15 実弾を使った訓練
僕と黒髪ツインテール少女のナインティーンは、酒場でモンスターの情報を聞き込んだ後に、雑貨屋で買い物をした。
雑貨屋と言っても、品揃えの内容はホームセンターに近い。
そこでオリーブグリーンを基調としたウッドランドパターンの迷彩ポンチョを三十ドルで、それとは別にフラッシュライトと予備の電池を合計二十六ドルで購入した。他にも銃やバイクのメンテナンスで使用するツールBOXを三十ドルで買った。
フラッシュライトは本格的なリチウムイオンバッテリーを使うものではなく、単二電池を使ったバトンタイプで、前者のライトに比べて光量はずっと落ちる。だけど僕達は、充電できる環境を持っていないのでリチウムイオンバッテリー型は選択肢から外れてしまう。
雑貨屋にはバックパックに背負えるソーラーパネルの充電器や車に取り付ける発電機まであった。電気そのものは町の中に発電施設が存在するが、家を持たない僕はおそらく今後、こういった物に御厄介になるかもしれない。
フラッシュライトを購入した理由は、暗闇での探索は炎の魔術だけでは不便だと思ったためだった。松明のようなものが無ければ明かりを作れないというのは、やっぱり少し厳しい。
その後、バイクにガソリンを補給するために移動した。
町の一角に整備工場やガソリンスタンドがあつまった場所があった。車やバイクの姿も多く見かける。
ガソリンスタンドは、手動ポンプによる人力の量り売りだった。値段はリッター/五ドル。二十ドルで満タンになった。
『買い物が済んだな。なら、人気の無い場所で銃の訓練をしよう。ユキ、お前はセンスは在るから鍛えれば、それなりの腕になるだろうぜ』
「そうあって欲しいものだね。僕の体格じゃモンスターはおろか、大人にだって力のぶつかり合いじゃ勝てないもん」
『だが足は速いし、体のバネは中々だった。グールとの戦闘で身体を貸して貰って解ったぜ。何か運動でもやってたのか?』
「バスケット部だった。イジメられてた自分を脱却しようと思って……でも補欠だったけどね」
・
・
・
町の外に出て、周囲の安全を確認してからナインティーン教官の訓練が始まった。
『ユキ。まず最初に言っておく事がある』
「なんですか教官?」
『これから教える事はあくまでも、アタイの経験から学んだ事だ。銃の撃ち方なんて当たれば良いんだから、教えた事だけに囚われるなよ』
「はい、教官殿!」
『まずは、利き手である右手を前に突き出して、ぐっぱーぐっぱー、してみろ』
「ん?、手の平を開いたり閉じたりしろって事?」
『そうだ。良いからやって見ろ。面白い事を教えてやるから』
面白い事?取り敢えず言われた通りに、手の平をニギニギとする。
『そこでストップ!手を握った状態でストップだ』
「はい……」
この行為になんの意味が?
『お前の腕と手の甲、一直線になってるか?腕の骨と手の甲の骨だ。見てみろ』
「一直線にはなってないね。三十度くらいの角度がついてる」
『そうだ。意識せずに自然に手を握った時、腕と手の甲は一直線上にはなら無い。その手首の角度で銃を握って見ろ』
銃を握る。すると……
『銃身は、腕の骨では無く手の甲の角度に近い向きになるだろう?』
「うん」
当然だ。手の甲の骨、つまり手の平に倣ってグリップを握っているのだから……銃口は腕の向けた向きに対して外側にズレている。
『それを頭において次は、体の正面で両手を使って銃を構えてみろ。その手首の角度で丁度銃身は前を向くはずだ』
確かにナインティーンの言う通り、両手でその銃を体の中心で構えると銃身は綺麗に前を向く。上から見るとYの字になる形だ。Yの二股部分が腕だ。
『それが銃を構える上で一番自然な形だ。これをアソセレス・スタンスと言う。それに対してもう一つの有名な銃の構え方がウィーバーといってアソセレスから左肘を曲げて身体に付ける銃の構えだ。やってみろ』
説明にしたがって銃を構えてみる。
『ウィーバー・スタンスでは先ほどと手首の角度が異なるだろう?若干浅くなっているはずだ』
確かにそうだった。
だがそれは当たり前の事だ。
銃身を前にした時の手首の角度は、右肩と手首と頭を結んだ三角形で決まる。
アソセレスに比べて、ウィーバーの方は左肘を身体に付けるため、体の向きが銃身の向きと直行ではなく、右を向いてしまい、並行に近くなる。このため右肩と手首と頭を結んだ三角形の角度、つまり∠右肩,手首,頭は小さくなる。
