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第11話 一緒に握ろう鮮やか鮭おにぎり

 そろそろお昼ご飯の準備を始めたいからと、パティさんにフライパンのことをお願いして私は食材保管庫に来ていた。


 食材保管庫は裏口を出た目と鼻の先にあった。立派な造りの倉庫で、確かに大きい。何十、いや何百人分の食料がここに入るのかってくらい。

 ひんやりとした空気は、氷魔法が効いてるからかな。まるでお店の巨大冷蔵庫みたい。


 中は綺麗に整頓されていた。空いてるスペースも多かったけど、ホコリが一つも落ちていない。

 ここも毎日掃除してるんだなって、よく分かる。


「えーっとオレウム草オレウム草……これかな?」


 色んな食材の中から、黄色い花が咲いてる菜の花のような草を見てみる。

 目利きのスキル発動させて確認、っと。



[ オレウム草 ]

 異世界版の菜の花

 食用油の材料にもなる 茎も食べられる



 おお合ってた! これで食用油は大丈夫だね。

 あとはおかずをどうしようかな。昨日は肉だったから、今日は魚を食べたい気分。ちょうど良さそうなのあるかな。

 適当に目利きを発動させながら棚を見てると、気になる魚を発見した。


「おお〜大きくてツヤもある。どれどれ」



[ フリジットサーモン ]

 主に寒冷地帯で生息している異世界版の鮭

 脂が乗っているためどんな料理にも合う



 鮭! いいねぇ塩焼きにしておにぎりに混ぜたら美味しそうじゃん!

 あとは副菜と漬物用に野菜を選んでから厨房に戻りますか。


 ******


 調理台にオレウム草を置いて、スキルを発動させる。塩の時のように光がボウルを包んだ後、大量のオレウム草が透明度の高い黄金の液体に変化した。


 うん、ちゃんと油になってるね。

 とはいえこのままだと酸化しちゃうから、陶器の瓶に入れて保存っと。


 そこに、ちょうどいいタイミングでパティさんが戻ってきた。フライパン以外にもあれこれ抱えてきてるけど、なに持ってきたんだろ?


「フライパンありました。あと使えそうな調理器具も、いくつか持ってきました」

「ありがとう、あとで確認させてもらうね。フライパン洗ってもらってもいい?」

「わかりました」


 パティさんがフライパンを洗っている間に、こっちも準備しよっか。


 昨日と同じように米を洗って浸水させてる間に、フリジットサーモンを捌こうか。

 ウロコや内臓を取ったり頭を切り落としてから、三枚に卸していく。

 まずは腹から包丁を入れて、次は背中から。一枚目をおろせたら今度は背中から包丁を入れて、最後に腹から包丁を入れる。


「捌く時は腹背背腹って習ったの、時間が経っても覚えてるもんだねぇ」


 そんなこんなで、無事に三枚におろせた。久々だったけど、まぁいい感じでしょ。そしたら身の中央にある細い骨をできるだけ抜いてって、切り身にする。

 切り身にしたフリジットサーモンは綺麗な皿に置いたら、塩を振りかけて少し置いておく。

 ちょうどいいし、今のうちに米を炊いておくか。


「あの、どうして塩を振るんですか?」

「フライパン洗い終わったんだね、ありがとう。これは魚から余計な水分を抜いて、臭みを取るために塩を振ってるんだよ」

「なるほど、勉強になります……!」


 5分ほど経ったらキッチンペーパー……は、ないから清潔な布で水分を拭き取る。

 そしたらフライパンに油をひいて、皮面を下にしてから火を着ける。中火で焦がさないように注意しながら片面を焼いたら、ひっくり返して蓋をする。

 そしたら弱火にして、じっくりと火を入れていく。


 本当はここでお酒を振りかければ、もっとふっくらに仕上がるんだけどねー! くそぅ、早くレシピ開放されないかなぁ!?


