第38話 天才ってのはやることが違いますな
さてハチミツを手に入れたワケだけど、この間考えてから、ずっとスムージーが飲みたくて仕方ない。
あの冷たくて美味しいの、久々に飲みたい〜! 果物はもちろん野菜も気軽にとれて、栄養も簡単に摂取できるもんな。
日本にいた時は自作もしたし、コンビニのスムージーにハマってたりもしたっけ。いっときブームにもなってたな。
カロリーはまぁ、気にしない方向で。
でもなぁ……。この世界にミキサーなんてないんだろうな。まぁハンドブレンダーもないんだし、ちょっと高望みしすぎかな。
魔法で作ってみるとか? いやいや、魔法なんて使ったことないし。使えたとして、ちゃんと出来上がるか分からないし。
……それっぽい機械がないか、聞いてみるだけ聞いてみるか。
「パティさん、ちょっといい?」
「なんですか?」
「えっとさ、前に教えてくれたじゃない? 初代料理長が残してた調理器具があるって。その中に、食材を撹拌して液体にするやつなんて、あったりする?」
まさかミキサーなんて直接言えるワケないし、どうにかそれっぽく説明してみた。
「もしかして、ミキサーのことですか? あるにはありますけど……」
あるんかい。
しかもミキサーってこの世界で通じるんかい。
「あるの!?」
「はい。ですが初代料理長でも手が出ない代物でした。なにせ金貨60枚もしますから……」
たっっっか。
は? 今なんて言いました?
金貨60枚? 日本円に換算して60万円? ウソでしょ。
そりゃあさ、調理器具にはピンキリがあるのは分かるよ。高価だと物持ちが良いとかあるからね。
でも60万円て。業務用かって。
そりゃあ手が出ないのも仕方ない。
「そっかぁ……。それじゃあなくても仕方ないね」
そんな高いもの私も手が出ないし、スムージーは諦めるしかないか。
「なんだ、それならミア様が作ってやっても良いぞ」
肩を落とした直後にまさかの救いの手。
食堂に来ていたミアちゃんが、ふふんって胸を張りながら声をかけてきた。
「え、ミキサー作れるの!?」
「仕組みさえ解き明かせば、作れないものはないぞ。なにしろミア様は天才錬金術師だからなっ」
マジでか!! こんな形でミキサーが手に入るかもしれないなんて! これはお願いしない手はない!
「じゃあそんな天才錬金術師のミアちゃん、お願いしますっ! 食堂のためにも、ミキサーを作ってください!」
ぱんっ、て手を合わせてお願いする。
ミアちゃんは私の態度に、満更でもなさそうに笑う。ミアちゃんはこうして持ち上げると、意外と話を素直に聞いてくれるんだよね。
「そこまで言われたら、仕方ないなぁ。いいだろう、ミア様の天才ぶりをカエデに見せつけてやるっ」
「ありがとう! そうだ、完成図みたいなの作ろっか?」
「そうだな。まぁ正直なくてもいいが、あった方がより良いものを作れるからなっ。分かりやすい図で頼むぞ」
「わかった。ああそれと、ミキサーが作れたらこんなのも作って欲しいんだけど──」
話が決まったなら、行動あるのみ。早速紙を取り出して、ミキサーの大体のイメージ図を書いてミアちゃんに渡す。
ミアちゃんは紙を見ながら、風の魔法を応用して、とかなんとか呟いてた。なんのこっちゃって思ったけど、ミアちゃんの邪魔をしちゃ悪いね。
「なるほど、大体わかった。これなら、三日もあれば問題なく作れるだろう」
「三日!? 早くない!?」
「ふふん、当然だろう。ミア様は天才なのだから」
「さすがミアちゃん。じゃあ完成したら、ミキサーを使って美味しい飲み物作ってあげるからね」
「ほうほう。報酬として楽しみにしておくぞ!」
ミアちゃんにもスムージーを飲ませる約束をしたし、今のうちから少し準備を始めておこうかな。
三日後が楽しみ〜。
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約束の三日後。
仕込みが終わったところに、ミアちゃんがやって来た。手には包みを持っていて、顔も自信に満ちあふれてるってことは、ミキサーが完成したんだ!
「待たせたなカエデ! 例の物を持ってきてやったぞ!」
「待ってました! 見せてもらってもいい?」
「もちろんだ。厨房に邪魔するぞ〜」
「どうぞ〜」
ミアちゃんが包みを調理台に置く。
パティさんもボナくんもビリスも、ミキサーが気になるみたい。なんだなんだって集まってきた。
「刮目せよ! 天才錬金術師ミア様傑作、ミキサーと粉砕機だ!」
じゃーん、とミアちゃんが包みを開く。
包みの中は、紛れもなくちゃんとミキサーだ! すっごく見覚えのある形してる!
真ん中はダイヤルじゃなくて、なんか玉が装填されてるね。でもなんかこういうの、魔法具っぽくていい!!
それについでにお願いしたフープロも、見たまんまの形してるよ! わぁあっすごいすごい!!
「おおおっ! これは間違いなくミキサーだぁあ!」
「どうだ、すごいだろう? これぞ風の魔法と雷の魔法を組み合わせて作った、魔導式ミキサーだ!」
「魔導式ミキサーってことは、魔力で動かせるんですか?」
「そうだぞパティ姉。ここに、魔力収集の玉があるだろう? 魔力を通すと、この玉に魔力が補充されるんだ」
使い方だって言って、ミアちゃんが操作してみせる。
基本的な使い方は普通のミキサーと同じだけど、違う点があるとすれば、これは電気じゃなくて魔力で動く。材料を入れてフタをして、動かすときに魔力が必要になるみたい。
目には見えないけど、ミアちゃんが魔力を流したら真ん中の玉が三分の一くらい淡く光った。
「光ったのを確認したら、玉を押す。そうすれば、ほら」
「おお、ちゃんと動いてる!」
「補充する魔力が多ければ多いほど、刃が早く回転する仕組みになってるぞ。使い方はこれだけだ。どうだ、簡単だろう?」
「うん! これならオイラたちも使えそう!」
「はぁー、すっげぇな。天才ってのはワケが違うな」
ちなみにフープロ──ミアちゃんは粉砕機なんて言ってたけどね──も、ミキサーと使い方は同じらしい。
いやはや、素晴らしい! まさかこの世界で、ミキサーやフープロが使えるとはね!
「さっすがミアちゃん! 大天才っ!!」
「そうだろう、そうだろう! カエデもミア様の能力に恐れ入ったか」
「そりゃあもう! これは美味しい飲み物を作って、ミアちゃんに献上しなきゃだね!」
ミアちゃんがこんな立派な物を作ってくれたんだから、ちゃんとお礼をしなきゃ。早速私も用意しようっと!




