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第45話 さしすせそコンプリート!

 数日前。ちょっと、いや、かなり嬉しいことがあった。

 これまで、食堂で色んな冒険者に料理を食べさせてたこともあって、私はレベルアップできてレベル10になった。


 話は少し逸れるけど、私はレベルアップした時に、必ずやることがある。それは自分のスキル【レシピ製造】をチェックすることだ。

 このスキルの【レシピ一覧】が見れる画面を出して、新しいレシピが開放されてないか確認する。それがいつの間にか、癖になっていたんだ。


 今のところレベルが一つ上がるたびに、新しい調味料のレシピが一つ開放されてる。コレクションが一つずつ埋まっていくような感じで、ちょっと楽しかったりする。

 見返してみると、隠しレシピも含めて、調理に必要な大抵の調味料は集まりつつあるんだよね。


 だからレベル10に上がったって気付いた時も、いつものようにレシピを確認した。すると予想通り、新しいレシピが開放されてたんだよね。

 そのレシピを知って、私の時は一瞬止まった。


 見間違いじゃないよねって思って、画面を消してもう一度確認してみたら、やっぱりそれは夢じゃなくて。嬉しくなって、つい宿舎の自分の部屋で叫びそうになったのよ。

 そう。とうとう、あの調味料のレシピが開放されたんだ!!



 ******



 そして今に至る。

 パティさんたちにレベルアップしたこと、新しいレシピが開放されてたこと、その調味料を今から作るということを説明した。


 調理台に置きますはダイズとライス、塩と水。

 それらを用意して、一つ息を吐く。よしっ、と気合を入れてから、パティさんを見る。


「それじゃあ、いくよパティさん」

「はい、お願いします」


 厨房内には、妙な緊張感が漂っていた。いや私が勝手に緊張してるだけなんだけどさ。

 それでも見守ってくれるみんなに頷いてから、スキルを発動させる。


「スキル発動──製造、開始!」


 スキルを発動させると、光が調理台の上にあった材料を包む。しばらくして、ふわっと解けるように光が消えて、その中からとある調味料が現れた。


 茶色い塊に、ダイズの豆の匂い。見るだけだと、ちょっとしょっぱいような見た目。


 でも私にとっては、もはや懐かしささえ覚える調味料。レベルアップして、新たに開放されたその調味料の正体は──。


「やっ……たぁああっ! みそ出来たぁああっ!!」


 さしすせその最後のピース。パティさんと二人して待ち望んでいた調味料、みそである!


 やっと来たよー!! ずっと待ってた!

 レベルアップするたびに、早くレシピが開放されないかなって思ってた! なのにいつまで経っても出ないし、もしかしたらレシピそのものがないんじゃないかって、ちょっと不安になってたんだよね!!


 でもそんなことは杞憂だった! こうやって無事にみそが手に入ったんだもん! もうなにも不安なんてないんだ!


「パティさん! やったよ!! これがみそだよ!」

「みそ……。……あ、もしかして!?」

「そう! さしすせその『そ』! これでさしすせそコンプリートだよ!!」

「おめでとうございます! やりましたねっ!」


 パティさんと大盛り上がりする横で、ボナくんとビリスは置いてけぼりをくらってた。いけない、二人にもちゃんと説明しないとだね。


 興奮を抑えつつ、ボナくんとビリスに説明する。でも多分、若干早口になってたと思う。

 パティさんと初めの頃に話してた内容や、みそについてとか色々と伝える。ボナくんとビリスは話を聞くと、笑顔でおめでとうってお祝いしてくれた。

 ありがとうだよ二人とも〜〜!!


「みそって、独特だけど豆のいい匂いがする調味料なんだね」

「これがあのダイズから作られてるのか。不思議なもんだな」

「初見じゃ絶対分からないよね。とはいえ、みそは本当にすごい調味料だから」


 そうだ! 今からみんなに味を知ってもらうために、このみそでアレを作ろう!


「みそがどんな風なのか気になると思うから、今からおにぎり作るね」

「おにぎりをですか?」

「うん! 今から作るのは、みそ焼きおにぎり。パティさん、一緒におにぎり握る?」

「はいっ! ぜひ作らせてください」


 そのやる気やよし! 準備を整えて、早速作り始めた。

 実はこのために、事前にライスを炊いてました。どうしても作りたかったし食べたかったんだよ……!


 慣れた手つきで、おにぎりを握っていく。

 パティさんも何度も作るうちに、おにぎりの握り方のコツを掴んだみたい。最近じゃもう、綺麗な三角形に握れているからね。


 それなら私はみそだれを作りますか。

 ボウルに砂糖、しょうゆ、みりん、それから大事なみそを入れてから、よく混ぜ合わせる。みそを溶かすように混ぜたら、みそだれの完成。


「本当は網とかトースターで焼きたいけど、ここはフライパンで焼きますか」


 握られたおにぎりの片面に、作ったみそだれを塗る。

 油を薄くひいたフライパンに、みそだれを塗った面が下になるように、おにぎりを並べる。そしたら弱火から中火で、焼き色がつくまで焼く。

 あんまり火が強いと、みそだれがすぐに焦げちゃうから注意だ。


 ちょっとすると、みそが焼かれる奥深く香ばしい匂いが立ち上ってきた。砂糖も入れてるから、甘じょっぱい香りになってるな。

 まるで日本の台所の懐かしい匂いだな、なーんて。


 そうだ。忘れないように、表に出ている白い表面に、さっきと同じようにみそだれを塗っていく。


「なんだか、ほっとする匂いですね」

「わかる? この匂い嗅ぐと、ちょっと懐かしい気分になるんだよねぇ」


 そろそろいい感じに焼けたかな?

 おにぎりを裏返すと、おこげ付いた焼きおにぎりが顔を覗かせてた。いい色じゃん! おこげの部分も美味しそう〜!!


「おいしそうっ!」

「実際美味しいよ。あとはもう片面も焼けば……。出来たよ〜。みそ焼きおにぎり!」


 お皿に焼きたてのみそ焼きおにぎりを並べる。

 側面の白いライスに、焼かれたみその焦茶色が映えるねぇ! ああもう、焼かれたみその匂いに食欲がそそられる!


「はい、どうぞ。熱いから気を付けて食べてね」

「ありがとな。それじゃあ──」


 いただきます!


 おにぎりを一口かじると、私の中の日本人DNAが歓喜に震えた。嗚呼、懐かしい味だ!


 この熟成されたコクのある風味! そして甘みもあるけど、しょっぱいみその味! めちゃくちゃ安心する家庭の味って感じ〜!

 それに噛めば噛むほど旨味が口の中に広がって、満足感が満たされてく。お米の甘さもちょうど良くて、みそと混ざり合ってとても美味しい!


 それにおこげの部分はカリッと香ばしくて、胃袋が刺激される! これ一個の充足感、さいっこう!

 やだどうしよう、あまりに嬉しくてちょっと涙出そう。


「このみそという調味料、豆の味がしっかりと感じられて美味しいです!」

「だね! 焦げてる部分も、苦いかなって思ったけどちょうどいい香ばしさだよ!」

「濃い味だが、不思議だな。凄くほっとする味だ」


 みんなの感想に、首がもげるほど頷きたい衝動を我慢する。そうそうそうそう! わかるよみんな!


 というか、みそってそうなんですよ!!

 日本人ならば、この味の虜にならざるを得ないんですよ!! この感覚が異世界の人たちと共有できるなんて思ってなかった! こんなに嬉しいことはないよね!


 ようやくみそを手に入れたんだ。次はみそ汁も作りたいね!

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