 そんなことを思いながら焼いていき、頃合いを見て蓋を開ける。んん〜焼き魚の香ばしくていい匂い〜! 魚の脂の匂いでご飯がいけそう。

 これを適当な大きさに切って、おにぎりの具材にしてもいいんだけど……今日はほぐしてご飯に混ぜてから握るとしますか。

 お皿に焼き魚をあげてから、パティさんに手伝いをお願いする。


「なにをすればいいですか?」

「この焼き魚の身をほぐしてくれないかな? 大きさはバラバラになってもいいから、皮と骨を取り除いて欲しいんだ。ああ、焼き立てだから火傷には気を付けながらね」

「わかりました」


 快く引き受けてくれたパティさんが、丁寧に魚をほぐしていく。料理は苦手だって言ってたけど、教えたらちゃんと仕事をしてくれる。

 この分なら、私が手伝わなくても大丈夫そうだ。


 それなら魚はパティさんに任せて、お次は副菜作りだ。

 倉庫を見た時、すごく大きくて立派な野菜を見つけたんだよね〜。


「今日はメロウパンプキンも使うんですか?」

「そうだよ〜。これを塩煮にして、おかずにしようかなって」

「塩煮……?」

「まぁ完成を楽しみにしてて」


 そう、見た目が日本のかぼちゃそっくりなメロウパンプキン。目利きのスキルによると、凄く甘い品種のかぼちゃらしい。

 塩煮にすれば絶対美味しいし、余ったら潰してサラダにもできるもんね。作っておいて損はなし!


 まずはメロウパンプキンを半分に切って、ワタと種をくり抜く。タネは一旦洗ってぬめりを取ったら、ザルにあけて乾燥させる。

 これも一手間加えればちゃんと食べられるもんね。 


 一口大に切ったら、角を面取りする。型崩れ防止のためね。そしたら皮を下にして鍋に並べて、そこに塩をふる。あとは少なめの水を入れたら蓋をして、中火にかける。

 水が少なくても、煮ていくうちに野菜から水分が出るから大丈夫。むしろ入れすぎたら水っぽくなっちゃうし。

 水が沸騰したら、弱火にしてそのままメロウパンプキンが柔らかくなるまで煮る。


「できました。こんな感じでいいですか?」

「うん、上出来!」


 パティさんに呼ばれて任せていた皿を見れば、焼き魚はちゃんと綺麗にほぐれていた。

 そこにタイミングよく、ご飯も炊き上がる。


「ちょうどライスも炊けたところだし、一緒におにぎり作ろっか」

「いいんですか?」

「もちろん。自分で作ったおにぎり、食べてみたいでしょ?」

「はい! ご指導よろしくお願いします」

「オッケー」


 炊けたライスにほぐしたフリジットサーモンの身を入れて、混ぜ合わせる。

 う〜ん、純白のライスに鮮やかなピンク色のフリジットサーモンが映えるねぇ。ここにゴマとか入れたらもう最高なんだろうなぁ。


 今回はもうフリジットサーモンに塩味がついてるから、握る時は水のままにしようかな。


「熱いから気を付けてね。ちゃんと水で手を濡らしてから握るんだよ」

「わかりまし……あっつつ!」

「大丈夫!?」

「はい。ちょっとビックリしましたが、この程度なら慣れそうです」

「良かった。じゃあ握るけど、あんまり力を入れすぎたら固くなっちゃうから、力加減に注意してね」


 私は慣れたもんで、いつものようにおにぎりを握る。パティさんを見てみれば、ぎこちない動きでもちゃんと握っている。

 だけどやっぱり初めてだからか、出来上がったのはボールのようにまんまるなおにぎりだった。しかもちょっと米粒が潰れている。


 出来上がった自分のおにぎりを見つめているパティさんの顔は、ちょっと不服って言ってるみたいだった。とはいえ、はじめてにしては上出来なんじゃないかな。


「うまくいきませんね……」

「そんなことないよ。それに丸型のおにぎりでも大丈夫。おにぎりに不正解なんてないんだからね」

「もう一つ挑戦してもいいですか?」

「もちろん。たくさん練習しよっか」

「はい!」


 それから土鍋のお米が全部なくなるまで、私たちはおにぎりを握ることになった。まぁおにぎりは冷めても美味しいからいっか。


 あとはメロウパンプキンの方だけど……。

 蓋を開けた瞬間、かぼちゃによく似た甘くてほっこりするような匂いが鍋から立ち上った。メロウパンプキンの実の鮮やかな橙色が、味の濃厚さを表してるかのようだよ! 絶対美味しいでしょこれ!!


 パティさんも、さっきまでの不服顔が嘘みたい。ほっと顔を綻ばせて匂いを堪能しちゃってるよ。


「嗚呼、いい香りですねぇ」

「しっかり火も通ってるし、これで完成かな」


 あとは倉庫で見つけた、きゅうりっぽい野菜を浅漬けにでもしたらお昼ご飯の完成だ!

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