第31話 正論でブン殴られました
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誤字報告ありがとうございます。訂正しました。
「さすがに腹一杯になったぞ」
「パンを三つも食べればねぇ」
「し、仕方ないだろう! ミア様とあろう者が、ジャムの解析に思いの外、手間取ったのだから……!」
「ふふ、そうだね」
誤魔化しが下手になってる。なんとなくだけど、ミアちゃんの接し方が分かってきたぞ。
「ま、まぁ今回はここまでにしてやらんこともない。それで、代金だったな。本来なら銅貨十五枚だろうが、特別だ。これを受け取るがいい」
そう言ってミアちゃんは、自身の『収納』のスキルを発動させる。そして空間からパンパンに詰まった皮袋を出して、それを渡してきた。
中を見ると、そこにあったのは大量の金貨だった。
一瞬頭が真っ白になったけど、どうにか我に返る。
こんなのどう考えても貰いすぎだ。というか、払うにしても銅貨でいいんだよ!? 銀貨どころか金貨って!!
「さすがにこんなに貰えないよ!? ミアちゃんも言ってた通り、銅貨十五枚でいいんだよ!?」
「気にするな。いわば前金というやつだ」
「いや、でも……!」
「見くびってもらっては困るが、これでもミア様はBランクの冒険者だぞ。稼ぎも蓄えも十分にあるのだぞ」
「それはそうかもだけど……」
ミアちゃんはそうは言ってくれるけどさ。なんか子供から金を巻き上げてるみたいで、私の方が気が引けるんですけど。
「それとも、ミア様の好意を踏みにじるつもりか? カエデはバカだが、料理の腕は一流だ。それに感謝を伝えて、なにが悪い?」
そこまで言われると、かえって返しにくい……!
……しょうがない。ここはミアちゃんの好意を、素直に受け取るとしますか。
「……わかった。じゃあこの料金は、ありがたくいただいておくね」
「最初からそうすれば良いと言っているのに。人の好意を無下にするのは、よくないことだぞ」
「そうだね、肝に銘じておくよ。その代わり、この代金がなくなるまでは、ミアちゃんからお金は貰わないよ。これだけもらって、さらにお金を請求するなんて私はできないからね」
「ミア様は別に構わないのに。でもカエデがそこまで言うなら、仕方ないから納得してやろう」
渋々、っていった様子だけど納得してくれたみたい。
ひとまずこのお金は、大事にしまっておかなくちゃ。食堂の運営資金として、大いに使わせてもらおうかな。
「……それにしても、ミアちゃんみたいな冒険者がたくさん来てくれたらいいのに。どうすれば食堂に冒険者が来てくれるんだろう……」
忘れていた問題を思い出しちゃって、ため息が出る。そういえば問題解決の案が、全然思い浮かんでないんだった。
「ふぅむ……カエデ、一つ聞くぞ。どうして冒険者が食堂に来ないのか。その理由は、ちゃんと理解しているんだろうな?」
「え? そりゃあ、前の料理長の影響あるからでしょ。散々な思いさせられた冒険者も多いって話だし……」
そう答えれば、ミアちゃんは大きくため息をついて、呆れた様子を見せてきた。
何か変なこと言いました私?
「まったく、それでは50点の回答だな。仕方ないから、ミア様が100点の答えを教えてやろう」
得意げに、ふふん、と鼻を鳴らしてから、ミアちゃんは核心に迫る言葉を放った。
「まず冒険者たちは、この食堂が変わったことも、料理がどんなものかも知らないぞ? そもそも、冒険者たちに知らせを出してないだろう?」
「知らせ……?」
「なんだ、そこからか。冒険者ギルドの掲示板は依頼の他にも、ギルドからのお知らせの紙が掲示されてることがあるんだぞ。職員が活用しているのを、たまに見るからな」
なん、だと……!?
ミアちゃんの言葉を聞いて、私の中でピシャーンッ、と衝撃が走った。
雷に打たれたかのようなって、こんな感じのことを言うんだなって思いましたよ……。体は硬直してるのに、思考が妙にクリアになっていくと言いますか……。
掲示板にお知らせを貼るとか、考えてすらなかった……。
「その顔を見ると、お知らせなんて出さなくても分かる、なんて思ってたんじゃあるまいな?」
「ゔ、それは……。その、料理の匂いとかで、興味を持ってくれるヒトが、もしかしたらいるんじゃないかなぁって……」
実際に先日の照り焼き騒動の時だって、料理の匂いを嗅ぎつけたから、従業員のみんなは食堂に来てくれた。誰だって、美味しそうな匂いには勝てないのだと改めて思い知ったよ。
直近でそんな成功体験を得てしまったものだから、匂いが届けば分かるかなぁなんて、思ってたわけでして……。
「はぁ。そんな希望的観測だけ持ってても、結果が伴わなければ意味がないだろうに。分かってくれるだろうって決めつけるのは、傲慢な考えだぞ」
返す言葉もございません。
まさか自分より半分くらいしか生きてない子に、ド正論をかまされてしまうとは……。
「ミア様はここにパティ姉がいるって分かってたし、無理矢理とはいえカエデがマヨネーズとやらを教えてくれたから、食堂の料理は変わった、美味しくなったって分かったんだぞ」
それもなしに他の冒険者に伝わると思ったら、大間違いだと。
重ね重ね正論でぶっ叩かれて、私のライフポイントはもうゼロを突っ切りそうです。
「それと、冒険者は確かにミア様を含めて勇気のある者が多い。だからといって、食事にまでその勇気を求めるのは酷だぞ。見知らぬ料理ならなおさらだ」
「そう、だよね……。むしろ今まで、初めてなのに普通に食べてくれてたなぁって……」
「それはカエデが、ちゃんと説明もしているからだろう。未知の料理でも、事前にそれが知らされているのといないのとでは、手の出しやすさが大きく変わるものなんだぞ」
まったくもってその通り過ぎて、自分の浅慮さが恥ずかしいです本当に。
「ミアちゃんの言う通り過ぎる……」
「当然だろう。ミア様は天才なんだからな。カエデももっと勉強することだなっ」
「ハイ、精進します……」
ミアちゃんの指摘のおかげで、この食堂になにが足りてなかったのか、課題が見えたのはよかったな。
なにはともあれ、これまでの待ちの姿勢じゃダメだ。明日、いや今から少し案を練って、実践していかなくちゃだね。




