凍りついた扉に剣を振り下ろし、どうにか扉が開く。瞬間、凄まじい冷気が俺達に襲い掛かった。


「さっぶっ!?」


「な、何なんですかこの寒さは!?」


 俺はまだ何枚か重ね着をしているからいい。しかし、制服姿で俺のコート一枚しか羽織っていない竹谷先輩は別だ。歯をガチガチ鳴らして腕をさすっている。


「大丈夫ですか、竹谷先輩?」


「だ、だだだ大丈夫じゃ、ああ、ありませんよ! ふぁ、ふぁっくしゅん! もうっ! 何で私がこんな目に……」


 とても寒そうだ。くそ、ここまで厄介な護衛役だなんて……。麗魅があまり危険度は高くないって言うから、完全に油断してたぜ。


「は、雹! いるんだろ!?」


 先陣を切ってプール館に乗り込む俺。後から霞さん達もやってくる。目の前には、完全に凍りついてスケートリンクと化しているプールがある。しかも、そのあちこちに障害物のように出っ張っている何か……良く見るとそれは、水泳帽を被った男子生徒だった。


「ひ、酷い……」


 口元に手を当ててショックを受けている竹谷先輩。俺も下唇を噛み締め拳を強く握った。

また、雹の理不尽な制裁が下ったのか……。

 周囲を見渡すと、やはり、氷の鎖で吊り上げられている女子部員がいた。しかも、さっきとは違って今度は水着姿……こんな冷凍庫みたいな場所でこの格好は、あまりにも鬼畜すぎる。身体中真っ青になっていて、凍傷を引き起こしていても無理はない。その唇もすっかり青紫色に変化していた。

 彼女達の膝下は、地面から伸びた氷で固められていて、動ける状態にない。この様子だと、体育館の時みたいに襲い掛かってくる事はなさそうだ。


「雹ッ! いるんだろ!? かくれんぼは終わりだッ!!」


「くふふ……別にかくれんぼをしてるつもりはないんだけどね?」


 そう言って声が聞こえてきた。俺の後ろからだ。

俺はサッと振り向いて鋭い視線を向けた。


「やだなぁ、そんなに睨まないでよ」


「あ、あいつです! 私を襲ったの!!」


 雹の姿を見て、竹谷先輩が指を指す。


「やっぱりお前の仕業か……」


「襲ったなんてしっけーだなぁ。ぼくはただ、検査をしただけさ、女体の神秘のね。ま、遠く及ばなかったけど」


 やれやれと肩を竦める雹。その態度と言い分に、プルプルと体を震わせて竹谷先輩が口を開く。


「何ででしょう、すっごく失礼ですあの子」


「いや、ホントに失礼な発言しましたから」


 恐らく、あの震えは寒さではなく怒りによるものだろう。


「何でこんな真似……くッ、今すぐ生徒を解放しろ!!」


「やっだねぇ~。ぼくは女体の神秘を探す。そのためには、彼らに移動されるのは面倒なんだよ。動かなくしておいた方がやりやすいんだ」


「何でそこまで女体の神秘を求める」


「……全ては飢えさ。愛情……そのもののね」


「愛情の飢え?」


「そう、ぼくはいつ産まれた?」


「確か、次男で、一番最後に……」


 雹の問いに、俺はゆっくりと正確に答える。


「そうだ。そして、ぼくは兄弟の中で一番皆と遊べていないんだ。ぼくは遊び足りないんだよ。そして何よりも、母の愛……家族の愛を受けていないんだ。酷いと思わないかい? しずしずは、みぃちゃんやかすみん達とたくさん遊んでるのに。ぼくはたったの数年ぽっち。やだよ、そんなの……だから、ぼくはもっと愛情を求めた。でも、ぼくには愛情ってのが何なのか分からない。そこで思ったんだ。ぼくもしずしずみたいにみぃちゃん達と遊びたい。けど、みぃちゃん達は忙しい。だから、ぼくなりに考えたんだ。家族以外で遊び相手を見つければいい。そうして考えて考えて行き着いたんだ……女体の神秘に!」


 ……何でだよッ!!

激しく俺はモノローグでツッコんだ。いやだってそうだろ! 家族の愛を受けていない、母親の愛が足りないからって、それがどう作用したら女体の神秘を求める事になるんだ!

というわけで、今回も新キャラが登場です。生徒会メンバーの一人で風紀委員長の竹谷凪さん。イラストまだ用意してないんですが、三つ編みを肩から垂らして、笹の葉の髪飾りをしてます。また、同じ風紀委員長の松本くんをらんくんと呼んでます。

引き続き三部に続きます。

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