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5 これが、この世界


 その日、僕は夜をナインティーンと共に、先ほどまで隠れていた崩れた廃ビルの一角で過ごした。


 喉が渇いたしお腹も減ったが、僕みたないなFNGが夜に暗視ゴーグル無しで出歩くのは自殺行為に近いと警告されたので、比較的安全そうな場所で隠れている他には選択肢は無い。


 僕は中々、眠れなかった。月明かりにグールから奪った時計をかざしてその病身を見ていた。その時計は日本の有名メーカーのもので文字盤が光を受けると発電し蓄電するタイプの時計であることが文字盤に書いてあった。


『おい、早く寝ろよ。明日の早朝、此処を発つからな。ピックアップトラックが向かった方向に向かう。多分、町があるだろう』


 艶やかな黒髪を無造作にコンクリートに投げ出したツインテールの少女はぶっきらぼうに言い、背中を向けた。


「くすん……解った」


 無理やり目を瞑って、僕は眠りに落ちた。

そして、次の朝、余りに喉が渇いたので草木に付いた朝露を啜った。


『水を得ようと思えば、このあたりなら携帯用の濾過器を使った上で煮沸する必要がある。町なら濾過器も売ってるだろう』


 こうして僕は、ピックアップトラックが向かった方向に足を進めた。

トラックが通った後は舗装されているのかされていないのか解らないようなボロボロのアスファルトだった。


『道のど真ん中を歩くのは止めろよ。目立ち過ぎるからな。脇を行くんだ』


「うん」


『それとお前、銃はホルスターから抜いておけ、いざと言うときに銃が仕舞われたままだと困るだろう?』


「お前じゃなくて、僕にはユキって名前があるんだけど……苗字は……あれなんだったけ?」


 嘘だろ?苗字まで忘れてる!?

たしか学生証がポケットに……って無くなってる!!


『ユキか……なんだか女々しそうな名前だな?』


「女々しいって、女の子の君が言う台詞じゃ無いと僕は思うんだけど。ねえ、ナインティーン。昨日のグールとか言う奴。いっぱいいるの?」


『いっぱい居るな。グールどころじゃないって昨日も言ったろ?モンスターなんて図鑑でも無きゃ全部を言うのは無理なくらい種類は多いぜ。気を付けないといけないのはウルフとかハウンドとか呼ばれている犬が凶暴化した獣の類だな。足が速いし、銃で狙うのは難しいな』


「うわぁ……」


『地上だけでなく空にも気を付けろよ。キラービーやインプ、ワイバーンやグレムリンだっている。まあイビル種族は昼間見かけることは少ないけど』


「イビル?」


『魔界からこっちに召還された悪魔に関係する種族だ。アイアンゴーレムあたりだとC4か戦車、ロケット弾でもないと相手にするのは厳しいな』


 C4?戦車?ロケット弾?


『とりあえず、町に着いたら買い物して仕事を斡旋してもらおうぜ。徒歩での移動なんてありえないからさ、金貯めてバイクか車を手に入れないと』


 解らない。この世界が一体どんな世界なのか……

僕には全く想像できそうにない。


「はぁ…はぁ……本当に、町があるの?行けども行けども瓦礫のばかりじゃないか?」


『黙って歩け、喉が渇くのならそこらの小石でも口の中に含んでいろ。唾液が出るから少しはマシになる』


「へいへい」


 丸く小さな石を拾って、言われるままに口に放り込み、アメのように舐める。確かにカラッカラだった口の中に湿り気が戻った。


 再び歩き出し、日が高くなった頃だった。


 パン


 パパン


 小さい音だったが、銃声が聞こえた。


「ナインティーン!今の聞こえた?」


『ああ、聞こえた。ここからは静かにしろ。口に出さなくてもお前の心の中は、ぼんやりとなら読める。アタイだって実際に喋っているわけじゃな無いからな』


(どうするのさ?音がした方から離れなきゃ!)


『離れる?何を言ってる。音がした方に行くに決まってるだろ。姿勢を低くして遮蔽物に隠れながら進め』


(えええ~~!!)


『銃声が聞こえていると言うことは、そこで争いが起きていると言う事だ。もしかしたら、おこぼれにありつけるかも知れないだろ?』


(おこぼれ?)


 ナインティーンは自分が他の人間から見えない事を良い事に、どんどん進んでいく。だが一定以上の距離を離れるとそれ以上は遠くにいけないようだった。


『早くしろ!!とろくさい奴めが。アタイの本体はお前が持っているんだから、お前が来ないことには先に進めないだろ』


「…………」


 瓦礫や茂みに身を隠しながら進むと、銃声の発生源に辿り着いた。


『おお、おお。やってるねえ!』


 目の前、といっても五十メートル以上の距離があるが、道路の上で銃撃戦が繰り広げられていた。

複数の男達が、男女のペアを襲っているように見えた。

男女のペアはセダンの影に隠れて応戦している。

男達は大きなバンに装甲を貼り付けたような世紀末な格好の車に隠れて銃を撃っている。


『一番良いのは共倒れに成ってくれる事なんだが……』


 目の前の少女はとんでもなく物騒な言葉を呟いた。


(共倒れって……助けなくて良いの?)


