表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスクトップ・ファンタジー ~画面の中の彼女たちと挑むゲーム攻略記~  作者: 約谷信太
第六章 【ロールプレイングゲーム】~ステータス(笑)の勇者たち~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/75

064 【英雄天国】その16 ~起死回生のバグ技!~

「行きます! 雷狐(ライコ)……いえ、――神狐(ミコ)ちゃん!」


 マリアさんの声に応え、神狐(ミコ)が咆哮を上げる。

 対する邪神もかき消すような咆哮を轟かせ、再び空間を歪めて新たなガーゴイルを召喚した。


 ツバメさんがステッキの一撃で最後の一体を粉砕するが、それと同時に三体の増援が現れる。

 マリアさんはツバメさん、そして邪神と対峙するソフィーさんを援護すべく駆け出した。

 俺はその背中に向かって叫ぶ。


「マリアさん! 神狐(ミコ)の雷撃に光属性が追加されたけど、衣装は『雷』のままだ! 邪神への攻撃は神狐(ミコ)に任せて、二人のサポートへ回ってくれ!」


「分かりましたぁ! 神狐(ミコ)ちゃんはソフィーリア様をお願い! 私はツバメ様を!」


 主の指示を受けた神狐(ミコ)は、全身の毛を逆立てて金色(こんじき)の雷光を纏う。

 トップスピードで駆け抜け、邪神目掛けて跳躍すると同時に強烈な雷撃を叩き込んだ。

 金色の奔流が迸り、轟音と共に邪神の絶叫が響き渡る。

 直撃を受けた腕の一本が、半分ほど抉れ飛んでいた。――間違いなく、ダメージは通っている。


「よしっ! 完全に効いている!」


「すごい威力! これなら……っ!」


 マリアさんの『基礎能力補正:中+特大』の恩恵により、神狐(ミコ)の攻撃は通常スペックを優に超えていた。

 その援護を受けたソフィーさんにも、先程より僅かだが回避の余裕が生まれている。


 一方、ツバメさんが着ている魔法少女の衣装は『魔力量』補正のため、基礎能力『D』の彼女にはマイナス補正(小)がかかっている。

 王国トップクラスの実力者とはいえ、慣れない魔法少女(戦闘スタイル)と僅かな弱体化のせいで、本来の力が発揮しきれずにいた。

 しかし、デバフの解けたマリアさんが援護に駆けつけたことで、タンクとアタッカーの連携が機能し始め、戦況は互角に近づきつつあった。


 ――これならいけるかもしれない。


 そう希望を抱いたのも束の間。

 相手は没データとはいえ、ラスボスすら凌駕する裏ボス『太古の邪神』だ。

 そう簡単にはいかなかった。


 神狐(ミコ)の雷撃で抉れたはずの邪神の腕が、どす黒い(もや)に覆われる。

 すると、まるで時間が巻き戻るかのように肉が再生し、何事もなかったかのように無傷の腕が姿を現した。

 ティオが声を上げる。


「章介さん!? あれ!」


「なっ!? ……まさか『自動回復(リジェネ)(大)』か!? あのダメージを一瞬で完全回復するっていうのか!?」


 俺は愕然と目を見開いた。

 逆転の糸口を掴んだと思った矢先に、盤面をひっくり返されたからだ。


 二度、三度と打ち込まれる雷撃。しかし邪神は、そのダメージすらも涼しい顔で回復していく。

 あれだけの猛攻が全くの無意味。……なんてクソゲーだ。


「嘘だろ……。あの攻撃でも威力が足りないっていうのか……?」


「いや、あの威力、どう見ても一発一発が上級魔法並みだよ!? あれ以上ってなると、それこそ特級魔法レベルだよ!?」


「分かってる! もしくは光属性の手数を増やすかの二択だ! どっちにしろ、今のままじゃ火力が足りない!」


 俺は再び頭を抱えた。

 この絶望的な状況を覆すには、特級魔法レベルの『超高火力』を叩き込むか、光属性の『手数』を増やすしかない。


 そして、光属性の衣装を手に入れられるかもしれない方法……実は一つだけ心当たりがあった。

 カジノワープと同じ、『グリッジ』を利用したバグ技だ。

 だが、それには特殊な条件が必要で、現状では不可能に思えた。


(どうする? このままじゃジリ貧だ。何か逆転の一手は……っ!?)