『ウィーバーでは、体が右を向いているため、左側から出現する敵に対応できない。このため左右に身体を振りやすいアソセレスが良いだろう。グリップを握るのに最適な角度でバランスも良いからな』
「ウィーバーよりアソセレスね」
『まあ一概にそうとも言えないんだが、基本はアソセレスを薦める。拳銃も小銃も基本は体を敵正面に向けて撃つのが良いだろう。銃口の向きを変える場合も腕を振るんじゃなく、体の向きを変えて敵の方を向くようにしたほうが安定感がある』
「ふんふん」
『だが!!』
「!?」
『銃は両手で持った方が安定するが、実際の所、素早く敵の方に銃を向けるだけなら、片手で腕の向きを変える方が早い』
「???」
『しかし、その場合、正面に銃を構えている時と異なり、腕を広げるにしたがって肩と手首と頭で形成される角度は小さくなっていく。さっき自然に銃を握った時、銃口は外側を向いただろう?銃を正面で構えない場合、銃口は利き手の方向に逸れるんだ。だからそれに合わせて手首の角度を替えて銃口の向きを前に向ける必要がある。ゆっくりとやれば人はサイトを見ながら銃身の向きを調整するんでその事に気付かないが、不意に戦闘になった際、たいていの場合、銃口は右にそれるんだぜ』
「なんと!?」
『そしてそれは戦闘に於いて致命的だ。戦闘の際、相手はサイトを合わせる余裕をアタイ達に与えてはくれないからな』
「じゃあどうすれば良いのさ?」
『決まっている!全部の撃ち方をマスターするんだ。銃がアタイが体の一部になるようにな!考えなくても、どんな体勢でも、銃口が狙った先に向かうようにする。基本はアソセレスでも良いが、それに縛られるな。銃口さえ敵に向いていれば当たるんだから、最終的には逆立ちしながらでも、ブリッジしながらでも、マスをかきながらでも撃てるようになれ!』
なんだか、最初の内は論理的な話だと思ったのに最後の方は根性論になったような気がする。
『とにかく撃って慣れろ。此処を中心にして十ヤードほど離れた場所に円形にブロックを並べて的にするんだ。全方位の敵を素早く、確実に倒せるようにする。並べたら一旦、例を見せてやるよ。お前の身体を使ってな』
そう彼女はニタリと笑った。
レンガやコンクリートブロック、それに空き瓶を並べ終わると。ナインティーンは僕の身体を使って見本を見せてやると言った。
『お前の身体を使うと、結構疲れるんだ。前のグールの時は初めてだったし、アクロバットな動きもしたからバテちまった。今回も一度しか出来ないから良~く身体で感じろよ!』
そう言うと彼女はアソセレス・スタンスで構え正面のブロックを打ち抜くと左足を軸にして身体を回転させ三時方向のブロックと九時方向のブロックと六時方向のブロックを一瞬で打ち抜いた。
「次は片手だ!狙って撃つんじゃなく、複数のターゲット同士を線で結び、その線に沿って銃口を流す。そして銃口とターゲットがあった瞬間に引き金を引くんだ。腕は止めるんじゃない!!」
ナインティーンは流れるように、そして氷上を舞うフィギュアスケーターの様に身体を回転させ腕を振り、次々とブロックを破壊していった。その動作には一遍の迷いも滞りも無く、弾丸は吸い込まれるようにブロックに命中していった。
『はぁ……はぁ……どうだ?恐れ入ったか?』
「す……凄い」
そうとしか良い様が無かった。
撃ち終えた彼女は僕の身体を離れ、額に汗を浮かべていた。
『今の感覚。忘れるなよ。アタイは休憩しておくから、少し一人でやってみな。重要なのはリラックスして脇を締めること。力を入れるのはグリップを持つ手だけで良いそれ以外には必要以上に力を入れず堅くならないようにするんだ』
「解ったよ。ありがとうナインティーン」
こうして僕は、訓練を始めた。きっと……必ず、彼女の期待に応えてみせる。なんせ世界で一番、銃と一体になっているという類稀な素質があるんだから。
魔石:1
腕輪:1
腕時計:1
携帯濾過器:1
予備フィルタ:3
H2Oペットボトル2L:3
携帯食料:14
鍋:1
布テープ:1
ダガー:1
F1対人手榴弾:3
.45acp:591
10rdsmag:2
15rdsmag:1
ルガー10/22 スコープ搭載
予備マガジン:1
.22LR:130
水筒:1
フラッシュライト:1
単二電池:6
US$:40
円:10K




