第10話 料理の加護について聞いてみた
ギルドの食堂で働くことになった翌日。
気になることがあったから、私はパティさんに一つ聞いてみることにした。
「パティさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい、なんですか?」
「ほら、昨日味付けについて聞いたじゃない? その時に加護と一緒にって言ってたけど、加護って具体的にどういうものなのかなって思って」
料理で加護が付くってのは、まぁなんとなくわからんでもない。そんな効果があっても、おかしくないかなーとは思うよ。
某物語ゲームとか某狩猟ゲームとかでも、料理の効果ってしっかり付くからね。
だからこの世界での加護もそういったものなのかどうか、知っておく必要があるって思ったんだよね。
「そうですね……まずはじめに、料理で得られる加護って、実はそんなに大きなものではないんです」
「そうなの?」
「はい。料理の加護は、あくまで補助的な役割にすぎません。それでも食事をとることで、各ステータスの数値を底上げしてくれるんです」
「あ〜、元気になるとか力がつくって感じ?」
「その通りです。だから依頼を受注した冒険者の大半は、なにかしら食事をしてから出発することが多いですね」
なるほど、理に適ってる。腹が減ってはなんとやらってやつかな。
確かに依頼をこなしている時にお腹が減って力が出ない、なんてことがあったら大変だもんね。
「そっかぁ。ちなみに加護の種類ってどれくらいあるの?」
「加護は料理の種類や温度、味で決まるんですよ。例えば辛い料理でしたら火精の加護、つまり火耐性がつきます」
「へぇ〜! 具体的に教えてくれる?」
「はい」
教えてもらった加護を表にしてみると、こんな感じだ。
【加護一覧】
辛味→火精の加護(火耐性)
塩味→水精の加護(水耐性)
酸味→雷精の加護(雷耐性)
苦味→土精の加護(土耐性)
旨味→風精の加護(風耐性)
甘味→妖精の加護(魅了耐性)
渋味→光闇精の加護(光耐性・闇耐性)
冷たい料理→氷精の加護(氷耐性)
熱い料理→闘精の加護(攻防上昇)
デザート系→魔精の加護(魔力上昇)
一覧にすると、結構な種類の加護があることにビックリだ。しかも料理の種類によっても、それぞれ効果があるとは。となると……。
「メニューも結構な数を考えないといけないなぁ……」
「そうなりますね……。ですが、加護目当てで食事をする冒険者は、ほとんどいませんね。食堂に来るのはお腹が減ったからとか、単純にご飯を食べたいからって理由の人たちばかりですので」
「そっか。じゃあそんなに難しく考えすぎなくても、大丈夫なのかな」
「ええ。美味しい料理があれば、誰でも元気になるものですから」
大丈夫です、と慰めてくれるの嬉しいですありがとう。だとしても、今の私じゃあ作れるものが限られすぎているんだよねぇ。
「とはいえ料理を作るにしても、もうちょっと調味料は揃えておきたいところだなぁ」
「昨日見せてくれたスキルのことですか?」
「うん。私は魔法で味付けをするつもりはないから、必然的に調味料を使うことになるんだけど……。塩だけじゃ作れるものも少ないし、せめてさしすせそは揃えておきたいところかな」
「さしすせそ? なにかの呪文ですか?」
「ああ違う違う。さしすせそっていうのは、和食……じゃなくて、料理の味付けに使われる基本的な5つの調味料のことなんだよ」
調味料の話をすると、途端にパティさんの目がキラキラする。調味料に興味津々って感じ。こうして話していると、簡単な料理教室みたいでちょっと楽しいな。
「調味料って、たくさんの種類があるんですか?」
「うん。その中でも昨日作った塩に加えて、砂糖、お酢、醤油、味噌。この5つのことをさしすせそって言って、ひとまずこれらがあれば、作れる料理の幅も凄く広がるんだよ」
「へぇ……! それは魅力的なお話ですね!」
「あとは調理酒やみりんなんかもあれば、心強いかな。色んな味付けができるからね」
「それは楽しみです!」
期待してもらえるのはありがたいんだけど、ただ問題が一つあるんだよねぇ。
問題はスキルで調味料を作れるとはいえ、どのレベルでどの調味料のレシピが開放されるか、全く分からないってことなんだよね!!
