7 町そして買い物②
別で書いてる「異世界から来た勇者」も宜しくね。
僕達は町に着いて、これまでの道程で手に入れた物資を売り払い。僅かなお金を手にする事が出来た。
今僕の手には、日本円で一万円とUSドルが96ドルある。
「このお金で、これから生活する上で必要な物を買わなくちゃね」
『そうだなユキ。取り合えず互いに、必要だと思う物を言っていこう』
「うん!」
僕達は町の通りを歩いていた。
ツインテールの少女はその黒髪を揺らしながら、僕の隣を歩いている。
彼女の名前はナインティーン。ナインティーン・イレブン。
彼女の正体は、僕の腰のホルスターに仕舞われている45口径のオートマチックピストルで、いわゆるM1911コルトガバメントと言われる形の銃だ。
コルトガバメントというと、昔々再放送でやっていた「あぶ○い刑事」のダンディーな方の刑事が使っていた銃のイメージが僕にはある。
他には有名なアメリカ映画の中で、ドイツ軍のタイガー戦車を仕留めていたっけ。あの映画、冒頭のノルマンディー上陸作戦の画は凄かったなぁ。
何故その銃が、……というか銃の精霊が、小さな女の子の姿をしているかは、僕にも解らない。彼女自身は神様がそうしたとしか言わないので、それ以上は知りようが無かった。
「生活に必要なのはテントかな?だって野宿するんだし。後は食べ物とか」
『ユキ。テントなどを買う余裕は無いぞ。ポンチョで我慢しろ。出切れば赤外線スコープをごまかす為にも、体温を保つためにも内側にアルミ蒸着シートがついている灰色のデジタル迷彩が良いな。無ければソレっぽいものを自作する手もある』
「ポンチョって雨具だよね?」
『ああ、そうだ。どっちみち「雨の日だから“狩り”はしない」なんて言ってられないからな』
「狩り?」
『モンスターを、そして人を狩る事になるだろう』
「…………」
モンスターはまだ理解できる。前の世界でもRPGで敵のモンスターをやっつけたり、狩をするようなゲームはあったからだ(僕は自分の事意外は、覚えている)。 だけど、人を狩るってどういうことだよ?
『勘違いするなよ、ユキ。お前が襲わなくても向こうから襲ってくるさ。そいつらを返り討ちにすれば良い』
「どっちにせよ、気が重くなるよ。ナインティーン」
『ふん、甘ちゃんが……』
「それで、ポンチョ以外に何が要るかな?」
僕は話を変えた、というか元に戻す事にした。
『食料はお前の言う通り必要だな。だが必要最低限の量だけあれば良い。だから後はビタミン剤くらいかな』
「……ビタミン剤」
『新鮮な食べ物は値段が張るからビタミン剤で補う必要がある。それと包帯、消毒薬を買いたい。少しの怪我でも雑菌が入れば取り返しにならない事になる可能性がある』
「包帯と消毒薬ね。後はライト(照明)なんかはどうかな?」
『ライトか……フラッシュライトが欲しいが高いだろうな。手元と足元だけを照らすなら魔術で足りるだろう。……ああ~~!!金がいくらあっても足りん。本当は、お前に、抗弾用のプレートやヘルメットを買って貰いたいのだが、それ以外にもアラミド繊維や鋼鉄のプレートが入ったブーツや、肘当てや膝当て、暗視ゴーグル!!』
なんだか、買うものをリストアップするんじゃなくて、買えないけど買いたいものリストアップする作業に変わってしまっている。
「それだったら、僕はM16とかM4ライフルが欲しいな」
田中銃砲店に売ってたのを見て、凄く格好良いと思ってしまった。ただし、ソレをモンスターや人に向けて撃てるかというと別だけど。
『アタイが居れば十分!!……だとは言えないのは解るが、すこし現金すぎないか?ユキの教官でありパートナーなのはこのアタイだ。それは絶対に譲らないからな』
「う……うん」
なんだか、少し恥ずかしい。
まるで告白かプロポーズみたいじゃないか?
