D-3 驚きのデート
目が覚め、ベットから起きる。
昨日は波乱万丈の出会いを終えた後、リサの案内のもと基地内の娯楽施設を見て回った。スキージャンプ場から映画館、遊園地まで完備してあった。だが、これらはごく一部らしくまだまだ娯楽施設があるらしい。こんなにあってちゃんと使えているのかと聞いてみたら大体はリサの恩師が利用しているらしい。しかも一日で全部回ることもあるそうだ。普通にバケモン。
それはそうとして今日はメイリアと出かける日だ。メイリアは準備があるらしく先に行っている。場所はメイリアの出身世界であるザナティスで一番栄えているガラドという都市だ。
この基地内から別の世界にどうやって行くかというと、部屋の扉に備え付けられているタッチパネルを操作すればいいらしい。そうすれば、アンニル団と提携している世界と繋がるみたいだ。また、この方法を使えば一般人でも簡単に異世界に行けるため、異世界旅行も流行っているとか。あまりにも技術力が高すぎだと思う。
リサが作ってくれた朝食を食べてタッチパネルを操作し、扉を開く。目の前に広がったのはビルの外壁だ。繋がった場所はとあるビルの裏口だ。扉をくぐって集合場所に向かう。ここから集合場所に行くには公共交通機関を利用しなければいけないため、駅に向かう。
裏道を抜けて大通りに出ると車やバイクが走っている。屋外広告にはホログラムが使用されていて、たまに飛び出てくる。また、行き交う人々は電子機器を身につけていて、形状は薄い板状のものもあれば腕時計のように腕に巻くものまである。どうやら、この世界の文明はかなり発展しているらしい。
駅に着き、メイリアから渡されたカードを改札にかざす。ホームに出ると様々な大きさのリニアモーターカーがある。それぞれ四人乗り、八人乗り、荷物専用だ。他にも駅弁屋やケーキ屋、コンビニがある。俺は電子掲示板のAIに従い四人乗りの車両に乗った。扉が閉まり車両が出発する。
ここから目的の駅まで5分ほどかかる。その間にリサから貰った電子機器を弄る。この電子機器の名前はCSPでコスマと呼ばれている。先ほどの人たちが使っていたやつと同じだ。俺のは腕時計型らしく左腕に巻いている。コスマはいろいろな世界で使われており、今後必須になるらしい。
駅から出て集合場所の広場にある椅子に座る。約束した時間の10分前に着いた。
そういえば、この世界でのアンニル団は位置付けは、ヒーロー組織のようなものあり、人気があるらしい。下手に目立つ行動をするよりメイリアが来るまでじっと待ったほうがいいだろう。
「おーい!ジエンこっちだ!」
男の声で呼ばれそっちを向く。そこには高身長のピンク髪の成人男性が俺に手を振っている。とりあえず手を振り返す。すると、男は俺の目の前までくる。
「お待たせ!そこのカフェ予約しているから早速だけど行こうぜ」
男に手を引かれカフェに入る。このカフェはテーブルごとに透明な障壁があり会話が隣に聞こえないようになっている。
メニューにエナドリがないためコーヒーを注文する。目の前に座った男は紅茶を注文した。
「それで?なんでメイリアはそんな格好をしてるんだ?」
「……!気づいてたのか!?」
「じゃなきゃ見ず知らずの奴になんてついてかないぞ」
何でもない風を装って目の前の男の正体を見破る。変装を見破るのは得意だが目の前に来るまで気づかなかった。メイリアも変装に自信があったのかあからさまに悔しがっている。
このタイミングで紅茶とコーヒーが届く。速いな。
「それで、なんでそんな格好なんだ?ばれたくないなら認識を阻害すればいいだろ?」
「性転換は最強の変装だからな。あと認識阻害は犯罪だぜ」
「そんな簡単に性転換できるのか?」
「社長印の安心安全性転換技術だぜ。ほんとあの人はどこに力をいれているんだかわかんないな」