 必死に思考を巡らせる。

 水晶()のすぐ隣でも、ティオが片手で顔を覆い、ブツブツと呟きながら思案していた。


(……章介さんの言う通り、方法は二つ。手数を増やすか、一撃の威力を上げるか……。でも特級魔法なんて使い手自体がほぼ存在しないし、ここでは衣装の能力でしか発動できない。しかも光の特級魔法なんて……そんなの――そんなの? …………そういえば私、あの時――そうか、そうだよ! あった! 特級魔法を撃つ方法!!)


 突然、ティオが弾かれたように顔を上げ、こちらへ向き直った。

 そして、肩から提げていたカバンを片手で突き出し、笑みを浮かべて叫ぶ。


「見つけたよ章介さん、逆転の一手! 答えは最初からこの中にあったんだ!」


 水晶に押し付けられたカバンが、モニターいっぱいに大写しになる。


 俺はその勢いに一瞬気圧されたが、すぐに言葉の意味を察してモニターに詰め寄った。


「ほ、本当かティオ!? 本当に何か方法を……そのカバンの中に――」


 その瞬間、俺の脳裏にいくつかの記憶がフラッシュバックする。


 ――このゲームに転移する直前のこと。


 ――座礁した無人島でのツバメさんの言葉。


 ――そして、目の前に突き付けられた【わくわく☆無人島ライフ】から持ち込んだカバン。


 点と点が線で繋がった瞬間、盤面をひっくり返す一手を閃く。


(……あ、あった。衣装の属性を変えられるかもしれない方法が……っ! そうだ、方法は最初からこのカバンの中に!)

 

 俺はティオに負けない声量で叫んでいた。


「俺も見つけた! 起死回生の一手! 運が絡むがこの方法なら……っ!」


 その言葉に、押し付けられていたカバンが緩み、ティオの驚いた顔がはっきりと映し出された。


「ほ、本当!?」


「ああ、本当だ! お前も見つけたんだな!?」


「うん、見つけたよ!」


 一拍置いて、俺たちの声がピタリと重なる。



「衣装の属性を変える方法!!!」

「光の特級魔法を撃つ方法!!!」



 今ここに、邪神討伐のための二つ目――いや、三つ目のピースが同時に埋まった。

 停滞していた戦局が、一気にクライマックスへと動き出す。

 俺は時間が惜しいとばかりに問い詰めた。


「で、お前の思いついた方法ってのは!?」


「それは……これだよ!」


 ティオがガサゴソとカバンを漁って取り出したのは、俺が彼女と出会ってからの約一年間、ずっと見慣れてきた衣装だった。


「……それって、お前の服一式? ――って、おいっ!?」


 カバンから取り出されたのは、ティオが最初から着ていた服で、システムから『魔力(笑)』と煽られた『ティオシリーズ』だった。

 さらにティオは、俺の目の前で躊躇いなく服を脱ぎだした。


「ちょっと待て!? いきなり目の前で脱ぎだすな!?」


 俺は慌ててモニターから顔を背ける。

 間一髪だったため、辛うじて彼女の下着が目に入ることはなかった。


 ――すでにノーパンノーブラ状態を見てしまっている以上、今更な気がしないでもないが。


 しかし当の彼女は、俺の焦る声など一切無視して堂々と着替えを進めていく。


「生きるか死ぬかの瀬戸際で、裸の一つや二つ気にしてる暇なんてないよ。それに章介さんなら、今更でしょ?」


 ……ぐぅの音も出ない。

 この状況で羞恥心を優先する俺の方がおかしい。怒られるのも軽蔑されるのも、全て後回しだ。邪神を倒すのが先決に決まっている。


「……分かった。スマン、文句は後で聞く。それで、その衣装でどうやって特級魔法を撃つんだ?」


 モニターに視線を戻すと、ちょうどスカートを上げた瞬間で、一瞬だけ白いものがチラリと目に入った。

 ティオは全く意に介する様子もなく、再びカバンの中に手を突っ込む。


「……章介さん。やっぱり私たち、ゲームのシステムに囚われすぎてたんだよ。ほら、覚えてる? 座礁した無人島で野営した時、少し肌寒くて狼牙の衣装の上にローブを羽織ってたじゃない? ――つまり、ゲームの装備枠が埋まっていても、物理的にその上から『着る』ことはできるってこと。……そりゃそうだよね。現実の私たちは、冬になれば何枚も服を着重ねるんだから」


