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16 穴場(人工)


 お昼から始めた射撃訓練。


 難しい。


 ナインティーンが僕の身体を使って射撃を行っていた時。彼女は銃のサイトを使って居なかった。狙わずに素早く正確な射撃をしていたのだ。実際にやってみるとその難しさが解る。

取り敢えず、両手で正確な射撃が出来る様にナインティーンの身体の動きを思い出しながら。何度も何度も引き金を引いた。


『今日は、それぐらいで良いだろう』


 ナインティーンが僕に声を掛けた時、購入した五百発の弾丸は無くなっていた。


『ほらな。アタイの言った通り五百発なんて直ぐに無くなっただろ?だが最後の方は中々コツを掴み始めてたんじゃないか?』


 そうは言うが、彼女の華麗な射撃とは、ほど遠かった。


『ついでだ。ライフルとスコープの零点調整ゼロインをしておけ』


「ゼロイン?」


『取り敢えず近場の壁、そうだ……なあそこ壁が良いだろう。スコープで狙って撃ってみろ。その時のレティクルのセンターと着弾点のズレを、スコープについているダイヤルで調整して合わせるんだ。横方向の移動をヴィンテージダイヤル、縦方向をエレべーションダイヤルと呼んでる』


 僕はナインティーンの話を聞きながらライフルの準備をした。


『その銃はセミオートライフルだ。アタイと同じ様に一発目以外は、自動的に装填されるんだぜ。今付いてるのは多分、ノーマルの10ラウンドボックスマガジンだろう』


 僕は立った状態で構えようとした。


『ユキ、ゼロインをするんだから撃った後、銃が動くと不味い。リュックをバイポッドの代わりにして、プローンで撃て』


「プローン?」


『腹這いになって撃つんだ。腹這いになる体勢はどんなでも良い。やりやすい様にやれ。ただし、スコープを覗きながら呼吸した時に、サイトが上下にだけ動く様にしろ。呼吸をすると胸と腹が膨れるだろ?その動きがスコープに伝わる。縦方向に動く分は良いが、横や斜めに動くと狙いを付けられないからな』


「解った」


『引き金を引く時、その力で銃口は左に僅かにずれる。それを防ぐためにもグリップを握らずに親指と人差し指で挟む様にして、モーメントを掛けずにすると良いかもな』


「拳銃の時はどうするのさ?」


『さあ?どうしようもないな』


「良くさ、引き金を雑巾を絞る様に引くとか言うけど?」


『お前は、拳銃で撃ち合う距離にいる複数の敵に向かって一々、慎重に引き金を引くのか?拳銃の引き金を引くときはスパッスパッと素早く引き金を引くんだよ!それに、絞る様に引くって何だ?そんな事やったって、結局モーメントがかかりゃ銃口はぶれるに決まってんだろ?』

 

