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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
西暦1172年 城塞都市
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第7節 騒乱の終わりとカルワリオの異変

投稿に時間がかかってしまいました。


トリックスター ザ 司教 の登場です。


皆、ここは早く穏便に済ませ、少年を探しに城壁に行きたいようです。

またドミニクの視点です。


私とベルンハルトは司教様を見送った。なんか歩き方がぎこちない。そんなんじゃ聖人になれないよ。カリスマはあるけど、武人っぽいしな・・・それよりベルンハルト殿とお友達になりたいなと真剣に考えてしまった。


司教様はスタスタと歩いていき、公爵様に何か話している。すると、いきなり公爵様はひざまづき、司教様の左手をとり、指輪にキスをした。司教様は貧乏くじを引いた時のように不機嫌な顔に一瞬なったが、気を取り直したようだ。


司教様は、天幕より出て、民衆が取り囲む広場のほぼ中央に立ち、右手を人差し指と中指を立てて、二本指にし、肩の高さにあげた。指はすこし曲げられている。これは大勢の人に話しかけるときの古来よりの仕草だ。(著者注:今でいうならピースサインだが、指が曲がっているのが特徴。最近でもオランダ王が即位のときにしてました)


群衆は静まり返った。皆の顔をみていると、不安の波が押し寄せてくるのが見えるようだ。


「きけー! わが教区の民、子羊たちよ。恐れることはない。今、私は確認した。あの少年の祈りに応え、神のみ使いが我が街を訪れ、あの子をその翼の下にかくまったのだ」


群衆はどよめいた。ひざまづいて手を組み祈りだすもの。十字架の印を切るもの。小さい声で祈りだすもの様々だ。よくはわかっていないようだが、目の前で不思議なことがおき、それが悪いことではないというのは理解したようだ。司教様はつづけた。


「そちらは、先程、大聖堂の鐘がいきなり鳴ったのに気づいただろう。今の時間は鐘楼は施錠されている。鐘楼には誰もいないのだ。誰もいないのに何故鐘は鳴ったのか。


聖なる鐘を鳴らしたのは聖霊であろう。いや、それ以外に考えられぬ。


光と共に煙の中に天使が現れたのを見た聖職者もいる。


喜べ、わが子羊たちよ。我らの街は神に愛され、神からの豊かな恵みを受けることができたのだ。


少年は天に迎え入れられた。わが町の守護聖人となるだろう」


「うおー」


群衆がどよめき、喜びの声をあげた。静まらない。皆小躍りしている。


しまった、あの子を聖人に祭り上げるのはよかったが、名前が不明のままじゃないですが、司教様。大丈夫なんですか?心の中で心配していると、司教様はまた例の手の仕草をした。人々はまた静かになった。


「異端審問官は、皆のものを恐怖に陥れようとしたが、実際はどうであったか?


この街の信徒を司牧するのは、司教である私である。私はこの教区の民を、恐れではなく歓びで、皆の魂を導き、少年のあとに続けて天に、そう一人残らず、主の御許へ送りたいと思う。天は、そのうち聖霊のご加護を得た、この都市の者達で満ち溢れるでことであろう」


民衆の歓びが絶頂に達したようだ。すごいな司教様。しかし、なんだか司教様の手柄になってない?


あの子だって天にいけたかどうか、わからないのだけど・・・審問官よりアジテーターです・・・司教様武人ぽいですよ。うわ騎士たちの目が鎧より輝いてる。出陣前にこんな演説したら、戦闘力あがるよね。


どこからか、ティンパニー、シンバリ、ピッフェリをもち出してきたものが、お祭りの音楽を始めている。司教様は、目を細めて、意味ありげな視線を公爵様に送った。


「しばらくは歌い踊るがよい。では次の御ミサで会おう」


踊ったり演奏していないものは跪いた。


司教様はそのまま馬をひいてこさせ、騎乗し、ベルンハルトと私にも騎乗するように顎で示した。公爵様と騎士5人が騎乗した。トランぺッターが先ぶれとしてカテドラルの壁にこだまさせるように高らかに進軍ラッパを吹き鳴らした。