 そう言いながら、ティオが次にカバンから引っ張り出したのは――マリアさんのメイド服だった。

 その時点で、俺もティオの狙いに気がついた。


「……なるほど、そういうことか」


 俺の呟きに、ティオが不敵に笑う。


「そう。私の服の上から、マリア姉の服を着る。所謂『重ね着』ってやつだよ。マリア姉の衣装能力『特級魔法』のMP不足を、私の衣装の『魔力(笑)』で補って撃つ。――あの悪意に満ちたシステムを逆手にとって、邪神に特大の一撃をお見舞いしてやる!!!」


 完全に盲点だった。

 俺もまだゲームの常識に縛られていたらしい。確かに物理的な『重ね着』が許されるなら、特級魔法を撃つことも可能だ。


 自らの衣装の上にメイド服を着込んでいくティオを横目に、俺は一進一退の激戦を繰り広げる前線へと視線を向けた。


「……ってことは、俺が任せるのはツバメさんだな」


 大きく息を吸い込み、マイクに向かって叫ぶ。


「――ツバメさん、一瞬だけこっちへ来てくれ! 逆転の一手を打つ! 皆は少しの間だけ持ちこたえてくれ!」


 爆音が鳴り響く前線にも俺の声は届いたようだ。

 ツバメさんは鍔迫り合いをしていたガーゴイルを強引に押し返すと、マリアさんに短い合図を送り、こちらへ向かって駆け出した。


 ツバメさんが到着するまでの僅かな時間で、俺はバグ技の準備を進める。

 モニター上のアイテム画面を開き、特定の法則に従ってアイテムの配置を並べ替えていく。

 その忙しない様子を見て、メイド服を着付けながらティオが尋ねてきた。


「ねえ、章介さんがやろうとしてるバグ技ってどんなの?」


「……これは『アイテム変化バグ』って呼ばれるグリッジだ。アイテム欄の左端に『薬草99個』を置き、その右側を空欄にする。そして薬草の真下に、変化させたいアイテムをセットするんだ。この状態で敵から薬草がドロップして手に入ると、プログラム内のアイテムIDが一つズレて、全く別のアイテムに変化するっていうバグ技だよ」


「……でもそれって、薬草をドロップする敵がいないと発動しないよね? この戦闘中じゃ無理じゃ――あっ、そうか!」


 ティオの驚く声に、俺は彼女に倣って不敵な笑みを返した。

 そう、本来なら今ここで出来るはずがないバグ技だ。

 もし最初からこのゲームに転移していたら不可能だった。【わくわく☆無人島ライフ】を経由していなければ。


「ご名答。このカバンには、俺が無人島を開拓して集めた『薬草×99』の束が入ってる。そして追加で、このゲームで手に入れた薬草が十数個。本来ならあり得ない、スタック上限を超えた薬草がここにあるんだ。――その余剰分の薬草を、手動で『薬草×99』の束にぶち込む!!!」


