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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第72話 夏祭りと、悪夢再び

「ジャーン! どうデスか、レオン?」


 元気な声と共に振り返ると、そこには――。


「……え?」


 一瞬、言葉を失った。淡い色合いの浴衣に身を包んだエリスが、少し緊張した様子で立っている。髪はアップに整えられ、帯も可愛らしく結ばれていた。


「め、めっちゃ可愛い……!」

「か、可愛い……!」


 思わず口から本音がこぼれた瞬間、エリスはぱっと顔を赤くした。


「ちょっと、レオン」


 横から声が飛んでくる。


「母も褒めなさい」

「あ、ああ。母上も素敵です」

「……まあ、いいでしょう」


 俺の適当な誉め言葉に、母上は若干不満そうだ。改めて周囲を見ると、エリスの隣には母上、ミナミさん、マリアさんが並んでいる。全員、浴衣姿だ。


「ユウキも褒めてください」

「うん。マリアさんもミナミさんも可愛いね。エレナさんは綺麗です」

「えへへへ。ありがとうございマス」


 マリアさんが嬉しそうに笑う隣で、母上は満足げに頷いた。


「まあ、ユウキくんは褒め上手ですね。レオンも見習うように」


 なぜか母上に攻められる俺。どうしてこうなったのかというと――。


「夏祭りですか?」


 朝食の席で母上から突然告げられた今日の予定。


「はい。今日の夕方から開催しますよ」

「びっくりした? レオンくん」

「え? ユウキくんも知ってたの?」


 すると父上が、俺の疑問に答えてくれる。


「ああ。実は昨年、転移者であるユウキ殿たちに夏に行うイベントの相談をしていてな」

「そうなんデス。それでニッポンのお祭りの事、教えてあげたデス」


 それは、俺の前世――日本で毎年夏に行われていた恒例行事。


「そうなんだ……ていうか、僕聞いてないんだけど」

「はい。今言いましたから」


 母上は、さも当然のように言った。

――いや、そういうことは事前に教えてほしかったよ。


「わははは! 今日の夏祭りでも、私の花火が火を噴くぞ!」

「えっ、花火まで?」


 どうやらミナミさんも準備してくれたらしい。


「それは楽しみですね」


 エリスが嬉しそうに微笑む。


「それでは、準備を始めますよエリス」

「準備……ですか?」


 こうして女性陣は、マリアさんが用意した浴衣に着替えに行ったのだった。


* * * * * * *


「それにしても、よくこんなに屋台を用意できましたね、母上」


 会場に着くと、たこ焼き、焼きそば、串焼き……見慣れた屋台がずらりと並んでいる。


「ええ。実はアルマレッタ商会にも協力してもらったんです」


 それはルーク先輩の実家。王都でも指折りの大商会だ。


「もしかして、グレンさんとルーク先輩も?」

「いいえ。お二人ともお忙しいようで、今回は代理の方が」

――そっか、残念。学園が始まったら、ちゃんとお礼を言おう。


 そうして、俺たちは各々好きな屋台を巡り始めた。


「ちょっとミナミさん、俺のたこ焼き食べないでよ」

「いいじゃないか、ケチ臭い」

「オー。私もたこ焼き下さい、ユウキ。あ〜ん」

「も~、しょうがないな。はい、あ〜ん」


 モテモテ勇者のユウキくんは両手に花。


「エリス! この串焼き、美味しいですよ」

「あ、ありがとうございます……お母様」

「もう。“エレナちゃん”って呼んでくれていいのに」

「い、いえ……さすがに……」

「あう~」

「あら、リリィに串焼きはまだ早いわね」

「うふふふ。リリィちゃん、かわいいです」


 エリスも両手に花(?)で楽しそう。そして俺は……。


「レオン様、こちらにメレンゲください」

「あ、こっちにもお願いします」

 ――どうしてこうなった?


 気づけば俺は、スフレパンケーキの屋台でメレンゲを作り続けていた。


 それはみんなで屋台を回っている最中のこと。スフレパンケーキの屋台で孤児院の子たちに声をかけられたのが運の尽き。


「レオン様! ちょうどよかったです、手伝ってください!」

「え、ちょっ……」


 手を引かれて連れて来られたのは、メレンゲ生産の最前線。そこには、力尽きて横たわる子供の姿があった。


「だ、大丈夫!?」

「はい……でも、もう腕が動きません……」


 どうやら、忙しさのあまり泡立て続けて限界を迎えたらしい。


「レオン様、助けてください」


 そんな目で頼まれたら、断れるはずがない。


「よし、任せなさい! あ、エリスたちはお祭り楽しんでね」

「で、でも……」

「いきましょう、エリス。ここにいても私たちには何もできません」

「何かあったら、声かけてね」


 名残惜しそうにしつつ、エリスは母上とユウキくんに説得されて戻っていった。


「じゃあ……やりますか」


 俺は深呼吸して、料理魔法を起動する。


「≪トゥルボー・ミキサー≫」


 両手に小型の竜巻を展開し、凄まじい速度でメレンゲを生成していく。


「す、すごい……!」

「さすがレオン様!」

「え? そうかな……えへへ」


 褒められると、ちょっと照れる。おだてられて気を良くした単純な俺は、そこから数時間メレンゲを作り続けた。


(あれ……これ、いつまで続くの?)


 そう思った時――。


「ヒュ~……ドン!」

「ドン、ドン!」


 夜空に響く、花火の音。歓声が、会場から聞こえてくる。


 ――ああ……エリスと一緒に、見たかったな。


 その願いが叶うことはなく、俺はこの後、お祭りが終わるまでひたすらメレンゲを作り続けるのだった。


「あ、レオン様。メレンゲ早くお願いします」

「お客さん待ってますよ」

「は、はい! 喜んで〜!」


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