第29話 パンのメニューを決めよう
「じゃあこのままパンのメニューも決めていこうか」
「よしきた。といっても、ライスのメニューとそんな大差はないんじゃないか?」
「案外そうでもないよ。ライスに合うおかずとパンに合うおかずって、微妙に違ったりするからさ」
「あーーなるほどな」
ビリスも納得してくれたみたい。
そうなんだよね。ライスに合うおかずが、必ずしもパンにも合うってワケじゃない。
昨日の照り焼きチキンみたいなのは合うとしても、これが魚の照り焼きだとしたら、パンには合わないと思うんだよ。
どうせなら、パンもおかずも美味しく食べてもらいたい。だからライスのメニューとの差別化は、どうしても必要なんだよね。
「パンに合わせるなら……以前作ってくれた、食べるスープなんてどうでしょうか?」
ああ〜いいかも! ナイスアイデアだよパティさん!
アブスキさんから仕入れたスペアリブを使って作ったあのスープは、確かにパンと合ってたもんね。
パンをスープに浸して食べても美味しかったし、具材がごろごろ入ってるから、お腹もしっかりと満たされるだろうし。
「食べるスープってなに?」
「いわゆる、おかずスープってやつだね。出汁と一緒に煮込んだ、大きめに切った具材を食べるためのスープってかんじなんだ」
「以前、カエデさんがオーク肉のスペアリブを使って作ってくれたんです。お野菜もお肉も味が染み込んでて、すごく美味しかったんですよ」
「そいつはなんとも、聞いてるだけで美味そうなスープだな」
パティさんの話を聞いて、想像したんだろうな。
ボナくんとビリスが、今度作ってくれとせがんできた。味見のためなんて言ってるけど、食べたいんだろうなってことはお見通しですわよ。
「わかった。今度作るね」
「やった! 約束だからね?」
わかったわかった、ちゃんと約束するよ。
でも今は一旦、話の流れを戻そうか。
「話を戻すよ。つまりパティさんが言いたいのは、肉のスープ魚のスープ野菜のスープの三種類を用意して、その中から選んで注文してもらうってこと?」
「そうです! おにぎりセットでメインのおかずを選べるように、パンのセットでメインのスープを選べるようになれば、楽しそうだなって」
「いいねそれ! その案も採用しよ!」
よしよし、パンのセットも少しずつ形になってきた。スープをただの汁物にしないでメインにするのは、いいアイデアだ。
そしてそのパンについて、暗に新しいパンを作って欲しい、とビリスに伝えてみよう。
「パンのことなんだけど、ビリスは見たことのない、新しいパンに興味はない?」
パン作りバカって言われてるくらいにパンが大好きなら、新しいパンって話題は気になるはず……!
釣られてくれるか……!?
「そんな話聞かされて、気にならないワケないだろ。それってつまり、新しいパンが作れるようになるってことだろ?」
よし狙い通り食いついてくれた!
パンの話となると、ヒト一倍興味を持ってくれるって信じてたよ。さすがパン作りバカ。
……一応、褒め言葉だよ?
「そうだよ。ビリスにはこれから、いろんな種類のパンをたくさん焼いてもらいたいからね」
「カエデさん、パンも作れるんですか?」
「まぁ多少だけどね。でもやっぱり、パン作りはパン職人に任せたいからさ。いいよね?」
「もちろんだ。ワクワクするような話をありがとな」
快諾してくれてよかった〜。
やっぱりあの石窯は、最大限使わないと。
なにを焼いてもらおうかなぁ。
ビリスがいつも焼くパンの他にも、ふわふわの食パンにもちもちベーグル、サクサクなクロワッサンに、オリーブオイルたっぷりのフォカッチャとか!
絶対美味しいやつ!
