第20話 マヨネーズがあるならツナマヨもできる
外の倉庫から持ってきてたのは、緑色が綺麗なオレアの実。目利きによると、これは完全にオリーブの実なんだよね。
つまりこれから作るのは、オリーブオイルってわけ。【レシピ一覧】にあったのは食用油だけだったから、オリーブオイルは隠しレシピに違いない、はず。
いつものように製造画面まで行くと、注意書きが映し出されていた。
「えっーと、既存レシピにない初めて作る素材です。製造しますか? はいもちろん!」
ポチッと画面を押せば、見慣れた光が広がって消えていく。完成した中身の香りを嗅げば、オリーブオイルの独特の匂いがする。
よっし、無事にできた! これも食用油と同じように、陶器の瓶に入れて保管っと。
さてオリーブオイルは出来た。そしてここにありますは、見た目まんまマグロのウォームトゥーナ。しかもすでに柵になってるやつ!
「これで自家製のアレを作りますか」
ウォームトゥーナは水分を拭き取って、全体的に塩をすり込んだら、フライパンの中へ。
そこに薄切りにしたアレウム……日本で言うニンニクも入れて、ウォームトゥーナがひたひたになるまでオリーブオイルを注ぐ。
そしたら火をつけて弱火にして、ウォームトゥーナの色が変わるまで、ゆっくりと煮る。
「よし、こんなかな」
身の内側まで完全に色が変わったのを確認したら、ボウルに移す。
次にできるだけ細かくなるようにほぐして、スキルで作っておいたマヨネーズと、鍋に残ったオイルを少し入れて混ぜ合わせれば……。
「自家製ツナマヨの完成〜!」
ちょっと出来立てを味見をば。
……うん、懐かしささえ覚えるあのツナマヨの味!
そしてツナマヨに合うのは、やっぱり米でしょう。ここは日本の老若男女に大人気の、あのおにぎりを作りますかね!
そしてちょうどおにぎり作り終えた頃に、パティさんと獣人の子が帰ってきた。
「ただいま戻りました」
「おかえり〜。こっちも用意できてるよ」
「ありがとうございます。そうだ、改めて紹介しますね。こちら、ボナくんです」
「カーバンクルのボナだよ。よろしくね!」
「私はカエデ。さっきは乱暴なことして、ごめんね」
「ううん。オイラの方こそ、完全に怪しい動きしかしてなかったもん。お互い様だよ」
にへへ、と笑うボナくんかわいいな。
優しい子供かと思ったけど、立派な成人だって言われて衝撃だった。なんでもカーバンクルは、成長してもそこまで大きくはならないらしい。
誤解してすみませんでした……!
「ボナくんは仕入れ先との交渉がすごく上手で、いつも美味しい食材を見つけ出してくれるんです。いわば仕入れのスペシャリストですね」
「うん。だから食材の仕入れと目利きは、オイラに任せて! なんたって、オイラの目利きのスキルは最上級レベルの【極】なんだ」
「へぇ〜! 私も目利きは持ってるけど、レベルは中だからなぁ。極になると、どんなことがわかるの?」
「食材のランクや生産地、真偽の判定、あとは痛み具合とか。あと、どのくらいの期間まで美味しく食べられるかと、どのくらいの期間まで安心して使えるか、だよ」
凄いな極レベル。そんなことまで一発で分かるんだ!?
というか賞味期限と消費期限がわかるとか、すごく助かる!
「すごいね! それは頼りにさせてもらおうかな」
「うん!」
「そんなボナくんに、これからよろしくって意味も込めて、この料理を用意したよ」
用意したのは、ツナマヨおにぎり! やっぱりツナマヨにはおにぎりが一番合うもんねぇ。
「これ、なに? ライスなのに、不思議な形をしてるね?」
「カエデさんお得意のおにぎりですね」
「うん。しかも今回は具材入りで作ってみたんだ。パティさんも食べてみて」
「ありがとうございます。ボナくん、いただきましょう。これはおにぎりっていって、手掴みで食べるとても美味しい料理なんですよ」
「へぇ〜おもしろい! それじゃあ、いただきます」
二人がそれぞれおにぎりを持って、一口食べる。
途端に二人とも、ぱぁあって顔が明るくなったもんだから、ちょっと笑っちゃった。
「おいしい! しかもこれ、ウォームトゥーナが入ってるの!? オイラ、ウォームトゥーナは大好物なんだ!」
「美味しいです! 初めて食べる味ですけど、このまろやかな風味がたまりません。ライスにもすごく合っています!」
「そうそう! この、こってりまろやかなの、なに!? ウォームトゥーナが何倍もおいしくなってる!」
ふふ、やっぱりこの初めての反応を見るのはいいなぁ。美味しいって言ってくれるのも嬉しい。
てか、にゃああって歓喜で震えてるボナくんがさ、どう見てもネコにしか思えんのだけど。どっちかっていうと猫派の私にその反応は刺さりすぎるって。
本当にカーバンクルなんだよね? ただのネコの獣人じゃないんだよね?
……あ! いや待て私にはルルスちゃんがいるじゃない! あの子もとても可愛いんだから! 決してこれは浮気じゃありません!!
……ひとまず、気を取り直して説明しないと。
「こってりしてるのはマヨネーズといって、私が作った料理の味付けに使うものなんだ。今回はそれを、油で煮たウォームトゥーナと合わせたの。名付けてツナマヨおにぎり!」
「ツナマヨおにぎり……! これ、とってもおいしいよ! こんなにおいしいのが作れるなんて、カエデは料理の天才なんだね!?」
「そう言われると、なんだか照れちゃうな」
「私もボナくんと同意見です。カエデさんは、料理のスペシャリストですね」
「パティさんまでそんな、恥ずかしいって」
褒められるのは嬉しいんだけど、褒められるのが久々すぎるのと慣れてなさすぎて、体がすっごいむず痒い!
よし逃げよう。私もツナマヨおにぎりを食べる。
この味この味〜! ウォームトゥーナの旨みとマヨネーズのまろやかさが、ライスの甘さにぴったり合う合う!
コンビニとかスーパーでもよく買ってたけど、こうして手作りすると、また一味違った味わいになるもんだねぇ。
「ねぇねぇ、もう一個食べてもいい?」
「いいよ。食べてもらうために作ったんだから」
「私も、もう一ついいですか?」
「もちろん! たくさん食べてね」
それからしばらく、私たちはツナマヨ談義に花を咲かせるのであった。




