13 初めてのバイクと装備強化
「ったく、いくら俺が衛兵だからって、その前でこんな風に眠られると目障りなんだよ。起きろ!餓鬼!!」
「ふぁあ?……うわあああ!!」
目が覚めると目の前に大きな狼の顔があった。
「なっ、なんだイキナリでっかい声だしやがって!!」
思わず僕はビックリしてバイクに跨ったまま、銃を構えてしまう。相手もそれに反応してAKを構えた。
狼だと思ったのは、この世界に来てから見かける異種族の人間だ。顔は完全に狼なのに二足歩行の毛むくじゃらの大狼男だった。皮と金属で出来たアーマーを纏い、手にはアサルトライフルを抱えている。
『おい、寝ぼけるなよ、ユキ!相手はこの町の衛兵だぞ?』
「あっ……そうか……此処は……」
僕は思い出した。此処は町の中、入り口近くで、門を守る衛兵の傍で夜を明かしたんだっけ。そうして僕は、構えていたM1911を下げた。相手の狼男もそれに合わせて銃を下げる。
「失せろ餓鬼!まったくビックリさせやがって。危うく撃ち殺す所だぞ!!」
僕は頭を下げて、バイクを押しながら、そこを一旦離れた。
「あー、ビックリした。起きたら目の前に狼の顔があるんだから」
『ビックリしたのは向こうさんと、こっちだっての!いい加減その』
「えへへっ。ゴメン」
『全くこの世界では色々な種族が居るって教えただろ!!Get through that thick skull of you indifferently!!』
「え?なんて?」
『いい加減、そのもの覚えの悪いオツムを何とかしろって言ったんだよ!!』
「オムツ?」
『おつむ!!頭だよ、頭ぁ!!』
解ってますよ。ちょっとした、お惚けは彼女への反撃だ。
「取り敢えずさ、この辺でこのバイクの乗り方教えてよ?いつまでも押してるのはちょっとしんどくて」
『そうだな。良いだろう。それにしてもこのバイク……どうせならモトクロスじゃなくてトライアルバイクだったら良かったんだがな。それかもっと排気量が多いか……ふぅ、一旦バイクを止めて降りろ。説明してやる』
町の一角で僕はバイクを止めて、ナインティーンの説明を聞いた。
『ユキ、お前。バイクの事何にもしらないのか?バイク以外は?車とか運転できないの?』
「僕、中学生だよ?」
『中学生……上等な教育を受けてるな。だが、それと運転操作を知らないことは関係ないだろ?』
「運転免許はバイクで16歳からしか取れないんだけど?」
『運転免許?なんだそれ?』
これだよ。僕は町の歩道の上で両膝をついて項垂れた。
『何をしているんだか……?バイクの説明だが、まずはギアをニュートラルにする。ここは車と違う所だな。マニュアル車ではなくオートマチック車ならパーキングだけど』
「ギア?」
『ユキ。お前自転車は乗れるか?』
「自転車は流石に乗れるけど」
『自転車にもギアチェンジぐらい付いてるだろう?それと同じだ。ニュートラルと言うのは自転車で言えばペダル部のギアとチェーンが、噛み合っていないフリーの状態だと思えば良い。実際はエンジンの中での話しだがな』
「へぇ」
『エンジンキーを回した時に、グリーンのランプが付いていればギアはニュートラルだ。そのまま、セルモーターかキックペダルを使ってエンジンを外側から無理やり回して、エンジンをかけるんだ。もしギアがニュートラルに入っていない場合はギアのペダルを操作してニュートラルにする。ペダルは左側の足元についている奴だ』
「うん」
『ギアは一番下が一速。その上がニュートラル。その上が二速、その更に上が三速、そして五速か六速あたりまで続く。このバイクが何速なのかは私も操作してみないと解らないな』
そんな調子で僕は実際に動かしながらバイクの説明を習った。
「なんだかややこしいね。バイクの運転って。ギアのチェンジとかどのタイミングでやれば良いか解らないし」
『エンジンの回転数が三千から五千くらいの間に入っているように調整すれば良いさ。速度とあわせても良い。かなり大雑把だが、十キロ毎に一速ずつあげるとかな。どっちにしても運転しているうちに解るし、慣れるさ』
