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神聖祓魔師 二つの世界の二人のエクソシスト  作者: ウィンフリート
平行世界へ
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第59節 ドミニクの覚醒 その2

ベルンハルトは、神父様が来るのを待ち構えていたようです。

ベルンハルトは、ドミニクの事を待っていた。


カテドラルの脇から、エクソシスト用の部屋がある、地下室に面した通路に入ると、ベルンハルトの執務室のドアは開け放たれており、執務机に座ったベルンハルトが、入り口をニコニコしながら見ており、見事に目があってしまった。

「神父様、お待ち申しておりましたぞ」


 ドミニクは、たじたじとなり、思わず後ずさりしてしまった。

「え~い、お待ちくだされ~」すごい目力だ。

「いや、ベルンハルト殿、すこし貴殿の視線に気圧されただけです・・・」

「邪眼ではござらんから、大丈夫ですぞ」

「それは良かった・・・邪眼だなんて・・・迂闊に口にすると危険ですよ」

「ああ、確かに・・・審問官の馬鹿どもにかかれば、すぐに火あぶりですな・・・」

「いや、私も、邪眼が悪魔によるものでないことは存じているので、貴殿をお守り致しますよ」


ベルンハルトはすこし考えていった。

「実は、バイエルンに、邪眼の一族がいたのです。女系で伝わる能力なのですが、この一族の能力は凄まじく、見るだけで火をつけたりとか、凍らしてしまったりとか、バイエルン公の軍隊で、利用しようとして、却って彼らを追い詰めてしまって・・・可哀想なことをしました」

「それは凄いですね・・・そういえば、ベルンハルト殿は、ヴィッテルスバッハ家の一員でしたね。それで、その一族はどうなったのですか?」

「地下にもぐりました。あ、比喩というかたとえですが・・・バイエルン公が探しているというのを、悪い意味にとったのでしょう。噂では、オーストリア辺境伯領に逃れたらしいです。情報を漏らせば、他の領地に盗られますからね。直接話して、引き込みたかったですよ。残念ながら逃げられてしまいました・・・子どもがいたのですよ、しかも女の子がね」

「なるほど・・・思うようにはいかないものですね」


「神父様、なにかありましたか?」

「えっ?、あ、エリアスからお聞きになりましたか?」

「いや、上に立つものは、どのような態度をとらねばならぬか、大変ですよね・・・」

「それはどのような意味で?」


ベルンハルトはニヤニヤしながら、答えた。

「失礼とは思いつつ、申し上げます。下級聖職者である、私に対しての対応を悩んでいらっしゃるように、お見受けします」

「あははは、その通りです。あなたも、バイエルン王家に連なる身ですから、ご経験あるでしょう。身分というものは面倒くさいのですが、周囲のために示さなければなりませぬ。しかし、私は、ここでは立場上あなたのうえですが、とても上であるとは申せません。おわかりでしょう?」

「昨日の夜、エリアスが同じことを申しておりましたぞ。ドミニク神父様が揺れていると・・・」

「ふふふふ・・・確かにその通りです。エリアス殿は、修道院の下働きですが、その力は、修道院長も凌ぐでしょう。それが分かるだけに、どのように接していいのか分からないのです」

「いや、お気になさらないでくだされ。私等は世捨て人ゆえ、却って困ります」

「エリアス殿とは古くからのお付き合いなんですね・・・」

「そうです。我らはまさに竹馬の友でした。彼もヴィッテルスバッハの一族です。私とは従弟にあたりますが、年齢は同じです」

「いあ~全然似てないので、わかりませんでした・・・」

「あははは、彼は母方に似ているのですよ。私はバイエルン公似とよく言われましたが・・・」


ドミニクは、ザクセン貴族で、リウドルフィングの流れだ。もちろん、ザクセン王家の一員だった。なんだ、同じじゃないか。私と・・・立場的には同じだ。王家につながる一門に生まれることの苦しさや束縛、同じだ。王になりたくなくても、王になれる血をもっているだけで、色々と邪推をうける。ドミニクは、二人への親近感が、エリアスとベルンハルトに対してだが・・・急にましてくることに気づいていた。


