第32話:居場所
今日は朝から大忙し。マギアキジア設立を記念する式典。その当日なのだから当然だ。
しかし、俺は油断していた。
「おお、ドコウくん! 倒れたと聞きましたが、もう大丈夫ですか?」
「ジーナスさん! ご心配をおかけしました……。今は万全ですよ!」
俺はドルフィーネから到着したジーナスさんと、魔機研の応接室で会っていた。アリアナさんも一緒だと聞いているが、母に会いに行ったのかもしれない。
「それは良かった! 式典でのドコウくんの演説、楽しみにしていますよ」
「……え?」
何を言ったのか、よく分からなかった。ジーナスさんもドルフィーネにいながら色々と尽力してくれたと聞いている。どうやら疲れてらっしゃるようだ。
「マギアキジア最大の特徴である魔工機人研究所。その所長ですもんね。いやいや立派なもんです。アリアナさんは演説を聴くために来たと言っていましたよ」
「……しょちょー?」
「所長の制服、よく似合ってますよ」
今朝、ミミカがやたらと立派な衣装を届けに来た。とにかくこれを着ろと言うので、今、着ている。そもそも昨日、急に寸法を測られた時も不思議に思っていたが、ミミカの気迫を前に何も訊けなかった。
「……おっと、もうこんな時間ですか。ではドコウくん、また一時間後に」 と言ってジーナスさんはさっさと部屋を出ていった。
「あ……え……」
俺はポツンと、応接室に取り残された。……一時間後……? 何が?
扉が開き、ヴァルさんが現れた。 「おお、ドコウ殿! ジーナス殿とは話せたか? そろそろ会場に来てほしいのだが……」
俺はヴァルさんを見た。首がギギギと鳴った気がする。 「ヴァルさん。俺、喋るの?」
「……言ってなかったか……?」
「……どうだろう……?」
「…………大丈夫か……?」
「…………どうだろう……?」
ヴァルさんは俺に言ってくれていた気もする。聞いてない気もする。正直、慌ただしくしていたので覚えていない。そして今、言ったかどうかは重要ではない。『大丈夫』か、『ダイジョバナイ』かだ。
「……行こうか……ヴァルさん……」
「……ああ……すまない」
俺とヴァルさんは、式典会場に向けて歩き出した。
前世の話だ。大学で研究者をやっていると、急に自分の研究を説明するイベントが発生する。学会に参加していると、雑談から継ぎ目なく研究内容に話題が移ることも多い。常によく考えてさえいれば、いつだってその場のニーズに合わせて話を構築できる。そうでなければいけない。
つまり。俺は、前世の経験を全て活用して、演説を行った。
主題は、魔機研がどのような施設であるのか。俺にとってではない。参加してくれた方々にとって、どんな施設なのかだ。その説明は当然、ここで研究される魔工学とは何か、機人とは何か、という話に帰着する。
幸い、魔工学の説明は簡単だった。参加者の多くが、魔岩布を使いながら俺の話を聞いていたからだ。魔岩布のように生活を便利にする技術、それが魔工学だ。高度な魔法の技術は必要ない。
機人の説明には、パフォーマンスを交えることにした。話ばかりでは眠くなる。荷物の運搬に用いた六脚機人を予め生成しておき、舞台袖から登場させてみた。会場からは大きな歓声が上がった。これは賭けだった。悲鳴じゃなくて良かったと、俺はホッとした。
いくつかの指令に応じる様子を見せた後、俺は聴衆に語りかけた。魔工学も機人も、まだまだ研究し始めたばかりだ。より多くの人の役に立つ技術となるには、多くの人のアイデア、協力が欠かせない。
「——国を越え、種族を越え、全ての人々の暮らしを豊かにするため、是非皆さんもご協力いただけないでしょうか? 魔工機人研究所……魔機研は、そんな馬鹿らしくなるくらい夢のような夢を、真面目に追い求める施設です」
……締め括った俺は、舞台を降りた。六脚機人の背に乗って退場する俺を見て、聴衆は何を思っただろう。
荷物の運搬を任せたいと思っただろうか。足が不自由な方に、色んな景色を見せたいと思っただろうか。シュールさに笑い、エンタメ性を見出しただろうか。
それらの自由な発想が交わる場として、魔機研を作っていこう。
式典の後に用意された盛大なパーティー。その会場の隅に隠れるようにして、俺はワインを見つめていた。
……話しすぎた……。研究者というのは、いざ喋り始めると話が長い。舞台を降りた時、俺は自分の持ち時間を遥かに過ぎた時計を見て、愕然とした。式典に参加してくれた皆さんを、退屈させてしまっただろうか……。いや、しかし終わり際は拍手喝采だった……はず。……俺の錯覚?
