第48話 オーガと人間のハーフでギャルなAランク冒険者
今日は食堂内がちょっとざわざわしてる。理由は食堂に来た、一人の女性冒険者みたい。
初めて見る人だ。健康的に焼けた肌は綺麗だし、スタイルも良さそうだし、なにがとは言わないけど、発育が大変よろしい。それに凄くオシャレな見た目をしてる。言うなれば、ギャルって感じだね。
席の隣に細身に似合わない、大きな斧が立てかけてあるけど、あれで魔物と戦ってるのかな。だとしたらすごいな。実は怪力ガールなのか?
他の冒険者たちがその女性冒険者をチラチラと見ながら、こそこそ話してるけど、どういった人なんだろう?
でもそんな視線を浴びてても、当の女性冒険者はどこ吹く風って感じ。うわギャル(仮)強い。
メニュー表を見ながら、どれにしようかなぁなんて、気楽に呟いてるよ。やがて注文が決まったみたいで、店員さーんって呼ばれた。
「はい、ご注文お決まりですか?」
「うん。このおにぎりセットってやつで、フリジットサーモンと焼きおにぎり、おかずはお肉メイン。それと、パンセットでフォカッチャってやつと、魚メインのスープをお願い!」
一人で二つのセットを頼むヒトなんて初めてだ。いや、連れがいるのかな? 聞いてみたいけど、初対面のヒトにそんなこと聞いても失礼だね。
「かしこまりました。ご注文確認します。おにぎりセットのフリジットサーモンと焼きおにぎり、肉メインのおかず。それとパンセットのフォカッチャと魚メインのスープですね」
「うん、それで間違いないよ! ここの食堂、冒険者たちの間で噂になってたからさぁ。一度来てみたかったんだよね〜」
「ありがとうございます。では用意しますので、少々お待ちください」
「は〜い」
なんか気さくな感じのギャルだなぁ。思ったより話しやすいぞ。ひとまず注文のセットを用意して、ギャルの元へ行く。
「お待たせしました。おにぎりセットのフリジットサーモンと焼きおにぎり、肉メインのおかず。それとパンセットのフォカッチャと魚メインのスープです」
「おっ、きたきた! へぇ〜! めっちゃおいしそーじゃん!」
「どちらも出来立てですので、火傷にお気を付けください。それと、おかわりしたくなったら、またお呼びくださいね」
「わかった。多分どっちもおかわりすると思う!」
「ありがとうございます。では、ごゆっくり」
どっちもおかわりすると思うって、やっぱり一人であの量を食べるんだ!? 待ってウソでしょあの細身のどこに入るの?
というか、あんなに食べるのにスタイルいいとか、羨ましすぎるんだけど……!?
「んん〜おいしいっ! これいーじゃん!」
美味しそうに食べるなぁ。今のところはなんていうか、普通のギャルって感じだよね。
周りの冒険者がヒソヒソする要素が、今のところ見当たらないんだけど。
「すみませーん!」
「はーい」
ギャルに呼ばれたので向かうと、もう皿の中身はすっからかんになっていた。あっという間に、綺麗に平らげてしまってるわぁ……。すごいな、人間掃除機か?
「おまたせしました。どうかされましたか?」
「うん、おかわりをお願いしたくって。どっちのセットも、全部同じのでくれる?」
あれ、聞き間違い? どっちのセットも全部同じの? 一人前のセットを二人分平らげたのに、さらに二人前追加なんです?
「どうかした?」
「あ、いえ、すみません。わかりました、おにぎりセットとパンセットのおかわりですね。少々お待ちください」
「りょーかい。ありがとね〜」
空いてる食器を片付けて厨房に戻る。セットの料理って結構な量があるのに、それがあの細身に入るとはね……恐れ入るよ。
同じセットを用意して、もう一度ギャルの元へ行く。
「おまたせしました」
「待ってました! ここの料理ってばおいしすぎ! 噂以上の価値があってビックリしちゃった。これってあなたが作ってるの?」
「パン以外は、基本そうですね。パンはうちの自慢の獣人パン職人が、一生懸命作ってます」
「ガチ? 獣人でパン職人って、やるじゃん! そうだ、自己紹介まだだったね。うちはグローリア。オーガと人間のハーフで、Aランクの冒険者だよ。よろしくっ」
待って待って待って待って情報量が多い。なんて?
スタイル良いこのギャルが? オーガと人間のハーフで? 冒険者で? しかもAランク?
なんですかこの属性盛り合わせセット。色々と盛りすぎでしょうよ。どういうこと?
「ねね、名前教えてよ」
「え? あ、ああ。すみません。私はカエデといいます。よろしくお願いします」
「そーんな堅苦しくしなくていいからさ。うちのことも、気軽にグッちゃんって呼んでよ」
「いいんですか? Aランクの冒険者に対して失礼なんじゃ……」
「ランクなんて気にしなくて良いからさ。それに見たところうちと同年代っぽいし、友達になろーよ〜」
めちゃくちゃ光のギャルや〜〜〜〜。
フレンドリーなギャルっているんだな。
「じゃあ、お言葉に甘えて。よろしくね、グッちゃん」
「うん! よろしくねカエっち」
「ところで、ちょっと聞いてもいい? さっきから他の冒険者がグッちゃんのこと見てるけど……知り合いだったりするの?」
「ぜーんぜん。多分みんな、うちのこと怖がってるんだよ。うちの二つ名、知ってる?」
平然とした態度で、グッちゃんはおにぎりを食べる。こんなに気さくでフレンドリーなのに、どこが怖いんだろう?
「知らないけど……」
「そっか。うちの二つ名は『同族殺しのグローリア』って言うんだ」
「同族殺し?」
「そうそう。ほら、うちってオーガと人間のハーフだからさ。冒険者だと魔物のオーガとかも討伐するわけじゃん? それで同族殺しってワケ」
ああ〜なるほど。
そういえば、魔物と獣人の明確な違いってよく分かってないんだよね。
「オーガって、魔物以外にもいるの?」
「あはは、違う違う。んー、なんていうのかな。オーガの中にもヒトに友好的な種族がいるんだ。うちの親父はそういうタイプでさ」
「へぇ、それは初耳」
「でも魔物になったオーガは、そうじゃない。魔物ってのは、二つの月の魔力に精神が侵食されて腐食して、完全に本能だけの存在になったものを言うんだよ」
それも初耳。なんだかんだ、どうして魔物が世界にいるのか、知ってるようで知らなかったからな。
こうして色々と教えてもらえるのはありがたいよ。




