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今世は聖女になります~魔力ゼロの無能と言われた私、魔術至上主義を物理で壊して自由に生きます~  作者: 流あきら
第一章 帝国高等学院入学編

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034 反撃

「な、なんですの?あなたはセシル?ちょっと、なに?早く降ろしなさい!」


 私はそっと、リーリアの体を地面に降ろした。


「ご挨拶だね、リーリア。私はあんたの命の恩人だよ」

「私は一体……そう、黒い雲があらわれて、それで……」


 リーリアはまだ混乱しているようだった。


「お取込み中すまないが、一刻も早く魔法陣を見つけないといけないと思うよ」


 マルスは今までの事情をリーリアに説明した。

 リーリアはまだ戸惑いつつも、何とか状況を理解してくれたようだった。


「そうね、それしかないかもしれない」

「待って!私に考えがあるの」


 私は言った。

 私たちは、近くにあった裏門の一つを目指す。

 エマを見捨てて逃げるわけにはいかないが、一刻も早く怪我をした少女や子供たちは逃がすべきだろう。


「セシル。そこはさっき僕も試したけど、外には出られなくて……」


 マルスの言葉の後半を、私は聞いていなかった。

 門を開けて、外に出る。

 黒い霧でできた障壁(バリア)は、私の動きを遮ることができなかった。


 外に出ると、午後の日差しが眩しい。

 

