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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第77話 打ち上げと、不穏な気配

「「乾杯!」」


 グラスが重なり合い、澄んだ音が夜のカフェテリアに響いた。昼間の喧騒が嘘のように、心地よい夜風と共に達成感が広がっていく。


 学園祭も無事終了。打ち上げ会場には、料理と飲み物、そして笑顔が並んでいた。


「いや~、今年も優勝できると思ってたんだけどな」

「ふん。そう何度も負けてたまるか」


 飲み物片手にユウキくんとカインくんが軽く火花を散らしている。もっとも、どちらの表情も険しさより楽しさが勝っていた。


「うむ。今回はレオンのお手柄だったな」


 隣ではリヒト様が満足そうにうなずいた。


「え~、そうかな? えへへへ」

「リヒト様。あまりレオンを甘やかさないでください。調子に乗ります」

「ひどいよ、カインくん! 褒められたんだから調子に乗ってもいいじゃん!」

「お前は調子に乗ると、ろくなことをしないだろ」

「うぐっ! 言い返せない……」


 完全に論破されてしまった。


「でも、優勝できてよかったですよね」


 エリスが控えめに微笑みながら言う。その言葉に、改めて実感が湧いてきた。今回の二年次生の優勝は、俺たち《グラニ》。迷宮が壊されたときはもうダメかと思ったが、結果的には“不気味さ”がウケて大盛況。


(人生、何が転ぶかわからないな……)

――いや本当に。迷宮が壊れて優勝するとか誰が予想できただろうか。


「おのれ……私の≪スカイホースくんDX≫で連覇できると思っていたのに……」


 ミナミさんは悔しそうに唐揚げを次々と口に運んでいる。


「ちょっと、ミナミさん。そんなに急いで食べたら喉に詰まるよ」

「ふん、うるさ……ぐほっ、ぐほっ!」

「オー、大丈夫デスか? はい、お水デス」


 マリアさんが素早く水を差し出し、ミナミさんはそれを一気に飲み干した。


「……ふ〜、生き返った。くそ、やっぱ全部レオンが悪いな」

「ちょっと!? 僕、何もしてないよね!?」


 俺の必死な突っ込みに、周囲から笑いが起きる。


「まあ落ち着け。ほら、レオンも何か食べろ」

「そうですね。こちらの料理もおいしいですよ」


 カインくんにお皿を渡され、エリスにもおすすめを渡された。料理はどれも美味しく、カフェテリアには穏やかな時間が流れていった。


「そういえば、マリアさんもおめでとう」

「ハイ。ありがとうございマス」


 一年次の優勝は、マリアさんのクラスの≪コスプレの宴≫だった。人気も収益も申し分なく、学園中で話題になっている。


「準備、大変だったでしょう?」

「大変でしたケド……みんな楽しそうで、嬉しかったデス」


 そう言って微笑むマリアさんは、本当に誇らしげだった。そのまま談笑が続いていたが、マリアさんがふと思い出したように言う。


「そう言えば、ルーク先輩が後でレオンとお話したい言ってましたよ」

「へ? 僕と。なんだろう」

「コスプレのシステム、使いたい言ってたデス」

――なるほど。商人のカンかな? よし、無視しよう。


 心の中でそっと決意したが、なぜか嫌な予感しかしなかった。こうして学園祭の打ち上げは、夜が更けるまで賑やかに続いたのだった。


* * * * * * *


―――――――――

――Side:アウレリオ視点

―――――――――


「くそっ……! 田舎貴族の分際で、この私を馬鹿にするなんて……!」


 学園祭が終わり、私は一人、自室で拳を握りしめていた。窓の外では、まだどこかで楽しげな声が聞こえてくる。それがひどく癇に障った。《グラニ》の迷宮を壊して、恥をかかせてやるはずだった。それなのに――。


(なぜだ……なぜ、あんなものが評価される……)


 生徒たちの視線、教師たちの評判。すべてが、あの田舎貴族へと向いていた。


(何かズルをしたに違いない……!)

――でなければ、我ら《フギン》が負けるはずがないのだ!


「まったく……腹立たしい。どうしてくれようか……」


 吐き捨てるように呟いた、その瞬間。


「ふふふ。それでは、お手伝いしましょうか?」

「――誰だ!」


 反射的に振り返る。ここは私の部屋。鍵もかけた。今は私一人のはず――。それなのに、部屋の隅にはいつの間にか全身黒ずくめの人物が立っていた。気配も、足音も、まるで感じなかった。顔は影に覆われ、どんな表情をしているのか分からない。


「貴様……どうやって入ってきた!」

「そんなことはどうでもいいじゃないですか」


 低く、粘つくような声が耳にまとわりつく。


「復讐したいのでしょう?」

「復讐だと? ……ふん。貴様には関係ない」

「まあまあ。そう言わずに、こちらをお試しください」


 黒ずくめの人物は、音もなく一歩近づき、懐から小さな小瓶を取り出した。


「なんだ、これは?」

「ふふふ……これはですね――」


 その説明を聞いた瞬間、私の胸の奥に、歪んだ期待が芽生えた。


* * * * * * *


 こうして俺の知らないところで、また《千客万来》さんは今日も元気にトラブルを引き寄せていたのだった。

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