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魔界の少女  作者: YossiDragon
第六章:七月~八月 夏休み編
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第六十二話「王様ゲーム」・3

「それでは、始めてください」


「でも……」


「何を恐れている! 男は度胸であろう!! ここで怖気づいてどうする!!」


「いや、ツッコむにはそれなりのボケが必要じゃないか?」


 どうにか時間稼ぎをしようとするが、どうも回避しきれない。てか、その目力と気迫をやめてくれないだろうか? 恐ぇんだよ!


「せやなー。普通やったらボケいるんやけど、霄にはそないなネタあらへんやろし……堪忍したってや?」


 自分は関係ないと言わんばかりにぐだ~っとしている霞さんが、そう俺に告げてくるが、いやいやそれムリじゃね?


「響史、どうした! ネタだのボケだのよく分からんが、早く始めろ! さもないと――」


「わ、分かった分かった! 分かったから!!」


 俺は手を前に突き出してツッコミの準備をする。何故そんなに焦るのか、理由なんて単純さ。だってこいつ、いきなり斬空刀の鍔に親指あてがうんだもん。物騒すぎんだろ!


「はぁ……えと、じゃあ始めるぞ?」


「うむ、どこからでもかかってこい!」


 何でこう、勝負してる感じなの? どうしてそんなにwelcomeなの? 訳分かんないんだけど。ああもぅ、自棄(やけ)だ!


「な、なんでやねぇえええええええええんッ!!」


 俺は頑張った、頑張ったんだ。例えそれが、霄の頭部に思い切りチョップをキメてしまったとしても、仕方ないんだ。だけど、その直後俺は意識を失った。

 よく分からんが、意識が途絶える寸前、蒼白の闘気と真紅の殺気を纏った般若が見えた気がした。この世の終わりかと思った。


「……あれ? 俺、どうして眠ってたんだ?」


「気にするな、ツッコミは終わりだ」


「え? でも、俺ツッコんだ覚えないんだけど」


 定まらない曖昧な記憶で、俺はそんな事を口走った。瞬間、霄が俺の口元に何かを突きつける。


「もしそれ以上お喋りするのであれば、その口腔に抜刀した斬空刀を突っ込むぞ?」


「スミマセンデシタ」


 俺とて命は惜しい。両手をあげて降参のポーズを取り、ロボットのような抑揚のない言葉で謝罪した。とにかく、これで許してもらえるはず。


「……喋ったな?」


 し、しまったぁああああああああああああ!!!?


「……(ブルブルブル)」


 激しく首を左右に振り、否定の意を伝える。


「霄、そのへんにしときぃや。それ以上はさすがの響史も失神してまうで?」


「……ちっ、姉上がそう言うのであれば仕方あるまい」


 今、完全に舌打ちしたよな? 何、お前は俺を殺したいの!?


「霞さん、ありがとうございます」


「ええって。それより、早いとこ先行こか。まだうちが王様なってへんからな!」


 歯に挟んでいた爪楊枝をゴミ箱に捨て、気合を込めんとばかりに腕まくりする霞さん。でも、袖既に捲くってますけど?

 というツッコミはさておき、俺は何度目かの準備を整える。


「せーの」


 この言葉も何度言っただろう? さて、次なる王様は? ふと自分が引いた箸を見ると、そこには三という数字が書かれていた。残念、王様ではなかったようだ。

 と、その時、不気味な含み笑いが聞こえてきた。


「んっふっふっふ、ついに……ついにこの私の時代がやってきたようね!」


 そう言って腕組しその場に立ち上がったのは、露さんだった。

ま、まさか……よりにもよって、そんな事って!?


「露さん、もしかして」


「ええ。お察しの通り、次の王様はこの私よ! お~っほっほっほ!」


 な、なんて事だ!

