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アポカリプスロード:Extend  作者: 中村 りゅうや
第一章 マントルロード
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D-25 勇者誕生

「この道、結構……! 険しいな……!!」

「私、編み物が得意なだけの少女よ……! 何で山道なんか歩かないといけないのよ!」


 旅を始めて一週間。

 シケンとシヴァニアはゼェハァと息を切らしながら山道を歩いている。


「……そろそろ休憩しようか」


 対して、アランは息を切らす様子もない。

 涼しい顔をして山道を歩いている。


「賛成!」


 川の近くで一行は休むことになった。

 干し肉と少しばかりのナッツを食べている。

 王都に行くだけなら馬車が一番良いが、アランが王子だとバレるわけにはいかない。

 そのため、人の通らない道なき道を歩む。


「ここを超えたらジネンガ村がある。そこまで頑張ろう」


***


「ん? こんなところに小屋があるぞ」


 村まであともう少しという距離に、ポツンと小屋が立っている。

 小屋の近くまで寄ってみると、玄関先で男と女が喋っていた。


「……ということ。わかった?」

「……ッ!!」


 男がこっちに気づいた。


「どこを見てって……運命の人!?」


 女がシケンの方を見てそう叫ぶ。


「なんか、こっちに用がありそうだね」


 アランはそう言うと仮面を被る。

 王子だとバレないように、他人と会うときは仮面を被るようにしている。


「あー、そこの君、俺たちに何か用か?」


 シケンが女に話しかける。


「そうだよ。わたしはイライザ、よろしく」


 イライザは一行に向かってペコリと挨拶する。


「そして、あなたがわたしの運命の人よ!」


 イライザはそう言うとシケンの手を握る。


「お、おう……」


***


「家に入れてくれてありがとな。ダスティン!」

「あ…………う、うん……」


 シケンがダスティンに礼を言う。


「それで、どうして俺が運命の人なんだ?」

「占ったから。わたしは属性外魔法を使えるんだ」


 属性外魔法とは未来予知や時間操作、空間魔法などである。


「属性外魔法を使える人なんて初めて見た……」


 アレルハライドの人間は魔力が持ち、適正属性が一つある。

 属性外魔法は適正属性が一つも無い人間にのみ扱える希少な魔法だ。


「わたしの運命の人を占ったならここに来るって出てね。それで、待ち伏せしてたの」

「なるほどな……。運命の人ってことは俺と結婚するのか?」

「あ、いや、そういうわけではないの」

「あ、そうなの?」


 運命の人という抽象的な言葉をシケンは結婚相手と解釈した。

 しかし、どうやらその解釈は間違っているようだ。


「運命の人ってのはわたしの人生を左右する人のことなの。だから、結婚とかは関係ない」

「そうなんだ」


 シケンは告白してないのに振られたような微妙な感情になる。


「なら、イライザは俺たちについてくるのか?」

「もちろん」

「そうなのか。アランはどう思う?」


 シケンが第一王子の名前を出した瞬間、場が凍りつく。


「第一王子と同じ名前ね」

「あ、あぅ……え、えっと」


 イライザは堂々と言う。対してダスティンはあたふたしている。

 十数年前に国から御触れが出ていた。

 アランという名前を子供につけるのを禁ずると。理由は第一王子の名前をアランにするから。

 つまり、第一王子と同年代にアランという名前は一人しかいない。第一王子本人だ。