衣装は着替えている。パーティー用の衣装を持ってきてくれたミミカは、手早く衣装の説明を終えると、一瞬で姿を消した。何かを訊ける雰囲気では、なかった。
そういえば、最後に何か言っていた気がする。なんだったっけ……。
「……あ! ドコウさん! やっと見つけました!」
元気な声が聞こえた。
「……おお……」 俺は声の方に目をやり、感嘆の声を洩らした。
そこには、弟子三人組が揃っていた。この呼び方も、今はしっくり来ない。三人の美しい女性が、手を振りながらこっちに向かってくる。
「ドコウさん! こんな端っこに居たんですね! 探しました!」 とレティがいつも以上に明るく言った。
「ああ、レティ。とっても素敵なドレス姿だね」
「えへへ……ありがとうございます!」
レティは水色のドレスを着ていた。金色の髪と青い瞳によく似合う。出会った頃は少女だった彼女も、いつの間にか大人の女性だ。可憐さと大人っぽさを共存させたドレスがよく似合っている。
「スゥも。前に食事に行った時の服も似合ってたけど、ドレスもよく似合うね」
「な、なんじゃ……今日は褒めるのが上手いの。……ありがとう」
スゥのドレスは赤だった。赤い髪に赤い瞳、そして赤いドレスで統一されている。スゥの白い肌が際立ち、気品を感じさせる。
「わ、我が主……ボ、ボク、ボクボク!」
「クレアは紫のドレスか……理知的なクレアにピッタリだ」
淡藤色の髪色より濃い、紫色のドレス。クレアの外見だけじゃなく、その内面とマッチして、ミステリアスな魅力を放っている。いつものクレアとは違う印象を受けた……が、聞いてる?
「ボクボクっ……ボクっ!」
その様子を見たスゥが慌てている。 「お、落ち着けクレア! 落ち着くのじゃぞ!」 最悪の場合にはいつでも止めに入る姿勢だ。 「妾達のドレスはともかく、ドコウ殿の衣装を汚しでもしたら……」
「そうですよ! ミミカちゃんにすっごく怒られますよ!」
クレアは何度か深呼吸をした。……おお……制御した……。
「……ありがとう、レティ、スゥ。ボク命拾いしたよ」
「ふぅ……それは妾達もじゃ」
「クレアさんは、ドコウさんの演説のことを話したかったんですよね!」
レティの言葉に激しく頷くクレア。
「ああ……ごめんね。長すぎたよね。それをここで反省してたんだ」 と俺は言った。
「長いだなんてとんでもない我が主! もっともっと聞きたかったボク! とてもとても感動しました!」 クレアがグワッと喋りだした。が、距離は保っている。
横でスゥとレティが構えていた。
「よ、よく耐えたぞ、クレア」
「えと……私もです! それに演説の後、参加した皆さんも魔機研のことをとってもワクワクした顔で話してました!」
「え……そうなの……?」
「そうです!」
「まさか失敗と思い込んでおったとは……」 スゥは苦笑している。
またもや激しく頷くクレア。
「……クレア様!」 少し離れたところから、クレアを呼ぶ声がした。
手を振っているのは複数の男女のグループだが、見覚えのある顔はない。
「……あ、皆……」 とクレアは懐かしそうに言った。
男女は小走りで駆け寄ってきた。口々にクレアの名を呼んでいる。慕っているようだ。
「クレア様、ご無沙汰してます! とても素敵なお姿ですね」 一人の男が代表して言った。俺に視線を移す。 「……あ! もしやドコウ様ですか!?」
「そうですが……」
「何とこれは申し遅れました! 我々はクレア様の研究所に勤めていた者です!」
確かクレアの研究所に居た研究者の中には、家庭の事情などでクレアに付いてこれなかった人達がいた。それが彼らのようだ。
「皆……来てくれたんだね。長旅、家族は大丈夫……?」
「全員、家族同伴です! 都市を見てもらえば、移住の理解も得やすいだろうと……」
「どう?」
「全家庭、順調です!」
「よしっ」 とクレア。
……ん? もしかして魔機研、また大きくなります?
