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魔界の少女  作者: YossiDragon
第五章:七月 過去『封印されし記憶の解放』編
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第六十一話「それ以前の話」・2

変態成分少々。




――☆★☆――




 響史が倒れて七日間大舞台を始めた日から数日後。私はある人物の部屋を訪れていた。そこには私の探していた目的の人物がいた。慌てふためきオロオロしている姿を見て、私は声をかけた。


「どうしたの、そんなに慌てて」


「めいの、めいの大事な人が大変なんですぅ! って、あれ? あ、あなたは?」


「私の事は後回し! それよりも、響史が大変なんでしょう? それなら、ここに書いてある文字を読んで! いいわね?」


「え、でも……」


「つべこべ言わず、言いなさい! でないと、あなたの大切な人は死んじゃうわよ?」


 脅しにも似た言葉を口にすると、彼女――めーちゃんは目尻に涙を溜めて何度も頷いた。


「わ、分かりましたっ! 言うとおりにしますぅ!!」


 あたふたしながら携帯を耳に添えて、相手に繋がった途端台詞を口にしていくめーちゃん。そうして言うべき事を言い終えると、通話を切って息を吐いた。


「ふぅ……疲れちゃいましたぁー。えぇと、あのぅ……一体どこのどなたなんですか? めいなんて、ちょっと身長高くて、おっぱいとおしりが大きいくらいしか取り得ありませんよぅ?」


「そんな事どうでもいいのよ。あなた、病院へ行くことになってるのは知ってるわね?」


「はい……ここに書いてありました」


「四年前の事……嫌でも覚えてるわよね?」


「……ええ。キー様がいなくなるのは嫌でしたから……なんとかしたくて、必死でした」


「今回も、あいつが大変な事になってるの。あなたの力が必要なのよ。力……貸してくれないかしら?」


「はいっ! めいなんかで良かったら、例え冥界の底にでも行ってあげるですぅ!」


「ふっ、良く言ったわ。なら、このビデオをしっかり記憶してちょうだい。記憶力のいいあなたならへっちゃらよね?」


「ど、どーしてめいが記憶力いいの知ってるんですぅ!? 驚きです……とりあえず、見てみます」


 そう言ってめーちゃんは己のパソコンの挿入口にDVDをいれてビデオを再生した。そして、映像を見て驚愕する。


「こ、これって!? ど、どーしてあなたがこれを――って、あれ?」


 と、めーちゃんがこちらを見やった時には既に私の姿はなかった。厳密的には私が姿を消しただけなのだが。あまり長居しすぎるのも危ないからね。




――☆★☆――




「とまぁ、こういう訳よ」


 全てを話し終えたルナーが、ふぅと息を吐きながら足を崩す。


「そんな事があったのか。ホント、サンキューな。今回ばかりはお前に感謝しとかないと」


「ふんっ、分かればいいのよ。もちろん、働いた分の給料はもらうわよ?」


「え? お、お金そんなに持ってないぞ……?」


 もしも大金を要求された場合どうしようと思いながら、俺はあらかじめその旨をルナーに伝えておく。すると、ルナーは口元に手を運び小さく笑って言った。


「別にあんたからお金をもらおうなんて思っちゃいないわ。それなりの対価を払ってもらおうってコト」


「どういう事だ?」


 いまいちピンとこない俺は、首を傾げながらルナーの真意を訊く。すると、ルナーは俺の顔を指さした後、己の胸元に手を運んで胸の曲線をなぞるように何度も往復させた。所謂、ボインというジェスチャーだ。

 とどのつまり、こいつが何を言いたいか……気づきたくなかったが、俺は分かってしまった。

 そう――。


「あんたには、響子になってもらうわ♪」


「またかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」


 これで一体何度目であろうか。はっきり言って、俺があんな事をしたところで需要があるとは思えない。余程ルナーは神崎響子が気に入っているようだが、どうしてだろう? その理由が未だに分かっていない。

 しかし、今回の一連に関してはこいつに助けられっぱなしだ。先程のホームステイの件でもさりげないフォローをもらった。これはもう、言う事を聞くしかない。だが、あくまでそれは今回だけの話だ。そこは勘違いして貰わないようにしないと。


