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魔界の少女  作者: YossiDragon
第六章:七月~八月 夏休み編
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第六十二話「王様ゲーム」・6

「えっと、この紙の通りにやればいいんだよね?」


「せや、姫さまはこの通りにやればええんや」


 やけに悪役染みた笑みを浮かべて、霞さんが言う。瑠璃はこくり頷いて紙の内容を読み始めた。その間、俺は麗魅の隣で四つんばいになっていた。はぁ、こんな惨めな格好、恥ずかしすぎる。でも、さっきまで瑠璃達もそんな思いだったんだよな。しかも、王族の立場上その気持ちは何倍も大きかったはずだ。だが、麗魅はもっと大変だよな。連続だからぶっ続けだし。


「なに、こっち見ないでよ変態!」


「なッ、あれは紙に書かれてたからで!」


「ふんっ、どうだかね。あんた、結構ノリノリでやってなかった?」


 うぐッ、痛いとこ突いてきやがる。確かに麗魅の言っている事はあながち間違いでもない。でもあれはサディスティックな気持ちよりも悪戯心みたいな感じだったような……。

と、そんな事を考えていると瑠璃が声をあげた。


「こらぁー! お、お前たちのせいで今日のおれの取り分が減っちまったじゃないかー! ゆ、許さないぞー? おしおきしてやるぅ!」


 おい、こんな可愛い言い方するご主人様がいるかよ。


「お、お姉さま……かわいい」


「え?」


「んなっ!? ち、違うわよ!? こ、これは……その、ち、違うんだから!! あ、あくまで尊敬だからっ!!」


「いや、何も言ってないけど」


「くっ!? 覚えときなさいよ?」


 いかん、怒らせたか? でも、さすがに今のは理不尽すぎるだろ。


「ええと、どうすればいいんだっけ?」


 まるでコントのネタを確認するかのように紙を一瞥。そして、確認し終えるとうんうんと頷いてもう一度口を開いた。


「おいお前達、互いに抱き合え!」


「はぁ!?」


 人差し指をビッとこちらに突きつけて瑠璃がそう言い放つ。


「ちょ、おい瑠璃それは……」


「瑠璃じゃなくてご主人さまでしょーが!」


 叱る時も全然怖くねぇな。


「ご、ご主人様……さすがに抱き合うのは」


「そうよ! 何でこんな変態なんかと」


 俺の言葉に麗魅も便乗する。てか、余程抱き合いたくないんだな。ちょっと傷つく。


「変態だからこそ、抱き合う事が罰になるんでしょ? ほら、早く!」


 おい、こいつ天然のくせにさりげなくディスってきたぞ? もう少し言い方ってもんがあるだろ!


「いやよ、変態なんかと抱き合いたくないっ!!」


「変態変態言うんじゃねぇ!!」


「お兄ちゃん、変態なの?」


 ついに外野にいた霖までもが俺に対して疑問を持ち出してきたぞ。どうしてくれんだよ!! いたいけな小学生になんて事思わせてんだ! てか、今思ったけど霖や雪に対してこれらのやり取りはいろいろとマズイんじゃないか?

そう思ってふと霞さんに目配せするが、霞さんはなんともないという顔でにんまり笑顔だ。あ、この人続ける気だわ。


「いや、断じて違うからな?」


「ほらとっとと抱き合う!」


「わ、分かったわよ」


 麗魅は観念したらしく、嘆息してこちらを見た。あれ、なんか俺を見る目がやけに冷たくないか?


