D-29 三人の勇者
魔王との戦いも様になってきたな。
最初はグングニルを打ち込んでも効かなかったが、今じゃ貫ける。
ただ、貫いても再生するんだがな。
「幻想魔法――レーヴァテイン!」
「……やっぱ双剣ってカッコいいな」
「今それ言うのか!?」
だってカッコいいもんは仕方ないだろ。
あぁー、俺も双剣使ってみたいなぁ。
でも、この剣以外を握るつもりはないし……。
この剣、二つにできないかな……
「くだらないことを考えてないで攻撃を続けるぞ」
「だな」
魔王に攻撃し続けた結果、再生能力が格段に落ちている。
それに、ビームも初撃に比べたら威力が低い。確実に削れている。
ただ、戦闘が長引けば長引くほどこちら側にも疲労が溜まる。
俺とエレスはまだ大丈夫だが、最初っから戦いっぱなしのアランたちは息が切れ始めている。
そろそろ、決着をつけたいが後一押しが足りない。
「はぁッ!!」
俺とエレスの連撃で巨大な目玉を斬る。
「幻想魔法――グングニル!」
そして、グングニルが目玉を貫き、レーヴァテインが翼と公転する目玉を焼き払う。
すると、どこからともなく飛んできた剣が目玉に突き刺さる。
そして――
「せいっやぁ!」
シケンが目玉へ突っ込み、突き刺さった剣を横に薙ぎ払う。
目玉には俺とエレスの連撃で加えた斬撃痕の他に、シケンがたった今加えた斬撃痕が刻まれた。
これではしばらく動くこともできないだろう。
「俺も一緒に戦うぞ!」
シケンは俺たちの前に降り立ち、そう宣言する。
「………………はぁ、わかった……」
「偉いわエレス。よく飲み込んだわね」
「兄貴は頑固だから言ったところで変わらない」
エレスとしては隅で大人しくしてほしいのだろう。
シケンが聞き入れるとは思ってないんだろうな。
それにしても、シケンもさっきに比べてキリッとしているな。
まさか、エレスと同じで新しい力が芽生えたのか……?
『その通りよ』
「だから心読むなって、リサ? なんで通信越し?」
いつも通りリサが心を読んだと思ったら、まさかの通信越しで来た。
生身の体があるんだからそっちで来ればいいのに。
『こっちの方があたしとしてはスムーズに事が運ぶのよ。ちゃんとサポートするから安心してちょうだい』
「それなら、いいが……シケンがどうしたんだ?」
『新しい力を手に入れたのよ。幻想魔法と聖剣の複合体、その名も――』
「幻想聖剣――勝利の剣!」
勝利の剣……これも北欧神話に登場してた剣だな。
確か、全自動で敵を斬る剣だっけ……
「そんなのありか?」
エレスが言う。
「ありだからこうやって幻想聖剣が使えるんだろ?」
シケンがあっけらかんと答える。
エレスが頭を抱えている。
『もしかしたら、救世主は幻想聖剣の仕込みをした可能性もあるわね』
「まじか、俺も幻想聖剣使えるか試してみよう」
とりあえずグングニルを顕現して剣とくっつける。
そして、グングニルと剣を目一杯押し込む。
「……無理だな」
『残念ね。どうやら幻想聖剣はシケンの特権ね』
すると、魔王が動き出す。
俺たちが話している間に再生が終わっていた。
……悠長に話さずに追撃しておけばよかったな。
『魔王が動き出したわね。調べた結果、弱点は幻想魔法と聖剣よ。そして、あの王冠よ』
「王冠?」
『ほらあれ、目玉の頂点にある』
リサが指差した方向を見る。確かに王冠があるな。
でも、あれは人間が被るサイズだ。
それに、どっかで見たような……
「あれは……私の国の王冠……!」
「あぁー! 確かにアランのお父さんが被ってたやつだ!」
それだ! 初めてアランに会った時に、アランが被ってたやつだ。
「でも、どうしてそれがここにあるのかしら?」
『この国の名前が奪われたからね。その名前を元にしたんだと思うわ』
「え……?」
まさか、あれがこの国の名前で作った王冠なのか。だから、同じやつなんだ。
「国の、名前……なんだっ、け?」
「……国王である私も覚えていない……」
『アランが魔王に捕まったときに苗字を奪われたのよ。その苗字が国名だったから必然と国の名前も奪われたって寸法ね』
思い返してみればアランの苗字を聞いた覚えがない。
「なら、アランの苗字も取り戻すためにも、さっさと倒さないとな!」
シケンはそう言って、王冠目掛けて剣を投げる。
勝利の剣はニヒルの攻撃をかわし、王冠に刺さる。
――直前、弾かれる。
王冠の周りに障壁があるように見えたな。
『ビームが来るわ』
リサがそう言った瞬間――ビームが放たれる。
「幻想魔法――グングニル! でもって……」
「幻想魔法――レーヴァテイン!」
グングニルでビームの威力を落として、エレスがレーヴァテインで焼き払う。
コンビネーション抜群だな!