 ベルンハルトは、唐突に言った。

「腰を折るようで申し訳ありません。神父様?ここに来た理由は?右手のことですね・・・」


ドミニクは、我に返り、目的を思い出した。

「昨日、私の右手が、おかしくなったのです」


ベルンハルトは、すべてがわかっている風に微笑んだ。

「神父様、覚醒されたのですね」

「は?覚醒とは?」


「あの少年が、火刑台で読んだものがなんだかお分かりになりますか?」

「聖霊来てくださいを歌っていたので、聖霊でないのだろうか」


「それもあり得ます・・・私たちの神から送られるものは、聖霊だけではないのはご存じでしょう?」

「確かに、聖母様なら万軍を送ることだってできるし、大天使が自ら来ることもありうるだろう。まして、悪魔との戦いなら、聖ミカエルが・・・」

「そう、お気づきになりましたか?」


ドミニクは考えていた。まさか、そんなことがあるのだろうか・・・


「あの少年は、聖ミカエルかもしれません・・・。一人の子供というか、人間として、格が違いすぎます。聖ミカエルの化身だとしたら、辻褄があいませんか?」


「確かに・・・」ドミニクは衝撃を受けていた。まさか、そんな・・・


「あなたの性格を知るからこそ、聖ミカエルは敢えてあなたに触らせた・・・それは、あなたに自らの力を与えるため・・・そのように解釈することも可能です」


ベルンハルトは続けた。

「もしも、そうだとしたら・・・昨日のその力は、覚醒した聖ミカエルの恩寵かもしれません。神からの直接の恩寵といっても過言ではないでしょう。ミカエルの立ち位置をお考えくだされば、わたくしの申し上げたいことがお分かりになりますでしょう・・・」


「パウロが転んで怪我をしたのが、悪魔の奸計だと?」


「いや、わかりませんが、そう考えると辻褄があいます。聖ミカエルに選ばれた神父様を試そうという、悪魔の策略なのかもしれません。あやつらは、小賢しいのですぞ・・・」


「うむ・・・」


ベルンハルトは続けた。

「そこで、神父様に提案がございます。ここ数百年の間に、大天使聖ミカエルは、この世界に顕現しています。わかっているだけで、3回です・・・顕現された土地は、天とのつながりが強く、聖ミカエルの力が、影響力が、大きいところです。、


そこに行ってみてほしいのです。そうすれば、その力の真相がわかることでしょう」


ドミニクは、聖ミカエルが出現した土地を思い出していた。当時、ヨーロッパでは、何回か出現した、聖ミカエルの聖地を巡礼する旅が盛んであった。


 一番最近の出現は、モン・サン・ミシェルだろう。ここを出発点として、さらに少し前のイタリアの聖ミカエル出現の聖地を、2か所めぐる巡礼の旅が人気であった。


 人気とはいうものの、巡礼の旅は、命がけだった。泥棒や盗賊、各地方の領主など、危険要素が沢山あった。通るだけで税金を徴収されるが、中には、悪い税吏もいた。ちょうど、聖職者の叙任権闘争の時期であったため、地方の世俗権力と、教会はせめぎ合っていた。そこを聖職者として通過しなければならない。

 異端審問官でさえ、領主や市参事会の恨みを買い、暗殺されることも多々あった。審問官の拷問や、罪のないものに対する仕打ちは、見ていられないほどのものだったのだ。誰でも構わず有罪とすれば、当然街の有力者や、権力者に突き当たることもある。恨みを買いやすいことをしているのだから。街を出て、郊外で数人の所属不明の騎士達に惨殺されることもあったと聞く。


 ベルンハルトは続けた。

「是非、出現の地を巡ってみてください。きっともっと詳しいことが分かるような気がします」


「ノルマン人の地域であろう?行ってみたかったのだ、修道院の業務もあるし、そうはいかないだろう」

「ふふふふ。そうくるだろうと思い、司教様にご相談申し上げましたよ」

ドミニクは驚いていた。この手回しの良さ・・・もしかして、私は騙されていないだろうか?


ベルンハルトは確信に満ちた声で話した。

「これから一緒に司教様のところに参りましょう・・・」

最後までお読みいただき、ありがつございます、

いかがでしょうか。


話は明日もまた続きます。ご期待ください。

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