第60節 白雪と白たてがみ親子がやってきた
また、分けられた世界のお話です。
宮宰様の娘、シャルロッテが戻ってきました。でも、なんか大人びて帰ってきましたよ。
2週間もしないうちに、シャルロッテは砦に戻ってきた。また、変態君と呼ばれ、白眼視される生活が始まるかと思ったらそうでもなかった。
どうやら、進路は騎士でいくようだ。見習いとして、従者にならなければならないのだが、姉の従者となることになった。ま、あまいよね・・・でも、身分が高いってそんなもんかもね。アグネスさんの従者は、今までいなかったし。アグネスさん自身も、8歳の時に、お父様の従者になったとか。レオポルト様は娘だといって手を抜かなかったらしい。だから、アグネスさんの剣の腕はすごいらしい。知らないけどね・・・ベルタさんに聞いてみようかな。
そういえば、聖剣使い、オットー様がいっていたよ。公爵様の御前試合とかで、絶対戦いたくないのは、アグネス様だと。
氷魔法で先制しつつ、剣を振るう戦法らしい。また、上司、宮宰様の手前、勝つこともいけないそうだ。オットー様は聖剣は使えるけど、魔法はだめだからって、負け惜しみ感が伝わってくるよ・・・でも、なんだか隠している技があるらしいから、本当は一番強いんじゃないの?あ、そういえば、どうやって聖剣を手にいれたのか、教えてもらわないとね・・・
そんなことを考えながら、シャルロッテ様の来るのを待っていたんだ。アグネスさんと、アーデルハイトはお互いの猫を肩に載せながら第2門前にいる。で、シャルロッテ様のお猫様は、僕が抱っこしているんだけど、さっきから暴れて引っかかれて顔がすごいことになっているんだけど、どうして・・・あっちの孤児院にいたエリアスさんのようになってるんじゃないかな・・・あの夜のスープは美味しかったなぁ・・・皆元気かな?
「開門!衛兵は展開せよ」オットー様が命令した。
「応!」門が開くと同時に兵士さん達が外に広がって警戒を始めた。
あれ、いつもの2頭立てでなくて、3頭立てだ。白い馬がいるよ・・・綺麗だな。
馬車は砦の門まで行って、止まった。僕らは馬車を囲んで歩いてついていった。
「シネーヴィッツゥン(白雪)」アグネスさんが大きな声を出した。白い馬がこっちを見た。アグネスさんが近寄っていくと、白い馬は鼻を鳴らし、アグネスさんに頭突きのように顔をつけてくる。
「よしよし、どうどうどう・・・元気だった?ごめんね・・・」
白い馬はアグネスさんの猫とも挨拶を交わしている。アグネスさんの馬なんだね。あ、猫が馬の上に飛び乗った。可愛いな。
「閉門、引き続き警戒せよ!」
「応!」
オットー様カッコいいなぁ・・・
正門前に停車した馬車の扉があき、人が下りてきた。最初に侍女のアンナさんが下りて、最後がシャルロッテ様だった。ミニアグネスさんだね。しかし、血というのは不思議だなぁ。よく似てる姉妹だ。シャルロッテ様は、隊長オットー様や、レオン様、ブルーノ神父様とあいさつを交わし、今はアグネスさんと挨拶している。アーデルハイトにも挨拶し、猫シャルロッテと握手して、最後に僕のところに来た。
僕は軽く会釈をし、猫を示した。
「シャルロッテ様、お久しゅうございます、大事な猫様をお返しします」
「ありがとう存じます。変態どの・・・この前は、子供のように感情的になり申し訳ありませんでした。許してくださいね」といってニコニコとした。すこし背筋が寒かったけど、僕も負けずにニコニコした。これって素直にとっていいのだろうか・・・シャルロッテ様は、子猫を受け取ると、ものすごく甘い顔になって、子猫にでれでれになった。あれ、シャルロッテ様の指に光るものがある・・・指輪だ。金色の指輪だ。どうしたんだろう。この前はしてなかったよね。今度聴いてみることにしよう。
でも、ロッテって可愛いよね。
シャルロッテ様は、僕に会釈をすると、馬車の後ろに行った。ちょうど荷物を荷台から下しはじめている。僕は驚いた。子馬が下りてきたんだ。しかも白いの・・・
子馬はそのままアグネスさんの白馬のところに連れていかれた。うわー親子なのか・・・
ロッテ様がドヤ顔でやってきて言った。
「かわいいでしょう。子馬ちゃん」
「ロッテ?名前つけたの?」アグネスさんが訊いている。
「はい、姉上。ヴァイス・コラル(白いたてがみ)としました。いかがでしょうか?」
「素敵な名前ね。親子なのね・・・嬉しいわ。お父様のお心遣い・・・」
この白い馬たちは親子だそうだ。彼女たちの先祖、族長ヴィドゥキントは、カトリックに改宗するまでは、黒い馬に乗っていたそうだ。改宗してからは白い馬に乗ったという言い伝えがある。リウドルフィング家はヴィドゥキントの末裔だ。やはり白い馬は大切にされていた。砦の文官として城塞都市を離れた時、本当は、白雪を連れていきたかったアグネスさんだが、砦の事情から諦めたそうだ。