「ほら、早くしなさいよゴミ」


 うわ、ついに人間扱いしなくなった。


「へいへい」


 俺は頭をかいて麗魅に一歩近づくと、手を広げて抱擁するように抱き寄せた。


「~~っ!?」


 あれ、反応がない。俺と麗魅ではやや身長差がある。麗魅の頭部がちょうど俺の鎖骨部分に来るくらいだ。なので、頭を下げると麗魅の旋毛(つむじ)が見える。今は少し体を離したので顔の表情も伺える。

 で、見てみると、麗魅の顔がやけに赤らんでいる。熱でもあるのか? そう思い、俺は尋ねてみる。


「大丈夫か、顔が赤いけど?」


「へ、平気よ。ちょっと油断しただけ……。けど、あんたって結構、体鍛えてるのね。意外だったわ……」


 まぁ、見た目じゃあんまり分からないもんな。


「剣道とかやってたからな。一応今も軽く素振りをたまにしてるし」


「そ、そうなんだ……ふぅん」


 なんとなく納得したのか、麗魅はそれ以上の質問はしてこなかった。が、少し変わったところがあるとすれば、向こうからも俺の背中に手を回して抱きついてきた事だろうか? まるで、仕方なくはあるけど認めてあげたみたいな。

 とにもかくにも、十分が経過し最後の順番が回ってきた。次はいよいよ麗魅の番だ。さて、どんな命令が来るのか……。


「四つんばいの方法が弱いのよっ!! この家畜風情が、なにを人様と同じ服なんか着てるのよ!! 即効脱ぎ捨てて裸になりなさい!!」


 おい、ノリノリなんてレベルじゃねぇぞ? これは、完璧な女王様だ。


「いや、さすがに服は脱げないだろ……俺はまだしも、特に瑠璃は」


 もちろん裸になるつもりなんてさらさらない。


「うん、ちょっと」


 さしもの瑠璃もさすがにこればかりは恥ずかしいようだ。当たり前だ、これで恥ずかしくなかったら、姫様以前に女の子失格だろ。


「しょうがないわね、じゃあ下だけは勘弁してあげるわ」


 長い髪の毛を手で靡かせて麗魅が言う。おい、マジか。


「上だけなら……なんとか」


 冗談はよしてくれ、ホントに脱ぐつもりか?


「下着は勘弁してくれよ!」


 俺がじゃない、瑠璃の事を考慮してだ。上を脱ぐとしても女の子である瑠璃はダメだろ。


「し、しょうがないわね。ったく、その分他の命令はやってもらうからね?」


 すごい女王様になりきってる。いや、最早女王自身か。


「分かった」


 これで瑠璃は下着を着けていても大丈夫になった。ふぅ、下着姿ってのも俺的に危ない気がするけど、なるべく見ないようにすればいい訳だし、大丈夫……だろう。

 夏場ということもあって俺は薄着だったので、あっという間に上半身裸になり、瑠璃待ちになる。瑠璃は洋服を脱ぎながら「うんしょ」とかけ声をあげた。

と、その時だ、緊急事態が起きた。


「んなッ!? る、瑠璃! お前、ブラはどうした!?」


「え? あー、あれ? あれ結構窮屈だから嫌いなんだよねー。それに、夏場だと蒸れてやだし……」


 な、何という事だ。早めに気づいてよかった。だって、本来なら見えるはずがない下乳が見えたんだもん。そりゃびっくりするわ。麗魅も呆気を取られて放心状態。

が、すぐに冷静になって俺をぶん殴りにきた。まぁ、もちろんちゃんとかわしたさ。何で俺が殴られにゃならんのだ。


「はぁ、はぁ……服を脱ぐのはやめにしましょう」


 麗魅が息切れしながらそう言った。何で恥ずかしい目に遭ったはずの瑠璃よりも、麗魅の方が顔が赤いんだよ。


「そうだな」


 さすがにこればかりは賛同せずにはいられず、俺は麗魅の考えに賛同して上着を着た。


「さぁ、さっきのお返しよ! この哀れで醜い家畜共! 豚らしく鳴いて抱き合いなさいっ!!」


 ホント命令内容が鬼畜だな。俺は半ば諦念しながら瑠璃の方を向いた。豚……ねぇ。まぁ、確かに太っているわけじゃないけど、肉付きはやばいもんな。巨乳な上にお尻も大きくて……って、何を見てんだ俺は!