いつになくテンションの高い露さん。挙句にはお嬢様笑いなんかしてる。


「で、命令は?」


 とんでもない要求をしそうで、俺は警戒心を強めながら尋ねる。


「う~ん、そうねー。じゃあ、一、二番、四~十二――」


「ストップ!!」


「ひぇ?」


 待ったの声をかける俺に、びっくりした露さんが変な声をあげてきょとんとなる。他のメンバーも不思議そうに俺の方に視線を向ける。


「今、一、二番、四~十二番とか言いかけませんでした?」


「ええ、言いかけたけど……?」


 何がいけないの? という、さも当然みたいな顔をする露さんに、俺は思わずため息が出た。


「あのですね、いくら王様だからってその言い方だったら露さん以外の殆どじゃないですか!」


 そう、もしも今の露さんの命令を鵜呑みにすれば、一、二番、四~十二番の該当者が同じ命令を受ける羽目になる。だが、それだと面白みに欠ける。このゲームは、如何に誰がどの番号を引いたかを探り、その人物に向けて様々な命令をするかのゲームなのだから。

 それなのに、露さんときたら……。


「そうだけど?」


 不満そうな声で返す露さんに、俺は続ける。


「それじゃあ王様ゲームの醍醐味というものが――」


「いいでしょ、別に! 王様は私よ? 文句は誰にも言わせないわ!」


 おおぅ、なんという事だ。絶対王政みたいな感じの事言い出したぞ? しかも、いつになく目がマジだ。ホント、どんだけ女の子好きなんだよこの人。しかも、ちゃっかり一、二番、四~十二番って俺の事除外してるし。でも、俺が何番を引いたかなんて知らないだろ。それなのに的確に三番を抜かしてくるとは、この人……出来るッ!!

ーーって、んな事どうでもいい!


「はぁ、確かに王様の命令は絶対ですけど……。もしも抜かした番号に妹がいたりしたらどうするんです? 一人だけ省くっていうのは、少し可哀想な気がするんですけど」


 確かに三番は俺だが、もしかするとたまたま三番を指摘した場合もある。だから、これを機に考えを改めてくれるかもしれない。


「面倒ね。でも、まぁいいわ。確かに一人だけ省くってのもアレだし……」


 それでも不満な気持ちは変わらない様子の露さん。でも、考えは改めてくれたらしい。さて、誰を指摘してくる?


「う~ん、そうねぇ~。じゃあ、二名だけにしてあげる♪ で・も、響史くんが私の邪魔しちゃったから、この二名には結構ハードな命令(おねがい)しちゃうからね? 恨むなら、私じゃなくて響史くんを恨んでね?」


 笑顔で淡々とそう口にする露さん。おいおい、完全にそれ八つ当たりじゃね? 俺は面白みに欠けるだろうという事を指摘しただけなんだが。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。二名選択するのはいいですけど、その二名の内の一人が俺だったらどうするんです?」


「え? それはないよ♪」


 俺の発言に一瞬唖然としたかと思うと、露さんが急に満面の笑みを浮かべて否定した。


「ど、どうしてですか? 十二人の中から二人選びますけど、その中で俺が選ばれる可能性だってあるんですよ?」


「確かにそうだけど……だって」


 一度言葉を区切って目を瞑る露さん。そして瞼をゆっくり開けたかと思うと、やけに妖しげな目つきと表情で俺を見据え――。


「――三番じゃない、響史くん」


「――ッ!?」


 驚愕、その一言に尽きた。確かに最初から三番だけを除外した時点でおかしいとは思っていた。が、当てずっぽうで言ってたのかもしれないと考えていたのだ。だが、違う。間違いない、露さんは俺が引いた番号を知っていたんだ。でも、どうやって? 番号を見せた覚えもなければ教えた覚えもない。それなのに、ものの見事露さんは番号を当てた。まさか、何かの能力とか?

 そうだ、こいつら魔界の少女は魔界の人間で悪魔なんだ。なら、それ相応の能力を持っていても不思議はない。でも、露さんの能力って、キスなどで己の体液を相手に吸収させる事で情報を読み取るだけだし。いや、もしかすると他にも能力が?

てか、それって俺、不利じゃね?


「あの、露さん……能力とか使ってないですよね?」


「……ええ、使ってないわ」


 ん? おい、何だよ今の間は! 明らかに怪しすぎだろ!! てか、最早確信犯じゃねぇか!!


