↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アポカリプスロード:Extend  作者: 中村 りゅうや
第一章 マントルロード
28/40

D-28 救援スペシャル

「WJDDF!?」


 魔王に吹っ飛ばされた俺を受け止めたのは、まさかのWJDDFだった。

 WJDDFは前に会ったときの人型ではなく、ちゃんとしたドラゴンの姿をしている。

 ホワイトジャガーデストロイドラゴンフィーバーだ……


「どうして、ここに?」

「助けに来た。それ以外に理由などない」


 WJDDFは俺を抱えたまま地上に降りる。


「はっ! そうだ、早く戻らないと……!」


 まだ、部屋の中には重圧に押しつぶされているあいつらが取り残されている。

 早く、行かないと。


「そう焦るな。走るより我に乗った方が速かろう。それに、そう急ぐ必要もあるまい」

「どういうこと?」


 WJDDFは俺の問いに答えず、俺を乗せて上空に飛んだ。

 ここからなら、魔王がいるあの部屋が見える。


「リサ!?」


 魔王と対峙していたのはリサだ。

 よく見えないが、ポリゴンで出来た銃や剣などで戦っている。

 近未来的な絵面だな。


「リサが我の城に来てな。権能で我を地上世界に連れてきたのだ」

「うちのリサが迷惑をかけたみたいだな」


 とりあえず、一団員として謝っておこう。


「よいよい。聞いたことのない誘い文句だったものでな。つい乗ったのだ」

「ちなみに、どんな誘い文句だったんだ?」

「『崩れゆく城であたしと一緒に踊りましょう?』だったな」


 聞いたことのないお誘いだな。

 崩れゆく城って魔王城のことか?