目の前の少女は銃だ。だけどその姿は幼くとても可愛らしい。そして飛び切り美しい事も事実だった。
『童貞坊や。心の声がアタイに駄々漏れだぞ。アタイが完璧なフォルムをしているのは重々承知だけれど、其処まで言われると少し照れるな。……よし、ユキ!褒めて遣わす、そしてアタイを好きなだけ磨く権利をやろう!』
「何言ってんだよ、もう!」
聞かれていたのか……心の声を。
『お前の言う通りM16系列も捨てがたい。コルトは最高の銃器メーカーだ。うむ!……だが、生き残る事を一番に優先してライフルを決めるなら※.30-06スプリングフィールド弾を使うものが良いだろうよ。猟銃として一般的だし、弾丸の流通量も多いはずだ』
※三十口径の強力なライフル弾で、狩猟用としてもっとも流通量が多く、有効射程は1キロ超でさらに強力な威力を備えている。
少し、悲しそうな目をしながらナインティーンは言った。
「そんなに、他の銃を使って欲しくないの?」
『ハッキリ言って、浮気される気分になるだろうな。だが、お前が死んでは元も子も無いよ。確かあの銃砲点にレミントンの※M7600が置いてあっただろう?あれならポンプアクション式だからボルトアクションの※※M700なんかより、かなり連射が利く。なので遠距離の狙撃だけでなく中距離の戦闘でも使えるだろぜ。※※※Oリングの破損がちょっと厄介だけどな』
※レミントンのポンプアクションシリーズの一つ。M760よりもOリングの問題点が改善されている“らしい”。ポンプアクションなので手が疲れるが毎秒二発程度で連射できる。
※※言わずと知れた有名なボルトアクションライフル。米海兵隊が発展系のM40を狙撃銃として運用している。
※※※ポンプアクションチューブに取り付けられたOリング。これが破損するとポンピングが出来ずに次弾を発射できなくなる。このせいで、獲物を前に地団駄を踏んだハンターも居る。
「???……僕、鉄砲の事、そんなに詳しくないからライフルはM16とM4とAK47しか知らないんだ」
『そうか……まあ、今は買う金も無いからこんな話をしても無駄かもしれないな』
「脱線しだしたのは、ナインティーンだよ?」
『むぅ……お前男だろ、男なら細かい事気にしてんじゃねえよ!このファッキン……ファッキン異世界人!』
今、ファッキンの後に何を付けるか、一瞬困ったな?
「もう、本当に口が悪いんだから。せっかく可愛いのに」
『むむむぅ……そっ、そうだ!確か腕輪の他に指輪も手に入れてたな。それも売りに行こう!!うん。それが良い』
逃げたな……
結局、指輪は貴金属を扱っているお店で売り払った。そこは質屋や両替も行っているらしかった。
買い取り金額は五十ドルと、これまでで売り払った物の中では一番高かい。
「じゃあ、今度は買い物だね」
『ああ、重要な物から買って行け、まずは包帯と消毒薬だ』
包帯、消毒薬そしてビタミン剤はドラッグストアのような雑貨店で見つけた。店主はリザードマンのような姿をしており、かなり怖かった。
包帯は十ドル。消毒薬は五ドル。ビタミン剤は十ドル。それ以外にも重曹四ドル。裁縫セット四ドル。ビニール紐一ドル。それと食料としてビスケット山盛り十ドルとピーナッツバター(瓶入り)を二ドルを購入した。
あっという間に四十六ドルが飛んでいってしまった。
『次はポンチョだな。広げたときに四角になって且つ大き目の物が良いだろう。それならテントとしても使えるからな』
「へぇ、色々知ってるんだね。ナインティーンって」
『お前がスカタンすぎるんだよ』
でも、なんでだろう?なんで銃がそんな事知ってるのかな?僕は少し不思議に思った。だが、この世界は不思議で満ち溢れすぎており、それ以上疑問には感じなかった。
ポンチョは洋服やボディーアーマーを売っているお店で購入した。
下着やズボンと一緒に、防弾チョッキをやヘルメットを売っているというのは異様な風景だった。
そのお店で買ったのは、灰色のデジタル迷彩ポンチョ三十ドル。アルミ蒸着式保温ポンチョ十ドル。靴下五足セット五ドル。下着上下の予備十ドル。手袋十ドル。
合わせて六十五ドルだ。これまでの買い物で百十一ドルが飛んでいった。残りは三十五ドルである。
「これって当分の間の食料はビスケットとピーナッツバター、ビタミン剤と水って事になるんだよね」
『そうだな。だが食えるだけましだぜ?』
溜息が出てくる。
一体どうやって生きていくのか……人生設計が出来そうも無い。
『残りのドルは幾らだ?』
「三十五ドル六十セントだよ。さっきの貴金属店で一万円をドルに両替しておいた方が良かったんじゃないかな?」
実は先ほど、指輪を売ったお店で、その事をナインティーンに言ったのだが、彼女は諭吉はお守りのために置いておけと指示された。
『あの諭吉は取り合えず“無い”物として扱え。何かあったときにきっと助けになるだろう。それよりも田中銃砲店で※F1手榴弾が四十ドルで売っていた。余った金で買いに行こう』
※旧ソ連で開発された手榴弾。今もロシアや第三世界で大活躍している。
「四十ドルって、足りないじゃないか!」
『値切るんだよ!財布から諭吉を抜いておけよ』
ナインティーンの言う通りに僕は一万円札を財布から抜いて履いている靴下の内側に隠した。だけど手榴弾なんて一体どうするつもりだろう。
