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ゴリラ先輩ラーメン子  作者: 彩女好き
いつもの三人編
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18/213

18日目 夕焼けの詩



忘れ物を取りに行くため、僕はいつもの部屋に向かった。

部活が無いこの学校では、部室の変わりに多目的ルームなる物が存在する。

行ってしまえば部室と同じだが、より的確に言えばサークル・ルームに近いかもしれない。

僕らはその一室を好き勝手に使っているのだ。


「チャルメラ~チャルメラ~変幻~していく~」


自作の歌を歌いながら部屋に入る。

夕暮れの部屋の中は、予想通り誰もいなかった。


「おおっ」


思わず僕は唸った。

夕日の光が部屋を染め上げている。

オレンジに沈んだ部屋は、どこかモノトーンのようにも見えた。

まるで別世界のような雰囲気に当てられ、ぽつると呟く。


「すごっ。何かファンタジーみたいだな……」


「何が凄いのかしら?」


後ろから話しかけられた僕は、即座に振り返った。

そこに居ないはずの人がいた。

絶対零度の視線を持つ女、冷蔵子さん。

なんでこんな時間にまで居るんだよ、と嘆くも現実はシビアである。


「いや、なんかさ、凄い夕日だと思わない? こんなに綺麗な夕日珍しいよ」


「埃が多いんじゃないのかしら? 大気中のゴミが多いと、夕日が赤くなるそうよ」


……この人は、何でこう夢が無いんだろうか。

夕日を見て感動する僕。

それを嘲笑うかのように、冷蔵子さんは冷ややかだ。

まあ彼女が熱くなる方が珍しいのだが。


どこか物悲しいオレンジの光線が、僕と冷蔵子さんの長い影を作る。

夕日に照らされた彼女の長い髪は、まるで金糸のように輝いていた。

う~ん……ここだけ切り取れば、まるで映画のワンシーンだ。

なのにどうしてドラマチックな展開と無縁なのか。まあ役者が僕と冷蔵子さんだからか。


愚にもつかない事を考えていると、ふいに彼女が口を開く。

優美な形をした彼女の唇は、深い陰影のせいか妙に生々しく見えた。


「そんな事より。気になる事があるのだけど」


「な、何かな?」


ちょっとドキドキしながら僕は答えた。

ドラマ? ドラマが始まるのか?

このノリの悪い冷蔵子さんですら、夕日の魔力に魅了されたのか?


「チャルメラ~チャルメラ~って、何?」


「ぶっ!!!」


思わず僕は吹き出した。

聞かれてたのかよ! 誰にも聞かれて無いと思ったから歌ったのに!

何て説明すればいいんだ。

僕の背筋を、だらだらと脂汗が流れた。


「自作の歌だよあっはは~」なんて素直に言った日には、

僕はそのまま家に帰って泣くかもしれない。

そして思い出の一ページとして、二度と今日と言う日を思い出さないようにするのだ。

……嫌だ。こうなったら誤魔化すしかない。


どうする? どうする? どうする?

時間は刻々と過ぎていく。

どう言い訳すればいいんだ? ええいクソッ、上手い誤魔化しが思いつかない!

こうなったらいっそ、窓から大ジャンプしてそのインパクトで誤魔化そうか?


「結構、可愛いところがあるのね」


冷蔵子さんが薄く微笑みながら言う。だが今はそんな事は関係無い。

この部屋は二階にある。二回から飛び降りて無事で居られる可能性は?

無い無い、絶対に足を挫く。最悪折る。だが心を折られるよりは……マシだろうか?


「私、君のそういう所嫌いじゃないわよ」


穏やかな夕日に包まれた部屋の中。

優しく微笑む冷蔵子さん。

そして、窓から飛び降りる事を真剣に検討する僕。

非日常(ファンタジー)はささやかに続いていた。





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