第41話 鍛冶場の一番弟子から相談を受けた
「最近、鍛冶場は忙しそうですね」
「そうなんすよ〜。特に最近は冒険者たちから依頼が次々来て、納期に追われる毎日っすよ」
ギルドの従業員たちと世間話をするのは、ちょっと楽しかったりする。色んなことも知れるし。
だから、冒険者があまりいない時間帯に来た従業員さんと話すのは、私の密かな楽しみの一つだ。
実はちょっと気にしてはいたんだよね。
ここ最近、鍛冶場のヒトたちが食堂に来てなかったから。イグニスさんがここに来るのも、数日ぶりなんじゃないかな。
「急に依頼が増えたんですか?」
「いや、たまにこういうことがあるんすよ。色々と重なった結果ってやつっすね」
「なるほど、それはお疲れ様です」
「あざっす。本当なら毎日ここでメシを食いたいけど、仕事を放り出すわけにもいかないっすから」
もしゃもしゃ、とサラダを食べながらそんな愚痴を溢すイグニスさん。冒険者のためとはいえ、仕事が立て込めば多少は愚痴りたくもなるか。
「じゃあ、食堂に来ない時の食事ってどうしてるんですか?」
「んー、基本は買っておいた備蓄を食べるって感じっすね。外食したくても、仕事が終わった時には店が閉まってる、なんてこともザラっすから」
そっかぁ。どの世界でも、現場仕事ってのは大変なんだなぁ。
残っていたスープを飲んで、イグニスさんが手を合わせた。お皿の中は全部カラになってる。綺麗に食べてくれるのを見ると、作り甲斐があるよ。
「ごちそうさまでした。今日も美味かったっす!」
「ありがとうございます」
「そうだ。話ついでにカエデさんに相談があるんだけど、聞いてもらえるっすか?」
あらなんだろう。
私に出来ることかな。
「いいですよ。なんでしょうか?」
「例えばなんすけど、おにぎりみたいに気軽に食べられて腹にガッツリくる料理って、ありますか?」
「腹にガッツリくる料理?」
「はい。実はうちの連中が、おにぎりでも十分美味いけど、腹に貯まるモノも食いたいって話してたのを聞いちゃいまして」
ああ〜なるほどね。
確かに、食堂で出してる具材入りのおにぎりって、ツナマヨとフリジットサーモンだけだもんね。
その二つは食堂でも人気で、美味しいって評判をもらっえる。
でも美味しいと腹に貯まるって別の意味だし、働き盛りの職人さんたちにとっては、物足りなさも感じてたのかもしれないな。
「オレも一応現場を監督する一人として、従業員の声を拾うのは大事だなって思いまして」
「そんな風に気遣えるだなんて。さすが、テールムさんの一番弟子ですね」
「あざっす。オレなんてお師匠から見たら、まだまだっすけどね」
イグニスさんったら照れ笑いしてるけど、なんか嬉しそうだな。若そうに見えるのに、自分の持ち場の状況をちゃんと考えられるって、すごい立派だな。
私も見習わなきゃ。
さて、それじゃあ出された注文を振り返ろっか。
注文は、『おにぎりみたいに気軽に食べれて、腹にガッツリ貯まる料理』だったね。
気軽に食べるなら、やっぱり手掴みで食べるものがいいよね。おにぎりの具材を変えてもいいんだろうけど、それじゃあ味気ない。
それに職人さんたちは、ここ最近は一日中仕事に追われてる。外食できないくらい忙しいなら、ゆっくり休んで食べる時間もないのかも。
それらを踏まえると、冷めても美味しく食べられるのがベストだよね。なにかアイデアがないかな。
「そうだなぁ……。……ん?」
ふと目に止まったのは、ミアちゃん特製のフープロ。そして鼻を掠めたのは、まだ漂っていた食パンの香り。
その時、私の頭脳がピカーンと閃いた。
「そうだ! サンドイッチがいいかも!」
「サンドイッチ? って、なんすか?」
「サンドイッチはお肉や野菜とかの具材を、パンで挟んだ料理なんです。イグニスさん、休憩時間はまだありますか?」
「はい、大丈夫っすけど……」
「じゃあ今から作るので、少し待っててください」
そうと決まれば、早速準備だ!
まずは食パンを数枚だけ切る。せっかく焼いたんだから、とことん有効活用しないとね!
切った食パンはフープロの中へ。フタをしっかり閉めたら魔力を流して、細かく刻む。ちょっと粗くても大丈夫。食感も良くなるし!
はい、これだけで簡単自家製パン粉の出来上がりっ!
「かの王妃のセリフじゃないけど、パン粉がなければ作ればいいのよ」
「せっかく焼いたパンを細かくしたんですか?」
「うん。でもこれも、れっきとした調味料の一つだよ。肉や魚にこれをつけて揚げると、美味しい料理になるんだ」
出来たパン粉、小麦粉、さっき食パンを焼くときに使って余ってた溶き卵を、それぞれバットに入れる。これでカツを揚げるための準備は整った。
そう! 今から作るのは、サンドイッチの中でもガッツリ系なカツサンドだ。
カツサンドなら食べ応えもあって、ちゃんとお腹に貯まるし。仕事で疲れた体に力が入るサンドイッチっていったら、これでしょう!
冷めても美味しく食べられるように、今回はキャベツなしバージョンで作ろうっと。




