↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/55

第6話 塩と米なら塩おにぎりでしょう!

 一部始終を隣で見ていたパティさんが、首を傾げながら聞いてきた。やっぱり気になっちゃいますよね。


「これってなんですか?」

「これは塩っていう調味料で、しょっぱい味付けにする時によく使うものなんだよ。舐めてみる?」


 はい、とボウルを差し出す。あんまりたくさん舐めると大変だから、少しだけだよとアドバイスを忘れずに。

 興味半分恐怖半分って顔で、パティさんは塩を指につけて舐め、目をぱちくりとさせた。驚くとちょっと幼く見えてかわいいな。


「しょっぱいです……!」

「でしょ? 本当はもっとちゃんとした作り方があるんだけど、スキルで作ってみたんだ。ちゃんと出来ててよかった〜」

「なんだか面白いスキルですね。味付けをする物を作ることができるなんて」


 本当にね。私だって特殊すぎるスキルだと思う。なんでこんなスキル持ちなんでしょうね、私。


「これでなにを作るんですか?」

「そうだなぁ。ひとまずおにぎりでも作ろうかな」

「おにぎり?」

「ライスを使った料理だよ。さて、早速始めますか」


 まず、常温保管庫にあったライスを軽く洗う。そのあと洗った米を水に浸して、しばらく浸水させる。


 ナーディアさんが言ってたように、この街のライスは国王に献上されるってこともあって、精米技術は高いみたい。日本で食べてたお米と遜色がないくらいに真っ白だし、扱いやすい! 異世界にいるのに、なんだか不思議な気分。


「これは、なにをしているんですか?」

「これは浸水って言って、お米に水を吸わせてるんだ。こうしておくと、炊いた時に粒の中まで柔らかくて、ふっくらとした仕上がりになるんだよ」

「そうなんですね。初めて知りました……!」

「絶対美味しいから、炊き上がりを楽しみにしててね」


 じゃあ浸水してる間に、おかずでも考えよう。保管庫に何かあるかな。パティさんに教えてもらった、厨房内にある冷蔵保管庫(多分冷蔵庫のようなもの)の中を見てみる。

 これ、氷魔法や風魔法を組み合わせて作られてて、ちゃんと手入れさえしていれば半永久的に壊れることはないとか、魔法ってホントすごい。


 中には様々な食材があって、目利きのスキルを使いながら、何にするか悩む。


「えーっと……ランドチキンの卵? ああ、卵いいね! それと、このウインナーっぽいものもいいかも。よし決まり!」


 この感じ懐かしい。ブラック企業に勤めてた頃はすっかり料理しなくなったけど、あれこれ考えて作るの好きだったんだよね。

 それに土鍋でご飯を炊くのも久々だな〜。いつも炊飯器で簡単に炊いてたけど、こっちの世界にはなさそうだもんね。でも美味しいんだよね、土鍋ご飯って。


 浸水させて真っ白になった米を水ごと土鍋に移して、中火にかける。中の水が沸騰して、ぐつぐつ音が聞こえてきたり鍋の蓋から湯気が出てきたところで、弱火にする。

 このまま15分くらい経ったところで火を止めて、最後に蒸らしておく。


 この間におかずを作ろっか。

 ウインナー用に鍋に水を入れて、火にかけておく。沸騰するかしないかのところでウインナーを入れて、3分ほど茹でる。ウインナーが浮いてきたら、ザルに開けてお湯を切ったら完成。

 そしたら次は卵に取り掛かりますか。


「とりあえず一人前が1.5個分ってことで、二人分で3つかな」


 ボウルに割り入れたランドチキンの卵に、塩を少々。白身を切るように解きほぐしておく。

 次にどんな仕組みか全く分からないけど、火にかけるだけで自動的に油が出てくるっていう、謎のフライパンを熱する。

 中火にしたら、そこに溶いた卵を一気に入れる! フライパンに入れた卵の、じゅわあって音が堪らないね!


「いい音ですね」

「ちゃんとフライパンがあったまってる証拠だね。ここで素早くかき混ぜて、今回は大きめの塊がある炒り卵にするよ」


 木べらで混ぜつつ、卵に火を入れる。完全に固まりきらない、半熟より少し硬めくらいのところで火を止めて、皿に盛る。その隣に、茹でたウインナーを添えておかずは完成!


「さてご飯はっと……おお、いい感じ!」


 蓋を開けた瞬間、炊き立てご飯のほんのり甘い、いい匂いが顔にかかった。湯気の中から出てきたご飯は雪のように真っ白だし、一粒一粒がツヤツヤしてて美味しそう! 正直このままでも食べたい! やっぱり白いご飯はいいねぇ、見ただけでテンション上がる!

 パティさんも、目をキラキラさせながらご飯を見てた。


「美味しそうです!」

「美味しいだろうねぇ。ここから一手間加えて、おにぎりにしていくよ」


 ボウルに張った水に、塩を入れて塩水を作る。この時、塩はしっかりと溶かしておく。作った塩水で手を濡らしたら、熱いうちに一個分に取り分けたご飯を手のひらに乗せて、握っていく。


「あっつつ」


 ぎゅって握っちゃうとお米が潰れるから、あんまり力を入れすぎず、だけど適度な力加減を忘れずに。

 俵形もあるけど、やっぱりここは基本の三角型でしょう! ちょっと角が丸い感じの三角形にしたら、塩むすびの完成!


 あとはおかずとは別のお皿に塩むすびを2個乗せれば、おにぎりセットの出来上がり!

 本当は味噌汁なんかあれば完璧だったけど、味噌がないからね。そこは我慢。あと見た目が完全に日本の朝食だけど、そこはそれ。美味しければいいのよ。


「はい、出来たよ〜」

「わぁあ! すごいですカエデさん!」

「そんなに褒められると照れちゃうな。ここで食べる?」

「そうしましょう」


 飲食スペースから椅子を持ってきて、ピッチャーに水と氷と輪切りにしたレモンを入れて飲み水を用意する。自分の分とパティさんの分をそれぞれ置いて、お昼ご飯の準備は整った。


「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」


 あ、挨拶はこっちの世界も同じなんだ。妙なところを気にしつつも、まずは塩むすびを食べる。


 う〜んこれこれ! このふっくらご飯の柔らかさに、ほんのりとした塩味! 塩加減もちょうど良くて、それが炊き立てご飯の甘さを引き立ててるんだよね〜。

 嗚呼、日本人のDNAに刻まれてるご飯の満足感が、ゆっくり満たされていく……。厳密に言うと今の私は異世界人だけど、そこはほら、細かいことは気にしたら負け。


 それにしても、土鍋で炊いたご飯って炊飯器とは違った美味しさがあるよねぇ。ああ〜お米の美味しさが身に沁みるぅ……。知ってる味の安心感ハンパない!


「う〜ん、こっちも美味しい!」


 玉子のふわふわしてとろとろっとした食感! 絶妙なしお味が、玉子のまろやかな美味しさを引き立ててる〜! ウインナーも皮はパリッと、そんでもって中から肉汁がぶわぁっ、でいい! 焼きもいいけど、ボイルの方が肉汁が溢れる感じがして好きだなぁ。

 色々と美味しいのはあるけど、なんだかんだ、こういうシンプルなのがいっちばん美味いんだから。


 そういえばパティさんずっと無言だけど、大丈夫かな。ちらっと前を見れば、パティさんはおにぎりを持ったまま固まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。