 と、見ていると――。


「ぶっひぃぃぃぃ♪」


 と嬉しそうに豚の鳴きマネをして瑠璃が俺に抱きついてきた。豊満な双丘が俺の胸板でむにゅぅんと潰れる。

 ぶばっ、なんという破壊力だ! しかも……これ、ノーブラって事は……布一枚越しってこと、だよな? おい、マジかよ……。命令されてるはずなのに、こんないい思いしていいのか? てか、瑠璃はもう少し警戒心を抱けよ! 無防備にもほどがあるだろ!?


「お、おい瑠璃?」


「もぅ、響史……。麗魅の命令聞いてた? ちゃんと豚の鳴きまねしなきゃ」


 そう言われ、俺は少し戸惑いつつも豚の鳴き真似をする事にした。


「ぶ、ぶひぃ」


「うん、ぶひぶひ♪」


 ちょっとおおおおおおおおおおおお!? な、何なのこの可愛さ!? 何で霧能先輩が言った時はキモかったのに、こいつが言うとこんなに違うんだよ! 見た目か? それとも言い方か!? いかん、破壊力が強すぎる。俺のライフはもうゼロところかマイナスだよッ!! 抉れちゃってるよ!!


「お顔真っ赤だよ? だいじょぶ、響史?」


 そう言って額を俺の額にくっつけてくる。ぬおぉぉぉぉぉぉ、や、やめろぉぉぉぉ! やめてくれぇえええええ!! これ以上抉るなぁああああああ!?


「す、ストップストォォップっ!! やめて、やめなさいよ!! そ、そんなの私は命令してないわよ!? な、何でよ! もっと嫌がってほしいのに……いちゃいちゃされるなんて、想定外だわ」


 女王様は不満そうだった。そりゃそうだろう。俺だって予想だにしていなかったさ。まさか、天然ちゃんがここまでの破壊力を有していようとは……。思い知らされた。


「はい、終了や。三十分経ったで、三人ともお疲れ様。ほな、次やろか」


 そう言って霞さんは満足そうに俺達を解放してくれた。はぁ、何だか今回のゲームですんごく疲れた。そろそろ終わりでもいいだろう。

と、その時だった。


ガチャ。


 玄関扉の開く音。誰か帰ってきたのか? ……って、一人しかいないか。

帰ってくる人物が何者なのか分かっている俺は、その人物がリビングルームに入ると同時に声をあげる。


「お帰り、姉ちゃん」


「あ、うん。あれ、皆して何やってるの?」


 片手に買い物袋を提げて唯姉ちゃんが尋ねる。


「王様ゲームだよ。割り箸がちょっとあまってたからさ」


「ふぅん、面白そうな事やってんじゃん。お姉ちゃんも混ぜてくんない?」


 こういうゲームは姉ちゃん好きだからな。


「別にいいよ。皆もいいよな?」


「ああ、別段構わん。それに、人数が減って面白みに欠けていたからな」


 若干一名はお前が欠けさせたんだけどな。

半眼の眼差しで内心そうツッコミつつ、俺は姉ちゃんを空いている席に座らせた。


「じゃあ、せーので引いてくれよ?」


 俺の合図で皆が箸を引く。


「王様だーれだ?」


「お、やった! 私王様!」


 そう言って声をあげると同時、王様印入りの箸を掲げたのは姉ちゃんだった。

飛び入り参加した上に初っ端王様かよ!


「じゃ、命令させてもらおっかなー? そうね……」


 顎に人差し指をあてがい、しばし思案。そして閃いたと言わんばかりに顔を明るくし、口を開く。


「一番は風呂当番、二番は六番に何かしらの罰ゲーム。効果は明日いっぱいね? 三番、四番は洗濯物を畳んで。五番と七番は明日の日付になるまで手を繋いでおくこと。八番は明日一日大事なものに触れないこと。九番と十番はサクッキーゲームね」


 そう言って姉ちゃんが淡々と番号と命令内容を口にした。


「あ、大事なコト忘れてた。六番は、明日私と買い物に付き合ってもらうわね。荷物持ちってコトで」


 いかん、六番のやつになんか付け足されたぞ? てか、完全にパシリじゃね。かわいそうだな、六番。

 あ、そういや俺、自分の番号確認してなかった。確認する前に姉ちゃんが王様発言したから忘れてたんだ。えーと、俺の番号は…………はは、冗談だろ?

