第52話 パーティーのご予約承りました
「ボナくん、これ三番テーブルのパーティにお願いできる?」
「分かった、持ってくね〜」
今日の食堂も相変わらずちょっと忙しい。特にお昼くらいの時間帯はすごいね、冒険者が入れ替わりのように次々と来るよ。
でもこの忙しさは、嫌いじゃない。来てくれる冒険者がみんな、美味しいって言ってくれるし。
それがなんか認めてもらえたって感じがして、私もやる気が出るんだよな。
そんな忙しいお昼時が過ぎた頃、一人の男性冒険者が食堂に来た。外見年齢的に、三十代くらいかな。
「あの、すみません」
「おかえりなさい。どうされましたか?」
「ラスクを買いに来たんですけど、まだありますか?」
ラスクも相変わらずの人気で、これを求めて食堂に買いに来る冒険者もいる。
まさかここまで人気になるとは思わなかったよ。ここまで人気なら、今度別の味のラスクを作ってみてもいいかも。
「はい、ありますよ。何個買いますか?」
「では、三つください」
「ありがとうございます。じゃあこちら、ラスク三つで銅貨九枚になります」
「わかりました。こちらでお願いします」
「確かに。はい、どうぞ」
瓶詰めされたラスクを手渡すと、男性冒険者は嬉しそうに瓶を手に取った。
「あなたが料理長なんですよね? このラスク、うちのパーティでも大人気なんですよ」
「ありがとうございます。そう言っていただけて、嬉しいです」
「それでなんですが、少し相談事があるのですが……。聞いてもらえませんか?」
なんかここ最近、相談されることが多いな? まぁいいけどね。断る理由もないし。それに多分こういう相談の内容は、料理についてだろうし。
「私にですか? 別に構いませんが……。席について話しましょうか」
「ありがとうございます」
それから各々席につくと、まず自己紹介された。
「改めて、自己紹介します。Bランク冒険者パーティ『そよ風の導き』でリーダーをしている、ウェルといいます」
「はじめまして。食堂で料理長を務めている、カエデといいます。それで、どういった相談でしょうか?」
「はい。実は──」
話を聞くと、どうもウェルさんのパーティは、七日後に解散することになったらしい。なんでもパーティの一人が、家庭の事情で故郷に戻らなきゃいけなくなったからだとか。
そこで仲間内で話し合って、これを機にパーティを解散して各々の道を進もうって、話が決まったんだって。
「それで最後に宴を開きたいと思っているんですが、この食堂をお借りすることはできませんか?」
なるほどそういうことね。
食堂を貸し切ってお別れパーティーがしたいと。そこで料理を作ってほしいってことかな?
「それってつまり、宴の時の料理をお願いしたいってことですか?」
「そういうことになります。お恥ずかしい話、うちのパーティは料理がそれほど得意でもなく……」
「ああ〜……」
「ですが仲間と過ごす最後の時間を、楽しいもので締めくくりたいと思いまして。そこでこの食堂のみなさんの力を、お借りしたいと……」
ウェルさんの気持ちはわかる。パーティーを開いても料理が美味しくなかったら、正直気分は半減しちゃうもんね。
仲間と過ごす最後の時間、か。いいじゃん、解散パーティー。そういうことなら、喜んで力を貸してあげるってもんよ。
「わかりました。そういうことなら、喜んで力を貸しましょう」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「ちなみに食堂を貸し切る場合ですと、普段より少々多く金額をいただきたいと思っているのですが、よろしいですか?」
パーティー料理となると、普段出してる料理たちよりもグレードも上げた方がいいし、量も多いだろうからね。金額は多少、多めにもらっておきたいところなんだよな。
勝手に話を進めてごめんだけど、これはあとでちゃんとみんなにも説明しよう。
「はい、構いません。むしろ急にこんなお願いをしたのですから、ちゃんとお金は払わせてください」
「ありがとうございます。料理についてですが、なにか注文はありますか?」
「そうですね……。今回故郷に帰る仲間は、たまごが好きなんです。なので、なにかたまごを使った料理があると、きっと喜ぶと思います」
「たまご料理ですね。分かりました」
それから日程と時間を確認して、ウェルさんは食堂を後にした。
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「──って、ことなんだ。ごめんね、勝手に話進めて決めちゃった」
一連の話をみんなに伝えて、一言謝る。
さすがに一人で勝手に決めすぎたかなぁ、なんて思ったけど、パティさんたちは大丈夫って言ってくれた。
「それこそ初代料理長がいたときも、時々食堂でパーティーを開いていたんです。だから、なにも問題はありませんよ」
「オイラも大丈夫だよ。それにこの食堂を選んでくれたってことは、この食堂がそれだけ人気を取り戻してきたってことでしょ? いいことだよ!」
「冒険者を支えるのが、オレたちギルド職員の仕事だもんな。反対する理由なんてねぇよ」
マジでみんなには感謝しかない! 勝手に進めたことなのに、こんなに優しい言葉をかけてもらえるなんて。私って果報者だぁ。
「ありがとねみんな。それじゃあパーティー成功のためにも、頑張るとしますか!」
「おおー!」
パーティー開催は七日後。それまでに豪華なパーティー料理を考えよう! 『そよ風の導き』のみなさんの思い出になるような料理、作ってみせるぞ!