代表の男は身体を俺に向けて改まった。 「ドコウ様、先程は失礼しました。素晴らしい演説は拝聴したのですが、遠い席でお顔がよく見えず……」
「そうだったんですか。次回に活かしたいので是非、どの辺りの席だとどんな見え方だったのか、教えてください」
「……あ、我が主。それはボクが聞いておく」 とクレア。
「かしこまりました。……やはり妥協されない方だ。是非あとでゼフィリアの代表者にも面談のお時間をいただきたい」
ゼフィリアは今回招待客ではないので、他国と比べ、もてなしがやや簡素だ。これは援助してくれた他国の顔をたてるために仕方ないことだが、気を悪くしてないといいが……。そもそもどんな人が代表者なのかも全く分からない。
「……代表者、どんな人……」 とクレアが訊いた。グッジョブ。
その問いを受けて、男の表情が自慢げなものに変わった。 「我々、ただゼフィリアに留まってた訳ではありません。クレア様の手紙に熱く記されていたドコウ様の理念。これに賛同するものを代表者に推薦し……連れて参りました!」
「おお……グッジョブ」 とクレアは言った。
「……ふふっ」 俺はつい、笑いをこぼしてしまった。
「えへへ……。我が主、皆、ボクちょっと行ってくる」
「うん、頼むよ」
クレアはゼフィリアからの仲間達と共に、代表者の元へ向かった。すぐに人混みに隠れて見えなくなる。
気がつけば、パーティーはかなり盛り上がっている。
「……スゥ様っ!」
今度は、知っている声が聞こえた。
「おお、ミヤ! 無事に会えたな!」 とスゥが応えた。見るからに嬉しそうだ。
護衛を一人引き連れて近づいてきたミヤさんは、俺達に一礼した。 「はい。まさかこのような端にいるとは思わず、遅くなりました。……ドコウ様、レティ様、覚えておいででしょうか? スゥ様の付き人をしておりました、ミヤです」
「もちろん! お久しぶりです」 と俺も挨拶する。
「お久しぶりです!」 レティはドレスの端を掴んでお辞儀した。
ミヤさんにはボレアリスでお世話になった。今回は国の代表として参加されていると聞いたが……。
「あれ? スゥは今初めて会えたの?」 と俺はスゥに訊いた。代表者ならミヤさんも目立つところにいたはずだ。
「うむ……バタバタしておったからの。ミヤもボレアリスの代表として大変じゃったろう。共に来たのは、そちらの護衛の者だけか?」
「いえ、それが……」 ミヤさんは視線を逸らした。困ってるような、笑ってるような。
「……ん……? そちらのもの……どこかで……」 スゥはミヤさんの後ろに佇む護衛の顔を覗き込む。
黒子のように布で顔を隠しているが。俺は予想が着いた。
「……久しいなスゥよ。なんと美しい姿か」
「……ち、ちち……っ!」 大きな声を出しかけて、スゥは口を抑えた。
ミヤさんの護衛に扮した男性は、スゥの父……ボレアリスの皇帝だ。
スゥは小さな声が聞こえるよう、皇帝に近寄る。
「……父上っ! いらっしゃるとは聞いてませんっ」
「お忍びだからな」 皇帝は堂々と言った。
「父上……お忍びというのは、こういった催しには参加しないものです……」
「そ、そうなのか……? スゥが手掛けたという料理を、どうしても食してみたかったのだ……」 皇帝はおどおどしながら言った。
大きくため息をつくスゥ。二人のやり取りは、父と娘のそれそのものだ。
「スゥ、二人を案内してあげたらどうかな?」 俺は提案した。
「む。そうじゃな」
皇帝が一歩、俺に近づく。 「ドコウ殿。模擬戦の際は挨拶もせず、失礼した。先程の演説を余も聴かせてもらったぞ。また改めて、正式に対談の場を設けさせてほしい」