「そ……そうだね」


 僕の持っている知識やイメージが彼女によって壊されて行く。


『まあ、お前が撃って銃口がぶれない撃ち方が、お前の言う引き絞る引き金の引き方なんだろうよ』


 おそらく、引き絞るという引き金の引き方は、叩く様に引き金を引かないという事だと思う。


 僕はライフルをリュックの上に載せ、身体を伏せた状態で構える。そして慎重に弾丸を発射した。


 衝撃がほとんど無い。.45ACPを撃った時も、想像よりずっと銃の反動は小さかったけど。この銃はまるで火薬鉄砲やエアガンを撃っている様な感触だ。


 撃っては修正、撃っては修正を繰り返し、狙った位置に着弾するようになった。


「調整出来たよ」


『そうか……まだ日が高いな。なら、少し稼ぎにいこうか?』


「稼ぐ?」


『そうだ。昨日出来上がった死体の所に行く。運がよければゾンビかグールが釣れてるだろう』


「……ちょっと怖い」


 稼ぐということは、あの怪物と殺し合うという事だ。あの時はナインティーンが僕の代わりに戦ってくれた。もしそうでなければ僕は死んで居ただろう。


『Do you have balls?お前のその股の間には、立派な竿と玉が付いてんだろ?だったら腹を決めろって……おい!』


 ナインティーンが話をしている間に、僕はもう片付けを済ませバイクに股がっていた。


「何してるのさナインティーン。あの廃ビルに行くんだろ?怖いのは確かだけど、行かないなんて言わないさ」


『ふんっ、解ってるじゃないか』


 少女はその美しい黒髪を、ファサッと上腕でかきあげてからシートの後ろに股がった。


 怖い。だからといって逃げる事は出来ない。流石にもう僕はそれを理解していた。今は弱音を口にすることでその恐怖心を誤摩化すことを許して欲しい。


『仕方ない。だが口にした言葉は自らを弱気にする事もあるんだぜ。言ってみろよ、グール共をぶっ殺して、バリバリ稼いでやるってな!』


「……グール共を、ぶっ殺して!バリバリ稼いでやる!!」


『その意気だぜ!!ユキ!!』


   ・ 

   ・

   ・


 僕達は、目的の廃ビルから三百メートル程離れた瓦礫の陰にバイクを止めた。そして灰色のデジタル迷彩ポンチョを被った。

その上で、僕達が廃ビルを向いた時に死角に背後、三十メートル以上離れた場所に手榴弾とビニール紐を使ったブービートラップを仕掛けた。


『ライフルを取り出してスコープで廃ビル付近を確認しろ。獲物は居るか?』


「ちょっと待ってね」  


 ライフルを取り出して建物を観察する。何かが動いている。スコープの倍率を最大まで上げて覗く。


『居るな』


「居るね。っていうかどうしてスコープで覗いていないのにナインティーンは解るんだよ?」


『アタイはお前の心を読めるし、五感も共有出来る。なにせ心の一部を借りているんだからな。お前がアタイに抱きつかれて興奮したのも全部解るぜ』


「…………僕にプライバシーは無いんですか?」


『無い。ただし、その相手はアタイだけさ』


 この少女は平気で恥ずかしい事を言う。しかしそのプロポーズに近い言葉を吐かれること事体は……嬉しい。


『馬鹿な事を考えていないで狙って撃って見ろ。狙うのは頭、それも顔の中心を狙え』


「物凄く、離れてるよ」


『まあ確かに三百ヤード近いから、片側の頭蓋骨も貫けないだろう。だが百ヤードまで近寄って来れば、目や鼻を狙えば片面の頭蓋骨を破壊して内部の脳味噌を掻き回せる。そのためにHV弾を選んだんだしな』


「そういう意味で言ったんじゃ無いってば。遠いから狙っても当てられ無いんじゃないかってこと」


『そうかもしれん。直ぐには当たらないだろう。練習さ。外したって文句は言わない。だが撃たれた奴はこっちに気付く。おびき出して処理するんだ』 


「OK、了解」


 僕は周囲の状態を確認してから、ゼロインをした時と同じ様に銃を構える。


 そして……


 放たれた銃弾は廃ビルの入り口近くのゾンビもしくはグールには当たらず、その近くのコンクリート壁に当たって埃を巻き上げた。


「外れた」


『遠いからな、流されたんだろう。風は……微風だな。レティクルを銃弾が流れた方向と反対にずらして今度は撃って見ろ』  


「うん」


 続いて撃つ。


「ねえ、ゾンビとグールって何が違うの?」


 撃ちながらナインティーンに訊ねた。


『詳しくは知らん。どちらも人や動物を襲うが、グールには死霊が取り憑いていると言われている。そしてそれなりの知能を持っている。この前も。嵌められただろう?ゾンビはあんな真似しない』

 

「あっ、相手が気付いた。それだけじゃなく二、三匹出て来る」


 ナインティーンの説明を聞きながらも射撃を行っていると、まだモンスターに弾丸が当たっていない内から、相手に気付かれた。


『慌てずに狙え。これだけ距離が離れているんだ。大まかな方向は解っても何処に居るのかは直ぐには気付かれないだろう。ゆっくりと射的を楽しもうぜ』


 ツインテールの少女は僕の隣に寝転びながらケタケタと笑った。


 僕は慎重に狙いを定める。レティクル内のドットを風でずれた分だけずらす。呼吸の度にレティクルは規則正しく上下にゆれ、そして息を止めて、引き金をゆっくりと引いた。


 乾いた破裂音の後、一瞬遅れてモンスターの頭に弾丸が当たったような気がした。モンスターはゆっくりと地面に倒れた事で、本当に当たったのだと言う事が解った。


『ヒャホーー!!ビンゴ!!こいつは驚いた!!やったぜユキ!!』


「当たった……当たったよ!!」


『ああ。やっぱりユキ、お前センスあるぜ。だけど当たったのとは別に倒れたのは運が良かったからだろう。よっぽど上手く弾丸が頭の中に入ったんだろうぜ』


「僕もそう思う。続いて行くよ」


 その後は、出て来たモンスターを撃って行ったけど。頭に当たってもなかなかモンスター達は倒れなかった。百メートルほど近づいた状態でも額なんかだと当たっても弾丸は脳に達しない様だ。


 最終的に四体のモンスターをライフルで、二匹のモンスターを拳銃で倒す事になった。ブービートラップを回収してはぎ取りに入る。


『結構釣れたな。動きからしてゾンビか?死体はまた廃ビルの近くまで引きずって行け。ここを狩り場にしよう』


「ううぅ……」


 動かない肉の塊となった腐敗した人間の胸を開いて魔石を取り出し、それを引きずって行けとか、なんという嫌がらせ。

 

『これも喰うためだ。もう少し装備が揃えば半分腐った死体共を漁る必要も無くなるだろうぜ』


「そうだね」


 廃ビルの内部にまだモンスターが潜んでいる可能性は高い。僕は片手で銃を構えながら周囲を警戒しつつモンスターのズボンの裾を引っ張ってそれを廃ビルの近くまで引きずった。


 廃ビルの中を確認すると食い荒らされた死体しかなく。モンスターはそれ以上発見出来なかった。


 今回の収穫は魔石六個。そして時計二個。指輪三個。百ドル。そして、野ざらしにしておいたジャケットとズボンにシャツだ。ジャケットやズボンは狙撃時の敷物にでも使おうと思う。シャツはウエスにでもすれば良い。着たくは無かった。  


 


魔石:7

腕輪:1

腕時計:3

指輪:2

携帯濾過器:1

予備フィルタ:3

H2Oペットボトル2L:3

携帯食料:14

鍋:1

布テープ:1

ダガー:1

F1対人手榴弾:3

.45acp:83

10rdsmag:2

15rdsmag:1

ルガー10/22 スコープ搭載

予備マガジン:1

.22LR:90

水筒:1

フラッシュライト:1

単二電池:6

US$:140

円:10K

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