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アポカリプスロード:Extend  作者: 中村 りゅうや
第一章 マントルロード
14/40

D-14 無理難題すぎるボス戦

 光に向かって進むと、広々とした空洞に出た。


「すっご……」

「めっちゃ綺麗だな」


 そこには鉱石が壁や天井に埋め込まれ、青白く光り輝いている。

 思わず写真を撮ってしまう。

  奥の方に目を凝らすと、重厚な扉が静かに佇(たたず)んでいるのが見える。

 絶対あそこが最深部だ。


『あー、テステス……通信が繋がったけど大丈夫?』

「お、じゃあ光の拒絶は無くなったんだな」

「とりまアレルハライド組とはぐれたけど問題なっし!」

『問題しかないけど無事で良かったよ』


 すると、地鳴りのような音が響いた。

 嫌な予感が背筋を走る。

 剣を構える。

 イグネリアも異変を察したのか、ガントレットを装着して臨戦態勢に移る。


『あー……良いニュースが一つと悪いニュースがたくさんあるけど、どうする?』

「良いニュースと悪いニュースの数は同じにしてくれ」

「どうあがいても悪くてうける」

『良いニュースからいくね。アレルハライド組を探知できたよ。あと五分ほどでここに着く。生体反応からケガはなさそうね。そして、悪いニュースなんだけど……』


 重厚な扉の前の地面が大きく盛り上がる。

 岩盤を突き破るように、巨大なワームが姿を現した。


『まぁ、あれだね』

「見ればわかる」


 エレスやシヴァニアたちの話や資料から巨大ワームの存在は知っていたが……大きいな。

 頭は天井すれすれで、胴体の大部分は地中に埋まっている。

 地面が揺れていることから、とんでもない巨躯(きょく)だ。

 今からこいつと戦わないといけないのか……?

 めっちゃ骨が折れそう。


『それにニヒルも取り込んでるね。その影響で巨大化してるっぽい』

「そんなことありえるのか?」

『全然ありえる』

「最悪かよ」


 ワームの方を見る。

 口のような場所からよだれがだらだら垂れている。

 よだれが落ちた岩肌は、シュッ――と音を立てて溶けていく。

 めっちゃ毒だ。

 

