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英雄が壊す異世界  作者: 波白雲
第二章:目に映る世界
30/39

第30話:遅れを取り戻せ!

 扉を三回ノックした。


「えっと……ドコウだけど……」


 と俺が言った途端、部屋の中から慌ただしい音が何度も鳴った。椅子が倒れる音、紙の束が落ちる音。扉に駆け寄る音。


 乱暴に開けられる音。 「……ド、ドコウ殿……ドコウ殿に間違いないな!?」 と扉を開けたヴァルさんは目を見開いて言った。

「うん、ドコウだね」 俺は笑顔で応えた。 「もうだいぶ回復したよ。それで、皆にお礼をしたくて……」

「礼など……休んでいてもらいたいのだが。まあ、まずは入ってくれ」 とヴァルさんは部屋に俺を招き入れた。


 ここは魔機研にある事務室。ヴァルさんの職場だ。立派な机の横には倒れた椅子。床は散らばった紙で埋め尽くされていた。


「す、済まない。先程一つの山を崩してしまった」 ヴァルさんは書類を拾い始めた。


 俺も手伝う。 「驚かせてごめん。しかし凄い量の書類だね」 拾った一枚を見てみると、『来賓リスト』と書かれていた。 「来賓……」

「……うむ。ああ、済まない。ドコウ殿は楽にして待っててくれ」 書類を拾い続けながらヴァルさんが言う。 「……ドコウ殿が倒れてから一週間が経っている」

「ニナさんにも教えてもらったよ。心配かけたね」


 俺はまだ来賓リストを眺めていた。


 最初に書かれている名前は、確かステラマーレの国王と王妃のものだ。次にレグナムグラディの国王ファミリー……つまりヴァルさんとレティの家族。そしてトニトルモンテの国王と騎士団長。最後はボレアリスでスゥの侍女を務めていたミヤさんの名だった。


 錚々(そうそう)たるメンツである。


「モンスター襲来の報を受けてからだと、二週間弱だな」 ヴァルさんはまだ書類を拾っている。 「つまりだ」 ヴァルさんは一度背筋を伸ばし、そして俺を見た。半笑いの表情で。 「マギアキジアのお披露目となる式典は、明後日に迫っている、ということだ」


 俺は床の書類をぐるっと見た。状況を把握するには十分すぎる情報。


「ははは」 と俺は笑った。

「ははは」 とヴァルさんの声は笑った。目は違った。


 式典をやることは前から決まっていた。正門の完成を一つの区切りとして、そこからだいたい二週間後。ああ、確かにそろそろだ。


 ヴァルさんはため息をついた。 「……隠しきれないと思うので白状しよう。私含め主要なメンバーは、しばらくドコウ殿のことばかり考えて何も手につかなかった。モンスターに対応していた期間も合わせると、一週間半ほど準備が止まっていたのだ」


 そ、それは……。


 ヴァルさんが慌てて手を振る。 「決してドコウ殿のせいにしたい訳ではないぞ! ただ恐らく、他の者から話を聞く際にも、疑問に思うだろうからな」

「なるほど……。ほんとに、心配をかけちゃったな」 俺は書類を拾い始めた。


 ヴァルさんも再開した。 「リリーナ殿とジゼル殿から、ドコウ殿が目を覚ましたと聞いてな。レティ達はすぐに駆けつけたがっていたぞ」


 ようやく拾い終わったので、ヴァルさんに渡した。


 ヴァルさんは自分が拾った分と重ね、ドンッと机に置いた。紙の山の群れに加える。


「しかし我慢して、今は各自の持ち場で、遅れを取り戻そうと頑張ってくれている」

「そうか……。……是非手伝わせてほしいな」

「うむ。手伝いは控えてもらいたいが、皆にも元気な姿を見せてやって欲しい」 そう言ってヴァルさんは俺の肩に手を置いた。珍しい。 「本当に幻ではないのだな」




 式典会場には多くの作業員が集められていた。高さのある空間を隅々まで飾り付けようとしている。正面の奥には大きなステージ。半分ほどは骨組みが剥き出しのままだが、完成すれば立派なものになりそうだ。