ビリスが色々作れるようになったら、パンメインのメニューを作れるかも! ……やばい、考えてたら無性にパンが食べたくなってきた。
ああそうだ。パン作りに必要な粉類の仕入れはどうなってるか、聞いておかなきゃ。
「ボナくん。小麦粉とかの粉類の仕入れ、お願いできる?」
「任せて! 実は昨日のうちに、パン作りに必要な材料をビリスから聞いてたんだ。仕入れ先の目星もついてて、話もつけてあるよ」
わぁお、さすがは仕入れのスペシャリスト。手を回すのが早くて助かる〜。
「さすが、仕事が早いね」
「オイラも焼きたてのパン食べたいからね! でもまだ来なくて、すぐにパンを作れないのはごめんだけど……」
「そこは仕方ないことなんだから、気にすんな。粉が来るまで、石窯の調整をちゃんと整えておくからよ」
「ありがとうビリス」
ということは、小麦粉類は大丈夫ってことだね。
それならついでに、私もあるものの仕入れをお願いしようっと。
「あのさ、そこに追加で乳製品の仕入れをお願いしてもいい?」
「乳製品っていうと、ミルクとかバターとかだね」
「そうそう。パン作りもそうなんだけど、単純に料理で使いたくて。それにヨーグルトなんかもあれば、パンのセットに合わせて出すこともできるからいいなって」
「分かった。調べて仕入れておくね!」
「ありがとう」
話の流れを切ったら悪いから、あえて突っ込まなかったけど。ミルクとかバターの単語は、そのまま通じるんだね。
通じるってことは、乳製品は一般的に知られている材料って考えて良さそう。なんにせよ、ミルクやバターが手に入るなら料理の幅も一段と広がるな。
乳製品が来たら、なに作ろう。
栄養たっぷりのクラムチャウダーとか、野菜のバター炒めに、肉のチーズ焼きとかよさそう!
「なぁ、一個提案なんだけどよ。選ばせるってなら、パンの付け合わせも選べるってのはどうだ?」
「付け合わせ? パンだけじゃなくていいの?」
「そのパンを食べてもらうための工夫ってやつだ」
「工夫って、どんな風な?」
「なんにもつけないでも、パンは美味いけどよ。この間作ってくれた、マーマレードみたいなやつがあると嬉しいってヤツは、いると思うぜ」
そういうことか。ビリスからそんな提案が出るとは驚いた。とはいえ、正直ありがたい話ではある。
ジャムを付け合わせにする案は浮かんでたけど、パンに手を加えるのはあんまり良くないかな、なんて思ってたから。
でもパン職人の方からそう言ってもらえるんだったら、その案を尊重してあげたいよね。
「なるほどね、いいかも。それにジャムもマーマレードだけじゃなくて、季節の旬の果物を使ったものがあっても面白そうだね」
「ジャムってマーマレードだけじゃないんだ!?」
「そうだよ〜。ある程度の果物なら、なんでもジャムにできるんだよ。今の季節ならイチゴ……じゃなくて、フラーグムのジャムができそう」
「季節限定のジャムということですね。ふふ、選ぶのに迷っちゃいそうです」
いいね! パンのセットについても、具体的な案が固まってきた。
ここら辺で一度、まとめてみてもいいかも。
「じゃあ一旦これまでの話をまとめてみるね」
「わかりました、お願いします」
よし任された。書き起こしたら、こんな風になるのかな?
【選べるおかず・おにぎりセット(汁物・サラダ付)】
・おかずは「肉メイン」「魚メイン」「野菜メイン」の中から、一つ選ぶ。
・おにぎりは「塩のみ」「フリジットサーモン」「ツナマヨ」「昆布の佃煮」「しょうゆ焼きおにぎり」の中から、二つ選ぶ。
(具材の種類は今後追加される可能性あり)
【選べるスープ・パンセット(サラダ付)】
・スープは「肉メイン」「魚メイン」「野菜メイン」の中から、一つ選ぶ。
・パンの付け合わせは「季節の旬のジャム」「マーマレード」「バター」「無し」の中から、一つ選ぶ。
(ジャムの種類は今後変更される可能性あり)
「──っと、こんな感じでどうだろう?」
「いいですね、すごく分かりやすいです!」
「うん! とてもいいと思う!」
「オレも異論ないぜ」
みんなの言う通り、我ながら分かりやすくまとまったと思う。それにこうして書き留めると、本格的に食堂を立て直すんだなって、気が引き締まるよ。
よーし、がんばるぞー!!




