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第3話 はじめまして最初の街

 ナーディアさんは元の性格もあるのかな、るんるんでステップを踏みながら隣に来た。


「アタシってパーティ唯一の女だから、同性の子と外を出歩くなんて滅多になくてさぁ〜。だから嬉しいんだよね!」

「私も優しい人たちに出会えて良かったです。本当に助かりました」

「これくらいどうってことないよ。それよりも知りたいことがあったら、なんでも聞いてね。教えてあげるから!」

「ありがとうございます。じゃあその……今ってどの辺りを歩いてるんですか?」

「そっか、荷物をなくしたってことは地図もないんだね。ちょっと待ってて。えーっと……ほらこれ」


 ナーディアさんが腰のポーチから取り出した地図を広げる。地図には色んな場所に、目印らしいものがびっしりと書き込まれていた。

 これって魔物の出現場所だったりするのかな。凄い情報量だ。さすが冒険者。


 そういえば自然に理解できていたけど、異世界の文字は普通に読めた。仕様ってやつかな。なんにせよ、文字が理解できるのはありがたい。


 地図に描かれている国は全部で13個。その中で今いる場所はティエラ王国と呼ばれる国らしい。大陸の北西に位置する場所だ。


「今がだいたい、ここら辺。んで、これから向かう街はここ。ティエラ王国の中でも結構大きい街なんだ」


 ナーディアさんが指を刺した場所には『ターガイニ』と書かれていた。私にとって、異世界に来てはじめての街になるわけだ。

 どんな街なんだろう。やっぱりアニメとか小説にあるような、石とかレンガとかの街並みだったりするのかな。


「へぇ〜。海に面しているんですね」

「そうだよ〜。それとターガイニの内陸側には山もあって、そこに綺麗な川も流れているから、ライスの生産地としても有名なんだよ」


 なんだって!? 異世界に来て米が食べれるの!? ていうか米って普通に生産されてるんだ!?


「本当ですか!?」

「わ! びっくりした。カエデってライスが好きなの?」

「はい! 大好きなんですっ!」

「じゃあ街に着いて落ち着いたら、食べてみるといいよ。ターガイニ産のライスは、国王にも献上されるくらい美味しいんだから」

「そうしてみます!」


 異世界に来て不安ばかりだったけど、一気にテンションが上がる。まさか米がこの世界にもあるなんて、夢にも思わなかった。早く食べてみたいなぁ。


「そういえばそろそろ街に着くけど、カエデは冒険者じゃないから、入り口で徴税を求められるんだ。大丈夫? お金、持ってる?」


 ナーディアさんの言葉で、これまで夢見心地だった気分が一転、現実に引き戻された。


 そうだ。荷物を持ってなかったのに、お金なんて持ってるはずがない。もうすでに入国はしてるけど、このままだと不法侵入扱いにならない? 

 そうなったら罪人として扱われて逮捕されるんじゃ? この世界での逮捕されたら、すぐに罰が執行されたりする? 


 ……これ詰んだ?


「カエデ、大丈夫っすか?」

「お金……どうしよう、荷物の中だったっけ……?」

「不法侵入は大罪になる。違反者は縛り首だし、すぐ手続きされてしまうぞ」

「そんなぁ……!」

「一度落ち着きましょう。腰のポーチに、財布が入ってたりはしませんか?」

「ポーチ……?」


 ユイファールさんが指を指してくれている先は、私の腰あたりで。手を当ててみれば、確かに何か柔らかい皮のような質感が、指の先に当たった。もしかしなくても私、ポーチ持ってるじゃん。

 急いで中身を確認する。なにかあった時の神頼みじゃないけど、奇跡かなにかでお金が入ってたりしませんか。


 ポーチの中身は、手拭い、鞘付きナイフ、それと小さな袋が一つ。パッと見て、お金のようなものは見当たらなかった。つまり最後の頼みは、この小さな袋。

 どうか、どうかお金が入ってますように……!


 口を閉じてる紐を解く。中身を知るのが怖かったけど、薄目を開けて確認した。


 ………………。

 あった……! お金入ってた! 日頃の行いの結果かなぁ!?