「解ったよ。習うより慣れろだね」
『そうそう』
バイクは操作した結果、六速ミッションの4stだった。
『今日は装備を装備を充実させよう。F1手榴弾も補給する必要があるしな。夜安心して眠るにはトラップは必須だ。出来れば三つほど買いたい』
「そしてそれも、ジャケットに付けるんですね。なんだか凄い格好になりそうだよ」
『まずは昨日手に入れた時計を売ってから、また銃砲店に行こう。時計は貴金属店で売れるだろう。質屋もやってたからな』
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始めて乗るバイクは恐かったが同時に楽しくもあった。始めは中々クラッチをつなげなくてエンストさせてしまったが、ナインティーンにコツを教わると、直ぐに出来るようになった。ペダルを漕がなくてもグングン進むのはとても楽しい。だけど六速まで使うことは出来なかった。三速ぐらいまでを恐る恐る使ったものだった。
貴金属店までバイクで移動した。駐車の際は、エンジンキー、そしてチェーンロックだけでなく、エンジンから点火プラグを抜くように指示を受けた。
貴金属店で時計を売ったが一つは十ドルにしかならなかったがもう一つは、カルティエとか言う時計で百五十ドルで売れた。ナインティーンは随分と安い安いと粘っていたものだ。
『糞っ、カルティエが百五十ドルにしかならなかった。どうせならアタイが付けていても良かったんだが、付けられないしな』
「そうだね。でも僕はアクセサリーみたいな時計より今付けているソーラーパネルでちょっとごついこの時計の方が好きだな」
『まあ、確かに指に巻いて人を殴るのには、そっちの方が適しているだろうな』
違うよ。僕が良いと思ってるのはそんな所じゃないよ!!
『次は銃砲点だ。一応バイクに乗る前に手榴弾とか爆発物が仕掛けていないか確認しろよ。ボンッと爆発させて、その後美味しく頂くなんてのは良くあることだからな』
「こんな街中で?」
『まあ街中では無いだろうが、いつでもどこでも気を付けないと、いざと言うときに見落とすぜ。だから習慣にしておけ』
「う、うん。解った」
爆弾で死にたくなんて無いもんね。
慎重にバイクの状態を確認する。スポークの間、エンジンの隙間。手榴弾が隠せそうな所は色々あるが無限じゃない。
「大丈夫でした!何もありません!」
『じゃあ銃砲店に行こうぜ!』
僕達はおなじみの【田中銃砲店田中】に向かった。
「おいおい、最近。良く会うねえ!」
銃砲店の正造さんは、僕が扉を開けると驚いたように声を掛けてきた。
「なんだ?昨日来たばかりだろ?まさかF1に何か不都合でもあったのか?」
「いいえ。しっかりと働いてくれましたよ」
「ほおお!そりゃ良かった。それじゃあ、もしかして買取かい?」
「ええ。そうです」
正造さんは、何か感心したように僕を見て言った。
個人的には彼が、僕の目的まで解ったことにわだかまりを覚えのだけれど。この世界では当たり前の事なのだろうか……
カバンの中からトーラスのM1911モデルと予備マガジン、そして9mm×19の弾丸を取り出してカウンターの上に置く。
「その背中に背負ってるライフルは売らないか?」
「これは売りません」
「そうか……この拳銃の方はっと……こりゃガバメントモデルじゃねえか!?へぇ、やっぱり拘り(こだわり)があるんだな坊主!戦闘に使うなら9mmパラの方が圧倒的に有利だぜ?それなのに四十五口径に拘る所、俺は嫌いじゃないぜ」
9mmパラ?その弾丸のことかな。正造さんのその言葉を聞いて、ナインティーンがぴくっと反応したのが解った。彼女には彼の言葉が気に入らないようだ。
「取り敢えず。査定して貰えますか?」
一応、足元を見られないようにそう言っておく。
「良いぜ。少し時間をくれ。その間に店の商品を見て言ってくれよ」
「はい」
『あの店員め、何が9mmパラだ!アタイだって+P+のホットロードを使えば弾速は出る!弾頭だって貫通力が欲しけりゃTHVを使えば良いだろうが!!』
「まあまあ、それよりホットロードって何?」
