表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/96

第82話 【武闘祭】不気味な敵と乱入者

「くそっ! 攻撃が当たらない!」

「魔法部隊! 放て!」


 怒号と魔法の炸裂音が飛び交う。武闘祭準決勝、俺たちは自軍のオーブ前で、《フギン》の攻撃班と激突していた。前日の試合結果を踏まえ、俺たちは決断した。中途半端に戦力を分けるより、全軍防御班となり相手を迎え撃ち、戦力を削っていく作戦。――そのはずだった。


「うむ。やはり戦況は良くないな」

「ユウキが言っていた通りです。完全に対応されていますね」


 最終防衛ラインで戦況を見ていたのは、リヒト様とカインくん。二人の冷静な声とは裏腹に、前線では味方が少しずつ倒れていく。


「防御班、下がれ! 二列目、交代!」

「くそっ……!」


 指示は的確だった。だが、それでも追いつかない。《フギン》の攻撃班は、こちらの陣形変更すら読んでいるかのように、常に最適な間合いを保っていた。


「っ、速すぎる……!」

――違う、ただ速いんじゃない。


 動きには無駄がなく、迷いがない。そして長期戦のはずなのに、《フギン》の生徒たちは息一つ乱していない。汗も少なく、魔力の揺らぎも一定だった。


「普通なら、ここまで攻め続ければ消耗が出る。なのに――」

「確かにゾンビの様だな」


 一人、また一人と倒れていく。削られているのは……俺たちの方だった。


「仕方がない。レオン! 魔法の準備を――」


 リヒト様が俺に指示を出そうとした、その時。


「わははは! どうだ、我がクラスの力は!」


 響いた高笑い。聞き覚えのある声。


「……アウレリオ!」


 カインくんの視線の先。そこには、《フギン》の中でリーダー的存在のアウレリオくんが立っていた。


「おや、カイン。随分と苦戦しているようだな」

「ちっ……うるさいぞ。すぐに全滅させてやる!」

「ふん。減らず口を! いつまでその強気が――」

「≪アウラ・ナックル≫」


「ぐほっ!?」


 突然見えない何かに顔面を殴られたアウレリオくんが吹き飛んだ。


「あ、当たった」

「おい、レオン」


 カインくんが、ものすごく嫌そうな目で俺を見る。


「さすがに、喋っている相手に攻撃するのはどうかと思うぞ」

「え? でもリヒト様が“魔法の準備”って――」

「うむ……それは、そうなのだが……」


 指示を出しかけたリヒト様まで、困った顔。


「でも、アウレリオくん以外には避けられちゃったよ」


 風魔法で作った“見えない拳”。それなのに、《フギン》の生徒たちは当然のように回避していた。


「なんと……レオンの魔法ですら」

「……厄介だな」


 カインくんが次の策を考え始めた、その時。


「おのれぇぇぇ! レオン!!」


 土埃の中から、復活したアウレリオくんが飛び出してきた。


「貴様! よくもやってくれたな!」

「あ、えっと……何かごめんね」

「貴様ぁぁ! どこまで私を愚弄するか!」

「こら、レオン。煽ってどうする」

「え? 普通に謝っただけなのに……」


 なぜかカインくんに怒られてしまった。理不尽である。そんなやり取りをしている間にも戦況は悪化していた。気づけば、《フギン》の攻撃班は目前まで迫っている。


「くっ……万策尽きたか。だが、ただでやられてなるものか!」


 リヒト様が剣を握り直した、その瞬間。


「ドッカーン!」

「ボン、ボン!」

「な、なんだ!?」


 背後から爆発音と共に、数人の人影が乱入してきた。全身を黒ずくめのローブで覆った集団。顔も、所属も分からない。


「何者だ! 貴様たち!」


 カインくんの叫びを無視し、黒ずくめの集団は一直線にリヒト様へ向かってきた。


「リヒト様!」


 俺は駆け寄ろうとした。しかし――。


「え? なに……!」


 体が誰かに掴まれて動けない。拘束していたのは、さっきまで戦っていた《フギン》の生徒たちだった。周囲を見ると、カインくんも、味方の生徒たちも、同じように押さえ込まれている。


「おいっ! やめろ! なぜ私の命令を無視する!」


 何故か味方に拘束されて、叫ぶアウレリオくん。拘束している《フギン》の生徒たちの目は、焦点が合っていない。そこに“意思”があるようには見えなかった。


「≪ソムヌス・ネブラ≫」


 黒ずくめの一人がそう唱えた瞬間、白い霧が一気に広がった。


「これは……眠りの魔法か……」


 リヒト様はそう呟き、必死に抵抗しようとする。だが次第に力が抜け、そのまま黒ずくめの一人に抱えられた。


「リヒト様……≪アクア・パピリオ≫」


 意識が落ちる寸前。俺は水で作った小さな蝶を、リヒト様の体へと潜り込ませた。そこで、俺の意識は途切れたのだった。


* * * * * * *


「……はっ。ここは……?」

「レオン様! 良かったです……!」


 目を覚ますと、視界いっぱいにエリスの顔。そのまま、ぎゅっと抱きつかれた。


「えっと、エリス……心配かけてごめんね」

「はい……本当に、無事で良かったです……」


 どうやら俺たちは医務室に運び込まれたらしい。


「本当に良かった」


 隣から、ユウキくんの声。


「皆が一斉に倒れた時は、もうダメかと思ったよ」


 少しずつ、記憶が戻ってくる。黒ずくめ。拘束。眠りの霧――。


「……そうだ。リヒト様は?」


 俺がそう尋ねると、ユウキくんとエリスは言葉に詰まった。


「……そ、それは……」


 その沈黙が、何よりの答えだった。

――どうやら武闘祭どころの騒ぎでは、なくなってしまったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