 俺の手に握られている箸に書かれた番号は、六番だった。

冗談キツいぜ。冗談も程々にしないとな。

そう自分に言い聞かせ、もう一度俺は番号を確認した。

やっぱり六番だ。んなワケないって! ほら、逆にしたら九番だもの。うん、これはきっと九番なんだ、そうに違いない!


「ん? どうしたの響史? 六番でしょ? ふふっ、もちろん知ってるよ?」


 ちょっと待て、露さんもそうだったけど、何で皆して俺の番号言い当ててくんの!? どういうメカニズムだよ!!

俺は異議申し立てしたくて仕方ない衝動に駆られた。


「とりあえず、皆自分の番号が何なのかを答えてくれる?」


 唯姉ちゃんが言う。俺達は、互いに目配せすると一番を引いた人物から口を開いた。


「こんな時に一番かよ」


「二番は私ね」


「三番は私ぃ~♪」


「はぁ、私は四番か」


「ウチは五番やね」


「俺……六番」


「私は……七番です」


「八番は私だな」


「ボク、九番」


「私は十番です」


 一から順に、霙、ルナー、瑠璃、麗魅、霞さん、俺、零、霄、雪、霖が番号を口にする。


「じゃ、命令通りに実行して」


 満面の笑みを浮かべつつ、さりげなくとんでも要求をしてくる姉ちゃんだが、王様の命令は絶対なのがルールなので、俺達は仕方なしに命令をこなす事にした。


「けっ、んじゃ……風呂洗ってくる!」


 少しムスッとしながら霙が風呂場へ向かう。


「えと、私たちは洗濯物を畳めばいいんだよね?」


「ていうか、これって完全にパシリに使われてない?」


 瑠璃がこの場にいる誰かに確認を取り、麗魅が命令内容に疑問を抱く。しかし、姉ちゃんもなかなか鬼畜な命令をしてくるもんだ。


「えと、罰ゲーム……だったわね」


「おい、マジでやるのか?」


「何言ってるの、王様からの命令なんだからしょうがないでしょ?」


 そうは言いつつも、ルナーは心底嬉しそうだ。そりゃそうだろう、こいつにとってマイナス的な事は何一つないからな。


「ん~。そうねぇ、罰ゲーム……あっ」


 罰ゲームというワードで何かを思い出したのか、ルナーがこちらに視線を向けるとニヤッと明らかに悪質な笑みを浮かべる。

 こ、こいつ……一体何を企んでやがる!?


「な、何をするつもりだ?」


「ねぇ、唯。罰ゲームって何でもいいのよね?」


「ん? ええ、まぁね」


 何という事だ、いつもなら恐れて名を呼ぶ事さえ(はばか)っている

ルナーが、姉ちゃんに質問だと? こいつは嫌な予感がする。俺の第六感がそう告げている。いや待て、第六感って女性の方が発達してるだのどうの言ってたよな? それってどういう……。

 と、その時だった。


「あれ、ルナーのやつどこに消えやがった!?」


 俺が考え事をしている間に、何をしでかすか分かったもんじゃない人物の行方を見失ってしまった。こいつはますますマズイ! そう思っていると。


カチャ。


 何か硬い物の先端部が俺の背中に突きつけられた。大きさ的にそれは小型の銃のようで、同時に俺はある一つの可能性に至った。


「なぁ、お前ルナーだよな?」


 俺の背後を取った人物に対しそう問うと、不気味な含み笑いが返ってきた。


「んっふっふっふ、ええその通りよ。あんたはもう既に気づいてるみたいね……。これから自分が何をされるのか」


「ああ、大体見当はついてる。お前が嬉々として俺に迫るって言ったら、一つしかないからな」


 そう言ってサッと俺は相手の方に体を向けた。


「くらいなさいっ!!」


「んなッ!?」


 しまった! 背を見せようが腹を見せようが、どちらにせよ俺の体に当たったらアウトじゃねぇか!!