「兄貴! 勝手な行動するな!」
「はは、悪い悪い」
「絶対思ってない……」
シケンは笑いながら謝ってる。反省の色が微塵もない。
「とりあえず、私たち四人は地上で応戦しつつ、勇者三人が王冠を狙うでいいかい?」
「我は?」
「WJDDFは臨機応変に戦ってくれ」
「我だけ雑」
「氷の法〈ニブルヘイム〉」
「時空間固定!」
シヴァニアとイライザが魔法で足場を作る。
俺たち三人はその足場を使って空中戦を行う。
『エレス、右から魔王の攻撃』
「聖剣抜刀!」
公転する目玉がエレスに突撃する。
それをエレスは聖剣で真っ二つにした。
『ダスティン、シヴァニアの後方から魔王の攻撃』
「わかっ、た」
シヴァニアの後方に黒いもやが現れる。
そして、もやから無数の針が飛んでいく。
ダスティンがシヴァニアを抱えて、盾で攻撃を防ぐ。
「おい! ジエン! 王冠を叩くぞ!」
エレスに言われる。王冠まで後もう少しだ。
危機を感じたのか魔王は公転する目玉を全て俺たちへ視線を向ける。
そして、紫色に輝き――
「幻想魔法――グレイプニル!」
WJDDFが目玉を縄で拘束し、視線を逸らす。
ビームは全て的外れの方向に放たれた。
「早く行け! 勇者たちよ!」
WJDDFが道を切り開き、俺たちに託す。
王冠と俺の間に障害物はない。
「幻想魔法――グングニル・ステラ! 聖剣抜刀!」
十八本のグングニルと共に王冠へ突っ込む。
だが、障壁によって阻まれる。
くっそ……! ヒビは入っているがめっちゃ硬いな……!
「幻想魔法――レーヴァテイン!」
エレスの炎がグングニルと俺の聖剣に纏わりつく。
「聖剣抜刀!!」
エレスが俺と一緒に障壁を叩く。
障壁はやがてひび割れるように粉々になった。
「シケン!」
「兄貴!」
「ああ!」
王冠の上空――シケンは剣を掲げる。
「幻想聖剣――勝利の剣!!!」
シケンは剣を振り下ろす。
王冠は真っ二つになった。
王冠を斬られた魔王は灰になって静かに散った。
***
「上手くいったみたいだな」
囮になっていたフェリールたちが部屋に入ってくる。
『倒せたのね。よかったわ』
ベオークが言った。
「後で戦いの映像を私に送ってください」
「わかったわ」
リサとヘイゼルが密談しているのを尻目に、俺たちは魔王の灰が積もっている場所にいる。
魔王が灰になるときにキラッと輝くものが見えたからだ。
「ん〜、この辺に……あった」
見つけたのはカードだ。
なんかメモリーズフラグメントに似ているな。
「お、見つけたのか……って、何で俺が写ってるんだ?!」
俺が見つけたカードにはエレスが写っていた。
しかも、レーヴァテインと聖剣の二刀流で戦っている姿だ。
それに、他にもカードが散らばっている。
扉の方にいたリサたちもこちらに集まってくる。
「エレス以外にも俺、シヴァニア、ダスティン、イライザ、アラン、WJDDF、それにベオークのカードまであるぞ」
計八枚のカードが散らばっていた。
それぞれ、戦っている姿が写っている。
各々自分のカードを手に取り、眺めている。
「ジエン……いつの間に盗撮なんか……」
「してない。てか、盗撮なんてどこで知ったんだ?」
「イグネリアから聞いた」
「あーしが教えた」
余計なことを……
「……ジエン、これに力を込めてみてちょうだい」
「何で?」
「いいからやってみてちょうだい」
リサからそう言われる。
エレスのカードに力を込めてみる。
すると、カードが光る。
そして、光はカードから離れて人の形を作っていく。
光は次第にエレスになっていった。
「何で!?」
エレスが大声をあげる。
正直俺も驚いている。
どういうことだ?