メイリアはため息をつき紅茶を飲む。でたよあの人。記憶操作に世界の救世、性転換技術までやりたい放題なんだな。
メイリアはカップから口を離し、本題に入った。
「それでアンニル団の第一印象はどんな感じだ?」
「一言でいうなら奇抜」
全裸事件から悪魔属性のエナドリ、権能に娯楽施設の多さ。どれをとっても他の追随を許さないような個性を解き放っている。まだ団員のほとんどに会ってないのにアンニル団がどういうものかをわからされた。
「あの社長が作った組織だから仕方ないさ。でも安心してくれ。あんなのはほんのごく一部に過ぎない。いずれ見せてやるよ。ホントのアンニル団をな……!」
「余計不安で胸がいっぱいになったんだけど」
変なスイッチが入りメイリアの目からハイライトが消える。どうやらメイリアはこの話題に関して強い感情を抱いているようだ。イケメンの真顔って迫力あるな。
「ごめんごめん!不安にさせるつもりはなかったんだ。ただアンニル団での日常を思い出してな。ちょっと我を忘れてしまった」
「そ、そんなところにいて、お前は大丈夫なのか……?」
「あぁ、大丈夫だ。アンニル団での生活は楽しいし、俺を救ってくれたことも事実。それに関しては感謝してもしきれないし、己の生涯を捧げると誓誓ったんだ。それはそうとして負担がでかいだけなんだ」
メイリアは昔を懐かしむような目をした後、乾いた笑いを出していた。
「アンニル団での生活ってそんなに大変なのか?」
「真面目な話をするならアンニル団の仕事内容は多種多様だ。例を挙げるなら、同盟各世界での文明レベルの調整、各世界での輸出入の管理、各世界のニヒルの排除、新世界の開拓、多世界間の情報伝達機能の整備などなどだ。だけどそれらは無理のない範囲でやるし、基本的に一人ではやらず二人以上で仕事をするから苦ではないな。むしろ楽しいって思うこともあるぜ」
「それならどこが負担なんだ?」
「他の団員との会話」
「会話」
「他の団員の行動」
「行動」
思わずオウム返ししてしまうほどに想像の斜め上をいった。
「いや!ほんっっっっとに大変なんだ!団員番号順にボケ、変態、ボケ、ボケ、ツッコミ、俺、教祖だから圧倒的ツッコミ不足。基本的にボケが飽和してる。スイカで会話のキャッチボールしてて投げ出されたスイカが空中で切られる感じだ」
「お、おう」
熱く語るメイリアに俺は少し引いてしまった。それに例えの意味がわからない上、団員に変態と教祖が混じるとか何事だ。だが、この言葉でメイリアの苦労が垣間見えた気がする。
「すまん、熱くなってしまった。あんなことを言ってしまったがアンニル団はとてもいいところだ。さっき言った仕事内容は寸分の狂いもなく全うするしやるときはやるやつらなんだ。だから逆説的にやらないときは徹底的にふざけたおすだけなんだ」
「……しごできでプライベートだと愉快な人たちの集まりってことなんだな」
「美化するとそうなるな」
メイリアってたまに辛辣になるな。
話が一区切りついたところで早めの昼食をとることにした。ここのカフェははちみつトーストが人気らしいのでそれを頼むことにする。
メイリアは朝食を摂っていなかったらしいのではちみつトーストを二つにキノコグラタン、デザートにミニパンケーキを頼んでいる。
「……アイドルがそんな食べて大丈夫なのか?」
「ん?あぁ、その分トレーニングするから大丈夫だ!」
かなりストイックな答えが返ってきた。俺はてっきり権能やすげー技術に頼っているものだと思った。怠惰な思考の自分が少し恥ずかしくなる。
メイリアはカップを持ち紅茶を一口飲む。
「そもそも俺らは不老不死だからそこまで体系維持に気を配る必要もないんだけどな」
ここで衝撃の事実が明かされる。メイリアはどうやら不老不死らしい。
「俺らってことはアンニル団全員不老不死なのか?」
「まぁ、アンニル団の入団条件が不老不死だからそうだな」