「ドコウさんっ!?」 遠くの方から声が聞こえた。


 金色の髪をなびかせ、全力でこちらに駆けてくる。


「おお、レティ。お疲れ様」

「ドコウ……さんっ! ……ほんとに……ほんとに良かった……」 とレティは息を切らしながら言った。

「心配かけちゃってごめん。あと、助けてくれてありがとう」

「そんな私より!」 息を整える。 「ドコウさん。クレアさんにはもう会いましたか?」

「いや。ヴァルさんから、レティとスゥに会ってからが良いって言われて」

「……なるほど。分かりました! 絶対にお礼してくださいね!」

「もちろん。……それで、レティにもお礼を兼ねて何か手伝いたいんだけど……」


 俺はもう一度、ぐるっと式典会場を見た。広いこの現場は、レティが監督を務めているらしい。レグナムグラディの王女であるレティは、式典の完成イメージもしっかり掴んでいる。正門建設で現場の作業員とも仲良くなっているし、この上なく適任だ。


「いいんですか? ……きっと遠慮したらダメですよね?」 と俺を上目遣いで見た。

「そうだね」

「いつものドコウさんですね! えっと、それなら……あそこの天井近くの飾り付け、お願いできませんか? 高いところの数カ所に付ける必要があるんですけど、いちいち足場を組まないといけなくって……。凄い時間がかかっちゃってるんです……」

「お安い御用だ」


 レティは再び走って飾りを取りに行った。俺も歩いて付いていく。またここまで走らせる意味はない。飾りを受け取った俺は自分の足に魔岩を生成し、操作して宙に浮かぶ。それを見た周囲の作業員が驚きの声を上げた。


 作業はあっという間だった。飛べさえすれば、何も難しくない。


「ありがとうございます! 飛べるって凄いですね。羨ましいです!」 とレティ。

「あれ、よく考えたら、飛べるのってマギアキジアで俺だけ……?」

「今さら何を言ってるんですか。そんなの、この世界中でもドコウさんだけですよ!」

「……確かに……?」 そりゃあ、作業員たちも驚く訳だ。


 俺はレティの近くに着地した。


「いつか私にも、できますかね……?」

「……レティ、もうやってるよ」

「え?」

「こないだの岩の乗り物。あの操作と、この足に付けた魔岩の操作は同じ技術だよ」

「あ! 確かに! 今度また練習させてください!」


 高所の作業が全て片付いたことで、この現場にはかなり余裕ができたらしい。レティに一言告げ、次の現場に向かうことにした。


 来た時より明らかに上機嫌なレティに影響され、現場全体が活気づいていた。




 次に俺が来たのは、調理場。ここでは来客に振る舞うあらゆる飲食物の準備が進められている。ここを任されているのはやはり……。


「おや、ドコウ様じゃないか! 様子を見に来てくれたのかい?」 扉のすぐ先にいたマチルダさんが大きな声で言った。

「あ、マチルダさん。どうも。俺にできることがあれば手伝いたくて来たんだけど……」

「そりゃあ助かるね! でも、何をお願いさせてもらおうか……おーい! スゥ様ッ!」


 マチルダさんの声が広い調理場に響き渡る。


 その声を聞き、遠くで忙しそうに指示を出していたスゥが、俺に気づいた。三秒固まって動かなかった。こちらに背を向けて額の汗を拭き、身だしなみを手早く整えると、振り向いてこちらに駆けてくる。