「文句あるの?」


 ルナーが不貞腐れて唇を尖らせる。


「うっ……分かったよ」


「うっし!」


 小さくガッツポーズを決めるルナー。ホント、こういう仕草を見ると年下にしか見えない。が、実際こいつは俺よりも年上なんだよな……。


「響史、明日琴音の家に行くんでしょ?」


「え、ああ……まぁ、招く形でもいいんだけどな」


「なら、招きなさい」


「え?」


 急に命令してくるルナーに、俺はちょっと不意打ちをくらって言葉を失った。そりゃそうだろう、雛下を俺の家に招く……だと? 昔は家で遊んだこともいくらかあるっぽいけど、そんなの覚えてないし。何よりも、俺が緊張する。


「どうしたの?」


 ルナーが腰に手を添えて俺に訝しんだ視線を向ける。


「いや……さすがにそれは。それに、今は従姉妹が来てるし」


「だから丁度いいのよ。いい? あんたは七月二十一日までに記憶を取り戻さないといけない事、分かってる? そのためにはなるべく関係者が近くにいる方が無難。だからこそ、琴音にはここに来てもらう方がいいわ。本当はあの子にも来てほしいけど、少し難しいかしらね……」


 こいつの言うあの子というのは、めーちゃんだと思う。でも、名前は教えてくれないんだよな。けど、それだと記憶は戻らないんじゃないか?


「なぁ、ルナー。何でめーちゃんの事を教えてくれないんだ?」


「はぁ……焦る気持ちは分かるわ。確かにずっと愛称っていうのもアレでしょうね。けど、順番があるのよ……」


 順番? 何の話だ?


「それに、本名は然程重要ではないわ。人物と愛称さえ一致していればね。だから、問題はない。むしろ、今は琴音の事を考えておきなさい」


 雛下の事を? どういう事だ? めーちゃんとの記憶の方が薄れてるのに、それよりも雛下の方を考えろ? 分からない……。


「どうして雛下を?」


「彼女は常にあんたの傍にいた。そして、あんたの感情や心境の変化なんかも良く見ていたはずよ。それに、幼稚園の時からずっと一緒なんでしょ?」


「ああ、まぁな」


「事件後の四年間もずっと一緒だった……そうよね?」


 確かにルナーの言うとおりだ。改めて思えばあいつはずっと俺の事を見守っててくれたんだよな。


「そうだな……」


「いい? 絶対にここに来させなさい」


「……分かった」


 ルナーに言われ、俺はこくり頷いた。時間は有効的に使わなければ。めーちゃんの事も雛下からなら聴けるだろうし。


「そうとなったら、今日は早めに寝る事にしよう」


 そう決めると、俺はその場にゆっくり立ち上がった。

 と、その時だった。


「待ちなさい」


 声をかけられ、俺は振り返る。そこには麗魅がムスッとして立っていた。


「ど、どした?」


 俺が何をしたかと思い、戸惑いつつ訊くと、麗魅が△の形にさせた口を動かした。


「忘れてるのかしら、私達昨日お風呂入ってないんだけど」


「あ」


 そう言えばそうだった。こいつらの事が家族にバレないための配慮だったが、バレてしまった今ならそれも無意味だろう。


「いい加減入りたいのよ」


「いいんじゃないか? 父さん達にはお前らがホームステイの子だって、説明したし」


「大丈夫なんでしょうね?」


 どうにも慎重になっている麗魅に、俺は少し唸ってから「おう」と頷いた。


「そんなに心配なら入らなければいいだろ?」


「はぁ!? あんたバッカじゃないの!? 二日も入らないなんて、ありえないからっ!!」


 凄い剣幕で怒られた。ちょっと冗談半ばに言っただけなのに……。

 結局、麗魅はぷんすかしながら俺の部屋から出て行くと、階段を下りて行った。


「あはは、ゴメンね響史? 麗魅、お風呂が気に入ったみたいで、入れなかったら機嫌損ねるみたい」


「そうなんだ。まぁ、お風呂好きっていうなら仕方ないな。なんなら、銭湯にでも行けばよかったのに」


「何、戦闘するのか!?」


 何ともベタな間違いをしてくれちゃってる霄に、俺は呆れ顔を浮かべる。


「何だ……」


 俺の浮かべる表情に納得がいかないのか、気に食わんという顔をする霄。


「いや、銭湯っていうのは戦う事じゃなくて赤の他人と一緒に広い大浴場に入る事を言うんだよ」


「なにそれ!? そんな嬉しいイベントがあるの!? そこに行ったら、可愛い女の子の裸が拝めるってことじゃないっ!! もう、響史くんったらどうして早く教えてくれなかったの!?」


