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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第88話 呼び出された俺たちと、帝国の影

 ある日の放課後。俺たちは今、アレクシス先生の研究室に呼び出されていた。研究棟にあるその部屋は、いつもより静かに感じられる。


(……えっと、俺、何かしたっけ?)


 教師から『放課後、研究室に来るように』と言われて、良い用件だった試しがない。怒られるか、面倒ごとに巻き込まれるか、そのどちらかだ。


 集められたのは、俺、リヒト様、カインくん、ユウキくん、アウレリオくん。


(共通点……。リヒト様誘拐事件、だよね)


 すぐに思い当たった。しかも俺には怒られる心当たりがある。あの救出作戦の途中、屋敷を魔法で派手に壊してしまったのだ。


(ヤバい……絶対それだ。怒られるやつだ)


 胃の奥がきゅっと締め付けられる感覚を覚えた、その時――。


「さて。皆に集まってもらったのは……」


 なぜか、最初に口を開いたのはリヒト様だった。


「え、えっと! ごめんなさい!」


 反射的に、俺は頭を下げていた。


「ほら、カインくんも謝って!」

「は?」


 カインくんが、心底意味が分からないという顔で俺を見る。


「何を言っているんだ、レオン」

「あれでしょ? 救出作戦の時、屋敷を壊しちゃったこと怒ってるんでしょ?」

「……ん? あれは別に」


 俺の言葉に、リヒト様は一瞬きょとんとした表情を浮かべ、それから小さく首を横に振った。


「確かに作戦を立てたのはカインくんだけど、魔法を撃ったのは僕だから!」


 俺はリヒト様に懇願する。


「だから許してあげて!」

「いや、その件は怒っていないぞ」

「え? そうなの?」

「うむ」

(……なんだ、良かった)


 ほっと胸を撫で下ろした、その瞬間。


「おい、レオン」

「ん? なに?」

「貴様、私に責任を押し付けようとしただろ」


 カインくんが、じっとりとした視線を向けてくる。俺は冷や汗をかきながら、ツィーっと視線をそらす。


「まあまあ。終わったことを気にしたらダメだよ、カインくん」

「お前というやつは……」


 呆れたようにため息をつくカインくん。その様子を見て、ユウキくんが苦笑しながら話題を戻した。


「えっと……それで、結局俺たちはどうして集められたんですか?」


 その問いに、リヒト様は一度表情を引き締める。


「うむ。まあ……誘拐事件にも関わる話だな」


 その一言で、室内の空気がわずかに張り詰めた。


「捕らえた誘拐犯を尋問した結果、帝国が関わっている可能性が出てきた」

「可能性って……確定じゃないんだね」


 ユウキくんが慎重に言葉を選びながら聞き返す。


「ああ。はっきりとした証拠は掴めていない。だが、断片的な情報を繋げると、帝国が怪しいという結論に至った」


 そこで、今まで静かに成り行きを見守っていたアレクシス先生が口を開く。


「そして実はもう一つ皆さんにお伝えすることがあります」

「もう一つ?」

「はい。実は、帝国から交換留学の打診が来ているのです」

「交換留学? それって……僕たちが帝国に行くってことですか?」

「ああ。そのために皆に集まってもらったんだ」


 リヒト様が、さらりと言う。


「いや、タイミング良すぎでしょ」


 思わず俺が口を挟むと、ユウキくんもすぐに続いた。


「罠なんじゃない? 誘拐も帝国が怪しいんだし」

「無論、その可能性は高いな」


 リヒト様は否定しなかった。


「だが、証拠がない。だから――」


 一拍置いて、はっきりと言い切る。


「その罠に、あえて飛び込んでやろうと思ってな」


 その言葉にユウキくんが目を見開く。


「それって、リヒト様が囮になるってこと?」

「ああ。うまくいけば、帝国の思惑を探ることができるしな」


 するとアレクシス先生が困ったように眉を下げた。


「本音を言えば、生徒を危険だと分かっている場所へ行かせたくはありません」

「……ですよね」


 俺も思わず頷く。だが、リヒト様はどこか楽しそうに笑った。


「大丈夫だ。帝国に行くのは、私が選んだ精鋭なのだからな」

「なるほど……確かに、私たちなら大丈夫かもしれません。しかし――」


 カインくんが言葉を濁し、隣を見る。その視線の先にいたのは、アウレリオくんだった。


「な、何だ! 私に何か文句があるのか!」

「いや。お前は一度、裏切っているからな。信用できないのは当然だろう」

「むぐぐ……! 確かにそうだが……私は改心したんだ!」


 必死に反論するアウレリオくん。


「そうだよ、カインくん。人を疑うのは良くないよ」

「こらレオン! お前はどちらの味方だ!」

「いや、味方って……アウレリオくんはもう敵じゃないでしょ?」


 カインくんと言い合っていると、リヒト様が大きく息を吐いた。


「は~、そこまでだ。こいつも反省している」


 ちらりとアウレリオくんを見る。


「それに、能力的には優秀だからな」

「……リヒト様がそう言うのであれば」


 カインくんは渋々頷いた。


「おい、アウレリオ。裏切るなよ」

「大丈夫だと言っているだろう!」


 こうして俺たちの、帝国への旅路が決まったのだった。

――俺の平穏な学園生活は何処へ?

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