第39話 はじめての魔法とスムージー
ようやく私のスムージー欲が満たされる〜!
用意したのは、この日のために冷凍しておいたフラーグム。あとはミルクとヨーグルト、そしてハチミツ! 最初はシンプルイズベストってね!
実はこの間知ったばかりなんだ。
外の巨大食材保管庫の隣に少し規模は小さいけど、食材冷凍保管庫が併設されてること。
てっきり解体場の人たちが使ってる倉庫みたいな物だって思ってたから、それを知った私にとっては棚ぼただった。
これは使わない手はないということで、遠慮なく果物を凍らさせてもらったってワケ。こうしておけば氷代わりにもなるからね。
ミキサーの中に材料を全部入れて、フタを閉める。そして魔力を補充して……。……って、あれ。
魔力って、どうやって送るの……?
待って! 魔力というか、魔法の発動方法がわからない!
ここに来て、この世界でまだ一度も魔力を使ったことがないなんて! そんなこと思い出さなきゃ良かったぁあ!!
えぇどうしよう、魔法初心者な私に誰か教えてくれるかな!?
「カエデさん、どうかしましたか?」
ハッとして横を見れば、パティさんが不思議そうに首を傾げながら私を見る姿が目に入る。
嗚呼、私は今、魔力や魔法に詳しいであろうヒトと巡り会えてたことを、心より感謝いたします。
パティさん助けてぇええ!!
「えっとさ……どうやってコレに、魔力を流すの……?」
涙ながらに聞けば、パティさんは嘲ることなく丁寧に説明してくれた。
「魔力を使うのは初めてですか?」
「うん。今まで、魔力や魔法にそんなに頼らない生活を送っていたものだから……」
「そうですね……。まず最初に、魔力を自由に扱うために大事なのは、想像力です」
はて、想像力? それは予想外の回答。
聞けば量の差はあれど、魔力は誰の身体にも自然と流れてるものなんだって。
てことは、私の体の中にも流れてるんだ。全然気付かなかったわ。
「今まで感じたこともなかったなぁ」
「冒険者たちは自然と身に付く感覚なんですよ。スキルだってそのヒトの魔力を使って発動する、一種の魔法のようなものです」
「そうなの!?」
「はい。カエデさんのスキルもそうなんですよ」
そ、そうだったのか……。
いやほら、私のスキルって調理台っていう特定の場所で発動するものだし。目利きだって、初めて見る食材に自動的に反映されて、勝手に視界に映し出されるし。
だからそれが魔法って言われても、魔法を使ってるって感覚はそんなになかったな……。
なんかスキルと魔法って、車のオートマとマニュアルの違いみたい。
「そんな感覚は全くなかったな……」
「意識しなければ、普通は分かりませんからね。今回は、手のひらに魔力を一点に集めて放出する、というイメージを思い浮かべてみてください」
なるほど、一点に集めて放出する。そう言われたら、なんとなくわかる気がする。
うーーん、魔力、魔力……。
魔力は血液と同じで、私の身体にも自然に流れてるもの。なら、それを集めるイメージを思い浮かべて…………。
……お? なんか手のひらがあったかい気がする。
「なんか、手のひらがあったかい……?」
「無事に魔力を熾せてるようですね。なら次はその魔力を、この玉に流すイメージを思い浮かべてみてください」
「わかった」
玉に魔力を流す、かぁ。
そういえばさっきミアちゃんが魔力を流したとき、魔力が補充される様子を見て、ビンみたいだなって思ったんだよね。
流す、より、注ぐ、の方が私にはわかりやすいな。
目を閉じて、イメージする。手のひらに集まってる温かいものを、空の玉に注ぐように……。
「おお、ちゃんと魔力が流せてるようだな」
「ホント!?」
ビリスの言葉に、目を開けて玉を確認する。
本当だ! さっきのミアちゃんの時みたいに、玉がちゃんと光ってる!
私、初めて自分の意識で魔法が使えたんだ!
「やったぁ!」
「よかったね!」
「これくらいではしゃぐなんて、カエデは単純だな」
「う、そりゃあ冒険者のミアちゃんからすれば、なんてことないんだろうけど……。私にとっては、とっても凄いことなんだよ?」
「まぁ、いいだろう。ミア様は寛大だからなっ。褒めてやるぞ」
あはは、ありがとね。
兎にも角にも、これで全ての準備は整った! あとはこの玉を押すだけ! ポチッとな!
ガーーッ、と音を立てながらミキサーが攪拌を始める。
本当に私の魔力で動いたぁ……! ちょっと感動なんですけど……!!
「すっご。若干溶けてたとはいえ、冷凍されてたフラーグムが一瞬で砕かれてくよ」
「ふふん、その刃はミア様の特注だ。岩石だって簡単に砕ける代物なんだぞ」
それはすごい。でも岩石を入れる予定はないから、ミキサーにしてはオーバースペックな気もするな?
しばらくミキサーで攪拌していくと、淡いピンク色の液体が出来上がってく。ちゃんとスムージーになってってるね!
「よし、出来たよ〜」
「これで完成なんですか?」
「うん。簡単でしょ? でもすごく美味しいよ〜」
フタを開けて、用意しておいた人数分のコップにスムージーを注いでいく。ストローはないけど、まぁいいでしょう!
この少しとろっと柔らかい感じ、懐かしさすら覚えるよ。生のフラーグムを凍らせたから、甘酸っぱい匂いもフレッシュでいいねぇ。
「フラーグムスムージーの出来上がり! はい、まずはミアちゃんに」
「これは美味そうだなっ。フラーグムはミア様も好きだぞ」
「それは良かった。はい、みんなにも」
みんなにもスムージーを配ってから、乾杯の音頭をミアちゃんにとってもらうとしますか。
「じゃあミアちゃん、一言お願い」
「仕方ないなぁ。じゃあミア様の傑作とこの飲み物に、カンパイ!」
「カンパーーイ!!」
みんなで声を合わせて、早速スムージーを飲む。
美味しいっ! この滑らかな舌触り、冷たい飲み心地、我ながら完璧だわ!
フラーグムとヨーグルトの甘酸っぱさも、スッキリしてて飲みやすい! ハチミツの甘さもいいアクセントになってるね!
さてみんなの反応はいかに、と。
「こんな飲み物ははじめてだぞカエデ! なんだこれは、とてつもなく美味しいじゃないか!」
「とろっとしてるのに飲みやすくて、いいですねこれ!」
「甘酸っぱくておいしーい! フラーグムとヨーグルトって、合うんだね!」
「ジュースとは違った感覚で面白いな! 水や酒以外で、こんな冷たくて美味い飲み物があるなんてな」
言わずもがな、好評みたいでよかったよかった。
ミアちゃんも喜んでくれてるみたい。作った甲斐があるよ。
「美味しいでしょ? スムージーは果物以外にも野菜を入れてもいいし、栄養満点な飲み物なんだよ」
「これ、食堂で出したら喜ばれそうですね!」
「作るのも簡単だもんね! オイラでも作れそう!」
「なぁ、今度各々で食材を持ち寄って、スムージー合戦でも開こうぜ。一番美味いスムージーを作ったやつのモノを、食堂のメニューに追加するとかよ」
「む、それはミア様も参加していいんだろうな?」
スムージー合戦か、それもいいな。食堂の料理長としては、絶対に負けられないぞ。
これはしばらくは、スムージーブームが続きそうだ。




