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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第96話 うわさの美少女と、皇子様のお誘い

 交換留学が始まって数日。俺たちは帝国での学園生活にもすっかり慣れてきていた。そんな帝国学園で今やちょっとした名物になりつつある存在がいる。それは決して優秀な成績でも、華々しい武勲でもない。一人の“可憐すぎる転入生”だ。


「アウリナさん、一緒にお昼食べませんか?」

「あ、こっちの席空いてるよ」

「今日のパン、美味しいって評判なんだ」


 昼休みのカフェテリア。その喧騒の中、アウレリオくん、もといアウリナさんの周囲には今日も男子生徒の群れができていた。


「い、いえ……そ、その……」


 困り顔で視線を彷徨わせるアウリナさん。淡い色の髪を揺らしながら、声をかけられるたびに小さく肩をすくめるその仕草。そして困ったように伏せられた睫毛と、戸惑いを隠せない表情。それだけで、周囲の男子生徒たちの視線を一身に集めてしまう……本人にその自覚がないのが、なお恐ろしい。


「せ、先約がありますので……っ」


 そう言ってぺこりと頭を下げると、逃げるようにしてこちらの席へと駆けてくる。


「はぁ……」


 席に着くなり、深く息を吐くアウレリオくん。


「可愛い……」

「やっぱりアウリナさん……天使だ」


 その何気ない仕草に、周囲の男子生徒たちから小さなどよめきが広がった。


「むきぃ~! わたくしも美少女なのに!」


 俺はフォークを机に置き、頬を思いきり膨らませる。


「何でアウリナさんばっかりなんですの!」

「いや、レオンく――」


 びしっと人差し指を立ててユウキくんの言葉を制止する。


「ユウキくん! 今は”レオーナ”だよ!」


 ふふん、と胸を張る。なお、胸は少し盛っている。


「あ、うん。そうだったね、レオーナさん」


 ユウキくんが小さく咳払いをした。


「それで……。何でそんなに悔しそうなの?」

「だって! アウリナさんばっかりチヤホヤされてズルいんですもの!」


 俺の抗議に、アウレリオくんが困ったように笑う。


「ズルいと言われても……男にチヤホヤされても、正直あまり嬉しくないぞ」

「ぐぬぬぬ……これがモテる女子の余裕ってやつですわね……」


 俺が机に突っ伏して唸っていると、向かいの席から冷静な声がした。


「……そんなに男にモテたいのか?」


 向かいの席を見ると、カインくんが呆れた顔でこちらを見ていた。


「いや、別にモテたいわけじゃないけど……」


 俺は顔を上げ、少し考える。


「何か負けたみたいで悔しいじゃん!」

「そ、そうか……」


 カインくんは納得したような、していないような微妙な表情を浮かべる。


「ねぇカインくん。どうしたらチヤホヤされるようになるかな?」

「私に聞かれても……。そうだな、レオーナは……」


 そう言ってカインくんは俺を上から下までじっと眺めた。


「いちいちポーズ取って……何か、仕草がうそくさいんだよな」

「ヒドイ! 女の子にそんなこと言うなんて!」


 俺は両手で顔を覆い、わざとらしく泣き真似をする。


「そういうところだと思うよ。レオーナさん」


 ユウキくんにまで追撃され、俺の心に大ダメージが入った。完璧美少女への道は、思った以上に険しいようだ。


「……ふふふ。相変わらず楽しそうですね」


 その穏やかな声に、ざわめきが少し落ち着いた気がした。俺たちが一斉に顔を上げると、そこに立っていたのは柔らかな笑みを浮かべた帝国の第四皇子様だった。


「あ、こんにちは。ルシオ様もお昼ですか?」

「ええ。ご一緒しても?」


 そう言って、自然な所作で席に座るルシオ様。その瞬間、周囲の生徒たちの視線が一斉に集まるのを感じた。


「それと……皆さんに少し、お話がありまして」


 その言葉に、カインくんが眉をひそめる。


「何か問題でもありましたか?」

「ええ。問題と言えば、問題のような……」

「何だ? 随分歯切れが悪いな」


 リヒト様の声が、少し低くなる。


「実は――」


 ルシオ様は一度言葉を切り、周囲に人がいないことを確認してから続けた。


「皆さんの歓迎も兼ねて、王城で晩餐会を開くことになりまして」

「晩餐会……?」


 その単語を聞いた瞬間、ユウキくんの表情が曇る。


「それって……危なくない?」

――まぁ、刺客に襲われたばっかりだもんね。


「う~む。表向き、交換留学は友好の証だ」


 カインくんが顎に手を当て、冷静に言う。


「歓迎と言われて、出ないわけにはいかないだろうな」

「まあ、スパイもいるし……気を付けておけば、何とかなるんじゃない?」


 俺は軽く肩をすくめる。


「確かにね」


 ユウキくんも頷く。


「それに、帝国の動向を探れるチャンスでもあるよ」

「うむ」


 リヒト様が短く頷いた。


「では晩餐会では、各自気を引き締めて行動するように」


 こうして話はまとまり、数日後。俺たちは晩餐会へ参加するため、帝国王城へと足を運ぶことになるのだった。しかし俺はまだ知らない。そこで運命(?)の出会いをすることを――。

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