D-37 太陽神降臨
今週二回目の投稿です。
今後は余裕が出たら週二投稿していきたいと思います。
「太陽神の儀式か……やっぱミラーボール?」
「お願いだからミラーボールから離れて」
太陽神の掲げた腕の先に光が灯る。その光は次第に強く輝き出し、はるか上空に昇っていく。
そして――弾けた。
「っ!!! 権能使用緊急要請!! NO.1承認!! 想起開始!!」
いきなりヘイゼルが権能を使う。
一歩前に出て弾けた光の余波から俺たちを守った。
「ちょっ!! いきなりどうしたんだ?!」
「…………説明は後です。とりあえず帰りましょう」
そう言ってヘイゼルは太陽神を睨む。
そしてすぐにそっぽを向いて帰路についた。
***
エルピスの部屋である204号室に戻り、食料を冷蔵庫に入れた。
ミラーボールで部屋が煌めいている中、テーブルを囲んで座りヘイゼルは権能を使った理由を話し始めた。
「儀式とは太陽神が力を行使して球体を生成及び、上空で破裂されることで聖都内に力を充満させる。この認識で間違いありませんよね?」
「そうだね。太陽神は聖都を満たした力で結界の補強と信仰の徴収をしている」
ほえ〜、儀式ってそういう仕組みなんだ。めっちゃ便利だな。
「……太陽神が行使する力にニヒルが含まれていました」
「まじ?」
「大マジです。咄嗟に権能を使ってしまいましたが、あまり意味はありませんね」
権能を使ったところで一時的に凌げるだけだ。太陽神はニヒルが含まれている力を聖都内充満させている。俺たちは今もその力に包まれている。
「それどころか太陽神に私たちの存在がバレました」
「バレたのは確定なのか?」
「私が権能を行使した瞬間、太陽神がこちらを見てましたね」
おっと、それはバレてるわ。
俺は太陽神の方を見ていなかったからわからなかった。
「ということなので太陽神に会いに行きましょう。色々聞きたいことがありますし」
いい笑顔で言い放った。
話が飛躍しすぎだ。もっと過程を大事にしろ。
「もう私たちの存在に気づかれていますし、こちらから乗り込んだ方が手間が省けます」
「それもそうだな。手土産は何がいいと思う?」
「君たちってぶっ飛んでるね」
聞き捨てならないな。
ぶっ飛んでいるのはヘイゼルであり、俺は極々一般的な人間だ。ヘイゼルの同類扱いはやめてほしい。
「でも太陽神に会いにいくのは難しい。彼はいつも塔に引きこもっているからね。謁見も出来ない」
「なら侵入するか」
「待って、最後まで聞いて」
エルピスが即座に俺の言葉を遮る。
良い方法でもあるのか。なければ侵入だが。
エルピスは一呼吸おいて話し始める。
「二週間後、新しい年を迎える。新年になったら神聖院の神たちに奉納する儀式があるんだ。そこで一番良い奉納ができたら太陽神に会えるよ」
お得情報だな。それなら犯罪に手を染めなくて済みそうだ。
「やらない理由はありませんね。何を奉納するのか決まっているのですか?」
「特に決まってないね。いつもは歌や踊りでたまに絵もあるけど」
歌や踊り、絵か……。
絵の才能は皆無だけど歌や踊りには自信がある。どんなのがいいのだろうか?
「それって大体何組ぐらい奉納するんだ?」
「多くて200組ほどだね」
「多いですね。それほどだと大抵のものは埋もれてしまいますね」
何を奉納するか考える。ヘイゼルも腕を組んで唸っているがいい案は思いついていないようだ。
やはり普通で普遍的な奉納では目立たない。
俺たちの目的は太陽神と会うだけだ。最悪、一番良い奉納ができなくても、注目されれば異世界人という肩書きで太陽神と会えるかもしれないよ。
しかし、そのために奇抜なものじゃないと……
「あ!」
「どうしたの? 良い奉納でも思いついた?」
「ああ! この世界になく、奇抜で注目を集められるものだ!」
「それは何ですか?」
「俺たちでバンドを組もう!!」
***
『言われた通りギターとベースとドラムを送っといたわ。曲の方も救世主が使ってたデータバンクから引っ張ってきたから使ってちょうだい。アンニル団としてもバンドは初の試みよ。しっかりやりなさい』
「任せろ」
リサが権能を使ってくれたおかげで三時間ほどで機材と曲の準備ができた。
さすがリサだ。これで二週間丸々練習につぎ込める。
「これがベースなんだね」
エルピスがまじまじとベースを見る。初めて見るものだから興味があるんだろう。
リサが送ってきたのは三つの小さなキューブだ。
このキューブにそれぞれギター、ベース、ドラムの情報が入っている。
例えば、ギターが入っているキューブを握って念を込めるとギターへと変貌する。ついでに髪型と服までバンド風に変わる高性能だ。
練習が終わればいつでもキューブに戻せるから持ち運びが楽だ。
さすがリサだと言わざるを得ない。
「では私がドラム、ジエンがギターボーカル、エルピスがベースでよろしいですね」
話し合いの末、ポジションが決まった。
俺はギターの経験があるからギターボーカル。
ヘイゼルは胸を激しく揺らしたいからと言ってドラムをすることになった。胸が揺れるさまを作画資料にしたいとか言ってたな。そんな最低な理由以外にもドラム自体に興味はあったらしい。本当かどうかは定かではないがな。
エルピスは余ったベースをすることになった。俺はベースをちょっと触った程度しかないができる限りのことはする。
「では早速送られてきた曲を聞きましょう」
ヘイゼルはそう言ってコスマを操作する。いないからといって、サンの曲を無断で使用するのはいかがなものなのか。
著作権侵害とか言われたらどうしよう……サンにレスバで勝てるだろうか……。
そんなことを考えていたら曲が始まった。
イントロは軽快なリズム、Aメロ、Bメロともに軽快なままサビで盛り上がる。2番も軽快なまま進み、ラスサビ前では落とす。そして、ラスサビは転調する。
ふむ、曲作りに関しては無知だが楽しい曲だ。
「良い曲だね!」
「そうですね。一通り聞きましたが、歌えそうですか?」
「任せろ」
俺は立ち上がり、マイクを持ってさっきの曲を歌いだす。ミラーボールも相まって気分は上々、気持ちよく歌える。
「~~!!…………どうだ?」
「45点です」
「うーん……これじゃ一位は取れないね」
なん……だと……?
