第12話 塩煮は甘い 現実は辛い
本日のお昼ご飯は、フリジットサーモンおにぎりとメロウパンプキンの塩煮、それとガーキン(きゅうりのような野菜)の浅漬けのおにぎりセットだ。
うんうん、それぞれが良い色合いで美味しそう! パティさんは相変わらず、目の前の料理に目を輝かせてる。パティさんにとっては未知の料理ってことだし、なにより自分で握ったおにぎりを食べるんだから、楽しみなんだろうな。
「食べよっか」
「そうですね」
それぞれ手を合わせて「いただきます」と言ってから、早速おにぎりから食べ始める。
「んん〜」
美味しい! ちゃんと下処理をしたから、魚の生臭さもなくて凄く食べやすい!
そして絶妙な塩加減で焼かれたフリジットサーモンのしっとりした食感と、焼かれた脂の香ばしい風味がたまらない!
しかもその脂がライスと合わさると、ライスの甘さが引き立ってよく馴染む。一体感のある味って言えばいいのかな。これぞ具材とライスの素晴らしいデュエットよ!
今回は塩水で握らなかったけど、フリジットサーモンの塩気と脂っ気がいいアクセントになってて、ちょうど良い塩梅になってる。鮭おにぎり最高〜……! 欲を言えば、ごまも混ぜたかったなー!
どうやらパティさんも気に入ったみたい。笑顔でもぐもぐ食べてるよ。自分で作った料理って、それだけで美味しく思えるよね。
「美味しい?」
「はい、とっても美味しいです! 新しいおにぎりに出会えてとても感動してます!」
「自分で握ったものを食べるってのも、悪くないでしょ?」
「ええ。ですが昨日カエデさんが作ってくれたものとは違って、ライスが少し固まっているような感じがします。多分、力加減を間違えたんだと思います」
おお、もう違いが分かるか。これは成長の期待値が高いぞ。パティさんには料理の腕をあげてもらって、私を支えて欲しいからね。
これからも色々と教えて、まずは料理への苦手意識をなくさせることが私の密かな目標だったりする。
「そっか。だったら次はもっと美味しく作れるね」
「そうなるように頑張ります!」
「その意気だ、応援してるよ」
「ありがとうございます。……ん! これも凄く美味しいです!!」
メロウパンプキンの塩煮を食べたパティさんの笑顔が咲いた。どれ私も一口。
こっちも良い感じに出来上がってる! メロウパンプキンから出た水で煮たから、味がぎゅっと染みてる!
それにこのほっくりとした食感と、歯で簡単に崩せる柔らかさ。潰された実から溢れる、心を落ち着かせてくれるような優しい甘さが、口の中いっぱいに広がっていく。
塩と水だけでも、こんなに美味しく仕上がるんだから野菜って凄いよねぇ。
「こんなに甘いメロウパンプキン、はじめてです!」
「これは塩のおかげでもあるんだよ。塩には食材をしょっぱくさせるだけじゃなくて、素材の甘さを引き出す効果もあるんだ」
「素敵です……!塩の可能性って、無限大なのですね!」
「それが調味料の面白いところでもあるんだよね」
「素晴らしいです。魔法で味付けをするだけでは、決して分からなかったことです。料理って面白いんですね!」
そうそう、そう思ってくれることが第一の目標だからね。
「そうでしょ? これからも色々と、教えられることは教えていくからね」
「ありがとうございますっ」
それから楽しいお昼時間を過ごす。そこでふと、ちょっと気になることが浮かんだので聞いてみることにした。
「そういえば、食材っていつもどうやって仕入れてるの?」
「仕入れは食材によって異なりますね。例えば野菜類や魚類は、商業ギルドや街の市場から仕入れてます」
「なるほど……それこそ、ライスも?」
「ええ。ライスや小麦、ライ麦などの粉類を扱う仕入れ先があるので、そこから。パンも今はパン屋から仕入れてるんですよ」
ああ、やっぱりそうなんだ。
あの立派な石窯、今はただの置き物になっちゃってるもんね。いつか使えたらいいな。そうしたら、焼き立てのパンを出すことだってできるのに。
「そうなんだ。仕入れ先って、みんなパティさんが選んだの?」
「いえ、私ではないんです。仕入れ先の情報は、時々厨房に届いている置き手紙が教えてくれるんですよ」
まさかすぎる事実なんですけど。
そんなことある? というかその手紙って大丈夫なやつなの? 差出人とかわかってるの?
「それって大丈夫なの? 差出人わかってる? それになんかこう、騙されてたりとかしてない?」
「そこは大丈夫ですよ。今までも騙されたことなんて、一度もありませんから」
「そう? まあオーナーであるパティさんがいいなら、私は特に問題にはしないけど……」
「ありがとうございます。ああ、それと肉類は冒険者ギルドの解体場から直接卸してもらってるんですよ」
あれ、そうなんだ。でも冒険者ギルドで解体するのって普通の牛とかじゃなくて、魔物ばかりだろうし…………。
…………あれっ、ちょっと待とうか。
なんか嫌な予感がするな。
「えーっと、パティさん。一つ確認したいことがあるんだ」
「なんですか?」
「もしかしてだけど……解体場から卸してる肉ってさ、魔物の肉だったりする……?」
待ってね? ちょっと待ってね?
もしこの質問の答えが「YES」だったらさ、昨日食べたウインナーに使われてる肉も……魔物の……。
「その通りですよ」
うわぁああ衝撃的な真実なんですけどぉおお!! 知らないうちに魔物のお肉食べちゃってたの!? てっきり肉屋から仕入れてるかと思ってたのに!!
まさか、こんな形で魔物肉デビューすることになるなんて! 思ってもみなかったよチクショウ!!
「魔物の肉って、食べられるんだ……」
「……? ええ、もちろんですよ。街の人たちも普通に食べますし、魔物のランクによっては高級肉になることもありますよ」
「そっか……そっかぁあ……!!」
「でも基本的に街の人たちは、酪農頼りな部分はありますよ。魔物肉って基本、お値段が高いものばかりですから」
あ、良かった……。一応は普通の牛や豚なんかもいるんですね。
全員が全員魔物を食べるわけじゃないって知って、少し安心するのでした。