「響史~、いつまで待たせるの? 早く進めようよ~。露が誰を選んでもいいじゃん。待ってるの退屈~」


 と、いきなり瑠璃が俺に文句を言ってきた。そうだ、すっかり忘れていた。ふと周囲を見渡せば、他のメンバーも不機嫌そうな表情を浮かべていた。


「うッ……」


「ほらぁ、みんな私の命令を待ってるんだから、これ以上の詮索は、ナッシングだよ?」


 ちょっと待て、前半の発言、それだとこいつらが女王様からの命令を待つ豚野郎なんだけど!

 と、俺は内心で思った事を実際にツッコもうとしたが、そのすんでの所で露さんに人差し指で唇を塞がれたため、ツッコめなかった。


「それじゃ、お待たせ! ん~っと」


 顎に人差し指をあてがい、命令の内容を考える露さん。そして、思いついたかと思うと、再びあの妖しい目つきと表情を浮かべて口を開いた。


「二番の子は私の左足に乗って、十番の子は私の右足に乗って、それぞれ私のほっぺたにちゅーしなさい」


 その発言後、一瞬にしてリビングルームは静寂に包まれた。理由は誰もが分かる。露さんが本当にとんでもない命令を出してきたからだ。

 しかも、指名した番号は二番と十番。俺の番号は確かに抜かれているが、問題はこれを狙って言ったかどうかだ。


「露さん、これって?」


「? どうかした?」


 俺が何を訊きたいのかよく分からないという顔の露さん。


「いえ、あの……どうしてこの番号なのかな~って。もしかして、狙って選んだのかな、な~んて」」


「うん、その通りだよ?」


「へ?」


「だから、私は誰にやらせたいのかを狙って選んだの!」


 はっきりと、きっぱりと露さんはそう言い切った。腰に手を添えて少しふくれっつらだ。俺が疑っているのが気に食わないと見える。でも、そりゃそうだろう。俺の番号を当てられたのは偶然だと考えていたので、まさか連続で当てに来るとは思っていなかったのである。

 しかし、まだ分からない。当たったかどうかはこれから確認してみないと。

にしても、露さんは一体誰にやらせようとしてるんだ?


「ちなみに露さんは誰にこれをやらせようと?」


「もっちろん、可愛い可愛い妹の霖ちゃんと雪ちゃんに決まってるじゃない♪」


『ひっ!?』


 今にも目に見えてしまいそうな架空のハートを溢れ出させ、それをいやんいやんと体をくねらせる毎に、周囲にばら撒いていく。

 一方、変態の姉に指名された二人はというと、顔面を真っ青にして抱き合っていた。その目じりには涙すら浮かべている。おお、可哀想に。でも、二番と十番をそれぞれ引いていなければこの命令は無視できる。

 果たして?


「なぁ、霖、雪。二人は何番を引いたんだ?」


「うぅ……お兄ちゃん、私……二番」


「ぐすん、ボク……じゅうわぁ~ん」


 と、愚図っている二人。どうやら、本当に命中したらしい。しかも、雪に至っては泣き出してしまった。


「あ、あの……露さん、二人ともこんなに嫌がってますし、やめたげません?」


「や~よ! 第一言ったでしょ? 恨むなら響史くんを恨んでって!」


「だから、何でそこで俺の名前が出てくるんです!? 俺が何をしたって言うんですか!!」


 明らかなとばっちりだと言わんばかりに、俺は露さんに理由を追及した。すると、露さんは頬を膨らませてこう言った。


「私のハーレム(楽園)の邪魔した」


 完璧なまでに言いがかりである。そもそも、同姓同士でハーレムというのだろうか? いやまぁ、この人の場合見た目は女、中身はおっさんだからなぁ。


「何だか今、すごく失礼な事言われた気がする」


 半眼の眼差しで露さんが俺を見てきた。


「き、気のせいですよ」


「とにかく! 命令は絶対! ほら、霖ちゃん、雪ちゃんこっちにかっもぉ~ん♪」


『い、いやぁ~!』


 両手を広げて抱擁せんとばかりに二人へ暖かい視線を向ける露さん。しかし、二人にはその視線が獲物を射殺す怪物の視線にしか見えていないらしい。露さんを見る目がそれに対する獲物の目だもの。