俺の歌声で満足しないとか何様なんだろうか。
「カラオケで90後半しか叩き出さない俺の歌声では不満か?」
「カラオケが何なのかわからないけど凄い自信だね」
「カラオケ基準でしたらそれこそ100点でもおかしくはありません」
なら何がダメなんだ?
俺としても結構いいラインまで来ているはずだが。
「これは太陽神へ奉納するためのものです。今のジエンの歌い方は自分だけ楽しむものでした。それではダメなんです。太陽神さえもリズムに乗るほどフロアを湧きあがらせなければなりません」
「そそ、太陽神を満足させないといけないからね」
今の俺の歌い方は自己満足だったのか。
くっ! 普段一人で歌ってた弊害がここで出てくるとは……!
「それでも、ボーカルはジエンが最適です。本番まで頑張って練習しましょう」
***
「ダメですね。なんかスカしている感があります」
「なら、この歌い方は!」
「ヤケクソになってるね」
「ならこう……!」
「アレンジ強すぎて共感性羞恥が起こりました」
「あああああああ!!!!」
「くっ! まだです! まだ足りません!」
「ヘイゼル……お前、そんな本気に」
「これではまだ胸の揺れが足りません! もっと激しく、もっと大胆に、もっとぼいんぼいん揺らさなくては!」
「もうブラ外せよ」
「練習も大事だけど獣討伐も大事だね」
「そうだな。……幻想魔法――グングニル!!」
「これが終わったらヘイゼルと一緒に人間たちの手伝いに行かないとね!」
「〜〜……どうだ? 俺たちの演奏は?」
『んー、アイドルとして言わせてもらうと……まだまだだね』
「そうか……」
『でも楽しかったよ!!』
「! そうか!!」
***
太陽神に奉納する前日。そして、新年まで後――
「3!」
「2!」
「い、1……?」
「「ハッピーニューイヤー!!」」
「は、はっぴー、にゅーいやー?」
偶然にもこの世界で新年を迎えられた。
世界ごとに暦は違うからその気になれば毎日新年だ。逆に言えば一年を超えても新年を迎えられないこともある。
俺にとって最後の年越しは十五年ほど前だ。
「異世界だと新年って騒ぐんだね。アゼンピアでは粛々と迎えるから新鮮!」
「本当ならもう少し騒ぎたいですが、明日は本番です。早く寝ましょう」
「だな」
白い空間、狐のお面をつけた青年が座っている。
いつもの光景だ。
「どうしてまたここに呼んだんだ?」
「ここはお前の脳内だ。俺が呼んだんじゃなく、お前が来ただけだ」
ということは無意識にここに来てしまったのか。
俺がここを望んだのか、はたまたこの場所に呼ばれたのか。
「それにしても太陽神と会うのか。これは面白いことになるな」
「そうなのか?」
「お前の失った記憶を全て見たからな」
仮面の男はあっけらかんと言う。
え? こいつは、なんて言った?
「そんなに驚くことではない。ここはお前の脳内なんだ。サンに封じられた記憶ぐらい読める」
「お、教えてくれないか?」
「教えるわけないだろう。俺はお前の敵なんだから」
む、ガードが硬いな。……プリンで釣れないだろうか。
「太陽神に会うときに気をつけてほしいことがある。どんなことがあっても彼を信じてやれ」
柔らかい声でそう言った。
いつもはもっと刺々しい言い方をするんだが珍しいな。
「どんな意味があるんだ?」
「お前の失った記憶に真実がある」
また失った記憶かよ。ちょっとぐらい教えてくれてもいいだろ。
やはり秘匿は悪い文化だ。全てをさらけ出せよ!
「てか、ここの出来事は起きたら忘れるし、今忠告されても意味ないんじゃ……?」
「それもそうだな。さっきのことは忘れてくれ」
「おい」