 あーーもう良かったっ! そういえば海外旅行に行く時は、お金は荷物の中に全部入れないで小分けにしておきなさいって、お母さん言ってたな……! 


 それよりなにより、野盗に盗まれたりしなくて良かった! 本当に良かった!!


 試しにいくら入ってるか確かめてみる。

 金貨が3枚と銀貨が10枚。あとは銅貨がわらわら。これって多いのか少ないのか、どっちなんだろ。


「これで足りますか?」

「足りるもなにも、余裕だよ! ちなみに徴税は、どの街も一律で銀貨3枚。国境を越える時は銀貨5枚からなんだ」

「結構高いですね……」

「そうですね。ですが今のカエデの手持ちなら……街から出ない場合としてざっと計算すると、1ヶ月は不便なく暮らせると思いますよ」

「そうなんですか?」

「そうだぜ。むしろ今のカエデは、初級の冒険者より金持ってるかもな?」


 そんなバカな。いやでも考えてみれば、ゲームのスタート時点での手持ちって、あんまりないよね。

 お金の問題が無事解決したところで、街の入り口にある立派な城壁へ進んだ。遠目から見ても大きいってわかってたけど、実際目の前で見ると圧巻だなぁ。


 その後はスムーズなもので、城壁に到着して通行料という名の税金を払ったことで、無事に街に入る準備が整った。(一人だけ冒険者じゃないってことで色々疑われたけど、シガロウさんが丁寧に説明してくれたおかげで、事なきを得た)



 門を潜り、いざターガイニの街へ。ゆっくりと目の前に現れた光景を見て、感動に包まれた。


「おぉお……!」

「はい、ここがターガイニの街だよ!」


 すごいすごい! 本当に石とレンガと木の街並みだ! ザ・ファンタジーRPGの世界そのもの!

 門番の兵士は全身を鎧で武装してるし、街を練り歩く人たちは、ファンタジー世界の中でしか見ないような服装ばかり! 石畳の道に立ち並ぶ屋台! 

 くわぁあめっちゃ感動するぅ……!


 シガロウさんたちは真っ直ぐギルドに行くということで、よければ一緒に行こうとナーディアさんに誘われる。

 行くところも決まってないし、別に予定らしい予定もないし、見学がてら行ってみるのも悪くないかも。冒険者になる予定はないけどね。

 それにしても、ギルドかぁ。冒険者たちが集まる場所なんだから、それなりに大きい建物なのかな。


 ******


 ギルドは街の中心部から近いところにあった。確かにターガイニの街は大きいんだから、ギルドも必然的に大きいんだろうなって予想はしてた。

 だけど想像以上のものが建っているとは思わなかった。言葉が出ないよこんなの。


「わぁ……」


 まるで貴族の豪邸かのような、巨大で立派なレンガと木造の建物。敷地自体もすごく広くて、庭にあたる場所には鍛冶場も完備されてる。展示用なのか、アーマーだったり剣だったりが飾られていた。


 この建物一つで、冒険者としての準備が全部賄えちゃうのは、ちょっと想像以上と言いますか、予想外と言いますか……。


 中に入ると、当たり前だけど冒険者たちが大勢いた。大きな掲示板の前に屯してる冒険者や、多分解体や素材の買取をお願いしてる冒険者。

 やっぱりというか、施設がちゃんと充実してる。そんななかで、薄暗い場所もあったりして。ゲームの世界じゃよくある光景だよね。レベルアップしたら解放される場所だったりするのかな。

 そんでもって、ちゃんと受付嬢もいるんだね。シガロウさんたちと一緒に受付に向かうと、エルフの女性が対応してくれた。


「おかえりシガロウさん。依頼達成の報告かな?」

「ああ、そうだ。ナーディア」

「はーい。えっとぉ……」


 おもむろに手を空間に突っ込んだ!? と思ったら腕から先がなんか消えてるんですけど!?


「あぁあ、あのっ……手、手が……!!」

「ああ、心配しなくていいよ。これはナーディアが『収納』のスキルを使ってるだけだから」

「収納量は人それぞれで異なるが、割と一般的なスキルではあるんだ。荷物も減らせるし、便利だぞ」


 はえ〜。やっぱり一人一人が持ってるスキルって違うんだね。そりゃそっか。

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