 そこで、生贄にする衣装を選ぶ手が止まる。

 どれにするべきか。


 基本的にゲームのアイテムIDは、入手順や強さ順に並んでいる場合が多い。

 今所持している彼女達の衣装は、これまでのやらかしが原因で初期装備に近い貧弱なものばかり。それを一つズラしたところで、大した戦力アップは見込めないだろう。

 ――つまり、この場で選ぶべき衣装は一択のみ。


「ティオ、ちょっとこれ借りるぞ!」


 俺は、彼女が今脱ぎ捨てたばかりの『改人サイダー狼牙』コラボ衣装をセットした。

 そしてそれと同時に、ツバメさんが息を切らして駆け寄ってくる。


「…………………」【お待たせ! 章介君! (`・ω・´)】


「ジャストタイミングだ! 今からバグを利用して衣装の変更を行う! ツバメさんはこのゲームで手に入れた薬草を、俺が持ち込んだ『薬草×99』の束にぶち込んでくれ!」


「…………………」【よく分かんないけど、了解! とりゃあ! ヽ(`Д´)ノ】


 ゲームに疎いツバメさんにとっては意味不明な指示だったはずだが、実戦経験が豊富で判断の早い彼女は、一切の疑問を挟まなかった。

 薬草を一つ引ったくると、カバンの中にある99個の束へ勢いよく突っ込む。


 ――瞬間、カバンの中の空間がぐにゃりと捻じれるように歪んだ。


「…………………」【っ!?  Σ(゜□゜;)】


 反射的にツバメさんが手を引っ込める。

 間違いなく、システムに何らかのバグが引き起こされた反応だ。


 水晶()とツバメさんは、異変が起きたカバンの中を固唾を飲んで覗き込んだ。

 ハッキリ言って、これは大博打だ。


 最初から【英雄天国】(このゲーム)に実装されていた衣装と違い、PC移植版で追加されたコラボ衣装はIDの並び順が不明だ。

 つまり、何の衣装に変化するかは予測不可能であり、完全に運任せ。ツバメさんの引きに全てを託すしかなかった。


 ――そして、カバンの中に現れた『それ』を見た瞬間。


 緊張で背中を伝っていた冷や汗が、一気に熱を帯びていくのを感じた。

 さすが、あの問題児たちと馬が合うだけはある。とんでもない悪運の強さだ。

 俺は自然と口角が吊り上がるのを止められなかった。


「…………………」【これは……!?  Σ(゜□゜;)】


「……さすがだよツバメさん、完璧だ。大博打に大勝利だ……っ!」


 俺はその衣装を取り出し、ツバメさんへと手渡した。

 彼女はその衣装に数秒戸惑いを見せたが、すぐに腹を括ったのか、その場で堂々と着替え始めた。


 ――そう、またしても俺の目の前で。


「またかよ……っ!?」


「…………………」【恥ずかしいけど、この土壇場でそんなこと気にしないで! (`・ω・´)】


 こいつら、どいつもこいつも変に男らしい。

 とはいえガン見するわけにもいかず、俺は微妙に視線を逸らして待機した。


 まず、メイド服に手こずっていたティオの着替えが完了する。

 自前の服の上にマリアさんのメイド服を着込み、さらにその上からローブを羽織る。頭にはヘッドドレス。着膨れして、少しモコモコした丸いシルエットのティオが誕生していた。