最初から開放されてるレシピが塩って時点で、さしすせその法則は成り立ってないわけで。それってつまり開放される調味料は完全ランダムってわけ!
どの調味料がいつ開放されるか予測がつかない状況で、食堂のメニューを考えるなんて……そんなの無理ゲーにも程がありすぎる!!
「早い段階でさしすせそのレシピは開放したいところだけど、冒険に出ない私ってどうやってレベルを上げればいいのかな……?」
「レベル上げは、各々のジョブによって条件が異なりますよ。冒険者なら魔物を倒す、鍛冶屋なら質の良い武具を造る、といった感じですね」
「ほうほう」
「カエデさんのジョブは、恐らく昨日の時点で料理人になっているはずなので、料理を提供するとレベルが上がるかと思います」
料理を提供、かぁ。
そういえば昨日は、パティさんとサラサさんにお昼ご飯を出したっけ。試しに確認してみよう。
「じゃあちょっと確認してみるね。ステータス表示」
空間上にスクリーンを出して確認する。
[ 名 前 ] カエデ トオノ
[ 年 齢 ] 24
[ レベル ] 2
[ ジョブ ] 料理人(ギルド所属料理長)
[ 称 号 ] 異世界からの転生者
[ 体 力 ] 156/156
[ 魔 力 ] 109/109
[ 攻撃力 ] 140
[ 防御力 ] 107
[物理攻撃力] 94
[物理防御力] 71
[魔法攻撃力] 46
[魔法防御力] 36
[ 俊 敏 ] 91
[ スキル ] レシピ製造 目利き(中)
[アビリティ] 時の神の祝福
おおっ! レベルが一つ上がってるし、ジョブのところも埋まってる! ステータスもちょっとずつ上がってるね〜。
それにレシピ製造の部分が点滅してる。新しいレシピが開放されたんだ! さぁなにが開放されたのか、拝見拝見……!
【 食用油 】
オレウム草 0 (所持数 0)
調味料とは。
え、油を調味料って定義しても良いもんなの? 判定だいぶゆるゆるでは? てかオレウム草ってなに。知らない単語出てきたんですけど。
いやでも正直助かるかも。あの温めるだけで油が出るフライパン、どうも使いづらいからね。洗ったとはいえ、衛生的にもなんとなーく使いたくないし。
それにパティさんが料理を焦がしちゃうのも、あのフライパンを加熱しすぎて油が高温になっちゃうからでしょ。
ひとまずフライパンについてと、このオレウム草がなんなのか、聞いてみますか。
「ねぇ、フライパンって昨日使ったアレしかないの? 個人的には、もう少し普通のフライパンを使いたいんだけど……」
「あのフライパンは……前の料理長が置いていったものです」
「よし捨てよう今すぐ捨てようそんな呪物」
前の料理長が使っていたものだったんかい! 話を聞いただけでも嫌なイメージしかない奴が使っていたものなんて、それこそ印象悪すぎる!! 全部破棄だ破棄!
「てことは、他にまともなフライパンはないってこと?」
「いえ、初代料理長が使っていたものはあるんですが、前の料理長に処分されそうになっていたので……。私が秘密裏に保管していたんです」
良かった、あるっちゃあるんだね。でも話を聞く限りパティさんにとっては、思い出の品ってことになるのか。使っても良いか聞いておこう。
「じゃあパティさんさえ良ければ、そっちを使わせてもらいたいんだけど……いいかな?」
「はい、もちろんです。蔵でずっと眠っているより使ってもらった方が、初代料理長も喜ぶと思います」
「ありがとう」
許可を取れたことだし、遠慮なく使わせていただきます。顔も知らない初代料理長さん。
これでフライパンの問題は解決した。あとはオレウム草がなんなのか聞いてみよ。
「あともう一つ聞きたいんだけど、オレウム草って知ってる?」
「オレウム草なら、料理の時に時々使われているのを見たことがあります。確か大きい食材保管庫に、まだ在庫があったと思います」
「そっか、ありがとう。見てみるよ」
「オレウム草を使うんですか?」
「うん。レベルアップしてて新しいレシピが開放されてたんだ。今回は調味料じゃなかったけど、料理には欠かせないものを作るのに、オレウム草が必要だったんだよ」
良かった、オレウム草についても無事に解決しそう。そうと決まれば、早速行動に移しますか。




