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巻き込まれ決戦、そしてプレゼンへ~

「ひえーっ、オドマ助けてえー!」


「うわっ、マンサまで巻き込まれてるのか! しょうがないなあ、イグニッション!」


 俺はファミリオンを呼び出して、マンサを助手席に乗せた。

 今回は車モードで戦場の隅っこにて待機である。

 決闘装置が作り出した舞台は、滝と河。あれってなんだよ。ナイアガラの滝!? ってくらい膨大な水を吐き出すでかい滝があり、河もでかい。

 河の両岸で向かい合うジブリールと、ガチムチな天使。

 ジブリールの背後には銀色のヘリコプターが浮かんでいる。

 ガチムチの背後は、なんだありゃ。馬鹿でかい、鞘に収まった剣か? 鞘まで金属製だ。


「大変な事になってるねえ」


 助手席に収まりながら、後部座席に俺が配置している非常食をつまんで食べ始めるマンサ。

 お前、すっかりファミリオンに馴染んでるな?

 こんなんでもあそこで戦ってる連中の分体と同じものなんだからな?


「あっ、オドマ、変形を始めたよ」


「本当だ」


 俺たちが観戦する前で、銀色のヘリは見覚えのある巨人へと姿を変えていく。

 偉大なる分体、ガブリエルだ。

 そして対する天使。あのガチムチは何者だろう。

 決闘装置で調べてみる。

 ふむふむ、剣の天使バラキエルか。

 能力は一撃必殺の剣。一切の奇跡も、概念操作も、理論操作も使えない。

 ただただ、鍛えぬいた剣だけで七大天使候補まで上り詰めてきた男だ。

 おお、俺ってこういうシチュエーション好きなんだよな。

 明らかに劣った能力で、優れた力を持った奴を倒す、的な。


「あいつねえ、二度も私を人質にしようとしたんだよね」


「なんだって!? とんだくそやろうじゃないか」


 前言撤回。

 手段を選ばずに戦ってきたわけか。実力は確かなんだが、品性はよろしくないようだ。

 そんなバラキエルの背後に浮かんだ、巨大な剣が変形を開始する。

 柄と鞘が一体となって胴体となり、刃は分割されて、全身を覆う刃物に変わる。

 大変仰々しい巨人だ。


 おおっと、両者向かい合った。


『これでフェアな状況ね。卑怯極まりないあんたに、力の差ってものを教えてやるわ』


『馬鹿を抜かせ小娘が。俺は実力でもてめえに負けねえよ。泣いてママにでも報告するんだな』


『なんですってえ!!』


 ジブリールは気が短いし、挑発に弱いな。

 カッとなって奇跡を使用した。

 おお、いきなり滝の水が吹き上がって、ジブリールの頭上に集中したぞ。

 そいつをバラキエル目掛けて、投げたー!