「ほら、霖ちゃんは左足、雪ちゃんは右足ね?」


 なかなか近づいて来ない事に少し不満そうにしつつ、露さんはそれぞれを軽々と抱っこして自分の太腿の上に、(またが)るように座らせた。

 二人は既に観念したのか、大人しくしている。ただ、その口は僅かに振るえ、きゅっと一文字に結ばれている。


「ほら、じゃあだぁ~いすきなお姉ちゃんのほっぺに、キス……ちょうだい?」


 キラキラと星を瞬かせながら、露さんが両手を組んで祈りのポーズを取る。太腿の上に跨らされている霖と雪の二人は、互いに視線を交わしてどうしようか悩んでいる様子だった。

 護衛役の面々もさすがにこれには手出し出来ないのか悔しそうな表情を浮かべている。霞さんも、ゲームのルール上仕方ないというように諦念している。


「はぁ、まったく……今年の護衛役はとんでもないのがなったわね」


「今年の? どういう事だ?」


 ルナーの発言に少々違和感を覚えた俺は、どういう事なのか説明を求めた。


「は? あんた知らずにいたの?」


「ああ」


「瑠璃、麗魅。あんた達、こいつに教えてないの?」


 と、今度はルナーが双子姫の方に視線を向ける。


「え? あ、うん。まぁ、いいかな~って」


「私はてっきりお姉さまが話したとばかり……」


「ひどいっ! 麗魅、私に責任を押し付ける気っ!?」


 妹が責任転嫁した事に対し、瑠璃はショックの表情で声を荒げた。


「護衛役がどうやって決まるか知ってる?」


「ああ、それは以前聞いた。確か、学園を卒業したら何とかって……」


「ええ、その程度知ってればいいわ。歴代でも護衛役には伝説があってね。その昔、今の魔王が瑠璃達くらいの年齢の時に護衛に就いた十二人が、とてつもない力を持ったバケモンだったって伝説になってるの」


「とんでもないバケモンが、伝説……」


 それって、馬鹿みたいに暴れ過ぎて問題ばかり起こしてたからめちゃくちゃ有名って訳じゃないよな?


「ええ、ちなみに、その内の一人の血筋ならあんたは既に会ってるわよ?」


「え? も、もしかして……」


「そ、水連寺一族の人間よ」


「人間とかいうなよ」


「ああ、悪魔だったわね。でも、昔ほど今の悪魔は純血じゃないわよ? 先の大戦とか領土争いのせいで随分数も減っちゃってるし。純血の一族も伝説で語られている十二家だけね」


 何だか、王様ゲームの話題から急に悪魔方面の話題になってないか? でもそうか。昔よりも悪魔っぽいのは減ってるんだ。あ、もしかしてそのせいで瑠璃達や護衛役が人間っぽいのか?


「なぁ、昔の悪魔ってどんな姿してた?」


「え? う~ん、見た事ないけど多分、怖い顔してたと思うよ?」


「書庫なんかにあった書物でも、写真は残ってないわ」


 俺の問いに、瑠璃と麗魅が答える。


「とにかく、護衛役は魔界の王家が変動する度に変わるの。そうね、瑠璃達が王女様になったら、新たな護衛役が選抜されるわ」


「そうなのか……」


 少しだけ伝説の護衛役とやらが気になったが、今はそれよりも目先の事態が大変な事になっているので、そっちに集中する事にした。

というわけで三部です。初っ端から霄の危険っぷりがね。ホント、すぐに残空刀を抜刀する癖は直したほうがいいです。にしても、ツッコミと突っ込みと意味が異なるだけで物騒な雰囲気が変わりますね。そして、変態さんの本気、マジぱねぇっす。

また、今回ルナーが口にした過去の護衛役というのも、後々ちょっと重要になるかもしれません。なので、記憶の片隅にでも留めておいてください。まぁ、しばらくは触れませんけど。

てなわけで引き続き四部をお楽しみに。

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