 露さんが予想通りの発言をしてくれる。俺は嘆息しながら言った。


「あのですね、露さん。銭湯に可愛い子が必ずしも来るとは限りませんよ? 結構お年寄りも利用するみたいだし」


「ば、ババアでも……なんとか――うぷっ」


 おい、それは失礼だろ。俺は、何を想像したのか嘔吐(えず)いている露さんに半眼の眼差しを向けた。


「皆は行かないのか?」


「姫の後で入る」


「じゃあ、私一緒に入ってこよっかなー。あっ、でもやっぱり遠慮しとく……」


 誰も行かなそうなので自分がと手を挙げたかと思うと、瑠璃は申し訳なさそうな顔をしてその手を下げてしまった。


「どうしたんだ? 別に双子なんだし、いいだろ?」


 何を遠慮する事があるのだろうと思って俺がそう訊ねると、瑠璃は頬をかきながら事情を説明した。


「実はね、私が麗魅と一緒に入ると不満そうな顔をして嫌がるの。特に、体の洗いっこした時なんかは一番ね」


「それって……あ」


 いかん、察してしまった。俺は瑠璃のある部分に視線を向けて気付いた。そうか、あいつも苦労してんだな……。いやはや、天然の姉を持つと大変なものだ。


「じゃあ、露さん入ってきたらどうです?」


「ちょっ、それどういう意味よー!!」


 俺がニタニタとイジワルな笑みを浮かべながら言うと、露さんはむっとして文句を言ってきた。いかん、この人発言はアレだけどイジると楽しい。

 結局、この人を本当に行かせると麗魅の身が危険なのでやめさせた。

 その後は、まぁ適当な順番で入って行き、最後に露さんが入った。

 何やら風呂場に向かう道中、「むふふ、姫様や姉妹の残り香が……はぁ、はぁ」などと危なっかしい台詞を口走ってやがったが、まぁ……多分大丈夫だろう。あがってきた露さんが何故か逆上せていたが、その理由は言うまでもない。




 次の日、七月十六日。タイムリミットまで後五日と少し。果たして俺の記憶は戻るのだろうか? いや、戻さなきゃならない……絶対にだ。そのために俺は、いや俺達は頑張って来たんだ。絶対に俺は記憶を取り戻してみせる!!

 そう意気込んでやって来たはいいものの……。


「緊張するなー」


 俺は、雛下の家の前で立ち尽くしていた。というのも、緊張し過ぎてインターホンが押せないのだ。


「はぁ……よしッ!」


 小さく息を吐き、意を決する。押すぞ……押すからな、押すんだよ! 押すんだって! 押すつってんだろ!?


「どぉ~ん♪」


「ふがッ!?」


 突如背後から突き飛ばされ、俺は雛下家の玄関に顔面を(したた)かに打ち付けてしまった。主に鼻を重点的に攻撃され、俺は真っ赤になった鼻を押さえながら涙目で背後にいる人物を睨んだ。


「あれ、ゴメンね? 何だか押せ押せ言ってるから、押して欲しいのかなと思って」


 いかん、声に出していたらしい。


「誰かと思えば、優ねぇか……。どうしてくれんだよ、鼻が曲がっちゃったじゃないか」


 昔の馴染みで軽く冗談を口にする。

 相も変わらずのメイド服――というわけではなく、目の前にいる優ねぇは珍しく私服を着ていた。少しフリルがあしらってある可愛らしい服装。こういう格好を見るのはえらく久しぶりなので、俺は少し新鮮味を感じていた。


「うっそ、ホント!? ごめん、何でもするから許して?」


 おいおい、信じちゃってるよ。ん? 何でも? って、今はそれどころじゃない。

 俺は、申し訳なさそうな表情で俺の鼻を心配する優ねぇを見て、丁度いいと思って口を開いた。


「優ねぇ、ちょうどよかった。雛下を呼んでくれないか?」


「雛下ならここにいるじゃん」


 うっ、そうだった。優ねぇも雛下だった。


「だ、誰の事かなんて分かってるだろ?」


「さぁ~誰の事かな~。身内に聞く場合は、ちゃんと下の名前を呼ばないと誰を呼べばいいか分かんないよ~?」


 わざとらしく小悪魔的表情で言う優ねぇに、俺は口ごもってしまう。が、いつまでもこうしている訳にもいかなかったので、俺は仕方なしに再度口を開いた。


「……こ、琴音を呼んでくれ」


「きゃー! 琴音、だって~!! もぅ、響ちゃんったら、琴音ちゃんの前でそう呼んであげたら、あの子卒倒しちゃうよ?」


「いや、あいつの前では呼ばないよ」


 俺は恥ずかしくて優ねぇに目を合わせられなかった。だが、俺の発言が気に食わなかったのか、さっきまできゃっきゃっと喜び混じりの声音だった優ねぇが、急に声のトーンを下げて言った。