「てか、ニヒルが相手だと俺何もできないぞ?」

『とりあえず、ワームを消耗させれば大丈夫かな』

「……、……!」

「てかさっきからイグネリアはなにを言っ」


 次の瞬間、轟音が洞窟を揺らす。

 同時にワームの頭部が凄まじい勢いで吹っ飛ばされる。

 巨大ワームの近くにいたのはイグネリア――ガントレットで殴り飛ばしたようだ。

 ソニックブームまで起きている。音速を超えたのか。

 洞窟内でソニックブームを起こすとか馬鹿なのかと思ったが、この洞窟は意外に頑丈だ。

 落石はしているが、崩落の心配はない。

 だが、俺の耳は頑丈ではない。

 衝撃で耳がキーンってしている。痛い。

 イグネリアが何か言いながら身振り手振りしている。

 なんも聞こえない。


「手を大きく振って……地面を指さして……拳を叩きつけている…………ラジオ体操?」

『なんでそうなるの?』

「あんだって? もっと大きな声で言ってくれ」

『耳やられちゃったのね……』

「『耳やられちゃったのね』?そうだな」

『読唇(どくしん)できるんだ……』


***


「絶対通じてないじゃん~しんど~」


 吹っ飛ばされたワームは壁に激突し、血を流している。

 だが、まだ死んでいない。

 そのまま地中へ戻っていく。

 姿は見えなくても、近くにいる。


『大丈夫? いけそう?』

「んー身命を賭せば?」


 イグネリアはある一点を見据えて歩き出す。

 地面に向かって拳を構える。

 地面が盛り上がった、その瞬間。

 イグネリアの拳が地面を撃ち抜く。


「……ハァッ!!!」


 その衝撃は洞窟全体を揺らし、天井にある鉱石落としていく。。


***


「な、なんだ!? 何が起こってるんだ!?」


 ここで、アレルハライド組が駆けつけてきた。

 耳鳴りも止み、音がはっきり聞こえる。


「エレスか、また会ったな。嬉しいぞ」

「あ、あぁそうだな……いやそんな呑気なことを言ってる場合じゃないだろ!?」


 再会の挨拶を拒絶された……かなしい。

 しかし、急な展開で混乱してしまうのは確かだ。

 ここは情報共有をしないとな。


「まぁ簡単に言うなら――巨大ワーム出現、ニヒルを取り込む、イグネリアが単身突撃、だ」

「なるほどね」

「そう、いう……こと」

「わかった、とりあえず手助けすればいいのね」


 さすが元勇者パーティー、呑み込みが早い。

 エレスも何か言いたげだったが、この状況の対処が最優先だと考えて口を閉じた。


「メイリア、俺たちは何すればいい?」

『イグネリアが下に埋まっている胴体を引きずり出すから核を破壊してほしい。でも核は体内で移動しているから、とりあえずワームを消耗させて』

「オッケー」


 俺たちは無言で定位置に着く。ここまでの旅路で陣形はある程度決まっている。盾役であるダスティンが一番前。その斜め後ろに俺とエレス。少し離れた位置にアランとシヴァニアだ。イグネリアは機動力が高いため、普段は遊撃を担っている。さすが虎の獣人。あの脚力は伊達じゃない。


『ジエン、今いい?』

「? 構わないが」


 メイリアから話しかけられる。


『この後、イグネリアが権能の一端を見せるからちゃんと見ておいてほしくてね。今のジエンじゃ見たところで何かを得られるわけではないけど……いずれ役に立つよ!』

「もとより見過ごすつもりはないけど……権能って危ないんだろ? 使って大丈夫なのか?」

『今回は完全隆起じゃないし、私からの制御サポートもあるから問題はないよ。それに、相手はニヒルを取り込んでいるから権能を使ったほうがいいんだ。事実、さっき音速を超えた時もしれっと権能使ってたしね。まぁそんなことは置いておいてイグネリアの権能を見てて! 結構派手だから見応えはあるよ!』


 そう言ってメイリアは通信を切る。

 権能の制御など、基地側でも準備が必要らしい。

 それにしても、イグネリアさっき権能使ってたのか。

 じゃなきゃ生身で音速を越えられないしな。


「次で引きずりだすから準備しといて〜」


 次の瞬間――俺は目の目の光景に、見惚れてしまった。

 

