D-31 初配信
「生配信?」
アレルハライド救世を達成した翌日、俺は配信ルームに呼び出されていた。
「そうよ。新メンバー加入時には生配信することが伝統なのよ」
「ちなみに〜、この伝統は昨日決まったんだよね~」
「浅すぎる伝統だな」
ヘイゼルとメイリアが生配信の準備を進めている。
慣れているのか、手際がいい。
そもそも配信自体、メイリアの加入後に始まったらしい。
配信系はメイリアとヘイゼルが主体で進められている。
すると、後ろで座っていたフェリールが喋る。
「新メンバー加入したからって、俺まで必要か?」
「いっぱい居た方が楽しいでしょ?」
「リサに言われたら黙るしかねぇな」
なるほど、フェリールはリサに弱いと。
「みんなー! 準備出来たよー!」
「では、定位置についてください」
ヘイゼルたちに言われて、定位置につく。
いよいよ始まるみたいだ。
***
「みんな〜おはよー、メイリアだよ!」
「おはようございます。ヘイゼルです」
『おはよー』
『うっ、メイリアちゃんが眩しい、、』
『ヘイゼル様、進捗はどうです?』
『イグネリアちゃんこっち向いてー!』
『フェーちゃんかっこいい!』
コメントがどんどん流れていく。
やはり、アンニル団は人気なんだな。
「今日は告知していた通り、新メンバーのお披露目だよー!」
『おお!!』
『楽しみ!!』
『男?女?』
メイリアに手招きされて、カメラの前に行く。
自己紹介だな。
「アンニル団NO.8、ジエン。神だ」
『神?!www』
『やばい感じの人?』
『ついに神も生配信の時代か』
「何嘘言ってるの!?」
「す、すまん。ちょっと見栄を張っただけなんだ……」
『見栄=神』
『ちょっと←???』
『やっぱやばい感じの人か』
メイリアに怒られてしまったな。
配信なんだし少しぐらいいいだろ。
「本当はただの旅人だ。サン――NO.3に記憶を封じられて入団した」
『サンって呼ぶんだな』
『記憶を封じられて???』
『まーたNO.3』
視聴者にとってもサンはトラブルメーカーだと思われているんだな。
サンの普段の行いが気になってくる。
アーカイブでも漁ってみるか。
「とりあえず、質問コーナーに行くよ! じゃんじゃん質問してね!」
次は質問コーナーか。
答えられるものならいいんだかな……
『アンニル団との出会いは?』
早速質問だ。
アンニル団との出会いか……
「リサとシュウゴが俺を全裸にした挙句、ベッドに寝かしたのが始まり」
「大体合ってるわね」
『草』
『合ってんのかよ』
『えっちな話?』
「付け足すなら、シュウゴがジエンの体を嗅ぎまくってたことね。『先輩の匂いがする!』ってずっと嗅いでたわ」
「待って初耳なんだけど」
『まーたNO.2』
『もう二人一緒の部屋に閉じ込めろよ』
『やっぱえっちな話でしょ』
そんな変態的なことをしていたとは……
シュウゴには右ストレートに加えてアッパーもしよう。
「は、はいそこまで〜! 次の質問に行ってね」
なんか無理矢理切り上げたな。
確かにこれは良くない流れだったな。
俺も全裸つながりでフルチンになったこと話そうとしてたし、賢明な判断だな。
『アンニル団はどう思ってる?』
メイリアにカフェでこれと似たような質問を言われたな。
あれから世界を救世したし、考えも変わってる。
「想像の斜め上しか行かない奇天烈軍団」
『デスヨネー』
『やっぱそう思うよな』
視聴者も同じことを思ってたみたいだな。
「言っておくが、お前も想像の斜め上しか行かない奴だからな」
「そんなわけない」
「……不当に拘束されたって、全裸にはならないんだよ」
「フルチンぐらいなるだろ」
結局フルチンの話になったな。
『ならねぇよ』
『あれ?ジエンって変人?』
『初っ端神って自称した時点で変人』
「待ってくれ。一部の絵画は全裸が描かれている。つまり全裸――フルチンには芸術性がある」
「んなわけねぇだろ」
『やっぱ変人』
『アンニル団の入団条件に変人の項目あるの?』
***
「質問コーナーはここまでです。次はホラーゲームを行います。ゲームはこちら、3Dです。ホラゲーですので、ジエン以外は極力喋らないようにします」
『楽しみ』
『ジエンはホラゲー得意?』
『アンニル団にホラゲーやらせてもおもろくないから期待はしてない』
「面白くないのか?」
「あー……そこらのホラゲーより恐怖感じることが日常だから、ホラゲーは無反応でいける」
「そんな日常やだな」
コントローラーを持ち、ゲームを始める。
「不気味な洞窟だな。ここを探索するのか?」