俺が皇帝と直接話をするのは、これが初めてになる。
「挨拶については気にしないでください。それに、対談についても是非。ヴァレンティンにも伝えておきましょう。私は研究者の一人に過ぎませんので」
「はっはっは! 余には貴殿こそが中心に見えるがな」 僅かに顔を近づける。耳打ちほどではない。 「……して、スゥはよくやれているだろうか?」
皇帝らしい鋭さを見せた直後の声は、皇帝らしくなかった。大事な娘が心配で仕方ない、一人の父親だ。
「マギアキジアに欠かせません。この場も、スゥが居なければ成し得なかったでしょう」
「そうか。……うむ、今後ともよろしく頼む」
「ええ、こちらこそ」
皇帝は満足した様子でスゥ、ミヤさんと歩いていった。スゥはミヤさんに訊かれ、髪飾りのことを説明している。その様子を見る皇帝の表情は、穏やかだった。
……もうちょっと忍んだ方が良いと思うけどな。ここには他国の王族もいるんだし。
「レティ! それにドコウ様っ!」
……ほらね。間一髪だった。
「あ! カスパー兄様と、お父様にお母様!」 とレティが一際明るく言った。声のした方に手を振る。
ぞろぞろとやって来たのは、レグナムグラディの王族御一行。……というか何人で来たんだ? 面識があるのは、ニナさんと手合わせしたカスパーさんだけ。
「レティ……綺麗になって……!」 と、恐らくレティの母が言った。
「お友達が作ってくれたんですっ!」 とレティがドレスを見せる。
「なんと……!」 恐らくレティの父。
……その後ろで何人かズビズビし始めた。ヴァルさんが言っていた通りの一家だ。
「ドコウ殿。私はレグナムグラディの国王をしております。ようやく会えましたな」 と言ってレティの父が右手を差し出した。
俺はその右手を握り、 「そうですね。何度も助けていただいてるのに挨拶にも行かず、すみません」 と言って軽く頭を下げた。ようやくの機会だ。
「いやいや、頭は下げんでいただきたい! いつもレティとヴァルが世話になっているのですから、当然です」
やはり、ヴァルさんと似ている。表面的な上下関係には強くこだわってないようだ。
「二人には、私が助けられてばかりです」 と俺は言った。本心だ。
それを横で聞いていたレティは慌てて俺と国王の横に立った。 「そんなことないんですよ、お父様! 私いっつもドコウさんに教わってばかりで……」
俺はその様子を横目で見つつ、微笑みながら国王に説明する。 「マギアキジアの正門はご覧になりましたか? あれはレティが居たから建築できたんです。演説でお見せした機人。あれより遥かに大型のものを、見事に操作して」
「なんとっ!」
国王は一歩引き、家族と円陣を組んだ。感動を分かち合っている。……でも、大袈裟ではないと思う。レティもヴァルさんも、この国の中心的な存在として立派にやっている。心配は不要。誇ってほしい。
円陣から離れた国王は再び俺を向き、 「ところでドコウ殿。剣姫様のお姿が見えないようですが」 と涙を拭きながら尋ねた。
「……けんき?」
少し離れていたカスパーさんが慌てて近寄る。 「ああ、すみませんドコウ様! 私との模擬戦の以降、ニナ様に憧れるものが相次ぎまして……」 と補足を始めた。 「ニナ様を信仰するものの間で、『剣姫』という呼び名が広まったのです」
「信仰……って……」
レグナムグラディは剣技を重んじる国だ。そこであれだけ圧倒的な技を見せれば、影響はあると思ったけど……。
俺が苦笑いしていると、遠くの方でどよめきが起こった。全員が同じ場所を見つめている。ここからでは人集りでよく見えない。