 俺は酷い倦怠感に苛まれた後、頭痛に見舞われた。にしても、この副作用の改善に取り組んでくれよ! これで二、三回目になる女体化だが、はっきり言ってどうもこの副作用には慣れない。いや、慣れたらそれこそ危ない気がするが。


「ふっふっふ、成功ね♪」


 くるくるとビーム銃を回転させ、銃口からあがる煙を吹くマネなんかして、格好つけるルナー。偉くご機嫌だ。だが敢えて言おう、ビーム銃のために銃口から煙なんかあがりはしない。




目が覚めると、体がやけに軽い感覚を感じた。この感覚は以前にも体感した事がある。女体化した時に感じる感覚と同等の物だ。即ち俺は――。


「お、お兄ちゃん」


「やっぱり、すごくかわいい」


 霖がオロオロし、雪が乏しい表情ではあるものの、俺の姿を賞賛してくれる。くそ、恥ずかしいッ!!


「もう、どうして女体化しなきゃいけないの!?」


 俺は異議申し立てをした。すると、ルナーがさも当然の様に説明してきた。


「命令の内容はこう。二番の人が六番に罰ゲームを与えるコト。その結果がこれよ」


「これのどこが罰ゲームなのよ!」


 いまいち納得がいかない俺は、ルナーに向かって声を荒げる。


「あら罰ゲームじゃないの? それともご褒美にでも感じた? まぁ、何回か変化してるワケだし、そろそろ耐性がついて逆にそっち系に目覚めちゃう気がしないでもないけど」


「そんな事になるわけないでしょ!?」


「ふふっ、相変わらず口調変化の機能は絶好調のようね。ホント、どうしてこの発明品だけは成功してるのかしら? その辺も今度、じっくり調査する必要があるわね。主に響子の体を使いながら……♪」


 ん? おい待て、今凄く物騒なセリフが聞こえたぞ!?


「ちょっと、何で発明品の調査に私の体がいるのよ!?」


「当たり前じゃない! その体は私の発明品で変化してるんだから」


 そうだった……でも、こればかりは。


「それに、あんた私に借りがあるコトをお忘れ?」


「あっ……」


 いかん、忘れてしまっていた。いや、別に記憶障害が原因ではない。ただ単純に忘れてしまっていたのだ。


「くそ、納得がいかんぞ!」


 俺が不満の声をあげる一方で、別の方でも反対の声が上がっていた。しかし、俺の事ではないらしい。


「なぜ、私が斬空刀を手放さなければならん!!」


「し、仕方ありませんよお姉様。王様の命令では、八番の人物は明日一日大事な物に触れてはならない……ですから。必然的に、お姉様が残空刀に触れる事は出来ないかと」


 零が霞さんと手を繋いだ状態で、尊敬する霄に説明する。


「くっ! 剣が手元にないと落ち着かんのだ! どうすればいい!? 一種の禁断症状を起こすかもしれん!!」


 いやいや、そこまで行くか? いやでも、霄ならありえそうで怖いな。


「むっ? 響史……お前、また女に化けたのか? あまりやりすぎるとやめれなくなるぞ? 癖というのは恐ろしい物だ。失って初めてその脅威に気づく」


 まぁ、確かにそうかもしれないけど……。霄は腕を組んで俺にそう忠告する。


「そうね、注意しとくわ」


 コクリ頷き、俺は答えた。


「ふぅ、洗濯物多くて大変だよぅ~」


「お姉さま、口だけじゃなくて手も動かして! 全然終わらないじゃない!」


 瑠璃と麗魅の双子ペアは、命令によって洗濯物を畳む事になっているが、なにぶんこの家の現在の人数は相当なので、その分洗濯物の量も増える事になる。そりゃあ、畳むのも一苦労だな。