『そうそう』
『コントローラーの使い方はわかる?』
「俺を舐めるな。横でヘイゼルが教えてくれる」
「任せてください」
洞窟を進む。
すると、鉄格子で出来た牢屋についた。
「うっわ……虫が集ってる……」
『それよりも言うことあるだろ』
『首吊り幽霊がいるだろちゃんと見ろ』
『虫嫌い?』
「虫は得意ではないな。それに首吊り幽霊ぐらい普通にいるだろ。ホラゲーなんだから」
牢屋の中には首吊り幽霊とその足元に集っている虫がいる。
とりあえず前に進むか。
そう思って振り返った。
「…………」
『いきなり』
『ようやく始まったか』
振り返るとたくさん幽霊が道をゆっくりと歩いている。
進行方向と同じだ。
「この幽霊は殴れない幽霊か?」
『そうに決まってるだろ』
『幽霊に触れると思ってんのか?』
「頑張れば触れる」
『ここにきて根性論』
『もしかして脳筋?』
「まぁ大体のことは根性でどうにかなる。どうにならなかったら俺の根性を認めなかった世界が悪い」
とりあえず進まないとな。
ちゃちゃっとクリアしていいとこ見せないと。
***
「ゲームクリアだな。やっぱり殴れない幽霊は面倒臭い」
『ちゃんとビビってて面白かった』
『殴れる幽霊に会ったことあるんだ』
三時間程度でエンディングだ。
さすがに肩が凝っちまった。
「ということでジエンのお披露目配信は終わりだよ〜」
「では皆さん、またお会いしましょう」
二人はそう言って終了ボタンを押した。
「終わったわね。楽しかったかしら?」
「まぁ、な」
配信することなんて初めてだったけど、楽しかったな。
「そうだ、俺からも一つ質問。アンニル団はいつまで活動を続けるんだ?」
配信を行うのはアンニル団を知ってもらうためだと聞いた。
なら、配信が終わるのはいつか?
その答えはアンニル団としての活動が終わるときだろう。
「八柱目の王を討伐して残党を根絶したら活動を終えるわ」
「……だが、そう簡単には終われないだろう。アンニル団は諸世界の要で異世界渡航技術を占領している。アンニル団が活動を終えたらそれらはどうなるんだ?」
アンニル団は一組織でありながら、強大な力を持っている。
そう簡単には終わらないだろう。
「それについても問題ないわ。アンニル団の知識や技術などは全て公表する。それに、アンニル団は世界同士を繋げたただけで諸世界の要ではないの。むしろ、アンニル団がいなくなれば世界間の繋がりは増すわ」
「色々掻き回しておいて最後はポイって……それは少し無責任ではないか? 世界を渡る術を公表したら侵略される世界や組織絡みでの悪事の助長になるのでは?」
「そうなる可能性はあるわ。でも、アンニル団の目的はニヒルの根絶なの。それ以外は絶対的な中立。世界が侵略されようが滅ぼうが栄えようが……それは彼らが決めた選択。あたしたちが水を差すものでもないの」
…………
アンニル団は正義の側面を持った組織だと思ってたが、認識を改めないとな。
俺が黙っていると、フェリールが言葉を口にする。
「リサはああ言ってるが、そこまで極悪なことにはならない。同盟世界はアレルハライドを含めて751世界もある。そんなにあると、互いの目や評判を意識せざるを得ない。それに、アンニル団が主体となって世界間条約も制定した。最低限の責任は果たしている」
「そうなのか」
普段の姿だけを見ているとわからないが、アンニル団はアンニル団独自の境界線を引いているわけだな。
「重たい話はここまでにしましょう。ジエンがアレルハライドから転送したヴァイオレットベアーを捌かないといけないですしね」
「お? てことはニヒルは入ってなかったんだな」
「そうね、久しぶりに熊肉を楽しむわよ」
配信ルームから出てリビングに向かう。
これからアンニル団で過ごしていく上での身の振り方も考えていかないとな。
「あ、そうだ。もしアンニル団が行うべき全ての事を済ませたら、みんなはどうするんだ?」
俺たちは不老不死だから終わりがない。
その余生をどう過ごすのか気になる。
「あたしは今まで通りに過ごすわ」
「そうだな。俺も冒険を続けていく」
「あーしはとりま、やりたいことリストの消化から始めるね〜」
「私はカフェ巡りかな。まだ行けてないところがたくさんあるし」
「私も皆さんと同じでやりたいことをやっていきます」
「そうか……」
余生について結構考えているんだな。
「俺もやりたいこと見つけないとな……」
「そんな焦らなくてもいいわよ。これから一緒に探せばいいだけだしね」
「……そうだな」