「ほれ、右下を見てみろ」


 WJDDFに促さられ右下を見てみる。


「あーし……あーたのことが、好き!」

「君の気持ちには応えられない」

「いや、いやです! 私を置いてくなんて許さない!」

「いも」


 順にイグネリア、フェリール、ヘイゼル、メイリアが言う。

 万を超える魔物を相手しながら寸劇しりとりをしている。器用だな。

 てか四人とも城の外で戦っているんだな。

 城の中から魔族が出てこないから、城内は制圧したみたいだな。


「いいなぁー俺もやりたい」

「お前も同類か」


 WJDDFは俺を乗せて部屋の上空に行く。

 ここから真下にちょうど魔王がいる。

 十八本のグングニルを顕現させる。

 狙いは魔王。


「聖剣抜刀」


 俺はWJDDFから飛び降り、グングニルとともに魔王へ突貫する。


***


 エレスに連れられ、シケンは魔王から一番離れている隅に移動する。

 二人は部屋の外に出ようとしたが、扉が開かなかった。


「あの人は誰なんだ?」

「リサって人だ。アンニル団――あのジエンが所属する組織のリーダーだ」


 ジエンが魔王によって吹っ飛ばされた直後、どこからともなくリサが現れた。

 そして、リサはみんなにかかっていた重圧を解除し、魔王と対峙している。


「すごいな……あんな武器、見たことない」

「そう、だな」


 シケンはリサの戦いをじっと見ている。

 対してはエレスはまともに動けないシケンの手当てをしている。

 一年前、魔王を封印する前に出来た傷がまだ癒えていない。


「俺のことは気にしないで戦いに行っていいぞ?」

「先に兄貴の手当てだ。終わったらあいつらの元に行くぜ」

「そうか」


 シケンは思う。


「俺も……戦えたらな……」

「……」


 シケンは封印されていたため、一年間も飲まず食わずで動かなかった。

 歩くことさえ困難だ。

 それでは戦うことは到底出来ない。

 シケンは歯痒い気持ちになる。

 すると、空が煌めく。


「あれ……は……」


 複数の青白い光。

 それらが魔王目掛けて一直線に堕ちていく。

 まるで、流れ星のように。


「ジエンだ……」


 エレスがそう呟く。

 シケンはあの光に目を凝らした。

 一際大きい光の先に、剣を構えたジエンがいる。

 その先には魔王。

 そして、聞こえてきた声。


「幻想魔法――グングニル・ステラ!」


 ああ……まさしく、星が降った。


***


 俺はグングニルとともに魔王に突撃をかました。

 最初に放ったグングニルに比べて、驚くほどに手応えがあった。

 魔王はグングニルで貫かれ、崩れ落ちていく。

 倒せたらいいんだがな。


「さっきの技名いいわね」

「だろ?」


 グングニル・ステラ、思い付きで名付けた技名。

 我ながらに今までで一番の出来だ。

 ちゃんと技の特徴から名付けつつ、カッコよさも残せた。


「そういえば、基地に誰もいないだろ? いいのか?」


 基地には必ず一人は残るようになっているはずだ。

 シュウゴとサン以外はこの世界にいて、二人も基地には戻ってないはずだ。


「仲間のピンチに駆けつける方が大事よ」


 かっけぇー。


「我も到着だ。今の状況はどうだ?」


 WJDDFが上空から降りてくる。

 今度はドラゴン形態ではなく、人型だ。


「はっきり言って芳しくないわ」


 魔王はグングニル・ステラを食らって地面に倒れている。

 だが、それもここまで。

 魔王が動き出す。


「グングニル・ステラを食らっても動けるなんて……ここはグングニル・ステラ・レボリューションで……!」

「レボリューションはダサいわ」

 

 リサにダメ出しを食らった。

 すると、魔王が動きを止める。


「……なんか嫌な予感がする! みんな! 後退だ!」


 肌に伝わる嫌な感覚。理論も説明も証拠もないが離れないとマズイ!

 後退したと同時に魔王の体が内側から突き破られる。

 まるで、雛が卵を突き破るがごとく。

 そして、黒い霧が魔王の体から溢れ、天に蓋をする。


「何よ……あれ……」


 シヴァニアが呟く。

 正直、俺も同じ感想だ。

 出会ったときの魔王は一つ目で歪なツノと翼が生えていたが、少なくとも人型は保っていた。

 だが、黒い霧から現れたのは人とかいう次元じゃない。

 直径50mはありそうな巨大な目。そこに計二十対の翼、衛星のごとく目の周りを公転する三十七個の目玉。

 それら、全てが俺たちを睨む。

 身の毛がよだつ。


「やっぱり、第二形態に入ったわね」

「だ、第二形態……!?」


 こんな見るからなやばいものに第二形態とか言っていいのか? 

 そんな、ゲームみたいに。


「ニヒルは基本的に人の形を取らないの。魔王が人型である時点で第二形態があることは予想できたわ」

「その予想、もうちょっと早く教えてくれないか?」


 情報伝達は大事だっていつも言ってるだろ?


「君たち、よく軽口言い合えるね……」

「私たち恐怖でどうにかなりそうよ。どうしたらそんなに肝が据わるのかしら」

「我にとってはあんな化け物どうということない」


 リサがおかしなことを言うせいで俺にまでとばっちりだ。


「経験の差ね。それより、どうやって倒そうかしら」

「権能でババっと解決は?」

「できたらとっくにやってるわ。ただでさえ、魔王のせいでこの世界に負荷がかかっているの。それに魔物と戦っているあの子たちが権能をバンバン使ってるから尚更使えないわね。使えたとしても限定隆起一回分よ」