 イグネリアがガントレットを掲げる。


「権能使用許可申請……NO.1、NO.6承認……権能限定隆起……!」


 イグネリアが言葉を紡ぐ。だがそれどころではない。

 ガントレットがオレンジ色に輝きだし、暴力的な力の奔流が、洞窟の隅から隅まで駆け巡る。


「制御権移譲……覚悟モジュール解放……想起(リコールイニ)開始(シエーテッド)……!!」


 空間そのものが揺れる。

 洞窟内に渦巻いていた力が全てガントレットに集約されている。

 ガントレットの輝きが増している。


「身命を賭してあーしの覚悟、見せちゃうゾ♡」


 凄い力を纏っているのに、ご丁寧にウィンクとポーズまでキメている。

 めっちゃノリノリだ。

 イグネリアがいる地面が盛り上がる。

 そのまま、盛り上がった地面に腕を突っ込む。


「ワーム一本釣り~!!」


 地中からワームの巨体を掴んで、引きずり出す。

 地面は抉られ、岩盤が砕け散る。


***


 なんかよくわからないが、規格外の力が発生してガントレットに収束。

 そして、ワームを引きずり出した。

 権能なんてすごそうなものをあまり使わないようにしている理由がこれだな。

 そりゃ、こんなに強大な力をポンポン出したら世界壊れるな。

 しかもこれが全力じゃないときた。


「地の法〈ヨルズ〉!」


 シヴァニアが地面へ手をかざす。

 岩盤が強化され、ワームが潜れなくなる。

 ……ヨルズか……なんか聞いてことあるような無いような……


『こっからは単純な戦闘だよ! サポートは全力でするから頑張って核を壊して!! あと権能はもうしばらくは使えないから!』

「あ、あぁ!!」


 いや、それはまた後で考えよう。

 今はワームの討伐に集中だ。

 イグネリアと合流する。

 ガントレットの輝きは消え、先ほどの暴力的な力の気配はない。


「いつも通りでおっけ?」

「あぁ、いつも通りだ」


 ワームがイグネリアへ突進する。


「遅いッ!」


 ダスティンがイグネリアとワームの間に割り込み、正面から突進を受け止める。

 その一瞬の隙を逃さない。

 俺とエレスは左右から剣で斬り込み、イグネリアは上空から拳を叩きこむ。

 ワームが怯んだ瞬間、ダスティンは盾でワームの頭を弾く。

 弾いた先でシヴァニアとアランの魔法が繰り出される。


「火の法〈ムスペルヘイム〉」


 巨大な炎の蛇が出現し、ワームの頭に巻き付く。

 氷の矢が炎の蛇をかいくぐってワームに命中する。

 アランの魔法だろう。

 ワームは苦しいのか、頭を振りながら俺たちと距離を取る。

 まだ相手の手札がわからない。

 ここで無理に追うのは危険だ。

 ……ムスペルヘイム。やっぱりどこかで聞いたことがある気がする。

 