「おぬし! 何用でこんなところへ? いや、それより、身体は大事ないかの? まだ休んでいた方が……」

「スゥ、大丈夫だよ。普段通りだ。ありがとう。スゥも助けてくれたと聞いたよ」


 俺とスゥのやり取りを見て、マチルダさんはニコニコしながら離れていった。料理長は当然忙しいはずだ。


 俺はマチルダさんに軽く会釈して、スゥに向き直った。


「……妾より、ニナ殿とクレアに礼を言うべきじゃ」

「うん。この後に行くよ。その前に、スゥにお礼したくて。何か手伝えないかな?」


 スゥは少し考えているようだ。


「……例えば、加熱魔岩は足りてる?」 俺の方から訊いてみた。

「うむ。そちらはこれまでに作った分で足りそうじゃ。扱える者も、ドルフィーネから助っ人が来てくれたお陰で、何とかなりそうではある」

「……まだ微妙に何とかなってないような言い方だね」

「うむ……。実は少し困っておるが……しかし……」


 聞き出すと、悩みは運搬だった。何しろ食材の量が多い。保管している倉庫から調理場へ食材を運ぶだけで、かなりの人員を取られるらしい。調理すると出るゴミを、廃棄場まで運ぶ必要もある。本来調理に専念させたい人材をこれらに割いているそうだ。