『強装弾の事だ。通常より薬莢内に多くのガンパウダーを装填した弾丸で威力も高い』
「ふぅん。じゃあなんで初めからそうしないの?」
『ホットロードの文字通り危険だからだ。規格以上の火薬を入れると、銃自身がその高圧に耐えられず壊れる』
「それじゃあ駄目じゃないか。ナインティーンが壊れると困る!!」
『アタイはな、壊れ無いらしいんだよ。神様とかいう奴にそうして貰った。普通、バレルなんて消耗品だからな。消耗部品を交換してたんじゃ自我が保てなくなるだろ?』
「じゃあメンテナンスフリーなの?」
『馬鹿!!んなわけあるか!薬莢内に燃焼した火薬ススが残ればジャムが起きる。撃ったらクリーニングするのは当たり前だ!』
「そうりゃあ、そうですよね」
『要領は良いんだから、これぐらい解れよ。それともお前、馬鹿なのか?』
「ううぅ。こういうの他愛も無い会話くらいぐらい許してよ~~」
『ふんっ。さっさと購入するものの所に行け』
「はぁ。確か購入するのは狙撃用のスコープだよね?」
『ああ。しかしスコープの倍率はどうするかな……おっとこれが良いんじゃないか?倍率は三から十五倍レンズ系は五十mm。値段は百ドル丁度だ』
「大きいスコープだね。特にこの手に入れたライフルと比べると」
『そうだな。たぶん乗せるとスコープじゃなくて大砲を載せてるみたいになるだろうな』
それって釣り合って無いんじゃ?
『あとあと、デカイ口径のライフルを買うことになるんだ。これで良い。後はマウントレールとマウントリングだな。その二つは見繕ってもらえ。銃とスコープに合わせる必要があるからな。それと弾丸を買って置け.45ACPの FMJ RN(Full Metal Jacket Round Nose)を五百発と.22LRのHV(High Velocity)が100発だ』
「五百発!?戦争ですか?戦争でもするんですか」
『射撃の訓練で使うんだよ。五百ぐらい直ぐに撃ち尽くすさ。ユキはまだ動いている目標には一度しか撃ってないだろ?それも直線的に近寄ってくる相手で横方向の動きは無かった。これからはただホルスターから銃を抜くだけじゃなく、実際に撃って訓練する』
.45ACPは五百発で百六十ドル、.22LRは百発を四ドルで売っている商品を選んでカウンターに持って行った。
「おっ、今日は買い物もしてくのか?ってこれ.22LRじゃねえか?それとスコープ。もしかして.22LRのライフルにこのスコープを付けるのか?」
「ええ。そうですけど」
「これは十五倍率のスコープだぜ?.22LRなんて百ヤードかそこらだろう?だったら3-9Xのスコープの方が良いんじゃねえのか?」
「三百ヤードまで狙って行くからこいつで良いんだよ。それに金が溜まったらすぐに.308か30-06のライフルに乗り換えるんだからな。九倍率はグルーピングを見るのに役不足だ」
ナインティーンがやれやれ、と言う風に僕の口を使って答えた。
「三百ねぇ?まあデカイライフル買うつもりなら良いけどさ」
「マウントレールとマウントリングはスコープに合うものを見繕ってくれ。銃は10/22rugerだ。それとF1グレネードを三つ」
「あいよ。銃の査定は完了してるぜ。弾丸込みで百五十ドルだ」
「百五十か……ゲージで同じレベルの銃を三百ドルで売ってるじゃないか?」
「買値に比べて売値が倍なのは良心的だろ?足元は見てないぜ?」
「……まあ良いだろう。会計を頼む」
交渉が済んだようで、ナインティーンは僕に口を返した。
スコープが百ドル。
マウントレールが二十五ドル。
マウントリングが十五ドル。
.45ACPFMJ RNが五百発で百六十ドル
.22LRが百発で四ドル
F1が三個で百二十ドル
締めて四百二十四ドルだ。持っていたお金が四百三十ドルで今売った銃が百五十ドルなので、残りのお金は百五十六ドルになった。
『糞、どうしてこう金って奴は、ポンポン羽が生えたみたいに飛んで行きやがるんだ!?』
(仕方ないよ。必要なものなんだからさ)
『あと少し貯めりゃ、あそこに在る六百四十ドルのレミントン7600/30-06が買えたのに!!』
