第50話 複雑な味といえばカレーでしょ!
[日間]異世界転生/転移ファンタジー部門で230位になってました。
自作小説が三桁の順位になったことが今までなかったので、凄く嬉しいです。ありがとうございます!
「よっこいせっと。こんなもんかな」
グッちゃんの注文を受けてから数日。あれから色々と考えすぎて煮詰まっちゃってきたから、掃除も兼ねてこれまで作ってきた調味料を並べてみた。
調理台の上に並べられた、数々の調味料。なんだかんだと、色んな調味料が揃ってるなぁ。
「こうして並べると、壮観ですね」
「いつの間にかこんなに増えてたんだね」
「しっかし、最初は驚いたもんだぜ。食べ物から味付けに使うものを製造するとか、レアスキルもレアスキルだからな」
本当にその通りだよ。最初はこんなスキルで大丈夫なのかって不安だったけど、今じゃこのスキルに助けられてばかりだもん。
それにしても、我ながら結構な種類が集まってきたな。
塩に食用油にオリーブオイル、砂糖に酢としょうゆ、みそ。他にも調理酒やみりんにハチミツ、ウスターソース。
それに隠しレシピのマヨネーズにケチャップ、からしとマスタード! 果物で作ったジャムや、食パンから作ったパン粉なんかもあって、実に豊富だよね。
ある程度のものなら作れるくらいには、調味料が増えて助かってはいるんだけど……。
「うーん、複雑な味の料理ねぇ……」
グッちゃんの注文は、複雑な味の料理だ。
ここ数日はそれとなく、グッちゃんが気に入りそうなおかずを作って出しているものの。反応は「初めて見る!」や「おいし〜!」止まりなんだよね。
もちろん、それも嬉しいよ。グッちゃんの食べっぷりは、作ってる側からしても気持ちがいいし。
でも私としては、もっと驚かせたいんだよなぁ。
こう、食べた時に「おもしろい!」って言ってもらえるような、この世界の常識から外れた料理を考えてはいるけども……。
「グローリアさんの注文は、辛いけど甘いような味、でしたっけ?」
「苦いけどコクがある味、なんてことも言ってたんだっけ?」
「そうなんだよね。例えでそんなヒントをくれたんだけど、どうしようかなぁ……」
「それを考えるために調味料を出したってワケか」
「そうそう。並べてみれば、なにか思いつくかなぁって思ったんだけど……」
組み合わせ次第で色んな味付けが出来るけど、どこか頭ひとつ抜けるような風味にならない気がする。
パンチ力が足りないというか、刺激に欠けるというか……。
刺激といえば。そういえば改めて見ると、辛い系の調味料って思ったよりないな。
豆板醤とかあれば辛い系の料理が作れるし、カレー粉なんかがあれば……。…………。
「……あ!?」
思わず声出しちゃった。なんで今の今まで、その選択肢が思い浮かばなかったんだ!? 複雑な味でいえば、王道中の王道なのに!!
そうだよ! カレーいいじゃん!! 隠し味で色んな味が表現できるし、なにより美味しい! 日本人なら、ほぼ全員が普通か好きって答える料理!
決まりっ! 粉を扱うお店が確か市場にあったし、香辛料を扱ってるお店もあったはずだから、早速行ってみよう!
「今からちょっとだけ、食堂抜けてもいい? 市場の香辛料を扱ってるお店に行きたくて」
「それってもしかして、作る料理が決まったってことですか?」
「まぁね。そのために必要な調味料を作るために、たくさんの香辛料を買いたくてさ」
「それならいい店知ってる! オイラも時々買いに行くんだ」
持つべきものは仕入れのスペシャリストな同僚だ。
ボナくんのおかげで、香辛料を扱う店があることが確定したし、教えてもらったら早速買いに行こう!
******
翌日の厨房は、スパイシーな香りが充満していた。
昨日香辛料のお店に行ったらテンション上がっちゃって、勢い余って結構な量と種類のスパイス達を買っちゃったんだよね。
でもそのおかげで、香り高くて品質の良いカレー粉が作れたから、まぁよしってことで。
そうそう、このスパイシーな香りがたまらない! 食欲がそそられるし、なんか懐かしささえ覚えるよ。
学校から帰って玄関からカレーの匂いがしてきたときとか、カレー専門店の店内から漂ってきたときとかを思い出しちゃう。これぞ日本の食卓の匂いだよぉ。
ちなみに昨日カレー粉ができた時点で、厨房のみんなにはカレーを作って出してみた。
最初は香辛料たっぷり使ってるし、辛味は抑えたけど大丈夫かなーって思ってたけど、余計な不安だった。煮込む時に入れた『隠し味』のおかげで、みんな一気にカレーの魅力の虜になってたよ。
「時間帯的にはそろそろ来るはず……。っと、噂をすれば。おかえり、グッちゃん」
「たっだいま〜! なんか新しい匂いがするね」
「うん。実は、例のものが完成したんだ」
「例のものって……。あ、うちの注文!?」
「そう! お待たせしました。ようやくご注文に合う料理ができたんだよ!」
そう言えば、グッちゃんは目をキラキラさせながら喜んでくれてる。
「さっすがカエっち! 作ってくれるって信じてた!」
「ありがと。多分グッちゃんも気に入ってくれると思うよ。今用意するから、待っててね」
「は〜い。やば、超楽しみ〜!」
それじゃ、深めのお皿の半分にライスを盛って、もう半分に煮込んだカレーを盛って……。
「はい、お待たせ。これが複雑な味の料理、その名もカレーライスだよ」
「へぇえ〜! ライスを使ってるのに、これも見たことない料理! それに食堂の外からも匂ってたけど、こうして近くで嗅ぐと色んな匂いがする!」
ふふふ、昨日のみんなと同じ反応してるな。
この匂いはいいよね、私もお腹減ってきたもん。
「そうでしょ? あとそれと、カレーにはこの飲み物も合うから持ってきたよ。ヨーグルトを使った、ラッシーって飲み物だよ」
「飲み物まで! ありがとだよカエっち〜! それじゃ、いただきます!」
カレーを一口食べたグッちゃんは、驚いた表情をしてから、いい笑顔で噛み締めてる。これは反応も期待大か。
「おいし〜い!! ピリッと辛いのに、甘くてコクもあって、色んな味がする! なにこれおもしろ〜!!」
おもしろい、いただきましたぁ!
これは注文は無事に成功ってことで、いいんじゃないかな!?
「どう? 気に入ってもらえたかな?」
「最高だよ! こんなに美味しくておもしろくて、複雑な味がたくさんする料理なんて、うちはじめて! 辛いのに甘いのも不思議!」
「カレーは香辛料をたっぷり使った食べ物なんだ。だから食べやすいように、サニーアップルと甘い蜜を入れて、まろやかにしてみたの」
そう、隠し味はサニーアップルとハチミツ! りんごの甘酸っぱさとハチミツの甘さが、カレーの辛みを抑えてコクを引き出すんだよねぇ。
「んん〜! このラッシーって飲み物も美味すぎ! さっぱりしてるから、口の中のカレーが洗われるみたい。これならいくらでも食べられる〜」
「そうでしょう? 沢山あるから、好きなだけおかわりしていいからね」
「ありがと〜! お肉もとろとろだし、野菜もよく煮込まれてて、ライスともよく合う〜。おかわりお願い! あ、大盛りにできる!?」
「もちろん、大丈夫だよ」
「やったね! それじゃ、お願いしまーす!」
それから相当カレーが気に入ったみたいで、鍋の半分がなくなるくらいの量を食べたグッちゃんなのでした。