「唯さん、これって……こうでいいの?」


「そうそう、端っこを口で咥えて、反対側を雪ちゃんが咥えるの」


「これ、けっこうやらしい……」


「うぅ、恥ずかしいよぅ」


 ふと会話のする方へ顔を向ければ、そこには霖と雪が互いに体を近づけ、指と指を絡ませるようにして繋ぎ、サクッキーの端と端をそれぞれ口で咥えている。幼い二人がそんな格好をしていると、とても大人びて見えてしまう。


ポリ、ポリ……。


 二人が少しずつサクッキーを食べていく。ちなみにサクッキーというのは、ホワイトクリームとチョコクリームを、サクッとした棒状の物に斜めのストライプ状にコーティングしたお菓子である。細くてサクッとしている事から、サクッキーなどと呼ばれている。

 その後も、順調にサクッキーを両端から食べ進めていく霖と雪。互いの表情はいつになくトロンとしていて、なんとも艶かしい。鼻息も少し荒いのか、少し近場にいる俺でさえ聞き取れる。

 興奮……してるのか? いや、恥ずかしいというのが正しいな。顔を真っ赤にして、今にも顔を離したい衝動に駆られている事だろう。だが、それだと敗北してしまう。けど、負けてもこの場合何かペナルティがあるわけじゃなさそうだよな。やってる事自体に意味があるっぽいし。


「もぐ……もぐ」


「ぱく……ぱく……」


 互いの顔が近づき、唇と唇が近づいていくにつれ、食べる速度が落ちていく。そして、残り一センチというところで両者は止まってしまった。


「おや、どうしたのかな二人とも? 大丈夫、女の子同士だし、ノーカンノーカン♪」


「そ、そうですけど……」


「や、やっぱりこういうのは……」


 口に咥えたままで少し喋りにくそうにしつつ、二人は互いの気持ちを吐露する。

 姉ちゃんも、まだ幼い二人になかなか際どい要求をするものだ。

 結局、サクッキーゲームは互いにサクッキーを折ってしまったため、ドローで終了した。

その後、俺は既に命令されていた霖との晩御飯作りを開始した。いつもしているエプロン姿をルナーに鏡で見せられて、男の時と女体化した時で、これほどまでに違いがあるのかと分かった。

この罰ゲームの効果は明日いっぱいという事なので、今晩はこの格好で過ごす事になるのか……。こいつはヤバイな。

何がヤバイって、一応自身の体とはいえ、異性の体なんだ。どう扱っていいかよく分からない。だって、明日いっぱいまで女体化のままという事は、必然的に行わなければならない事がある。用を足す事だ。以前にもこの問題に遭遇して大変だった記憶がある。

しかも、まだ風呂に入っていないので、この状態で風呂に入る事になるわけだ。もう、どうすりゃいいんだ……。

 結局、俺はその晩、暑さと自身の体に興奮してなかなか寝付けなかったのだった……。

というわけで、六部です。いやはや、瑠璃にご主人様役やらせると可愛くなってしまいました。思わず妹の麗魅も可愛い発言してしまうほどです。

そして、帰宅した姉ちゃんが飛び入り参加の初っ端王様! この人引きがすごい!で、六番を引いてしまった響史は、二番であるルナーから罰ゲームを受けることに。そして、ルナーで罰ゲームといえばこれしかない!

そう、女体化です。これで三回目くらいですかね? ほんと、響子ちゃん需要ありすぎです。さらに、霄は残空刀を失う事に対して禁断症状を引き起こしそうな予感ありまくり! どんだけ刀大事なんですかね? まるで小さい子がお人形をずっと肌身離さず持っているかのようです。

てなわけで次回予告、夏休み編に入り皆楽しい休日をすごしたり、部活に励んだりするわけですが、次回は女体化した響史の多忙な一日でお送りします。とりあえず、唯の買い物の付き添いというわけでそれもやるつもりです。

次回更新予定は、六月になっちゃいますかね? 多分、遅くなると思います。

もう一つの方の更新もそろそろやらないといけないので。それではまた次回。

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