貴族の子は、騎士になるべく、騎士見習いになるときに、子馬を与えられることが多い。6歳ぐらいの子でも、子馬なら乗れる。乗馬に慣れることが大事だ。馬の世話からすべてを行うことで、人馬一体となった戦馬を育てることができるのだ。
戦馬は、魔物でも怯まない。ゴブリン程度なら、前足で打ち砕いてしまう。また、忠誠心が高く、放しても戻ってきてしまう。これは子馬のころから生活を共にすることにより、育まれるものだろう。
今回、白雪が生んだ貴重な白馬を、公爵様も宮宰様も、シャルロッテにと望んだそうだ。公爵様も姪っ子のロッテが可愛くてしかたないそうだ。
いいな、高貴な人は・・・僕なんか、今日のご飯だって困っているのに。今日はこの出迎えイベントのせいで、迷宮には入れなかったのだ。
僕らは解散した。シャルロッテ様はアグネスさんと砦の中に入っていった。なんでも部屋が与えられるそうだ。白馬親子と他の馬達も厩舎につれていかれた。いいなぁ・・・僕も部屋が欲しいよ・・・
そうそう、クリスタのパパだけど、すこし歩けるようになったって。よかったよね。クリスタは、相変わらず、僕と一緒に鉱山口の入り口で、ポーターの客引きをしている。最近は、結構クリスタとつるんでいるんだ。クリスタは、僕のこと、大切にしてくれるしね。アーデルハイドのようなツンデレじゃないし。
クリスタも毎日の食事に困っているけど、部屋があるからいいよね。クリスタは、基本一人で鉱山に入れないから、いつも僕にくっ付いて歩く。お父さんのご飯は、クリスタが用意するので、なんとか自分の分を節約して、お父さんに食べさせているようだ。
さてと、困ったな・・・僕の部屋というか、鉱山口の2階にある、野宿部屋は今満員だ。例の森の中の修道院で救出された奴隷だった人々が住んでいるからだ。彼らは、帝国領から係官が来て、聴取を受けてから、行き先が決まるらしい。
彼らは、作物の栽培ができ、エールを醸造することができるので、オットー様は砦を拡張して、耕作地を作り、醸造所を作りたいらしい。特に醸造所は、レオン様がノリノリになっているとかだ。彼らは自分たちで食べることができないので、砦から食料の配給をうけている。
実は僕とアーデルハイトとクリスタも、こっそりお零れに与っているんだ。助かるよ。
あと、最近はなかなか迷宮へのお誘いがない。というのも、僕自身が神聖結界を作りだす変な体であることが、みんなに知れ渡ってしまった。つまり、一緒に潜ると魔物がでないということが分かってしまったからだ。まいったよ。鉱夫の護衛の傭兵さん達からすれば、強烈な商売敵だし、カールさん達のような狩り専門の傭兵さん達からすれば、商売あがったりだし・・・微妙な立場になってしまった。
あ、そういえば、おじいちゃん修道士様が、地底湖のところで、結界を消してしまったはずだけど・・・あれが使えれば・・・自由自在に出したり出さなかったりができればいいのだけど。
おじいちゃん、いや、ウィンフリート様に会いたいな・・・
考え事をしながら鉱山口に歩いていこうとしていると、オットー様が声を掛けてきた。
「悪者く~ん、ちょっと待ってくれ~」
「はい、オットー様。何の御用でございますか?」
「来週から、砦の城壁を拡張する工事が始まる。城塞都市より親方と職人たちが来て、鉱山街の北側の城壁の外に、新たな城壁をつくるのだ。第2門の外側にも門を作って、そこにも行けるようにする」
「うわ、いいですね。そこには何をつくるのですか?」
「馬の練習場だ。騎士が増えるからな・・・」
なんだ、てっきり宿舎とか、僕の部屋とか作ってくれるのかと思ったよ・・・
「で、悪者君を工事インスペクターに任命する」
「な、なんですか、それ、美味しいのですか?」
馬鹿なことを言ってしまって後悔したが、オットー様は笑ってスルーしてくれた。
「いや、工事する場所にいてくれるだけでよい。その神聖結界を垂れ流してくれればいいんだ」
おお、なんか変なフラグが立ちそうだよ。
「ただ立っているだけなんですか?」
「うむ。例のペチャンコ野郎の娘も一緒でいいぞ。食事が出る」
やったー助かる。あれ、クリスタのお父さん、ペチャンコ野郎とか言われているよ・・・
「わーい、やります、やります。是非やらせてください」
後日、悪者君、変態君に続いて、垂れ流し君というあだ名がついた僕・・・まぁ、クリスタなんかぺちゃんこ娘とか呼ばれるようなったから、それよりはましか・・・
お読みいただきまして、ありがとうございます。いかがでしたか?
色々と伏線を仕込みました。
現在、第1話から改定をはじめております。3千文字を目安に新規投稿をしておりますが、古い話は改定、誤字脱字をなおして、結合して、6~9千字程度で1話としています。
宜しくお願いします。