「ん?でも、俺不老不死じゃないぞ?」
「?不老不死だろ?」
「え?」
「え?」
俺らの間を沈黙が支配する。メイリアは胡乱な目をしている。
どのくらいたったのだろう。30秒だと思えば5分ほどたったとも思える。そのときメイリアの口が開く。
「なるほど………ジエンは自分のことを何もわからないおっちょこちょいさんなんだな。それはそうとして本当に気づかなかったのか?」
「言われてみれば確かに……50年も外見が全く変わらないなとは思ってたんだ」
「いや、疑問とかは感じなかったのか?」
「そういうもんなのかなって」
「今度は自分の常識を疑ってくれ」
やばい、メイリアから非常識者という烙印を押された気がする。ていうか記憶を失っている奴に常識を疑えって、俺はこれから何を信じればいいんだろう。
「そもそも、どれもこれもあれもそれも全部俺の記憶を弄った奴が悪いんだ。じゃなきゃ俺が常識知らずのおかしい奴みたいになるじゃないか」
「安心してくれジエンは今のままでもおかしいぞ」
「おかしくないからな?」
「はいはい、みんなそう言うんだよね。認めたら楽だよ?」
やばい取り締まりみたいになってきている。ここは一旦冷静になって反論しよう。
「社長といえば今のところの彼の印象ってどんな感じだ?」
話題を変えられてしまった。これじゃ反論ができなくなってしまう。でもまぁ社長の印象か…こういうときにぴったりの言葉があるな。
「諸悪の根源」
「惜しいな。正しくは震源地だ」
「訂正する必要あるのか?」
メイリアから意味の解らない訂正が付け加えられる。ていうかメイリアも社長が問題児って言っているな。やっぱどういう人物なのか想像つかねぇ。
このタイミングで注文した物が届く。はちみつトーストを口に運ぶ。
「うっま」
結論から言うとはちみつトーストは絶品だ。トーストにはちみつがかかっているのにべちょべちょしておらずサクサクとしていてトーストとしての風味が失われていない。また、濃厚なはちみつの香りが口の中に広がる。そしてはちみつの上に乗っているバターがいいアクセントを生む。
なんかここに来てからうまいものしか食べてないな。リサが作った朝食も美味かったし。
俺が食べ終わるころにはメイリアははちみつトーストとグラタンを食べ終わっておりパンケーキに手をつけていた。いくら何でも食べるの早すぎない?吸い込んだの?
「ところでジエンは社長のことなんて呼ぶんだ?今のままだと不便だろ?」
「確かにそうだな……その人のナンバーはいくつなんだ?」
「3だな」
「んじゃサンで」
「……」
「おい、なんだその目は」
メイリアはジト……とした目で俺を見てくる。
「俺はセンスないんだから仕方ないだろ。俺の思うがままに名付けたらエターナルブラッティローズサクリファイス男爵みたいなクソださ名付けになるぞ。いいのか」
「サンで決定だな。ツッコミどころ満載の名づけは置いといてセンスがないことは自覚してるんだな」
「あぁ以前、センスがないから一生名づけすんなって言われたことがある」
「英断だな。俺はその人に名誉賞をあげたい」
ひどい言われようだ。だが自覚があるから問題ないな。シンプルイズベスト、誰に教えられたのかは憶えてないがこの言葉を知って以来、俺は名前を付けるときはその特徴からとるようにしている。
その後は昨日できなかったアルバムの続きを見たり、メイリアが今まで行った世界についての話を聞いた。
「たくさん話したしそろそろ行くか!」
「どこに行くんだ?」
「デートの定番スポット、水族館だ!」
そういえばこれデートだったな。水族館は好きなほうなのでワクワクしながら立とうとしたが――
「あ、そうそう、ちなみにジエンを不老不死にしたのも社長だぞ」
「もっと詳しく」
メイリアの言葉を聞き座りなおした。
メイリアはアンニル団早食い大会優勝常連です。