(F1手榴弾が高いんだよね)
僕は、ナインティーンの買い物が無駄とは思えない。ルガー10/22にかけたお金はマウントレールの二十五ドルと弾薬の四ドルだけだ。それ以外のスコープなんかは流用出来るんだし。
「坊主、もし、お前がよけりゃあこのマウントレール此処でライフルに取り付けるぜ。どうする」
『やってもらえ。アタイ以外なら別に構わない』
ナインティーンのお許しが出たので、僕はライフルを正造さんに渡した。
「どうやら、坊主。お前は本当に上客になりそうだからな。簡単に死ぬんじゃねえぞ?これからも儲けさせて貰いたいからよ」
「だったら、サービスしてよ。主に値段の方でね」
『おい、ユキ。ついでにこの辺りに出現するモンスターと穴場を聞いとけよ』
(うん)
「ねえ、正造さん。この町の近くでモンスターが狩れそうな所とか知らない?あとは出現するモンスターの種類とかさ?」
「モンスターねぇ。あいにく俺はあんまり出歩かねぇからな。だけど客から聞く話じゃこの十一区の西。東十二区との間でオークとかオーガ、スライムなんかも見るって聞くけどな。東十二への道中は結構植生があるだろう?だから色々と獣がいるらしいぜ」
『そうなると、灰色迷彩じゃないタイプのポンチョも買った方が良いかもな』
「他には?例えばこの辺とか?」
「この辺だとゾンビやグールだな。後はスケルトンやインプを見たって奴もいる。恐いのは“魔”に汚染された狼かな。確かヘルハウンドとかハンターには呼ばれてるらしいが詳しくは知らねぇよ。酒場のマスターの方が詳しいじゃないか?」
「そ、そうですか」
何それ?ヘルハウンド?ケルベロスさんとか、オルトロスさんのお仲間なんじゃありませんか?地獄の門番とかだよね?
ま、まあ。そう呼ばれているだけで、じっ…実際は違うんだろうけどさ!!
「ありがとうございます。参考になりました」
「おおよ!これぐらい、構わなぇさ。客とのただのお喋りだしな」
「昼ごはんのついでに酒場の方でも聞いてみる事にします」
「そうか。じゃあな坊主。それと毎度あり!!」
銃砲店を出て、F1手榴弾のピンが外れないようにテープで巻いてジャケットのポケットに入れる。腰にはM1911。そしてルガー10/22ライフルをライフルスリングを使って体の前面に掛けている。
背中にはリュック。ポンチョはリュックのネットに畳んで仕舞っていた。
「なかなか重装備みたいじゃない?」
バイクに跨りながら自分の今の格好をナインティーンに訊ねると。
『重装備?どこが?まともな武器はアタイだけじゃないか。気合入れないと直ぐに死ぬぜ』
そういって黒髪ツインテールの少女は僕の後ろのシートに飛び乗った。
文中で登場したトライアルバイクというのは足場の悪い、通常の乗り物では絶対にいけないような場所でも行けてしまうバイクです。
ウィリーなんかも簡単に出来るようになっており、初心者でも六十センチ程度の段差なら乗り越える事ができます。一週間も練習すればどんな場所でもいけるようになるでしょう。
ナインティーンがバイクに文句を言ったのは125CCがそこそこ重いのに関わらず、4stでパワー不足だったため、スタック時に抜け出せなくなる可能性があったためです。パワー不足でも軽ければ引っ張れますがこのバイクは一般的な125CCバイクで百キロ以上あるので中学生が引っ張るのは大変です。
手に入れたバイクは車などにかろうじて付いていく事が出来るバイクというレベルです。
田中正造のモデルは日本初の公害事件と言われる足尾銅山鉱毒事件を告発した政治家です。本小説は色々な情報を盛り込んで作者の知識を増やしことも目的にしております。
魔石:1
腕輪:1
腕時計:1
携帯濾過器:1
予備フィルタ:3
H2Oペットボトル2L:3
携帯食料:4
鍋:1
布テープ:1
ダガー:1
F1対人手榴弾:3
.45acp:591
10rdsmag:2
15rdsmag:1
ルガー10/22 スコープ搭載
予備マガジン:1
.22LR:130
水筒:1
US$:156
円:10K




