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大好きなBL小説の悪役令息に転生したので改変せずに、ふたりの行く末を見守りたいと思います。  作者: 燈坂 もと


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24.まさかの展開(3)





 ざま婚本編でアルフレッド様とオスカーが絡むシーンなど一度たりとも出てきた事はない。

 何故なら原作のアルフレッド様は、王立アカデミーに来たこともなければ、ディルクに自ら関わりにいくような事をした事がないからだ。

 断罪前に二、三度諭す様に注意をする、というシーンも描かれていたが冷静な対応のアルフレッド様しか原作のディルクは知らない。

それに、オスカーという名の侯爵令息が作中に登場したこともない。

 つまりは、俺はこの今の状況の打開策が全く思いつかないということなのだ。


( えーと……俺は今アルフレッド様に抱き締められているけど、アルフレッド様の冷酷な微笑みはオスカーに向けられていて。そしてそのオスカーもアルフレッド様に氷点下の微笑みを向けている……?あれ、このシチュエーション……なんかどっかでみた記憶あるな……??? )


 何だかデジャヴを感じて、睡眠不足の酸素の足りていない脳みそをしゃかりきに回転させて、上手く働かない思考をフル稼働していると、クスクスと楽しげな笑い声がアルフレッド様の後ろの方から聞こえてきて「こんなアルフレッド、初めてみたなあ……いいものが見れた」と笑いながらその透明感のある澄んだ声が言った。

 アルフレッド様は、その声を受けて視線をそちらに向けながら声のする方に向かって「エドガー……笑い事ではない」と口を開いた。


( エドガー、って……まさか……! )


 アルフレッド様の横からひょこっと現れた美しい御尊顔に、予想が一致した俺は、慌てて(しん)の礼をしようとしたのだけど、アルフレッド様が全然ピクリとも動いてくれなくて彼の胸をドンドンと叩く。


「ア……っ、アルフレッド様、ど、どいてください……!王太子殿下にご挨拶できない……!」

「うん?——ははっ。必死な君もかわいいな……ずっと見ていたい」

「?!ア、アルフレッド様?!ふざけてる場合じゃ……!」

「ふざけてなどいない。またひとつ、知らない君が知れて嬉しい。——確かに礼儀は大切だが……今、私は君から、何故だか離れられなくなってしまっているんだ」

「ええ?!なんで」

「——ああ。そうだ。きっと、昨日の続きが出来れば……離れることが出来るかも、しれない」

「?!」


 昨日の続き、と言われてマリアベル様とヴァルターが突撃してくれる前のあの出来事がすぐ蘇って、瞬間湯沸かし器かの如く茹蛸になってしまった。

 そんな俺を見て「っ、なんて顔を……!もう誰にも見せたくない……君を、閉じ込めてしまいたい」とアルフレッド様が意味不明な発言をして俺を余計抱き締めた。

 アルフレッド様の香りを一層強く感じてどうにかなりそうだ。ぐむむ。

 というか、アルフレッド様の香りは本当にいい匂いすぎて、開けてはいけない扉を開いてしまいそうになるのを必死で我慢した俺は自分で自分を褒めてあげたい。偉いぞ、俺。まだ俺は大丈夫。ギリギリのラインだけど。ファイト、俺。

 でもやっぱり、この国の第一王太子殿下にご挨拶出来ないのはマズイと思って、ぷは、と顔を何とかアルフレッド様に向けて口を開いた。


「っは、——やっぱり、王太子殿下にご挨拶はキチンとしないと……!お願いです、アルフレッド様……したい……」

「ぐっ……かわ……!——んんっ。分かった……離そう」


 今の会話でアルフレッド様に何が響いたのかはよく分からなかったけれど、アルフレッド様が離れてくれたお陰で王太子殿下に向かって膝を曲げ、通常の礼より深く腰を曲げて深の礼をしながら殿下に向かって口を開いた。


「エドガー第一王太子殿下、ご機嫌麗しゅうございます。お変わりなくお過ごしのことと存じ、なによりに存じます。ヴァーミリオン伯爵家嫡男、ディルク・ヴァーミリオンにございます。こうしてお目にかかれて光栄です」

「うん。よろしくね。ヴァーミリオン伯爵令息……ディルク、と呼んでも?」

「っ!は、はい……!」

 

 エドガー・シルヴァン・アッシュフォード第一王太子殿下。蜂蜜の様な黄金色の髪に、スカイブルーの瞳。

 ざま婚本編ではアルフレッド様と親友の立ち位置で描かれていた。それはきっと、この砕けたおふたりの口調から考えても、変わらないのだろう。


 だけど……原作だと、そのおふたりと共に存在する筈のセシル・アストラル様の姿は——どこにも見つけられなかったのだった。




 

 

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