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大好きなBL小説の悪役令息に転生したので改変せずに、ふたりの行く末を見守りたいと思います。  作者: 燈坂 もと


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11.北の領地(5)




 

 スウォームラットとシャドウラットには明確な違いがある。それは彼らの動きと移動した時に出来る痕跡だ。


  スウォームラットの特長は波状移動だ。「黒い波」という二つ名が付いていて、その動きは生きている波のように見える。スウォームラットは大抵集団移動をするが、その際の移動が黒い波が寄せては返している様に見えるのだ。

 動きのイメージとしては、群れ全体が一つの大きな波のように、まとまって同じ方向へ雪崩れ込む。前方の鼠が止まると、後続が押し寄せて乗り越えたり、横に広がったりしながら前進するのだ。

 動きには統一感と勢いがあり、止まることがほとんどない。死骸が出ると死臭からフェロモンが放出されて周囲の鼠が興奮してさらに波が大きくなり、その動きで香りが四方八方に充満する。

 だから絶対に、スウォームラットは殲滅してはいけないのだ。


 シャドウラットは散開隠密行動をとる。彼らは「影が散らばる」ように素早く分散・隠密する動きが特徴的だ。

 シャドウは群れが一斉に放射状に散開し、個体ごとに別々の方向へ逃げたり、隠れたりする。

 影、草むら、木の根元、溝など、物陰に素早く溶け込み、動きが素早くて断続的で、じっとしている時間と急に動く時間の差が激しい。スウォームとは違い「一匹一匹が独立して動いている」感じが強く、波のようなまとまりがなく、遠くから見ると「黒い点がいくつも散らばっていく」ように見える。

 集団としての勢いは弱く、隠れる・逃げることを最優先にしている。シャドウと言われる所以はそこから来ていると文献にも記載されていた。


 そして痕跡だ。スウォームラットとシャドウラット、彼らが通った後に出来る痕跡にその移動方法の違いから明確な違いが出る。

 ラットが通った所にはその足の爪の長さから爪痕が残るのだが、スウォームは幅広で連続している。それは、スウォームラットが波のように通り過ぎた証拠だ。

 そして、シャドウは枝分かれした細かい痕と、その痕が間違いなく物陰に隠れるようなルートを辿っているのだ。


「ラース様、確認出来ました。現状、シャドウが8割、スウォームが2割混在しています」

「混在……!よもや、そんなことが」

「非常に珍しいケースですが、前例が無いわけではありません。それでは、今から領地外へ誘導後、魔の森へ撤退してもらいます。名付けて、お家へお帰りいただきマウス大作戦……っ!」

「——ふむ。かわいい、作戦名だな……?」


 ラースにダジャレの作戦名をスルーされ ( きっとマウスという言葉がこの国にはないから、ラット=マウスの認識がないだけだろうけど ) 、普通に心はポッキポキだけど、『かわいい』とフォローしてくれたラースの優しさに俺は普通に泣きそうになったけど、頑張って我慢した。

 

「んんっ。私のこの方法のアカデミーでの成功率は70%なので……多分、きっと、それとなく!いけると思います!」

「——まあ。上手くいかなくても、其方(そなた)のことは私が守ろう。安心して、進めるといい」

「あ゙っ゙……!?、あり、がとう、ございます……っ?!」


 ふんわり微笑んだラースの柔らかな優しい表情とその台詞に、吃驚しすぎて声が裏返ってしまった。


( かっ、かっこよ……っ!まさに(おとこ)の中の、(おとこ)……ッ!ラスセルがアルセルに次いで人気のカプなのも、めちゃくちゃ頷ける……っ! )


 ざま婚は二次創作も活発で、安定のアルフレッド様×セシル様に次いで、ラース×セシル様の同人誌作成で活動されてる大手の作家さんも沢山いた。


( 俺はディルク推しだから、ディルクが出てる作品には沢山手を出したけど……ラースが絡んでる作品はディルクを更生させる友情モノが多くて。それも泣ける話ばっかりだったなあ。アレはアレでよかった……!ラース、ディルク、なんてお互いに呼び合ったりして……、——友達、か。俺も……ラースと友達になれるなら、なりたい )


 俺も、目の前のラースと……友達に、なりたい。

 きっとこのラット達を魔の森へ帰したら、婚約の取り下げもするし、ヴァーミリオン伯爵家とは関係のないノースユグレスシア(ココ)へは俺は足を運ばないだろう。

 折角知り合えたのに。何だかラースとの縁が切れてしまうのが寂しく感じた。だからだろう。無意識に、ラースへ口を開いていた。


「ラース様、あの。ラット達を魔の森に帰したら、私達はきっと王都へ帰ります。こんなこと、急に発言して引かれるやも、ですが……もし、ラース様さえよければ、なんですけど……私……、俺と——友達に、なってくれませんか……?」

「——友達。」

「はい……!俺、貴方と、友達に……なりたいです……!」


 そう言った俺をじっ、とラースは見つめて。そして「まさか、こんなにも魅力的だとは……ますます、目が離せない」と言いながら。

 —— 彼は俺の前に恭しく、跪いた。


「ラース、様……?」


 俺の問いかけに、真剣なラースの表情が向けられて。

 ゆっくりと、ラースが口を開いた。

 

「この剣……この心。すべてを北と貴方に、捧げます。」

「……っ!その、言葉は……!」


 ノースユグレスシアの騎士が、唯一ひとりに誓いを立てる時の……台詞。所謂、騎士の誓いだ。ざま婚本編でも紹介こそされてはいたが、セシル様にも立てていなかったその誓いを、俺の前で、している。


( な、なんで……?! )

 

 吃驚して固まっている俺を真剣に見つめ、ラースは俺の手を取りながら、台詞を続けた。

 

「……貴方の盾となり、剣となり、影となりて守り抜くことを誓います。……どうか、ラースと。俺は貴方に全てを、捧げる」


 

 そう言いながら、ゆっくりと。


 俺の手の甲に、ラースは口付けを落としたのだった。



 

 

 

 

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