『助ける?お前は死にたいのか?見ろ、襲撃している男の数は五人だ。五十六式以外にもG3ライフルのコピーのBA-72を持ってる』


 ナインティーンが言うように男達は皆、軍用のライフルを持っていた。


『お前が身に着けているベストだが、お前が寝ている間に確認したけどクラスⅢーAの防弾タクティカルベストだ。だがな7.62x51mmの前じゃ簡単に抜かれちまうぜ?恐らくは安価なマイルドスチールを使った弾ぁ使ってるだろうから、貫通力は高い。その分、ストッピングパワーは落ちるが、それでも衝撃波はお前の内臓をパルプみたいにグチャグチャにするぜ』


 …………


『まあ、見てなって。あのカップルも馬鹿じゃない。見ろ。ここからじゃ解りにくいが、タイヤのホイールが銃弾を弾いているだろ。アルミホイールじゃなくわざわざ鋼鉄のホイールを使ってやがる』


 それが何だというんだろうか。状況は二対五だ。

男女のカップルは拳銃とサブマシンガンで軍用ライフルにかないそうには見えなかった。


『どうだ。実際に見て解っただろう?一番恐ろしいのは人間だって。……グールなんて、銃弾の前じゃあ紙くずみたいなもんさ。まあゾンビと違って知能が高いから油断は出来ないけどな。中には武器だけじゃなく銃まで使える奴らも居るからな』


(こんなのおかしいよ)


『言っておくが助けようなんて思うなよ。この世界じゃ女も子供も関係無い。銃を持てば皆平等さ。お前が人畜無害のクソッタレ聖者だったとしても、相手はお前をそうは見ないさ?助けに入ったつもりが撃ち殺されるのが関の山だぜ』


「そんな……」


『人間同士の信頼関係ってのは時間をかけて築くもんなんだよ。見も知らない他人の事まで気にしてると早死にするぜ、まあユキは前の世界では、どうせ最近までママのオッパイしゃぶって小便も一人で出来ないような糞餓鬼だったんだろうけどよ。「ママが支えてあげますからピッピしましょうね」とか言われてたんだろ?』


(ふざけるな!そんな訳無いだろ!!)


『だったら黙って見てろ。此処がお前の世界だ!見ろ、なかなか面白いことになってるぞ、まさか奴ら69式を持ってるとはな!』


 男女のペアは今だに善戦していた。

女性がサブマシンガンで斉射している間に男性の方がRPG-7を取り出して男たちの方に発射したのだ。


「おお!凄い」


 思わず声に出しして叫んでいた。


 ロケット弾がバンに直撃して、爆発炎上を起こす。


『ディーゼルじゃなくてガソリン車か……燃料部分に装甲を付けてなかったんだな馬鹿め』


 その隙を突いて男女はそれぞれ反対の方向に飛び出し、動揺する男たちを挟撃しあっという間に倒してしまった。


『ほらな。出て行くべきじゃ無かっただろう?』


 二対五だったのに……逆転してしまった。


 暫らくして男女のカップルは一通り残骸と男たちを漁ると車に乗って去っていった。方向はピックアップトラックが向かっていた方向と同じのようだ。


『行ったな。……じゃあ、漁りに行くぞ。モンスターが寄ってくる前にな』


「う…うん」 


 まだ炎が治まらない現場に行くと其処は酷い有様だった。

爆発に巻きこまれて炎上している男も居る。


「熱い」


『車には出切るだけ近付くな。もっと酷く爆発する可能性もある。ほら此処に荷物が放り出されてる。ライフルは……全部持っていかれたか。まあどうせ屑ライフルだろうけど』


 爆発の影響で車外に放り出された荷物を、車から離すように道路の隅に運ぶ。それ以外にも使えそうな物を漁った。


『ちっ、金になりそうなものは全部持っていかれたな』


 手に入ったのは、2Lペットボトルに大き目のフィルターが内蔵されているような携帯式の濾過器。予備のフィルター三つ。

水が入った同じく2Lペットボトル三本。

そして携帯食だろうか袋に入ったビスケット。たくさんある。

ライフルの弾とマガジン。これは7.62×39mm弾だそうだAK47の弾丸だそうだ。 

小さなナイフ。俺が持っているナイフより安物っぽくて小さい。

凹んだ鍋。

それと布テープ。


『糞みたいな物しか残ってないな。あいつら全部持って行きやがった……もしかしてあのカップル。襲われてたんじゃなくて、襲ってたんじゃないのか?携帯食料に手を出していないし……』


「もしそうなら、僕は絶望するよ。でも食べ物と水が手に入ったし……濾過器も手に入ったから水もこれで飲めるんだよね」


『まあな。さあて、捕る物を捕ったらさっさと離れるぞ!』


「うん!」


 炎上する車から距離を取って、早速僕は、瓦礫の影で食事を摂る事にした。


 ペットボトルの水はそのまま飲めるんじゃないかと思ったが、ナインティーンは濾過しろとうるさかった。だが彼女の言うことは正しいという事ぐらい僕にも解る。言われたとおりペットボトルの水を濾過器に入れて、時間をかけて鍋に水を貯めた。そして集めた薪に魔術で火をつけお湯を沸かした。


 沸騰したお湯を冷まして、白湯を喉に流し込んだ。

久しぶりに飲む水がこんなに美味しいなんて……

ビスケットの方はパサパサしていたが、お腹の減っている僕には塩っけがあるだけで十分だった。


「ねぇ、ナインティーンは食べなくても良いの?」


『アタイの本体はお前のホルスターにある銃だ。飯なんて食べれるわけないだろ?まあ、街に着いたらガンオイルとウエス、メンテ清掃用の道具を買って丁寧に磨いてくれれば良いさ』


 そう言ってツインテールのゴスロリ少女は笑った。


魔石:5

指輪:1

腕輪:1

携帯濾過器:1

予備フィルタ:3

H2Oペットボトル2L:3

7.62×39mm弾マグ(中身あり):2

携帯食料:9

鍋:1

布テープ:1

ダガー:1

US$:50.60

円:10K


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