 すると、ワームの口が大きく開かれる。

 そして、口内の奥が紫に発光する。


『防御はダメ!! 避けて!!!』


 メイリアの叫びと同時にワームはダスティンに向かってビームを放つ。

 ダスティンは反射的に盾を構えた。

 しかし、メイリアの指示で寸前に横へ避ける。

 ビームは壁を容易く貫き、巨大な横穴を作る。


『今のはニヒルが込められたビーム! イグネリアとジエン以外が触れたら即死だと思って! 二人も触れないように!』


 あんな図体で即死攻撃持ちとか反則だろ。

 でも、ビームの発動前には溜めがある。

 そこを見逃がさなければ避けやすい。


『これからの攻撃にはニヒルが含まれる可能性がある。受け止めないで避けるようにして』


 ここでダスティンが迷いなく盾を捨てる。避けるのに盾は邪魔だ。

 さすがは元勇者パーティー、思い切りがいい。

 ワームはビームを放った後、咆哮とともにニヒル入りの体液を辺りに撒き散らす。

 全て避けることは出来たが、これでは安易に近づけない。

 当たったら即死液体を撒き散らるとかチートだろ。

 あまりにもチートだ。


「作戦変更だ」


 アランの声が空間内に響く。


「ダスティンとイグネリアはワームを引き付けて。私とシヴァニアは魔法で攻撃する。エレスとジエンは隙を見て攻撃出来そうならして」


 ワームが体液を撒き散らすため近接戦は難しい。

 だが、やるしかないな。

 ダスティンとイグネリアはワームを引きつけながらダスティンは弓、イグネリアは銃で反撃している。器用だな。


「氷の法〈ニブルヘイム〉」


 天井を埋め尽くすほどの氷のつららが出現する。

 その全てがワームに先端を向けている。

 そしてワームにはどこからか伸びてきた鎖が絡みつく。

 鎖はすぐに砕け散る。

 だが、つららが命中するまでの時間は稼いだ。


「光の法〈バルドル〉」


 全てのつららが白く光り輝き、ワームを貫いていく。

 ワームの頭部は穴だらけになり、血が噴き出しながら激しく揺れる。

 そして、もがくように倒れこんだ。

 ダスティン達は距離を取っていたため体液には触れていないようだ。


「そんなに最上級魔法を連発して大丈夫かい?」

「問題ないわ。このぐらいでへこたれない」


 〇の法〈○○〉って最上級魔法だったんだ。

 なんかいつもより強力な魔法だと思っていたが。

 とりあえず全員同じ場所に固まる。

 追撃は危険なため行わない。


『みんな聞いて! 核はまだ破壊されていない!』


 メイリアが俺たちに言う。


『でも朗報があるよ! 頭の再生はかなりエネルギーを使うみたいだから、核が頭に固定されている!』


 その言葉と同時にワームが動き出す。

 また、口内の奥が紫に光る。

 俺ら目掛けてビームが放たれる。

 問題なく避けられた。

 ……

 …………

 なんか、ビームの途切れない。

 発射しっぱなしだ。

 すると、ワームの頭がこっちに向いた。

 次の瞬間、ビームが横薙ぎに迫る。


「うっそだろ!? ありなのかよ!?!?」

「こっちに来やがった!?!?」


 今度はエレスがいる場所に薙ぎ払われる。

 エレスは紙一重で回避した。


「…………っ!!」

「ダスティン!!…………くっ」


 次はダスティン。

 その次はアランへと、順番にビームが薙ぎ払われる。

 二人とも避けることができた。

 即死ビームを振り回すとかやってることおかしいだろ。


「え、てか待って? このままビームかまされまくったら洞窟普通に崩壊しない?」

「洞窟崩壊生き埋めか巨大ワーム討伐生還のどっちかってことか……!」

「実質一択じゃないか!!」


 エレスの叫びはごもっともである。

 それにしてもメイリアから報告が何も来てないな。

 いつもなら、とっくに何かしらの報告があるのに。


『みんな! 大変だ!』


 噂をすればってやつだ。


「これよりも大変なことかい?」

『うん、とても重大な。みんなビームを避けながらワームの頭を見て』


 ビームを避けながら見ろ、とかいう難題を押し付けられる。

 まぁ、俺ならできるんだがな。

 改めて見たワームはさっきよりかなり形が変わっていた。

 つららが貫通したてあろう複数の穴から小さなワームの頭が出ている。

 合計で十二個だ。それぞれが別の生き物のように動いている。


「うっわ、気持ちわるっ」

「ちょっと私苦手かも」

「誰だって、苦手……」


 みんなも同意見のようだ。

 すると、さっきまでグネグネしていた小さな頭が俺らの方を向く。

 本能が囁いている。やばいって。


『解析した結果、あの小さな頭にも本体と同じ機能が搭載されている』

「…………つまり?」


 小さな頭の口内が赤色に輝く。


『あれもビームを撃つ!』


 その頭から細いビームが放たれる。


『ビームの予測軌道を共有する!! 頑張って避けて!!!』


 そんな無茶な。


「凄い攻撃だッ、避けるだけで精一杯だよ」


 アランの言葉に心の中で同意する。

 ほんとにやばい攻撃だ。

 大きいビームが俺に向かって薙ぎ払われる。

 高く飛んで避けるが、細いビームが向かってくる。

 メイリアの予測でわかっていたため体を捻って避ける。

 着地地点に細いビームの予測が出る。着地狩りとは卑怯だ。

 空中で剣を顕現して、着地地点にビームを撃ち込もうとしている個体の頭に投げる。

 当たった隙に着地する。

 すると、横から大きなビームが迫ってきている。

 地に伏せてかわす。

 大きなビームは細かい動作ができないため、ギリギリで避けても問題はない。

 さっきから回避に専念することしかできない。攻撃の隙が全然無い。

 …………いや、あったな。剣投げたし。


 それにしてもあれだな、3Dシューティングゲームをリアルでしているみたいだ。

 リアルシューティングゲームってめっちゃ大変だな。

 他の奴らも無事に回避できているようでよかった。


「さすがにこれは撤退した方がッ、いいんじゃないですか!?」


 エレスがビームを避けながら進言する。俺も同意だ。


「これレベチすぎてムリ! まだ権能ッ、使えないし一回ちゃんとッ、対策してリベンジ案件!」

「そうッ、だね」

『ワームが暴れてるせいか洞窟内の光の制限が消えている!! 逃走経路を確保するからそれまで耐えて!!』


 いきなり奥の扉がバンッと開く。


「え?」


 そこから一筋の光が高速で俺に向かってくる。

 避けられない。


「アガッ」

「ジエピ!?」

「ジエン!!!」


 目の前が光に包まれる。

いつかVRでシューティングゲームをしてみたいものです。

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