「よし、任せてくれ」 と俺は言った。

「し、しかし! これは力仕事じゃ! やはり今のそなたには頼みとうない!」 スゥは必死の形相で言った。泣き出しそうにも見える。

「ふっふっふ……大丈夫だよ、スゥ。ここは研究都市、マギアキジアなんだから」 俺は努めて明るい口調で言った。

「……どういうことじゃ……?」


 俺は魔岩を用いて一体の機人を生成する。機人といっても人っぽさはない。六本の脚で地面に立つそれは、虫のように見えるかも……。


「これも機人なのかの……?」

「そうだね。……えっと……見た目は気にしないで欲しいな……。機能を優先したらこうなっちゃって……」


 生成した機人は、膝下ほどの高さしかない。床を傷つけないよう、素材も軽く変質させてある。平らな背中には外枠があり、何かを乗せるのにピッタリだ。そう作った。


「む。これはもしや……荷運びができるのかの?」

「その通り! 行き先は『調理場』・『倉庫』・『ゴミ捨て場』の三つでいいかな?」


 スゥが頷くのを見た俺は早速、魔力プログラミングを始めた。この辺りの地図はヴァルさんに見せてもらっている。それも既知情報として与えておいた。


「……よし、これで動くはずだ。やってみる?」 と俺はスゥを見て言った。

「妾が?」

「うん、もうルールは教えてあるから、言葉で指示すればいいよ。他の従業員にはスゥから教えてあげてほしい」

「それはもちろんじゃ! 試してみても良いかの?」 スゥはワクワクした顔だ。


 俺が運ばないと知ってか、元気になってきたようだ。手近にあった食材用の空箱を機人の背中に乗せ、俺は頷いた。


「で、では。機人よ! 倉庫に向かうのじゃ!」


 スゥの指示を受け、機人は六本の脚を規則正しく動かし、歩き始めた。速度は人がゆっくり歩く程度にしておいた。


「最初だし、付いていってみようか。時間ある?」

「うむ!」


 六脚機人は順調に通路を進んでいく。スゥは興味津々だ。


「……どう?」

「うむ。可愛いのぅ……」 機人を見たままスゥが答えた。

「ははっ! それは良かった! ……えっと、使えそうかな?」

「えっ? あっ! そ、そうじゃな!」 スゥは俺を見て、次に視線を逸らして言った。


 そのとき慌てたスゥの足が軽く、チョンッと機人に触れた。機人は背中の荷物を落とさないように姿勢を調整しつつ、即座に脚を止める。


 スゥはさらに慌てた。 「ああっ! す、すまぬ機人よ!」 両手を空中で無意味に動かしている。


 どう触れればいいのか分からないようだ。


「……うう、どうすれば……」 困った顔で俺を見上げるスゥ。


 あのスゥがこんなに慌てるとは思わなかった。すぐに説明してあげよう。


「大丈夫。もう一回、さっきと同じように指示を出してみて?」

「う、うむ。……機人よ、倉庫に向かってくれぬか……?」


 恐る恐るスゥが発した命を受け、機人は再び、何事もなかったように歩き始めた。


「……こんな感じで、人や物に当たった時には安全に止まるようにしてあるから。もし止まってたら今みたいに指示を出し直してあげて」

「賢い子なんじゃな……」

「本当は当たる前に避けたいんだけど、まだちょっと難しくてね。……あ、そうだ」


 俺は機人の動きを止めて、上書きする。


 まず足先にかかる力に対応した魔力信号を利用可能にする。これで力の情報を得られるようになった。次に仮想的な物体……つまり仮想物体を定義し、足先にかかる力で押されたと見做してシミュレートさせる。あくまで仮想的に押された場合、だ。


 仮想物体には、他にも仮想的なバネと仮想的なブレーキが付いていると考える。これで仮想物体の運動を、ある程度は安定化できる。


 あとはこの仮想物体の動きを真似るように機人の足先が動くようにすれば……。


「よし、機人。右前足を上げて」 と俺は命令した。


 言う通りに持ち上げられた機人の足先に手を当て、グッと上に押してみる。


 足は俺に押されてさらに持ち上がる。手を離す。元の高さに戻る。うん、滑らかだ。


「どうなったのじゃ?」 とスゥが、しゃがんでいる俺の上から覗き込んで言った。

「擬似的に柔らかい動きをさせてみた。これでちょっとした段差では止まらなくなるよ」

「そのようなことが……。確かに柔らかそうじゃ。妾も良いかの?」


 俺が頷くと、スゥも機人の足を押しては放し、押しては放した。楽しそうだ。


「スゥが見つけた動魔変換のお陰なんだよ」

「む。そうなのか?」

「うん。動魔変換の発見は本当に、革命だ」


 再び機人を進ませ、倉庫に到着した。倉庫にいた従業員にスゥが説明している間、俺は同じ機人を追加で四体生成した。区別するため、背中を少し変形させて番号を彫る。


「そなたは本当に何でもありじゃな……」 とスゥ。


 俺は一つずつ指差しながら、 「こっちから、太郎・次郎・三郎・四郎・五郎と呼んであげれば個別に指示できるよ」 と言った。

「……その名付けは気になるが、とにかく大助かりじゃ! 恩に着るぞ!」


 よし。もうここは大丈夫。


 俺はスゥに手を振って次に向かった。ようやくだ。




「ニャニャニャニャニャニャッ!」


 俺は賑やかな作業室に入った。中央で機織り機がガッシャンガッシャン動いている。あんなに激しく動くものではなかったはずだが、実際に動いてるのだから仕方ない。


「ミミカー、邪魔するよ。クレアがここに居るって聞いたんだけど……」

「ニャニャニャニャニャニャッ!」


 積み上げられた糸と布の中から、クレアが顔を出した。


「……我が主!」 立ち上がり、駆け寄ってくる。両手の指は包帯に包まれていた。

「お、クレア!」

「本物の我が主。異常ない?」 と言ってクレアは俺の胸元を見つめた。

「うん。クレアには凄く助けられたみたいだ。皆が口を揃えてクレアに礼を言えって」

「そんな……ボクは結局、何もできなかった。皆がいなかったら何も」 俯いて両手の包帯を見る。 「ニナ様の髪の変色も止められなかった。ごめん。我が主に頼まれたのに」


 俺はクレアの頭を撫でた。無意識に。 「あ! ごめん!」 すぐに失礼だと気付いて手を除ける。よくやったんだと伝えたかったが、言葉が見つからなかった。ヘマをした俺が言える言葉は、限られている。