再び、田中銃砲店のドアを開いたとき、カウンターには先ほどの男性とお爺さんが居た。
男の人の方は、僕の顔をみると少し不思議そうな顔をして喋りかけてきた。
「おお、坊主じゃないか?何だ?また何か売りに来たのか」
「正造!ワシのお客さんに、坊主は失礼じゃろうが!……さっきは息子が済まんかったな……怒っといたんで勘弁しとくれ」
お爺さんは、男の頭を叩くと僕に謝ってきた。どうも店主はこのお爺さんで男の人の方は息子らしい。
「いえ、もう気にしていませんから。それよりも今度は買いたい物があるんです」
「買いたい物?なんだ坊主、言ってみろ」
この男の人は、僕の事を坊主と呼ぶ事を諦めていない様だ。
「あのゲージにある爆弾……」
『F1手榴弾だ』
「F1手榴弾を購入したいんですけど?」
「おっ、F1か。ちょっと待ってな」
そう言って男の人は、カウンターを出て、ジャラジャラとした鍵の中から一本を選びゲージを開けた。
その時、僕は彼が腰にサブマシンガンを下げているのを初めて知った。
「必要なF1の数は幾つだ坊主?」
「一つです」
「よし、一つと。それで信管はどうする?通常のUZRGM信管か、それとも※バリアントモデルか?」
※信管のヒューズが遅延タイプでないもの。ブービートラップ向き。
「え?」
『通常ので良いと言え』
「あ…通常のでお願いします」
「あいよ了解、ほら四十ドルだ。内のはちゃんと爆発してくれるぜ!」
男の人は、僕の目の前で、手榴弾を組み立ててカウンターの上に置いた。
というか爆発しない手榴弾もあるのか。知らなかった。
「その……実はお金を三十五ドルと六十セントしか持って無くて、まけてくれませんか?」
僕は財布を全て、ひっくり返して中身がスッカラカンである事を示して見せながらお願いした。
「ああん?内ではそういう事はしないんだよ坊主」
「良いじゃろ」
断る男性の横で、お爺さんがまけてくれると言ってくれた。
「おい、親父どういうつもりだ!」
「さっきの、お前の失礼はウエスとジャンクヒンで済まされるものじゃない。それに、坊主坊主と呼びよって……その癖直りそうにないんでな。その分のお詫びじゃ」
そう言ってお爺さんは、お金を奥のレジに仕舞い、僕に手榴弾を手渡した。
「あ…そのどうも有難うございます」
「今後とも、贔屓にしておくれな。息子は接客がなってなくて困る」
「はい」
商品のやり取りが済むとお爺さんは、カウンターの奥に消えた。
「ったく、親父の奴。まあ五ドル程度ならしゃあないか。さっきの弾も全弾問題なさそうだったしな。だが、あんまり露骨な値段交渉されると困るぜ坊主」
「その、すいませんでした」
「ふぅ。まあ良いって事よ。これは余計な事かもしれないが、俺にガツンと言ったお前、なかなか良かったぜ。今みたいにあんまりナヨナヨした喋り方してっと舐められるぞ?」
「はい」
「それだよ。それ!なんだか不思議な奴だな~~」
「僕もそう思います」
「はははっ、全くだ!!所でこれも余計な事だが、得物の方その一丁だけじゃ無く、ライフルか何かを持って居た方が良いと思うぜ。流石にハンドガンだけじゃ心配になっちまう」
「今はちょっと持ち合わせが無くて」
「知ってるよ!今さっき値切られたばかりだからな。だが金が溜まったら、その時は内で買ってくれ」
「解りました」
「おっ、良い返事だね!まあボッタくったりはしねえよ。怒らせると恐そうだからな」
それは、恐くない相手にはボルということだろうか……
『これで財布が軽くて飛んでいきそうな状態になってしまったな。だから次は仕事を探さないといけない。ついでだから、この男に仕事を斡旋してくれそうな場所を訊ねてみろ』
(うん。そうだね)
「ねえ、おじさん。この辺りで仕事を斡旋してくれそうな所って無いかな?」
「おじさんは、ねえだろ。正造って名前がある。正造おにいさんと呼ぶ事を許してやろう」
「……正造さん。それで仕事を斡旋してくれそうな所は?」
僕はホルスターに手をかけながら言った。
「ちっ!仕方がねぇ。お兄さんは諦めようじゃねえか。仕事なら酒場に行ってみな、仕事の依頼の貼り紙を掲示しているし、店の親父に直接訊ねてみても良い。まあ文無しの坊主の相手を親父がするかどうかは解らねえがな」
「酒場……」
「通りを南に行った所にあるぜ。所でよ、坊主。お前の名前は?」
「僕ですか……ユキ……ですけど」
「ユキか……確かに何か、そんな感じの名前してそうだもんな」
どういう意味だろうか?
「ありがとう。正造さん。お金が入ったらまた覗きに来るよ」
「おう。来い来い。金が無くても来てくれて構わねえぜ!時間潰しにもなるし、店内に人がいる方が客寄せになる。強盗も防止できるからな!」
うわぁ……
こうして僕達の買い物は済んだのだった。
F1対人手榴弾の購入目的はブービートラップ用です。遅延信管0秒の物を購入しなかったのは、使用目的に汎用性を持たせるためで、そのためナインティーンは通常信管を選びました。
魔石:1
指輪:1
腕輪:1
携帯濾過器:1
予備フィルタ:3
H2Oペットボトル2L:3
携帯食料:5
鍋:1
布テープ:1
ダガー:1
.45acp:93
10rdsmag:2
15rdsmag:1
M1911モデル
F1対人手榴弾(遅延信管型)
US$:0
円:10K