「ニャーッ! 寄るんじゃないニャ! 全く旦那はどこニャ! エスコートをお願いしたのになぜ来ないのニャ!?」
背筋がブルッとした。……あれ? 何かを思い出せそうな気がする……。
「ニナ姉様ッ! 本当に旦那はこっちかニャ!? 人ばっかりで何も見えないニャ!」
「ええ」
俺は人集りに向かって歩き出した。
白い装束を纏ったステラマーレの魔法師。正装に着替えたトニトルモンテの騎士。高価な衣装に身を包むドルフィーネの商人達。ひと目見ようと集まった人々は、声をかけると素直に道を開けてくれた。
その先で、目が合った。
桔梗色の瞳。まとめられた白銀の髪。それらの中間の色をしたドレスが、キラキラと輝いている。左腕には、独特な白い輝きを放つブレスレット。
無意識に差し出した俺の手に、細い手が重ねられた。
「……凄く、凄く綺麗だ。ニナさん」
「ドコウさんも、素敵です」
ニナさんは微笑んだ。
「……旦那」
う。
「何してたんだニャ!? 旦那が居ないとこうなることは分かりきってたニャ! だから呼んだのに——」
「ミミカのお陰で何ともありません。ありがとう、ミミカ」
「許すニャ!」
ミミカはレティの方にさっさと歩いていった。お疲れ様と言うレティ。命拾いした俺。
「ニナ様! ご無沙汰しております。カスパーです。レグナムグラディでお手合わせいただいた……覚えておられますか……?」
「ええ」
「おお、なんと……!」 感動に身を震わせるカスパーさん。
……いやいや、覚えていただけで大袈裟な……。
そんなカスパーさんの横に立ったレティがジロリと見て、 「……カスパー兄様。チャンスはありませんからね」 と言った。
「当たり前だレティ! そんなことはずっと前から分かっているさ! ……それに、他の者も先程理解したことだろう」
レティはミミカを家族に紹介し、すぐに二人でデザートコーナーに向かった。ミミカはずっと、皆の衣装のために働いていたようだ。
「あ、ニナさんも何か食べる?」
「いえ。飲み物だけで」
「じゃ、ゆっくりしてよっか」
「はい」
結局、ゆっくりなんて出来なかった。ニナさんの騒動で俺を見つけた様々な人が、次から次へと挨拶に来た。皆、俺の演説を聴いてくれたらしい。
興奮気味に話す皆さんの話を聞いているうちに、夜は更けていった。
自室の椅子に上着をかけた。すぐにハンガーに移さないとまた怒られるが、ちょっと休ませてほしい。
「ははっ、ようやく一息だ」
「ええ。お疲れ様です。ドコウさん」
「ニナさんもね」
一番大きな窓に寄った。マギアキジアの街並みを遠目に見ることができる。
街はまだ明るい。俺達が参加したパーティー以外にも、あちこちで催しがあったようだ。少し前に丘から見た時は真っ暗だったこの場所に、今は活気が満ち溢れている。
「大きな都市になりましたね」 隣に立ったニナさんが言った。
「そうだね……」
二人で俺達の街を見る。
演説もして、パーティーで挨拶もした。俺達の居場所が、今日、完成したのだ。
「次は何からやりましょうか?」
「まずは、調査だね」
ジゼルさんと母から託された、『星の声』を巡る謎。しかしそれだけではない。サイトウ……俺と同じ転生者。転生者はこの世界にとって、何なのか?
そしてモンスター。亀型モンスターは、人が居ないトニトルモンテを目指した。明らかな目的意識。その身体には魔岩を上手く使っていた。まるで俺達への対策。これらの裏に、『意思』を感じるのは当然だろう。
どうも全ては互いに無関係ではないような気がする。一つ一つ、紐解いていこう。
しかしなんにせよ……。
「この世界がどんなもので。どうなっていくとしても。一緒に、見ていこう」
「はい。ドコウさん」