民衆が道をあけると、そのまま、中央門まで、全員で馬を走らせてゆく。兵士達は皆走ってついてくる。私も何がなんだかわからぬまま、一団の中で馬を進めた。



先頭を走る侯爵様と司教様が大声で話している。


「ヴィドゥキント、素晴らしい説教だったぞ。おぬしは聖人になれるな!」


そう、公爵様が、司教様を本名で呼ぶ時は、プライベートな会話の時だ。何百年の前のザクセン族の王の名前だ。公爵様は、子供の頃、実は弟の、この名前が羨ましかったらしい。


「兄上、お戯れはおやめください。あの場は、司教である私でないと、民が収まらぬぞとお申し付けになられたではないですか」


「はははは、世俗の私がいうよりも、効果的であったろう?」


「だからといって、私の指輪に人前でキスするなど・・・私がさせたみたいではないですか」


「いや、私はそちが司教であることで随分と助けられているし、陛下のように教会と覇権を争うつもりはないと皆は思うだろう?


また、あの後だからこそ、そちの宣言に領主が同意していることを示せるではないか。


俗が聖に従う方が自然だと思うぞ。というか司教の指輪にキスするのは信徒にすれば普通のことだ」


「まったく、兄上にはかないません・・・」


二人がこんな会話をしているうちに私たちは中央門についた。門番の爺さんは恐れおののいて、おろおろと出迎えて、跪いた。帽子をとり、両手にもち、わなわなとふるえている。


騎士が門番から話を聴いている。例の少年は、想像していた通り、鐘の音と共に、門のすこし外に忽然と現れたようだ。呆然としているようだったが、一度振り返り、それから気を取り直してカルワリオの方に歩いていったらしい。

門番は現れる瞬間は見ていないらしい。鳴らない時間に鐘がなっていたので、何事かと屯所を出てきたところで、少年がカルワリオの手前にいることに気づいた。孤児院の服しかみていないようだが・・・もともとご老人で目が悪いから仕方あるまい。


司教様は、なんといっていいかわからない表情で言った。


「口から出まかせのようなことを言ったが・・・嘘から出た真とはこのことだな。瞬間にあの場所からここまで来ることはありえまい。やはり聖なる力が働いたのだな」


「とりあえず、カルワリオのほうへ歩いてみましょう」ベルンハルトが言った。


門を通り抜けると、そこにいる全員が目を疑った。100メートルぐらい先のカルワリオは平らだったはずだ。それがどういうわけか丘になってしまっている。車輪刑の支柱は斜めになり、例の男も横倒しになって朽ちているようだ。


「門番、いつからこうなったのだ」侯爵様が、従者に馬をあずけながら直接呼びかけた。


門番はあたふたと門から出てきて、あんぐりと口をあけた。ガタガタと震えている。


「閣下、いきなり音もなくカルワリオが盛り上がったのでしょう。門番は、口がきけないぐらい驚いていますから」


騎士が門番の気持ちを察し代弁した。


「ははは、門番は顎が外れたかもしれぬぞ。もうよい、下がれ」


それから騎士に

「先程の美味いワインを飲ませてやれ。酒でも飲まなければやってられぬだろう・・・」


「はッ」


両ひざでひざまずいたまさ動けなくなっていた門番は、兵士に支えられて立ち上がり、ワインの瓶と一緒に門の中に入っていった。


「さて、我らも行ってみましょう」


司教様はそう言い、馬を下りた。その時、丘の上で何かが光るのが見えた。


「閣下、何か光っています」

騎士の一人が言った。



公爵様は真面目な顔で皆に言った。


「急ごう。事の成り行きをわが目でみたいものだ」


公爵様は、先頭に立って歩きだした。

司教様の名前が明かされましたね。


ヴィドゥキントは、ザクセン族のリーダーで、本作の300年ほど前に、カール大帝に屈し、キリスト教に改宗しました。公爵、司教たちは、ザクセン族のヴェストファーレン貴族の末裔のようです。もともと北方にすんでいたので、本作の南ドイツやオーストリア地方まで来たのは何か理由があるのでしょう。

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