「すまん、バレた」

「君なぁ……」

「ほら、シケン。謝って。仮にも王子なんだから」

「仮でもなく正真正銘の王子なんだけどね」

「今は冒険者じゃない」


 アランは仮面を外して、イライザとダスティンを見る。


「改めて、私は第一王子のアランだよ。といっても今は冒険者として扱ってほしいな」

「わかった」

「う、うん……」

「それと、バレたからには旅に同行してもらうよ。拒否権はもちろん無いからね」

「ッ!?!?!?」


 ダスティンがアランの顔を凝視する。


「さすがに私の正体を知っている者を野放しにはできないからね」

「これからよろしくな! イライザ! ダスティン!」

「私からもよろしくお願いね」


 ダスティンが盛大に巻き込まれる形となって、のちの勇者パーティーのメンバーが集まった。


***


「よし、じゃあ次はどうしようか?」

「王都に行くんでしょ?」


 イライザが聞き返す。


「そうだが……この旅は冒険だ。ただ王都に行くだけじゃつまらないだろ?」

「それなら任せて。占ってみせる」


 イライザはそう言うと、目を閉じる。傍目からしたらただ、寝ているようにしか見えない。


「『汝、幻想魔法の魔導書を手に入れるべし』だって」

「なんか、思ってた結果と違うな」

「幻想魔法だなんて、現実味がないわね。その占い本当に当たるの?」

「的中率百パーだから」


 幻想魔法は勇者にしか扱えない魔法。

 そもそも、この国で最後に勇者が誕生したのも千年以上も前だ。

 勇者の話はほぼ伝説になっている。

 その中に出てくる精霊や幻想魔法を見た者はいないと言っても過言ではない。


「しっかし、幻想魔法の魔道書か……そもそもどこにあるんだ? 王族のアランならわかるか?」

「いくら王族でも私にはわからないよ」


 王家に伝わる財宝の中に聖剣がある。

 シケンは、聖剣つながりでアランが幻想魔法の魔導書の場所もわかると思ったのだろう。


「あ、その……」

「ん? どうしたんだダスティン?」

「あ、えっと……」

「もしかして、魔導書の場所を知っているのか?!」

「さすがにそれはないでしょ」


 シケンの言葉にシヴァニアが否定する。


「し、知って、る……」

「知ってるの!?」

「ひぅ……!」


 シヴァニアが思わず大きい声を出す。

 ダスティンはその声に驚き、身を縮ませる。


「ご、ごめんなさい。つい大きい声を出してしまったわ」


 シヴァニアがダスティンに謝る。


「うちの幼馴染がごめんな? ところで、幻想魔法の魔導書の場所を教えてほしえてくれないか?」

「や、山を……超えた、先……洞窟に、ある」

「山を越えた先の洞窟だな! よし、いっちょ行ってみるか!!」


***


「なんで……俺も……」


 幻想魔法の魔導書がある洞窟の中、一行は奥を目指して進む。

 洞窟は暗闇に包まれている。足元の地面も見ることはできないほどだ。

 一行は暗闇ではぐれないように手を繋いでいる。


「だって、俺たち仲間だろ?」

「秘密を知ったからには、もう仲間よ」


 シケンとシヴァニアが言う。


「ところで、シヴァニア。なんか腕ゴツくないか?」

「失礼するわね。そういうシケンこそ、腕がゴツゴツよ。岩みたい」

「は!? そんなわけないと思うんだが!?」


 シケンとシヴァニアが繋いでいる手をにぎにぎしながら言う。


「レディに対して失礼だよ。イライザとダスティンもそう思うよね?」

「いくら運命の人でもそれはないと思う」

「う、うん……」

「ガビャガビャ」

「一対五か、分が悪いな……」


 ……

 …………

 ………………?