 そして、騎士団の任務で早着替えに慣れているのか、ツバメさんもあっという間に準備を終えた。

 その姿を見て、ティオが目を丸くする。


「ツバメさん、今からティオが大技を放つ。そのための足止めを頼みたい。その光属性の衣装なら、邪神にも確実にダメージが通るはずだ」


「…………………」【……う、うん。任せておいて! (`・ω・´;)】


 ツバメさんは一瞬、己の衣装に何とも言えない表情を浮かべたが、すぐに気合を入れ直し、邪神へ向かって疾走していく。

 その背中を見送りながら、俺はティオに指示を出した。


「ティオ、今から彼女達が邪神の隙を作る。そのワンチャンスを絶対に逃さず、お前が決めるんだ」


 ティオはこちらを真っ直ぐに見つめ、力強く頷いた。


「分かった。……で、もしかしてツバメさんの衣装って?」


「……ああ、お前の想像通りだ。あれは――」




 * * * * *




 邪神との最前線は熾烈を極めていた。


 ツバメさんが一時離脱した穴を埋めるべく、神狐(ミコ)が雷撃の雨を降らせ、ソフィーさんが驚異的な敏捷性で紙一重の回避を繰り返す。

 無尽蔵に湧き出るガーゴイルの群れは、邪神を相手取る二人の邪魔をさせまいと、マリアさんが単機で押し留めていた。


 『自動回復(リジェネ)(大)』の理不尽な再生力の前に、決定的なダメージを与えられずにいる。

 じりじりとした焦りが出始めた頃、邪神の行動パターンに変化が生じた。

 ピタリと攻撃の手を止めて大きく息を吸い込み、天を仰いで大咆哮を上げたのだ。


 その予兆を察知し、至近距離にいたソフィーさんと神狐(ミコ)は防御態勢を取りつつ後方へ飛び退いた。

 直後、部屋全体を激震させるような重い大気の衝撃波が走り抜ける。


 しかし、強烈な振動の割に直接的なダメージは感じない。ソフィーさんが再び距離を詰めようとした瞬間、自らの異変に気がついた。


 ――体がピクリとも動かない。

 至近距離で衝撃波を浴びた神狐(ミコ)も、同様に硬直していた。


「……まさか、広範囲の硬直デバフ!? 次から次へと何なんですか! このふざけた攻撃バリエーションは!?」


 ソフィーさんが思わず悪態をつくが、真の絶望はそこからだった。

 行動不能になった二人を前に、邪神がノイズに(まみ)れた剛腕を高く振り上げたのだ。


「しかもここで二回攻撃ですか!?」


 絶対絶命の窮地に、ソフィーさんの額を冷や汗が伝う。


 ――しかし、その凶悪な腕が振り下ろされることはなかった。


 一筋の『白い影』が猛スピードで邪神へ飛びかかり、限界まで引き絞った拳でその巨体を真横に殴り飛ばしたのだ。



 ――ズドォォォンッ!!



 凄まじい衝撃音と共に埃が舞い上がり、部屋を震わせて邪神が床に倒れる。


 数秒が経過してようやく硬直が解けたソフィーさんは、その白い影へと視線を向けた。


「今のはツバメですか!? 助かりました、ありがとうございま――ぷふっ……!?」


 そして、盛大に吹き出した。


 そこに仁王立ちしていたツバメさんの姿は――。

 先程までの闇属性の魔法少女とは180度異なる、フリルとレースがふんだんにあしらわれた純白の衣装。健康的な太ももが眩しいフリフリのミニスカートに、胸元で輝くピンクの宝石と大きなリボン。そして、艶やかな黒髪に映える巨大な白いリボン。


 そこにいたのは紛れもなく、ニチアサを観る全国の少女たちの憧れ……拳一つで悪と戦う孤高の魔法少女『ひとりでソロキュア!』に完全変身したツバメさんだった。


 ソフィーさんは笑いを堪えきれず、軽く咽せている。


「……げほっ、げほっ。……すみませんツバメ、助けていただいたのに。まさか少し目を離した隙に、悪の魔法少女が正義の魔法少女にジョブチェンジするとは、思いもよらなかったもので。少々ツボに入ってしまいました……くふっ」


「…………………」【……構いません、別に。……でも笑うのは後にしていただけます? (`;ω;´)】


 顔文字で涙を流しながら、羞恥に耐えて拳を構えるツバメさん。

 ソフィーさんも自分の頬を両手でパンッと叩いて気合を入れ直すと、彼女の隣に並び立った。

 さらに硬直が解けた神狐(ミコ)も続き、ガーゴイルの増援を凌ぎ切ったマリアさんも合流する。


 『ソロキュア!』衣装の能力補正は『筋力と耐久力』。

 つまり、ツバメさんのステータスとの親和性が極めて高い『基礎能力補正:中+特大』の『光属性』の衣装だった。


 出来すぎなほどの大当たりだ。

 ……何と言うか、グリッジでアイテムIDを一つズラしたら、IDではなくニチアサの放送枠が一つズレてしまったような結果である。

 さすが、ここ一番の悪運の強さは他の三人に引けを取らない。


 水晶()の隣には、重ね着でモコモコになったティオも並び立っている。


 ――これで、全てのピースが揃った。


 俺は深く息を吸い、そしてゆっくりと吐き出す。

 視線の先では、起き上がった邪神が再びガーゴイルを召喚し始めていた。


 決着の時は近い。


 ついに、太古の邪神戦――最終ラウンドの幕が上がる。

読んでいただきありがとうございます。


よろしければ、ブックマーク・評価をしていただけるとモチベーションの維持になります。


次回投稿は来週、7月25日(土)夕方以降になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