 地下世界と違って地上世界の魔物は全てにニヒルが混入しているから権能を使わないと大変なんだろうな。

 フェリールたちにはまだまだ耐えてほしいものだ。


「つまり、権能を使わずにあたしたちが倒し切るしかないわよ」

「やるしかないのか……幻想魔法――グングニル!」


 グングニルがニヒルに命中すると同時に各々、撃破に動き出す。


「幻想魔法――グレイプニル」


 WJDDFの幻想魔法で魔王を縛りつける。


「雷の法〈トール〉!」


 シヴァニアの魔法による雷撃が魔王に命中する。

 その雷撃は魔王の翼、公転する目玉をも焦がしてゆく。


「時空間固定!」


 イライザが一部の空間の時間を固定する。

 その止まった空間を足場にして魔王に近づく。

 魔王がいるのは上空50m先。

 魔王の目の前までダスティンとともに駆け上がる。


「ハァっ!!」

「聖剣抜刀」


 ダスティンと呼吸を合わせて魔王を斬りつける。


「チッ……」


 しかし、魔王に与えた傷が癒えていく。

 グレイプニルは千切られ、焦げた翼と目玉は瞬時に修復される。

 俺とダスティンが斬った場所も修復された。


「効いてないわけじゃないね。ただ、再生能力が高すぎる」


 そうだな。手応え自体はある。

 あとはあの再生能力を突破すればいいわけだ。

 もう一度、魔王に攻撃を仕掛けようとする。

 だが――


「あの……光は……」


 アランが呟く。

 ニヒルが紫色に輝き出す。

 あの光を、俺たちは知っている。

 洞窟で戦った巨大ワームのビームだ。


「チッ……幻想魔法――グングニル・ステラ!」


 十八本の槍が顕現、射出されるのと同時に、魔王がビームを放つ。

 グングニルとビームがぶつかり合う。

 轟音が鳴り響き、衝撃波で壁が崩れる。

 そして――ビームがグングニルを焼き払った。


「チッ……幻想魔法――」

「幻想魔法――レーヴァテイン!」


 後ろから声が聞こえる。

 次の瞬間――炎の一閃が空間を疾る。

 ビームを飲み込み魔王が炎に包まれる。


「お待たせ。俺も戦うぜ」


 そして、炎の一閃を放ったエレスが俺たちの元に来る。


「……シケンは?」

「リサに預けた」

「その幻想魔法……」

「WJDDFから貰った」


 WJDDFがピースしている。

 『ドッキリ大成功!』みたいな表情だ。


「ついでに聖剣も兄貴から借りてきた」

「なるほど……追い剥ぎか」

「なんとでも言うがいい。それより、来るぞ」


 レーヴァテインによって焼かれた魔王が再生する。

 そして、俺たちを睨む。


「行こう」

「……だな!」


***


 シケンは離れたところで彼らが戦う姿を見ている。

 ジエンは己の剣を使って、魔王の攻撃をかわしながらダメージを与えている。

 そして、グングニルで目玉を射抜いている。

 アランは戦闘が得意ではない。

 だが、その思考能力で戦場の指揮をしながら氷の鎖で支援しつつ氷の矢で攻撃している。

 シヴァニアは最上級魔法で魔王に攻撃しつつ、足場を作ったり仲間の攻撃に魔法を乗せたりなど多彩に戦っている。

 ダスティンは剣を使って攻撃している。

 魔王の攻撃が来たときは盾で仲間を守りながら戦っている。

 WJDDFは爪を使って魔王をひっかき、翼で風を起こして戦っている。

 グレイプニルを器用に使いながら仲間をサポートしている。

 そして、エレスは聖剣とレーヴァテインの二刀流で戦っている。

 レーヴァテインで魔王に炎を巻き付かせ、聖剣でぶった切っている。


(むず痒いな…………)


 シケンは戦いに参加できない自分にふがいなさを感じている。

 シケンは役に立っていないわけではない。

 魔王を一年間も封印した。その功績が今に繋がっている。

 だが、それでも今この瞬間に役立てていない己を恨む。


(なら、いっそのこと……幻想魔法を……)

「その選択は正しくないわ」

「ッ!」


 リサがシケンの心を読む。

 自分の考えを言い当てられたシケンは驚いている。


「あんたの幻想魔法は最後の一回を使うと死ぬのでしょう?」

「……あぁ」

「なら使うべきではないわ」


 幻想魔法――ティルフィング、効果は三つの願いを叶える代わりに術者を死に至らしめる。

 シケンは一つ目をアランの蘇生、二つ目を魔王の封印に使った。


「でも…………!」

「何もできない自分が情けない?」


 リサの言葉にシケンが静かに頷く。

 その目には惨めさが宿っている。

 遠くからエレス達の声が聞こえてくる。


『ジエン、次合わせるぞ』

『わかった』

『WJDDFはニヒルの拘束を、攻撃が来るからダスティンはイライザとシヴァニアを守って。二人は前衛の支援を』

『わかったわ』

『了解』

『任、せて』

『任されよう!』


 エレス達は思い思いに連携しながら戦っている。

 若干だが魔王を押している。

 その光景をシケンはじっと見ている。


「死を、乗り越える覚悟はあるかしら?」

「……! ああ!!」


 シケンは力強く頷く。その目には覚悟が宿っていた。


「あたしの権能を使えば死を覆せる。でも死の苦痛は取り除けないわ」

「権能?」

「『繋がる心想』――心と想いを繋げる。それがあたしの権能」

「心と想いを……」


 リサがシケンの前に立つ。

 シケンはリサを見上げる。


「あんたにはまだ手放してない想い、そして手放したくない想いがあるでしょう?」

「…………」

(手放してない想い、手放したくない想い……そんなの――)


 シケンが立ち上がり宣言する。


「愛……この世界を、この国を、そしてエレス達を愛する想い!」

「そう、それがあんたの想いなのね。ならあたしはそれを繋げましょう」


 リサがシケンの両肩に手を乗せる。


「権能限定隆起……想起(リコールイニ)開始(シエーテッド)」


 リサが言い終わるとシケンの体が優しく光り出す。


「幻想魔法――ティルフィング! 願うのはただ一つ! この戦いを終わらせることだ!!!」


 瞬間、シケンの体に耐え難い苦痛が走る。

 死の苦痛だ。


(苦しい、辛い、痛い、気持ち悪い…………でも、俺の想いに比べたらこんなの取るに足らない……!!)


 シケンの体を蝕む苦痛が消えていく。

 そして、シケンの前に剣が現れる。

 シケンは剣を掲げ、こう言う。


「幻想聖剣――勝利の剣! この戦いに勝利をもたらそう!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。