「ホントに呼ばないつもり?」


 いつにない声音だったため、俺は思わず動揺した。


「え……?」


「あの子は……琴音ちゃんはずっと待ってるんだよ? 響ちゃんが呼んでくれるのを。昔みたいに、自分の事を下の名前で呼んでくれるのを。ずっと、ずっと待ってるの。その想いを、響ちゃんは踏みにじるの? もしもそんな事したら、琴音ちゃんを泣かせるような事したら、私……絶対に許さないから」


「あ、いや……その」


 初めて見た、優ねぇの怒った顔なんて。いつもニコニコ笑顔で周囲の人間を幸せにしていたあの優ねぇが、あんな表情を浮かべるなんて思ってもみなかった。

 気付くと俺は、じっとりと体中に嫌な汗を浮かべていた。

 一方の優ねぇはというと、こ――雛下を呼びに行ってくれたようで家に入っていた。

 三分くらい経過した頃だろうか、玄関扉が開いて雛下がひょっこり顔を覗かせた。


「きょ、響史くん?」


「よ、よう!」


 訝しんだような、心配そうな表情を浮かべている雛下に、俺は軽く手の動作もくわえて挨拶をした。

 俺の元気な姿を確認したためか、ほっとしたような顔を一瞬浮かべた雛下は、すぐに満面の笑みを浮かべて歩み寄ってきた。


「久しぶり……って言っても、二日ぶりだけど。体の方は大丈夫なの? 記憶は? まだ戻らない?」


 いくつかの質問を一気に投げかける雛下に、俺は手を前に突き出して落ち着く様に言った。


「待て待て、説明するから」


 その言葉に、雛下は納得したように頷きながらもどこか浮かない表情だった。

 そして俺が十分くらいかけて説明を終えると、雛下はさっきよりも浮かない表情で俺に言った。


「……それじゃあ、まだ記憶は完全に戻ってないんだね?」


「ああ、それで……家族との記憶は全て話を聞いて大分取り戻してきたから、後は雛下達だけなんだ」


「そっか……あの事も、忘れてるんだもんね」


 あの事? 俺が雛下と初めて会った時の事だろうか? そういえば、俺はどうして雛下と出逢ったんだろう? ダメだ、そこらへんも全然覚えてない。ルナーは四年前より以前は、大まかな内容さえ思い出せれば大丈夫だって言ってた。つまり、そこまで深い部分まで探る必要はないってコトだよな。はっきり言ってそれを聞いて少し安心した。

 だって、雛下にとって俺との大事な想い出が失われてるのは辛い事だろうからな。現に悲しそうな顔してるし。


「雛下……少しずつでいいから、話してくれ」


「うん。どっちからがいい? 空白の四年間と、それ以前の方と……」


 う~ん、選択肢か。俺的には、重点的に思い出さないといけないのが空白の四年間だから、そっちを先に聞くか。


「じゃあ、前者の方で」


「……良かった」


「え?」


 雛下がボソリと安堵の声を洩らしたので、俺は不思議に思った。


「あ、ごめん。ちょっと以前の方の話は、まだ話づらくて……」


「そうか。ルナーから聞いたんだけど、そっちの方は大まかでいいらしいから。事細かくまで説明はしなくて大丈夫だぞ?」


「そ、そうなの?」


 俺の説明に雛下が意外そうな顔をする。恐らく、どちらも事細かに説明しなければならないと思っていたのだろう。俺も――いや、関係者全員がそう思っていた。けど、ルナーの説明でその考えを改めさせられた。

というわけで、二部です。今回はめーちゃんが何かと出てきます。ここでなんでめーちゃんが台本の内容を知っていたのかが明らかに。ルナーとあってたんですね。また、対価は響子。あ、これフラグです。順番、これもフラグです。これ、結構フラグ立てまくりなんですよね。回収するの大変ですw

そして、麗魅が風呂好き。どこかのし○かちゃんですね。

引き続き三部に続きます。

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