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暴れん坊女教師

 俺たちを囲む、いかにもごろつき風の男たち。

 全員がアビス人かバスタードで、なるほど、俺たちを舐めてかかっている。

 一見すれば、インド人風の知的な女教師と、小学校高学年ほどの俺とマンサの三人連れ。確かにとても弱そうに見えることは確かだ。

 だが、弱そうだからと絡んでくるのはいかがなものか。

 あれか。モラルゼロか。ゼロなんだろうな。


「あなた方の発言は大変、子供たちの教育に悪いのです。ですので、私の教育方針に従って罰を受けてもらいます」


「は? 罰? あんたが俺たちに何をしようっていうんだ?」


「気持ちいい罰なら大歓迎だぜー!」


 ヒャッハーどもがげらげらと笑う。

 いやあ、しかし、シャクティー先生しょっぱなから宣戦布告である。

 俺はまた、彼女は「発言を控えてくれ」とか、「謝りなさい」なんて言うんだと思っていたのだが、もう罰を受けさせる事が確定らしい。

 で、一見すると知的な美女であるシャクティー先生は強そうに見えないので、ごろつきどもはバカにしてかかっていると。

 おいおい。

 天使なんてのが存在する世界で、ちょっと想像力が足り無すぎやしないか?


「最初は俺が行くぜー! うへへへ!」


 おっ、なんか小柄で粋った奴が出てきた。

 先生よりも背が低いが、相手が女教師なので舐めているのだろう。

 一気に抱きつこうと飛び掛ってきた。


「”裁き(ジャッジ)”!!」


 先生が叫んだ。

 彼女の背後に、黄金の六枚翼が出現する。

 同時に、先生の指先がビームを放った。背が低い男、「えっ」っていう顔をした後、そのままビームが額に直撃して、頭の半分くらいが塩の塊になった。

 あっ、あれは完全に死んだ!!


「えっ」


「えっ」


「えっ」


 ごろつき達が驚きに声を発した後、しんと静かになる。

 自分たちが何者にケンカを売ったのか、どんなやばい相手を愚弄したのか理解したのだろう。


「お、おかしな術を使いやがって! みんなで一斉にかかれー!!」


 前言撤回。あいつらなーんにも理解してない。

 ごろつきたちがどんどん襲ってくる。

 俺の脳内で、生前に見た時代劇、暴れん坊上様バイオレンスジェネラルのテーマソングが鳴り響いた。

 飛び掛るマッチョの拳を両手で捌きながら懐に入り、「”裁き”!」

 後ろから来るおでぶのハグをしゃがんで回避しながら、腹に向かって「”裁き”!」

 近場の椅子を手にして振り回す男に向かって、連続での「”裁き””裁き””裁き”!!」

 たちまちの内に、レストランは阿鼻叫喚の地獄になった。

 で、この混乱に乗じて俺とマンサに襲い掛かるマッチョがいるわけだが、そこは予測済みだ。

 俺もハンセンのテーマソングを口ずさみながら、料理が残ったテーブルに駆け上がり、飛び込みながらのラリアットをマッチョに叩き込む。

 俺のウェイトでは奴を転がす事ができないが、驚きで一瞬動きが鈍ったマッチョ目掛け、先生が無慈悲な「”裁き”!!」


 当分このレストランは塩に困らない事であろう。

 下手に威力制限がかかった裁きの魔術は、男たちの肉体の一部を塩の塊に変化させて生殺し状態。

 いやあ、一思いに死ねた連中は幸せだなあ。

 店の主人は全く動じていない。


「損害の代金請求は、いつもの第三天使学院までお願いします」


「はいよ」


 ああ……いつものことなんだな。

 俺は納得する事にした。

 この光景に目を丸くしているのがマンサである。


「はえ~……。な、な、何が起こってるのぉ……?」


「世界の理不尽なことが、力によって解決されているところだよ。理不尽にはより以上の理不尽で対し、ごり押しで踏み潰す。うーん、シャクティー先生は脳筋だったのだなあ」


 レストランの主人と何やら話しこんでいる先生。

 すぐに戻ってきた。


「どうやら彼らは、東部の灰色の町から流れてきたグループのようですね。西部のパワーバランスを知らずに粋がってしまったのが、彼らの不幸を呼んだのでしょう」


 淡々と言うのが怖いよ先生!

 というわけで、俺たちは騒ぎの後片付けもそこそこに、撤退する事にした。

 事後処理の費用は、やはり学校に請求が来るのだそうだ。

 これも、シャクティー先生が主天使の地位を持っているお陰で無理が利くのだそうな。


「明日からオドマくんとマンサさんが通う学校は、無法地帯ではありません。安心して下さい。ですが、こことは異なる力の法則によって支配されています。勉学に励む事も重要ですが、学園と言う名の小世界で生き残る術を磨く事もまた肝要です」


「うん、今日一日町を歩いてみて納得したよ。町がこうなら、学校だってまともなはずがないよね」


「まとも……? オドマくん。学校とはおおよそ、全てがそのようなものですよ?」


 うわあ、この世界の常識が怖い。

 何一つとして、安穏と享受できる平和がない世界。

 それがこのアビスだ。なるほど、奈落(アビス)とはよく言ったものだ。


「何かあったらオドマが守ってくれるもんね」


 マンサが俺の腕を抱き寄せた。


「可能な限り頑張りはするけど……マンサはマンサで無茶をしないようにね」


「はーい!」


 心配である。

 その後、学校で使う制服や筆記用具の類を購入して、町歩きは終了となった。

 いよいよ明日からは、楽しみでもあり、恐ろしくもある学校生活だ。

 勉学が俺にとって実りあるものであることを願いつつ、今日を終えるとしよう。

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