 クレアは自分の頭をさすった。 「……へへ……。大丈夫」 そのままの手で髪飾りを整える。 「我が主。ニナ様の禁術の様子、知りたい?」


 クレアはいつもの顔で、魅力的な問い掛けをした。


「頼む! 技に名前があったって聞いた!」 俺は明るい声で訊いた。

「名前……。うん、あった。でも、名前はただのラベル。重要じゃない」

「ラベル……? ん、もしかして……」 俺は腰を降ろした。床だ。糸と布でいっぱいのこの部屋に椅子なんかない。


 クレアも同じように腰を降ろす。 「呪文……も言ってたと思うけど、これもきっとただのラベル」

「……クレア。もしかしてヒト族が技に名前を付けてるのって……」

「うん。伝承のため。魔力を使うのに名前は要らない」

「はーっ! なるほど!」 だから長命種は名前を付けないのか! 伝承なんて何百年に一度しかしないし、その一世代で陳腐化する可能性だってある。 「……あれ? もしかしてクレアも名前なしで魔法を?」

「できる。スゥだって加熱魔岩を使う時に何も叫ばない」


 俺はあぐらをかいた膝を、手でバシンと叩いた。ずっと見ていた! 何を今さら!


 短命のヒト族は代々技術を継承する必要がある。そうでなければ一世代で途絶えてしまう。種として進歩し続けるには、技術の体系化が不可欠だったのだ。


「ということは、途中の魔力の扱い方すらも工夫して継承されてきたのが、禁術」


 それはつまり、大抵のエルフは生涯使うことのない技術。自然には身につかない魔法。


「ボクが説明する必要、ないみたい」 とクレアは嬉しそうに言った。

「いや、ありがとう。凄く重要なヒントを——」

「ニャニャニャニャニャニャッ!」


 ミミカの声。ガッシャンガッシャン音を立て、次々に布が飛び出てくる。


 クレアは首を伸ばしてミミカの方を見た。 「……あ、溜まっちゃってる。我が主。ボク魔岩布(まがんふ)の整理しなきゃ」 立ち上がり、歩いていく。

「あ、俺も手伝うよ。式典の参加者に使ってもらうんだよね」


 クレアとスゥが開発した温まる布は、魔岩布(まがんふ)と名付けられた。もう冷えてくる時期だ。式典参加者に使ってもらえば、一気にマギアキジアの技術を知ってもらうことができる。


 俺とクレアが会話してる間、ミミカは一度もこちらを見ていない。もしかすると、俺が来たことに気付いてすらいないかも知れない。


「えっと……もうこの辺りに置くところ無いね」 俺は布を抱えて言った。


 辺り一面、本当に埋め尽くされている。俺はぐるりと部屋全体を見回し、奥に布で仕切られたスペースがあることに気が付いた。


「あ、この中に置けるかな?」 仕切りの布に手をかけ、スライドしようした時。

「……あ……そっちは——」 「ニャーッ!?」


 クレアの声をかき消すようにミミカが叫び、恐ろしい形相で迫ってきた。ニナさんを彷彿とさせる、素早い身のこなしだった。


 ミミカは仕切り布をガシッと掴んで戻し、俺を睨みつける。 「だんニャァ……? ここで何してるんだニャ……?」

「え……て、手伝おうと思って……」


 ミミカが発するプレッシャーに圧され、後退りする。


「それはありがたいことニャけど、ここは旦那立入禁止ニャッ!」

「え……? じゃ、じゃあ何か他に……」

「大丈夫ニャ! 旦那の気持ちだけありがたく受け取っておくニャッ! 旦那がいたら気になって作業にならないニャッ!」 ミミカの尻尾と耳の毛が逆立っている。


 理由は分からないが、ここは従っておいた方が良さそうだ。


「わ、分かった。……何かあったら、いつでも呼んで」

「ありがとうニャ! 今回はごめんニャ!」

「じゃ、じゃあクレア……」 俺はミミカの視線を背中に刺しながら、クレアに片手を挙げて挨拶した。

「……我が主、また……」 クレアはひらひらと、包帯を巻いた手を振ってくれた。


 俺はクレアに改めて礼を言い、退散した。

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