 避ける隙間が無いほど、後から叩き込まれる水の弾丸の雨あられ。

 だが、バラキエルは少しも揺るがない。

 おおっ、水の弾丸を全て、全身に装備した刃物で受け流している。

 そして巨大な水の玉を、飛び上がりながら……ほほう、背中の刃と腕の刃が一つになって、巨大な剣になった。

 これで一刀両断だ。

 奇跡を物理的な力でねじ伏せるか。

 これは凄いな。


「オドマの解説分かりやすいねえ」


「マンサはいい加減僕の保存食を食べるのをやめなさい」


 おや、今度はバラキエルの反撃だ。

 水面を走りながら、空を飛ぶジブリールに接近していくな。とことんまで白兵戦オンリーなのか、あいつは。

 おっと、突然飛び上がりながら回転……これは斬撃を飛ばしたな。

 これは水のバリアーでガブリエルに防がれたが、その隙に密接するところまで間合いを詰めている。

 この距離だと奇跡主体のガブリエルは厳しかろう……いやいやいや。なんだあれ。

 ガブリエルが水で出来たレイピアを振るっている。これで、無数に襲ってくるバラキエルの斬撃をいなして防ぎながら、後退していく。

 やっぱり接近戦ではバラキエルに一日の長があるな。

 ガブリエル、滝を背面にするところまで追い詰められた。

 今度はそこからガブリエルの反撃だ。頭上から槍状になった水がバラキエル目掛けて降り注いでくる。

 バラキエル、距離を取った。

 実体が無い水の奇跡を、剣で防ぐのはさすがとしか言いようが無い。

 うーん、いい勝負ですな。

 マンサを人質にしようとしたダメな奴とは言えど、腐っても七大天使候補者だ。間違いなく強い。

 この俺も、接近戦に持ち込まれたら危ないな。グレートサンダルフォンにならなければきついだろう。

 剣の技術で言えば、技巧があるタイプではないバラキエル。

 あいつの剣は、ただただ敵を倒す事に特化している。確かに剣を使わせたら、アビス最強を名乗っていいんじゃないかな。


「んー、退屈ー」


「もう試合に飽きたの?」


「長いんだもの」


 マンサはシートをリラックスさせて、ゴロゴロしている。

 こら、年頃の娘が薄着でゴロゴロとははしたない。

 まあ、集落にいた頃はほぼマッパだったんだけどな。

 とまあ、俺がこういう風に余裕になっているのにも理由がある。

 ジブリールは負けないからだ。

 一見すると、バラキエルが押しているように見える。

 だが、ジブリールは戦いながら戦場を支配して行っていた。

 今、彼女の仕込みが完了したところだ。

 周囲の戦場が、轟音を立てて崩れていく。

 あらゆる場所から、間欠泉のように水が吹き上がり、大地が崩れる。

 これが、ガブリエルの切り札なのかもしれないな。

 戦場の全ての水を使い、さらに水を召喚し、相手を圧倒的な力で押しつぶす。

 全方位から襲い掛かる水の攻撃を、バラキエルはいなしきれない。

 水の球体に包み込まれ、宙に持ち上げられ……。

 あ、そのバラキエルに目掛けて手を突き出して、開いた手のひらを握り締めるアクションかっこいいな。

 ガブリエルの動作とともに、水は圧縮され、同時にバラキエルは圧懐した。

 うむ、順当な勝利だな。


「オドマなんだか偉そうー」


「一応、七大天使候補者なんだから、偉いんじゃないのかなあ」


 とかやっているうちに、決闘装置もこれを決着と認めたらしい。

 戦場は解除された。

 後に残ったのは、失神して尻を突き上げた姿勢でぶっ倒れているバラキエル。

 それを腕組みしながら見下ろすジブリール。


「ていっ」


 あっ、ジブリールがバラキエルの尻を蹴った!

 バラキエルが起きたぞ。


「くそっ、次に会ったらただじゃおかねえ!」


 捨て台詞を吐いたと思ったら、ぴゅ―っと逃げ出した。

 あいつも、もっと性格が良ければなあ……。

 今回の試合は、ラファエルもウリエルも見ていなかったようだ。


「もう、あいつら見にも来ないんだから! 将来の同僚が心配じゃないのかしら!!」


 ジブリールがぷりぷり怒っているぞ。

 だが、構っている暇は無い。なぜならだ。


「も、もう終わったのかね……」


 各部族の族長たちが、恐々顔を出す。


「はい、これで問題は片付いたよ。これほどの力を持った天使が、今回の事業に協賛してくれるんだよ」


「我々にお任せください」


 俺と、どこに隠れていたのか現れたルーサーが、どーんと胸を張って主張した。


「お、おう」


「確かに、あんな凄い術を見せられたらなあ」


「ガッコウというのも凄いのかもしれん……」


 七大天使決定戦と学校は何の関係も無いけどな!!

 かくして、俺は各部族の協力を取り付けたのである。

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