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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第87話 魔道具と、プログラム

「皆さん。本日の魔道具技術の授業は、実際に魔道具の構造を見てみましょう」


 教壇に立つのは、魔道具技術担当の教師。穏やかな口調で優しそうな先生だ。白衣の袖口には細かな魔導インクの染みが残っており、研究室に籠もる時間の長さを物語っている。


 気が付けば、学園に通い始めて三年目になる。基礎科目中心だった一、二年次とは違い、選択授業が加わって専門的な内容を学べるようになった。そんな中で、俺が選んだ授業の一つが、この魔道具技術だった。


「では、こちらの魔石ランプをお配りします」


 先生の合図とともに、補助員が机の上にランプを置いていく。屋敷でも廊下や書庫でよく見かける、ごく一般的な照明用魔道具。夜の灯りとして使うのはもちろん、警備や合図用にも応用される魔石ランプは、王国中で使われている必需品だ。


「魔石ランプの構造は比較的簡単です」


 そう言って先生は、慣れた手つきでランプを分解し始めた。工具を使う動きに迷いはなく、何度も同じ作業を繰り返してきたことが分かる。


「まずは、光源となる光属性の魔石。こちらがガラスケースに収納されています」


 カチリ、と外されたケースの中から、淡く輝く魔石が姿を現す。先生の動きを真似しながら、俺も自分のランプを分解していく。


「次に、こちらが魔力を供給するための魔石です」


 光の魔石とは別に、やや濁った色合いの魔石が取り出された。


「この魔石には、使い捨てタイプと、充電可能なタイプがあります」


 俺は手の中の魔石をじっと観察した。よく見ると、魔石の表面に細かな文字のようなものが書かれていた。


「皆さんに配った魔石は、充電可能なタイプです。魔導インクによって、魔法文字が書き込まれているのが解りますか」

――なるほど。この文字があるから魔石に魔力を溜め直せるのか。


「この二つの魔石は、それぞれ魔石ホルダーにセットされ、魔導線を通じて制御盤やスイッチにつながっています」


 先生は細い金属の線、魔導線を指で軽く叩いた。魔力を安定して通すための特殊合金らしい。


「これが、魔石ランプの基本構造です」


 思ったよりも、ずっとシンプルだ。周りからも声が聞こえる。どうやら俺と同じ感想を抱いた生徒は多いらしい。


「どうです? 意外と単純でしょう」


 先生はそう言ってから、最後の部品を手に取った。


「そして、この魔道具の“肝”となるのが、この制御盤です」


 先生は、ほんの少しだけ声に力を込めてそう言った。金属の板に魔石と同じように、びっしりと魔法文字が刻まれていた。


「この制御盤には、光属性魔力への変換、使用魔力量の制御など、魔道具の挙動すべてが魔法文字で記載されています」


 俺は思わず、その文字列を凝視する。


(……うん。全然分からないや)


「では、魔法文字を細かく見ていきましょうか。まずは――」


* * * * * * *


「魔道具技術の授業はどうだった? レオン」


 授業後、カフェテリアで昼食を食べていると声をかけられた。


「あ、ミナミさん」


 振り返ると、ミナミさんとユウキくんがトレーを持って近づいてきていた。


「制御盤の魔法文字を習ったけど……結構難しいね」

「そうか?」


 首を傾げるミナミさん。


「あんなの、覚えてしまえば後はパターンの組み合わせだぞ」

「さすが……」


 この世界でロボットを作ろうとしている人の言葉は、重みが違う。


「俺も少しだけ勉強したけどさ」


 すると横からユウキくんが口を挟んだ。


「簡単なのは分かるんだけど、複雑なのは何が何だか……」

「あれはプログラムと一緒だぞ」

「ぷろ……ぐらむ?」


 リヒト様が首を傾げる。


「えっと、俺たちの世界の機械に組み込まれてる制御盤みたいなものかな」


 ユウキくんが少し考えながら説明する。

――if文とか、for文とか……確かそんなのがあったな。


「そういえばよく似てる。もしかしたら転移者が広めた技術なのかもしれんな」


 ミナミさんの言葉に、カインくんが頷いた。


「なるほど。魔道具はここ百年ほどで発展した技術だ。転移者が関わっていても、不思議ではないな」


 そんな会話を聞きながら、俺はふと思ったことを口にした。


「ねえ、どうしたらミナミさんみたいな、すごい魔道具が作れるようになるの?」

「ん?」


 ミナミさんは少し考えてから、あっさり答えた。


「色んな魔道具の制御盤を見ることじゃないか?」

「……それだけ?」

「ああ。言っただろ。パターンがあるって」


 ミナミさんは、当然のように続ける。


「プログラム――いや、魔法文字も同じだ。基本の組み合わせを覚えれば、あとはそれの応用だな」

「なるほど……」


 組み合わせるパターンが増えれば、できることも増えると言う訳か。


「じゃあ、色んな魔道具を見て制御盤の魔法文字を覚えればいいんだね」

「そういうことだ」


 ミナミさんは満足そうに頷いた。


(……よし)

――色んな魔道具の制御盤を見て、覚えていこう。


 心の中で、小さく決意する。こうして俺は、ミナミさんの助言を受けて色々な魔道具の制御盤を見て勉強することになるのだった。

――目指すはミナミさんみたいに、カッコいいロボットを創ることだな。

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