「今、変なのいなかったかい?」


 アランが言う。

 瞬間、一行の間に冷たい空気が張り詰める。


「……なぁ、シヴァニア。何か感じない?」

「ちょっと! 怖いこと言わないでよ」


 シケンが恐る恐るシヴァニアに聞く。


「俺今さ、握り潰す勢いでシヴァニアの手を握っているんだけど、シヴァニアが何も感じないってことは…………俺は誰の手を握っているんだ?」


 沈黙。

 そして――


「ガヒャァァァァアアアア!!!!!」

「魔物だぁぁああ!!!」


 叫びが洞窟中をこだました。


***


「み、みんな……無事かい?」

「な、なんとか……」


 一行は全速力で入り口に戻った。魔物は洞窟の外にまでついてこなかった。


「ハァ……ゲホッゲホッ……ハァ……ハァ……」

「ダスティン、大丈夫……じゃないな。ほら、水を飲め。ゆっくりな」


 シケンは息切れが一番酷いダスティンにゆっくり水を飲ませる。


「結局、幻想魔法の魔導書を手に入れられなかったじゃない。占いはどうなってるのよ」

「占いは幻想魔法を手に入れた方がいいと出たの。手に入れられるとは出てない」

「屁理屈を言うじゃない」

「まあまあ、落ち着いて。とりあえずジネンガ村に戻ろうか」


***


 ダスティンの家に着く。

 一行はかなり疲労している。


「明日はセレネイガに行こうか」


 ダスティンの家に着いて早々、アランが言う。


「それなら、ヌリオミにも行ってみたいわね。精霊がいるって噂の泉を見てみたいの」

「そうなると、セレネイガ、ヌリオミ、ハレイ、そして王都の順だね。イライザとダスティンはどこか行きたいところでもあるかい?」

「わたしはないよ」

「お、俺も」


 ダスティンの許可を貰い、その晩はダスティンの家に泊まることになった。


「俺がアランの正体をバラして巻き込んでしまってごめんな……?」

「う、ううん……気に、しない……で」


 五人はリビングで雑魚寝している。

 ダスティンはわざわざベッドから降りてみんなと一緒に床で寝る。

 洞窟の行きと帰りで五人で寝ることに慣れた証だろう。


「お、俺も……外に、出ないと……いけない、から」

「そうなのか?」

「う、うん……ずっと……家に、いて……村の、みんな、に……迷惑、かけた、から」

「そっかぁ」


 ダスティンはどもりながらも最後まで言い切る。

 一行はダスティンが喋るときは無意識に静かになる。

 ダスティンの言葉を最後まで聞きたいがゆえだ。


「なら、明日の朝にジネンガ村に挨拶に行こう! そこで、ダスティンが外に出るって言いに行こう!」

「え……?」

「いいわね、それ」

「わたしも賛成」

「いいんじゃないか?」

「ダスティンはどうだ?」


 シケンがダスティンに聞く。

 その声は弾んでいた。


「は、恥ずか、しい……」

「俺たちも一緒に行くから安心しろ!」

「……わかっ、た」

「よし! なら、今日は早く寝よう! 起きれなくなるからな!」


***


「ジネンガ村の人たちみんないい人だったな!」


 翌朝、シケンたちはジネンガ村の人たちにダスティンと一緒に冒険しに行くと伝えた。

 ジネンガ村の人たちはとても大喜びでシケンたちに食べ物や日常品を譲った。


「ダスティンは愛されているんだな!」

「そう、みたい……」

「これからは、もっと村の人たちを笑顔にしていこうな!!」

「……ふふ、そう、だね」


***


 セレネイガを発って数週間、一行は王都に辿り着いた。


「ようやく王都に来たんだな!」

「そうね、ここまで色々あったわね。まさか、シケンが精霊の加護を貰うなんて」

「そうだな。びっくりだ」


 シケンはヌリオミにある精霊の泉で加護をもらった。

 偶然、精霊が現れ、出会い頭に加護を授けられた。


「シケンは、勇者に、なるの……?」

「別にならなきゃいけないわけじゃないしな……」

「なら、なる理由があったら勇者になるのかい?」

「それなら、なるね」


 一行は検問所の列に並びながら話している。


「ていうか、アラン王族でしょ? 検問所でバレない?」


 イライザが聞く。

 今までの街は基本的に検問所はなかった。あったとしてもそこまで調べられることもない。


「私は王族だよ? 検問所くらい、身分を偽って何度も通っている。大丈夫だよ」


***


「殿下、こちらでお待ちください」

「……わかったよ」


 検問所に差し掛かるなり、そこにいる人たちにアランの正体がバレた。

 そして、一行は馬車に乗せられ、王城に連れられた。


「一瞬でバレてんじゃん」

「何が『大丈夫だよ』なのよ。全然ダメじゃない」

「アランは……本当に、行けると……思ったの?」

「これでわたしたちが誘拐犯って言われたらどうしてくれるの?」

「みんなひどいなぁ。でも、罪には問うことはさせないし大丈夫だよ」


 二度目の『大丈夫だよ』


「今度は信じるからな」


 そして、一行はとある部屋に案内される。

 その部屋には現国王――つまり、アランの父親がいた。


「父上……」

「座りなさい」


 一行は国王に言われるがままに座る。


「アランが迷惑をかけた。すまない。これは迷惑料として受け取ってくれ」


 国王はそう言うと、金貨五百枚を差し出してきた。


「さ、さすがにこれは……」

「ん? 足りなかったか?」

「い、いえ、全然十分です! むしろ多いくらい……」

「いい機会だし、もっと貰っておいたらどうだい?」

「お前が言うな。ただでさえこんな状況なのに第一王子が行方不明だったんだ」

「ごめんなさい……」


 国王がアランに叱責を飛ばす。アランは素直に謝る。


「それより、父上。お聞きしたいことがあります」


 アランが表情を変えて言う。


「申してみよ」

「こんな状況とは何でしょう。私が王都を出たときは問題はありませんでしたが」

「そうか……まだ知らぬか」


 国王が俺たちに向かい直して言う。


「魔王が復活した。これから、騎士の編成と勇者の捜索を行う。アランにも仕事はたくさんある。休めると思うな」

「魔王が……」

「復活……」


 アラン、シヴァニア、イライザ、ダスティンがシケンの方を見る。


「お、俺!?!?」

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