「誰か!衛兵さん!魔術師団の人はいませんか!」


 黒い霧は皆にも見えているようだ。

 何やら不安げに顔を見合わせている人が多い。 

 中には何かのお祭りの演出だとでも思ったのか、笑顔で話している人たちもいた。


 私は再び中へと戻る。


「あなたは何なの?障壁(バリア)をすり抜けるなんて……まさかこの事件もあなたが?」


 リーリアが驚いた表情で言う。


「違う。あとで説明するから……ロンちょっときて」


 私はロンを抱えて扉から出ようとする。

 だが障壁(バリア)を抜けられたのは私だけであり、ロンの体は校内にとどまったままだ。

 マルスやファイーナとも試してみるが、同じだった。


「この障壁(バリア)や魔力結界(フィールド)を何とかしないと」

「今ちょっとだけ魔力探査をしたんですけど、どうも校内に何個か、この近くにも魔法陣があるようです、セシルさん」


「それがわかれば……でも何で今まで見つからなかったんだろう」

「魔力が流れないと見つけにくいんです。発見できないように偽装してたでしょうし。効果が発動したときにはもう遅いというね」


 マルスはリーリアと話し合って二人で魔法陣の探査を開始した。

 その間、障壁(バリア)の維持はファイーナが行う。


 蛇鳥(コカトリス)は上空を旋回している。

 たまにこちらに襲い掛かってくる個体は、私が蹴りと拳で叩き落した。


「おそらく校内に何個もある気配がするけど、一つはあそこだ、多分」


 マルスが指さしたのは、私たちのソーダ店のすぐ近くにある倉庫だった。

 そこは実習用の様々な用具がしまわれている場所だったはずだ。

 私たちは倉庫へ向かう。


「間違いないここだ。でも魔法鍵がかかってて。やっかいだな。監督生(プリフェクト)ならここの鍵を持っていたから、こんな所に魔法陣を設置したんだろうけど」

「任せて、マルス」


 私は学校の設備を壊してしまうことを心の中で謝りつつ、蹴りを放つ。

 何しろ非常事態なので、聖女アニエス様もお許し下さるだろう。

 鍵は吹き飛び、金属の扉は異音をたてつつ倉庫内へと倒れる。


「な、なんなのあなた。さっきから。こんなのでこの扉が壊れるはずが……」

「うん。いずれゆっくりリーリアに説明できるといいね。マルス、どう?」 

「あれだ」


 それは倉庫の片隅にある、人の背丈ほどの金庫だった。

 他にも訓練用の剣や槍、体育用具等が並んでいる。


「あれも、まさか?」

「そう、魔法鍵が」


 私は再び心の中で謝罪しながら、金庫の扉を引き開ける。

 見事扉は壊れた。


「これか!」


 棚の奥に、薄く光を放つ魔法陣が描かれている。


「リーリア、力を貸して」


 マルスの呼びかけに、さすがにリーリアも余計な事を言わず前に進み出る。

 しばらく二人が念じると、魔法陣の光が消え去る。


「これで、何とかなりそう?」

「これだけだとダメでしょうね、セシルさん。でも何か変化はあるかもしれない」


 私は周囲を見回し、不安そうな子供たちに声をかける。


「大丈夫よ。セシルお姉ちゃんが必ずあなたたちを守るから」


 みんな言葉少なに次々とうなずく。

 このぐらいの子供たちなら、もっと騒いだり泣きわめいたりしても不思議ではない。

 この子たちはそれぞれ事情があって、孤児院にいる。

 普通の子供たちならしないような経験もしているのかもしれない。


 私たちは先ほどの裏門へと急ぐ。


「今度はいけるかも」


 マルスは門に手をかけて押し開けようとすると、少しガタガタと揺れる。

 彼は門に向かって手をかざすと、発した電撃で門が破壊された。


「さぁ、早く!」


 私は皆をうながす。

 外は先ほどと変わらず、周囲の人たちも、どうしたらいいかわからず戸惑っているばかりだ。

 いつもなら歩哨が立っている場所にも、誰もいなかった。

 ようやく一人、赤い顔をした警備兵らしき人間を見つける。


「あなた。一大事ですのよ。早く警備の兵を集めてちょうだい」


 リーリアが鋭く命じる。


「は、はい……その……私は今日は非番のところを呼び出されて……連絡はとっているのですが……あの」


 警備の兵の答えは要領を得ない。


「けど、やっかいだね。応援を呼ぶにも、運の悪い事に主要な騎士団や魔術師団は帝都を離れている」


 確かにマルスの言う通りだ。

 私は母の言葉を思い出していた。

 ただの警備兵がいくら集まっても、事態の解決にはなりそうにない。

 戦力になるような部隊は、リヤウス教団の本拠地に出払っている。


「私は近くの教会に、この毒を受けた方と子供たちを連れて行きます。教会でも何とか応援を頼んでみます」


「そうだね。それがいいかもしれませんね」


 マルスはファイーナの言葉にうなずいた後、懐からカードのようなものを取り出す。

 

「ロン、頼みがある。これを、ロシュフォールの屋敷へ。門番に渡せばわかるはずだ」

「どういう事なのマルス?」

「僕の寮の副監督生(ヴァイスプリフェクト)はロシュフォール家の人間だ。万一の緊急事態があれば連絡するように言われている」

「なるほど。三大公爵家ならおかかえの騎士や魔術師がいるかもね」


 それなら私が行く…と言おうとして思いとどまる。

 私は帝都の地理に詳しくない。

 

 それに学内には、エマや皇子だけでなく、大勢の人がいる。

 まだどんな敵がいるかはわからないのだ。

 マルスとリーリアだけでは心もとない。

 戦力は一人でも多い方がいいはずだ。


「わかった、マルスさん、セシルお姉ちゃん」

「おいらも行く。昔あのあたりに、すんでいたんだ。よく貴族の家の門番とおいかけっこしててね」


 きっぱりと、返事をしたロンに続いてガロという子が進み出る。


 それから辻馬車をつかまえるのが一苦労だった。

 何とか頼める人間を見つけたが、少々頼りない。

 帝都のような大都会では、御者も地理に詳しい地元の人間とは限らないようだ。


 おつり用に持ち合わせていた銅貨と、私の必死の懇願で依頼を受けてくれる事になった。

 御者の顔が多少怯えているように見えたのは、気のせいだと思う。

 リーリアもクレルモン家へ連絡を頼める人間を探したが見つからず、ファイーナへお願いすることになった。


 一旦教会へと行き、そこから頼んでもらうので一手間かかる。

 だが酔っ払った警備の兵に頼むよりはマシだろう。


 こうしてファイーナ達は近くの教会へと、ロンとガロはロシュフォールの屋敷へと出発した。


「逃げてもいいよ、マルス」 

「え?嫌だなぁセシルさん。仲間外れにしないで下さいよ」


「リーリアはどうするの?」

「国と民の一大事に、命を投げ出すのは高貴なるものの義務ですわ」

 

 私の言葉に少しむっとしたように言う。


 高貴なるものの義務はともかくとして、国家の一大事とは大げさに思える。

 だが歴史ある学校で、多くの歴史的遺物や書物があり、多数の貴族や次期皇帝になるであろう第一皇子まで中に捕らわれているのだ。

 まさしく国家的危機かもしれない。


 その時、突如轟音が沸き起こる。

 急いで校内に戻ると蔦の絡んだ、巨大な黒い木が見えた。

 それは地面の割れ目から、急激に出現し、あっという間に枝葉を広げる。


「あれは…暗黒魔樹!」


 リーリアはあえぐように言った。

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