「なんか命じてみてちょうだい」
リサから言われる。リサはなんか知ってそうだな。
とりあえず命じてみるか。
そうだな……あれでいこう。
「コマネチしろ」
エレス(偽者)はコマネチする。
面白いなこれ。
「おい! 何変な格好させてんだ!!」
「次はぶりっこポーズ」
エレス(偽者)がぶりっこポーズをする。
「次はお色気お姉さんのポーズ」
今度は胸元を強調して前屈みのポーズをとる。
抽象的な命令でも従ってくれるんだな。
「じゃあ次は……」
「もう……やめてくれ……」
エレスが俺に懇願した。
さすがにこれ以上は無理そうだな。
エレスの尊厳的に。
「これはあれだわ。ジエンが使える召喚魔法みたいなものよ」
「召喚魔法……」
「試しに召喚したエレスにレーヴァテインを使わせてみてちょうだい」
リサにそう言われ、レーヴァテインを使うように命じる。
すると、エレス(偽者)は炎の剣を取り出し、薙ぎ払った。
「レーヴァテインが……使えるなんて」
エレス(偽物)はレーヴァテインを使うと消えた。
これはあれだな、クールダウンだな。
連続使用は難しい。
「もしかしたら、別世界でもこれ使えるかもしれないわね。要調査だわ」
「なるほどな。戦力アップって考えたらいいのか。それよりもこのカードどうする? 俺としては戦力として欲しいが、嫌ならこの場で燃やす」
さすがに、自分の姿が写ったカードを人にあげるのは恥ずかしい。
それに加え、偽物とはいえ自分と同じ姿形の存在が俺の命令に忠実になってしまう。
だが、その考えは杞憂だった。
みんな心よくカードを譲ってくれた。ありがたい。
「なら、このカードに名前を付けないといけませんね。メモリーズフラグメントとは違うようですし」
みんなの視線が俺に集まる。
ここはちゃんとしないと。
仲間……旅路……写真……フォト……
「旅路フォトフォトカード」
「コネクテッドボンドでいきましょう」
「いいわね。コネクテッドボンド」
「さすがヘイゼル」
「天才だね」
あれ? 旅路フォトフォトカードが無視された?
ま、まぁ、ヘイゼルのやつもカッコいいから問題ないな……!
「さてと、私たちはそろそろ帰らないとね」
「確かに、陛下には公務がありますしね」
「我も城で羽を休ませたい」
『私は地下世界の観光でもしようかしら』
アレルハライド組が帰り支度をしている。
そこでちょっと聞きたいことがある。
「シケンはどうするんだ? 生活するのは難しくないか?」
シケンは真実がどうであれ、裏切り勇者として呼ばれている。
まともに生活することさえ、難しそうだ。
「まぁ、何とかやってみるさ。とりあえず家には戻らないとな」
「なら、これを持っていってちょうだい」
リサはそう言うと、アレルハライド組八人にコスマを渡す。
「それはコスマって言うの。色々と便利だからイグネリアから使い方を教えてもらってちょうだい」
「あーしが手取り足取り教えちゃう!」
コスマを渡して良いのかと思ったが、この世界もアンニル団と提携するらしい。
そのためにイグネリアを派遣して事を進めるみたいだ。
俺はこの辺りのことをよくわかっていない。
とりあえず、みんなとはいつでも連絡が取れるようになったことはわかった。
突然、強い光を感じて、その方向に目を向ける。
「わぁ……!」
朝日が昇る。
魔王との戦いで壁は崩れているから、俺たちは朝日をもろに浴びた。
「なぁ、みんなで写真撮らないか?」
「いいわね」
「賛成だ」
俺の提案にみんなが乗ってくれた。
三脚を用意して、俺たちは朝日をバックにカメラに視線を向ける。
「撮るぞ、3、2、1……はいチーズ!」
みんな笑顔の写真を撮る。
現像した写真をみんなに配る。
「そういえば、アランは苗字を取り戻したのか?」
「あぁ、もちろんだよ」
アランは一呼吸おいて言葉を紡ぐ。
「私はアラン・シゲルフェオ、シゲルフェオ王国の国王だよ」
アランの目は朝日を反射してキラキラ輝いていた。
「ようやく思い出せた! シゲルフェオ王国だ!」
「ねぇ、不思議な感じよね」
「そう、だね。スッキリ、した」
「わたしも。喉に刺さった小骨が取れた気分」
シケンたちも思い出せたみたいだな。
「さて、私たちもアンニル団に帰るわよ」
リサの声が聞こえる。
「そろそろお別れだな」
エレスたちの方を向いて言う。
「……頑張れよ、ジエン」
エレスが俺の目を見て言う。
「……エレスも、頑張れよ」
俺たちはそうして、アレルハライドを後にした。




